out side

 穴から翔太達が出てくるのを見ている者達がいた。
「ほう……あれがあやつが言っていた者か……」
 炎のように赤く腰まで伸び、絹糸のように煌めくまっすぐと伸びる髪を持つ女性。
端麗な顔立ちだが、その瞳はまるで刃物のような鋭さを感じさせる。
背は高く、迫力のボリュームがある胸を持つ体型はモデルのように均整が取れたものであった。
革のブーツに革製の少しきわどいビキニを纏い、更に真っ赤な革のコートを羽織っていた。
頭には同じく真っ赤な革製のフェドーラ帽を被り、両手は革の帯を巻き付け、
腰の左右のホルダーには銃身の底に沿うように刃物が取り付けられたオートマチックタイプの銃が納められている。
「はぁ……」
 もう1人は翔太を見て、ため息を吐く。
背中まで伸びる黒髪をポニーテールにし、凛々しく整った顔立ちの女性。
先程の女性と同じく迫力のボリュームの胸に均整が取れた体型を赤いウェットスーツのような物を纏っていた。
その上にすね当てと小手、肩当てに胸当てを付け、額には額当てまで付けている。そして、手には赤い槍があった。
「どうした?」
「いやさ……どんな顔して会えばいいのかと思ってよ……」
 赤いコートの女性の問い掛けに、槍を持つ女性はどこか恥ずかしそうに答えていた。
「それになんだよ、この体は? いや、強くなったのは嬉しいけどさ……」
 と、槍を持つ女性は自分の体を見回し始める。というのも、この体に違和感を感じるのだ。
まぁ、無理もない。なぜなら、槍を持つ女性は本来は――
「それは我に言われても困るがな。我の体もあやつが創り上げたものだし」
 そう言いつつ、赤いコートの女性は不敵な笑みを向ける。2人の女性の正体は悪魔である。
ただ、2人がそんなことを言う理由は、種族本来の姿とは異なる物だからだった。
ついでに言えば、槍を持つ女性は元々このような種族ではなかったのだが――
「なぁ、あやつって誰だよ?」
「それはいずれわかる」
 槍の女性は訝しげに問い掛けるが、赤いコートの女性は翔太に顔を向けつつ答えていた。
ただ、正体を言わないのは言ったとしても理解出来ないだろうと思ってのことである。なにしろ、あいつは――
「ち……で、なんですぐに翔太と会わねぇんだよ?」
「確かめたいのだよ。どんな男なのかを……な」
 舌打ちしつつもそのことを問い掛ける槍を持つ女性に、赤いコートの女性は相変わらず翔太を見つつ答えていたが……
その顔は不敵な笑みを浮かべていたりする。果たして、彼女達は一体――


 in side

「ここが……ボルテクス界……」
 さて、麻帆良からボルテクス界に戻ってきたのだが、一緒に来た刹那に真名、ミナトは呆然としている。
刹那はなんとか声を漏らしてたけど……どうかしたのかね?
「どうしたのさ?」
「あ、いや……悪魔がいる世界と聞いていたので……その、想像していたのと違っていたというか……」
 聞いてみたらミナトがそんな風に答えるけど……まぁ、気持ちとしてはわからなくもないな。
普通に見れば、ここって緑豊かな所だしなぁ〜。それでここに悪魔がいると聞いても、普通は信じないだろうし。
なんてことを考えつつ、俺は仲魔達を召喚する。で、GUMPでマップ確認。
「それで、これからどうするの?」
「ん〜……俺達の世界も日曜だしな。もうしばらくいても大丈夫だろ?」
 とりあえず、理華にはそう答えておく。そう、俺達の世界で日曜の時にボルテクス界に来たのだ。
ボルテクス界で3日過ごすと、俺達の世界では大体1〜2時間ほどなんで、もうしばらくいても大丈夫……だよな?
「どういうことだい?」
「ああ、俺達は数日ボルテクス界を回ってから、自分達の世界に戻って学校行って、またこっちに来て数日回って……なんてのを繰り返しての」
「なぜ、そのようなことを?」
「なぜって……家族とかには内緒だし……って、何その目?」
 真名に聞かれたんで答えたら、なぜか刹那にも聞かれたんで答えると……今度はミナトも一緒になってこっちを驚いたように見てくる。
ええと……俺、なんか変なこと言ったか?
「翔太さんって……どっかの組織に所属してるんじゃないんですか?」
「あのな……俺は巻き込まれた一般人だっての。お前達みたいに最初からどっかにいたわけじゃないって」
 驚いてるミナトに右手を振りつつため息混じりに答えるが……ホント、なんで俺がこんなことしなきゃならないんだよ……
ことがことだから、親とかにも話せるわけないし……まったく、なんか変に苦労ばっかしてるよなぁ……
「そうなのですか……」
「そうなの。んじゃ、行くぞ。夜になったら色々とヤバイしな」
 戸惑ってる様子の刹那に答えてから歩き出そうとして……ふと、ある方向に顔を向けてみる。
「どうしたの?」
「いや、誰かに見られてたような……気のせいか?」
 聞いてきたミュウに首を傾げつつ答える。はて? 誰かの視線を感じた気がしたんだが……
まぁ、ここは悪魔とかいるし、それかも。なんてことを思いつつ、俺達は町に向かうのであった。
でも、その視線が変な感じがしたのは……やっぱ、気のせいか?


 out side

「ほう……こちらに気付くとはな」
「そりゃま、あいつもそれなりに戦ってきてるしな」
 一方、翔太がこちらに気付いたことに赤いコートの女性は感心し、槍を持つ女性も少し嬉しそうに答えた。
しかし、赤いコートの女性の方は表情が少し険しい。そのことに気付いた槍を持つ女性は訝しげな顔をし――
「どうしたんだよ?」
「なに……このままではあやつはいずれ戦えなくなると思ってな」
「はぁ?」
 赤いコートの女性の言葉に槍を持つ女性は理解出来ずに首を傾げる。
赤いコートの女性が気にしているのは2つ。まず、翔太の状況だ。話を聞く限り、後ろ盾が無い状況に思える。
今の所はいいだろう。だが、今後はそうはいかなくなる可能性が高くなる。翔太が戦っている相手はそういう類の物なのだ。
もう1つの問題が、翔太の戦い方。赤いコートの女性に言わせれば、それは素人のケンカと変わりない。
元々素人ゆえ、しょうがないとも言えるが……だからこそ、戦い方を学ばせる必要がある。
「ま、問題はそれだけではないが……」
「だからなんなんだよ?」
 思わずため息が漏れる赤いコートの女性だが、槍を持つ女性は訳がわからず不満そうにしている。
赤いコートの女性が気にするもう1つ問題。それは今、悪魔と戦う翔太に現われていた。
「やれやれ……どうやら、早めに再会をさせた方が良さそうだな」
 なんことを呟きつつ、赤いコートの女性はその戦いを見ていたのである。


 in side

「くぅ! ふざけんな!?」
「ぐぎゃあぁぁぁぁ!?」
 悪魔の攻撃をなんとか受け止め、逆に斬って悪魔を倒す俺。町に向かったはいいが、早速悪魔の襲撃を受けたのである。
で、今は戦っている最中なんだが――
「大丈夫か?」
「は……ふぁ〜い……」
「こちらは無事です」
 なんとか悪魔の群れを倒し、声を掛けてみる。ミナトは戦えないので逃げ回ってばっかりだったせいか、なんか目を回してる。
刹那も怪我は無い様子。ああ、ちなみに今刹那が使っている剣は折れた剣と同じ大きさの日本刀だ。
「まったく、無茶しすぎよ。ディア」
 なんて呆れられつつ、理華から治療魔法を受ける。呆れられている理由が俺だけ怪我をしているからかもしれないけど。
でも、しょうがないんだって。前に出て戦えるのは俺と刹那なんだが、刹那はまだ不慣れなせいか積極的に前に出られないみたいなんだよ。
で、俺ばっかりが前に出てるようなもので、その分戦う悪魔も多くて……で、攻撃を受けたと。
 たく、こういう時になるとオニがいたありがたみがわかるな……
「私としては無茶というより、ムキになっているように見えるけどね」
 な〜んて、真名に言われるが……なんか、否定出来ない。なんか、さっきは無我夢中に戦ってたような気がするしな。
やっぱ、気にしてんのかな……オニのこと……
「翔太……」
「翔太さん、あえて言わせてもらうよ。死んだ者のことを気にするなとは言わない。
でも、どこかでけじめは付けた方がいい。でなければ、怪我だけじゃ済まなくなるよ」
 心配そうにこっちを見る理華の横で、真名はそんなことを話した。
言ってることはわかる。でも、けじめか……やれやれ、整理はついたと思ったんだけど……どうしたもんかな……
「あの、翔太さん。私を合体させてもらえないでしょうか?」
「はい?」
 なんか、アプサラスがいきなりそんなことを言い出す。いや、いきなりなぜに?
「なんでまた急に?」
「その……このままではいけないと思いましたから……」
 首を傾げながら聞いてみるけど、アプサラスはなぜかすまなそうに返した。
いや、かなり役に立ってると思うけどな? 魔法で攻撃出来るし、サポートとかもちゃんとやってくれるし。
でもまぁ、ああいう目で見られちゃうとな。しっかし、合体ねぇ……
「ところで合体とはなんなんだい?」
「ん? ああ、悪魔同士を合体させて、より強い悪魔にすることが出来るんだけどな」
「そんなことが……可能なのですか?」
「ああ、やってくれる人がいてね」
 真名に答えると刹那が驚いていたが……よくよく考えるとなんで出来るんだろうかね?
いや、色々と突っ込んじゃダメだってのはわかるんだけど、気にはなるじゃん?
 それはそれとして、誰をアプサラスと合体させるか……ルカはダメだな。リョカさんから預かってるようなもんだし。
ミュウは様子的に無理っぽそうだなぁ〜。アリスは私的にマズイと思うし……後は――
「で、誰か合体してもいいって奴、いる?」
「私は嫌〜」
「ボクも嫌だホ」
「ボクもだホ」
 と、モー・ショボーにフロスト、ランタンはダメと……となると――
「あ〜、どっかで交渉するしかないな、こりゃ……」
「申し訳ありません……」
「交渉って?」
 頭を掻く俺にアプサラスはすまなそうに頭を下げるけど、首を傾げるミナトがんなことを聞いてくる。
「交渉ってのは、文字通り悪魔と交渉することでさ――」
 まぁ、隠すものでもないので、歩きながら話すことにした。
で、この後何度か悪魔の群れと遭遇し、その中で地霊カハクを合体要員として仲魔にした。
いや、苦労したよ。合体してもいいって奴が中々いなくてさ。
「うん、私も強くなりたいし。いいよぉ〜」
 なんて言ってくれたのはカハクだけだし。他は難色示しちゃって……ていうか、怒って襲ってきたし。
倒すのに苦労したよ――


 なんてことをしながら、俺達はやっとのこと町に戻ってきたのでした。
「人も……いるんだね……」
「まぁな。ああ、町にいる悪魔は襲ってくることはまずないから」
 少し驚いてる様子の真名にそう言っておく。刹那やミナトも真名と同じ感じだったけど。
で、ミュウとルカ以外をGUMPに戻して、俺達は町を歩くんだけど――
「よぉ、翔太。どこ行ってたんだよ? それにその嬢ちゃん達は?」
「ま、色々とあってね」
「翔太。いい野菜入ったんだ。買ってけよ」
「ああ、後でね」
 な〜んて、町の人や悪魔に声を掛けられる。
「人気者なんですね」
「いやぁ、そういうのじゃないんだけどな」
 なんか、感心している刹那にそう言っておく。ルカを仲魔にして以来、こうして町の人や悪魔に話しかけられることが多くなった。
なんでも、ルカを助けたことをリョカさんが話したのと、警察が俺に一目置いているという噂が立っており――
いつの間にやら、こんな感じになってしまったと……まぁ、悪い気はしないからいいけどな。
 で、あっさりと俺達の家に着き――
「あ、翔太さん、お帰りなさい。その方々は?」
「わけあって、しばらく一緒に行動することになった人達だ。あ、この人はラウルさんっていって、この家のお手伝いさんなんだ」
 ラウルに答えつつ、刹那達に紹介する。まぁ、正確にはお手伝いさんじゃないんだが……他に思いつかなくてさ。
「妖精シルキーのラウルです。よろしくお願いいたしますわ」
「あ、どうも……桜咲 刹那です……」
「龍宮 真名だ」
「あ、橘 湊です……」
 ニッコリと自己紹介するラウルに刹那とミナトは戸惑いつつ答える。真名は流石というか、いつも通りに見えたけど。
「あ、そうでしたわ。先程メアリさんが来て、ヴィクトル様がお呼びになってるとおっしゃっていたのですが」
「ヴィクトルさんが? なんだろ?」
「なんでも、お仕事をお願いしたいと言ってましたわね。詳しいことは会って話したいと」
 ラウルがそう答えるけど、仕事ね……まぁ、世話になってるから、仕事を受けるのは別に構わないんだけど……
けど、珍しいな? 特に催促とかする人じゃなかったしな。
「ヴィクトルって、誰だい?」
「ん? ああ、さっき悪魔合体のこと話してただろ? それをやってくれるのがヴィクトルさんなんだけど――」
 聞いてきた真名に答えつつ首を傾げるが……考えてもわからないし、会った方が早いか。
「まぁ、どうせ行くつもりだったし。さっさと行きますか。あ、そうだ。すみませんが、刹那達の食事もお願い出来ますか?」
「ええ、わかりました。では、行ってらっしゃいませ」
 そんなお願い事をしつつ、ラウルさんの笑顔の見送りを受けながら早速向かう俺達。あ、でもその前に買い物でもしておくかな?



 あとがき
ボルテクス界に戻ってきた翔太達でしたが、翔太はオニのことを引きずっている様子。
そんな翔太達を見守る怪しげな2人。この2人はいったい?
しかしながら、問題は翔太だけにとどまらず、刹那と真名にも?
そして、ヴィクトルが翔太に依頼しようとしている仕事とは?
次回はそんなお話です。お楽しみに〜



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