in side

 で、リョカさん所で昼食食べてからスカアハに連れられて来たのは、なぜか生体マグネタイト協会だった。
「こちらです」
「うむ」
 で、協会の人から書類を受け取ると、スカアハはそれを見ていた。
どんな物かというと、ここ1ヶ月誰がどれだけの量の生体マグネタイトを持ってきたかという一覧表だ。
しかも、サマナー限定で。そういや、俺以外にもサマナーはいるんだよな。でも、会ったことが無かったりする。
ああ、あのルカを誘拐したサマナーがいたっけ? いや、あれは別にした方がいいかな?
 にしてもあの書類、やけにあっさりと出してくれたよな。普通は秘密にしとくもんじゃないのか?
スカアハに言われて俺が頼んだんだけど、すっげぇにこやかに応対してくれたし。なんでだろ?
それはそれとして――
「なぁ……それって何か意味があるのか?」
「そうだな。これを見ろ。こいつとこいつだ」
 聞いてみるとスカアハに書類を渡された。んで、スカアハが指さした2人の名前の欄を見てみるが……うん、見ただけじゃわからないよね。
同じく書類を見ている理華や刹那も首を傾げてるけど、真名はなんかわかったような顔をしている。
「おぬしはわかったようだな?」
「ああ……この2人は定期的に来ている。しかも、出している量もほぼ一定だ。
確か、生体マグネタイトを手っ取り早く手に入れる方法は悪魔を倒すことだったよね?」
「ああ……」
 スカアハに聞かれて答える真名。で、聞かれたことにうなずくけど……なるほどな。
確かに真名の言うとおりでこいつらは定期的に、しかも一定の量を出してる。それはわかったんだけど……
つまり、それなりに悪魔を倒してるってことで……強いってことなのかな?
「つまり、それなりの腕を持ち、なおかつベテランってことさ。確かにこの人達が助っ人してくれるなら、これほど心強いものはないね」
 と、真名は説明してくれたが……確かに手伝ってもらえるなら助かるけどさ……いいのかな? そんなことして?
「使える物はなんでも使え……戦いでは時としてこういうことも必要となる。
この場合は手段となるが、こういうやり方もあるということだ。覚えておくのだぞ」
「しかし、その人達が手伝ってくれるとは限らないが?」
 スカアハが話す横で真名がそんなことを聞いてくる。でも、そうだよな。
その人達がどんな人なのかも知らないし、断られることもありえるし――
「なに、やりようはある。で、この2人に会いたいのだが、どうすればいい?」
「はいはい。ああ、この方々でしたら……あ、今来ましたよ」
 スカアハが問い掛けると、協会の人がある方へと顔を向けた。俺達もそこへ顔を向けると、そこには3人の男女の姿があった。
1人は青い髪をポニーテールにしてる女性。髪の長さはそれなりに長いといった感じかな?
顔は凛々しく整ってて、美希似た感じの美人っていったところか? 背は理華くらいで、スタイルは……うん、なかなかの物だと言っておこう。
で、赤いコートを着ているけど、スカアハと違ってこっちはちゃんと着こなしているって感じだな。
 もう1人は少し茶色がかった金髪の髪を持つ青年。背は俺より少し低いって感じかな。ちなみに顔は……うん、美形だよね……
でも、体付きはしっかりとしている印象を受ける。ズボンに半袖にベストといった服装だが、なんか冒険者が着ているような印象を受ける。
 最後の1人は青年と同じくらいの背の少女だった。少しウェーブが掛かってるピンクの髪をしていて、可愛いといった感じの顔付き。
スタイルは……まぁ、それなりといったところ……とだけ言っておきます。こっちはズボンにシャツにジャケットと動きやすそうな服装だった。
「君達は?」
「え? ああ……その〜」
「彼が相川 翔太さんですよ」
「ほぉ……君が噂のレデースサマナーか……」
 聞かれて戸惑ってると協会の人が代わりに答えてくれて、聞いてきた女性が感心したような顔になるけど――
ちょいと待て?
「あの、レデースサマナーって、なんすか?」
「知らないのかい? 君は女性型の悪魔を連れているサマナーとして、我々の間では有名だぞ?」
 気になったんで聞いてみると、女性からそう言われたが……女性型悪魔……
言われて振り向いてみる。ミュウにルカ、アリスにスカアハにクー・フーリン……うん、見事にみんな女性だよね。
それに良く考えてみればモー・ショボーやシルフも女性だし……違うのはフロストとランタンだけか……
「翔太?」
 気が付いて床に膝と両手を突いて落ち込んでしまった。理華が不思議そうに声を掛けていたけど……
気付かなかった……今の今まで……昔はそうじゃなかったはずなのに、いつの間に――
「まさか、自覚が無かったとはな」
 スカアハに言われてしまいましたが……ごめんなさい。言われるまで本当に気付いてませんでした。
ていうか、気付かなかった俺もどうかと思うけどね。
「ふふふ……いや、失礼。だが、腕は確かと聞いていたのでね。いつか会ってみたいと思っていたのだが……
まさか、こんな形で会えるとは思ってもいなかったよ」
 と、女性は笑みを浮かべながら言うのだけど……いや、マジで知らんかった。
自分がそんな風に言われてたなんて……色々とショックで、腕が確かって言われても素直に喜べないんだけど?
「それで、私達に何か用かな?」
「あ、そうだった。あ、ええと……」
「そういえば、まだ名乗ってなかったな。私はクノー。クノー・エルサイドだ」
 聞かれたんで話そうとして、そういや名前を知らなかったことに気付いた。それも女性ことクノーさんも気付いたようで名乗ってくれたけど。
「トニオ……トニオ・フィニクス……」
 と、少年ことトニオも名乗ってくれたんだけど……なんでこっちを睨んでるの?
「リィナです……リィナ・フィニクスと言います。トニオ兄さんの妹です」
 で、少女ことリィナも名乗ってくれましたが、こいつらは兄妹だったのか。
ところでこの2人の歳はなんぼなんだろうか? なんか、俺よりも若く見えるんだけど?
「でぇ、用というのはその……」
「まったく……その話は私がしよう」
 まぁ、名前も聞いたんで話そうと思ったんだけど……なんと言えばいいかわからず、困ってるとスカアハが呆れた様子で前に出てくれた。
「あなたは?」
「私は女神スカアハ。訳あって、翔太の師匠をしている」
「スカアハ!? 女神としては上位の悪魔じゃないか……それがなぜ?」
「言ったであろう? 訳があってとな」
 名前起きいて驚くクノーさんに、スカアハは意味ありげな笑みを浮かべていた。
そういや思い出したけど、ゲームでもスカアハって結構強い悪魔じゃなかったっけ?
そんなのがなんで俺の師匠やることになってるんだろ? 今……じゃなくても、すっげぇ疑問なんすけど?
「それはそれとして……私達は商人達の護衛を受けることになったのだが、規模的に少々人手が足りなくてな」
「それを私達に手伝えと?」
「物わかりが早くて助かるよ」
 クノーさんの返事にスカアハは笑みを交えて答えてたんだけど……
クノーさんの表情が何というか……何かを気にしているというか……それとトニオ君。なんで君は俺を睨んでるの?
俺、君に何かした? 記憶違いじゃなきゃ、君とは初対面だよね?
「それで報酬はもらえるのかな?」
「商人が出す報酬を3等分だ。報酬は……確か2万マッカだったかな?」
「話にならないな」
 スカアハが出した金額にクノーさんは呆れたといった様子でため息を吐く。まぁ、金額的にはクノーさんの反応も仕方がない。
2万マッカを3等分……1人9千ちょっとなるけど、魔石やら何やらの道具とか装備とか買うとすぐに無くなっちゃう金額だしな。
ま、道具はともかく、装備に関しては現実は甘くはない。俺達もフォルマのことを知る前は装備品がすぐにダメになっちゃうんで、良く買い換えてたし。
「なら、翔太達が使っている装備の造り方を教える……と言ったら?」
「……ほぉ?」
 なんてことを考えてたら、スカアハはそんなことを言い出した。
クノーさんは一瞬首を傾げるけど、わかったのかすぐに興味深そうな顔を向けていたりする。
「そう言うということは、ただの装備ではないということかな?」
「高位な悪魔になれば、普通の武器では刃が立たない。だが、翔太達はその高位な悪魔にも通じる武器を持っている。
その武器の造り方を教えるというのでは……不満かな?」
 クノーさんの問い掛けにスカアハは答えるんだけど……なんで、2人とも睨み合ってるの?
なんか、怖いんすけど? なんというか、独特の雰囲気がね?
「なるほどね……では、その装備の造り方を先払いで教えてもらえないかな? 護衛なら、その方が都合が良いだろう?」
「いいだろう。こちらとしても無理を言うのだからな」
 などとクノーさんとスカアハの間で勝手に話が進んでいた。俺達、完全に蚊帳の外です。
「なぁ、いいのか? 勝手にやらせて?」
「と言われてもな……俺って、何すればいいのさ?」
 クー・フーリンに聞かれるが……いや、本当にどうしたらいいんだろうね?
こうも勝手に話を進められると、何が何だかわからなくなってくるしな。
 それはそれとして……ええと――
「あのさ……なぜにこっちを睨みますか?」
 相変わらずこっちを睨むトニオに聞いてみる。いや、聞かない方がいいのかもしれないが、明らかに敵意っぽいものを向けられてるんですけど?
俺、この人に何かしたっけ?
「ふん」
「え、あ……その……ごめんなさい。兄はその……あなたのことを目の敵にしてるというか……」
 トニオが顔を背けると、リィナが謝りながらそんなことを言うのだが……目の敵って……俺、なんかした?
会った覚えないよ? 迷惑を掛けたことなんて……うん、無いな。町で何かした覚えもないし……
スラム街でもこいつはいなかったはずだしな。
「あの……翔太さんはその……一流のサマナーですから……」
「一流? 俺が?」
「やれやれ、自覚が無かったのかい?」
 リィナにんなこと言われて戸惑うが、なぜかクノーさんに呆れられる。
いや、なぜに? 俺って、そんなに凄くないよ? いっつもギリギリだしね。
「他のサマナーに比べれば、桁違いの生体マグネタイトを集め……更には高位の悪魔を仲魔にしている。
そこの坊やのように嫉む奴がいるということさ」
「坊やじゃない!?」
 などと、意味ありげな笑みを見せるクノーさん。で、その一言にトニオは怒ってたりするけど……
まぁ、生体マグネタイトに関してはあちこち行くから悪魔と戦う羽目になって、結果として貯まっただけだし……
仲魔に関しても気付いたらって感じなんだけどね。
 にしても、自分がそんな風に見られていたなんて……まったく気が付かなかったんだけど?
「さてと、それじゃあ先払い分の装備の造り方を教えて欲しいのだが?」
「そうだな。そういわけで翔太、頼むぞ」
「はい?」
 クノーさんに言われて、スカアハが俺にそんなことを言ってくるけど、それってどういうことですか?
いや、明らかに嫌な予感しかしないのですけど?
「こやつらに造り方を教えてやれ。ついでに必要な材料もな」
 と、スカアハは言うのだけど……なんですか、その笑みは? ていうか、材料って……フォルマのこと?
そりゃ、クノーさん達はフォルマ持ってなさそうだけどさ……必要な分を俺が出すの?
「どうかしたの? お兄ちゃん?」
「いや、最近損ばかりしてる気がしてな……」
「あ、その……麻帆良で使った道具の代金は出してもらえるように言ってみますから……」
 アリスに聞かれて答えるけど……なんでだろ? 涙が止まらないのは……刹那さん、慰めの言葉が少し嬉しいです。
そんなわけで、俺はクノーさん達を業魔殿に連れていき、クノーさん達の装備を合成するのでした。
なぜか、フォルマだけじゃなく代金も俺持ちで……泣きました、マジで……
 ちなみにクノーさんの武器は鞭。トニオはナイフみたいな刃物の二刀流で、リィナは銃であった。
まぁ、リィナの銃はすぐには無理なので、真名が使っていたサブマシンガンを貸すことになったけど。
で、それで真名の装備が心許なくなったんだけど、ラリーさんがあなたならって銃を貸してくれました。
ああ、ついでに言うとリィナの合成代金は自分が持つと言ってくれました。値段を聞いて、それほど高くないからとも言って。
うん、ありがとうねと、本気で感謝しました。なぜか、顔を赤らめられました。俺、お礼言っただけだよ? 手だって握ってないよ?
 で、俺は気付かなかったけど、この時に理華とミュウとアリスとルカとクー・フーリンとトニオに睨まれていたそうです。
クノーさんとスカアハはなにやら意味ありげな笑みでこっちを見てたらしいけどね。
 まったく、なんで俺ばっかり苦労するは目になるんだろうか?


 out side

 クノー達に明日のことで少し話した後に解散し、時間も時間だったので家に戻って休むことにした翔太達。
ちなみにだが、夕食は理華やルカなどが手伝うようになった。なにやら、危機感を感じているようで――
 その間、暇となった刹那はコミックスを読んでいた。読んでいるのはネギま!だが……どこか、その表情は優れない。
「何をそんな難しそうな顔をしている?」
「あ、その……実は……これなんですけど……」
 スカアハに聞かれて刹那が見せるのはネギま!25巻で刹那と月詠が戦う場面を描いた場所である。
ここで月詠は刹那に人間である限り、自分には勝てないと言っているが……それがここにいる刹那に不安を感じさせていた。
ここでの刹那は未だに自分の秘密を抱えている状態なのである。それも重なって不安になってきたのだ。
「ふむ、そうだな……では、聞くが。野生の獣はなぜ人間に勝てないと思う?」
「は?」
 が、逆にスカアハに聞かれて戸惑うはめとなってしまったが。
だが、わからない。自分のような者ならまだしも、普通人間が獣に敵う訳がない。
犬のような小動物でも時には殺されるなんてこともあるのだ。だから、疑問に感じていたのだが――
「どういう……ことでしょうか?」
「そうだな……それに答える前に……こやつが言ってることは本能のままに戦えとか言ってるつもりなのだろう。
もしくはこれこそが剣士のあり方とでも言っているのかもしれんな。
こやつ自身もそうしていると思っているのだろうが……それはこやつの勘違いだ」
 戸惑いながらも問い掛ける刹那にスカアハがハッキリと答えた。
しかしながら、刹那にはその意味が理解出来ていない。本能で戦えというのはわからなくもない。
本能とは時として危機を察知したりなど、戦闘においても重要になることもある。
すなわち、本能に身を委ねて戦えとコミックスでの月詠は言っているのかもしれない。
だが、スカアハはそうではないと言う。それはどういうことなのだろうか?
「良く勘違いされるのだが、本能とは戦いの為にあるのではない。生きるためにあるものだ」
「生きるため……ですか?」
「そうだ。例えば……獣は決して必要以上に獲物を捕ろうとはしない。
そうしてしまえば、逆に自分達が飢えることをわかっているからだ。
人に勝てないというのもそういうことだ。正確には勝とうと思っていないとも言えるがね。
獣は武器を持つ人間に勝てないというのがわかっているのだろう。むろん、それでも襲ってくる獣もいる。
だが、それはそうしなければ生き残れないと半ばわかっているからなのかもしれないな」
 スカアハに言われてなるほどと問い掛けた刹那は思った。
獣とは無法に思えるが、必要以上のことは決してしない。故に獣は今まで生きてこられたのだ。
昨今、人が住む町に獣が現われるといったことが起きてるが、これもまた生きるために仕方なく行っていることなのである。
「それを踏まえて、それに出ている月詠とやらの行動は果たして本能からと言えるかな?」
「……いえ」
 スカアハに問われ、刹那は少し悩んでから答えた。
コミックスに描かれている月詠の行動は強き者と斬り合いすることに一種の悦びを感じているようにも見える。
とてもではないが刹那は賛同出来ない。精神的嫌悪も含まれているのだろうが、月詠は何かを間違えているようにも見える。
「まぁ、一概にそうだとは言えんことでもあるがね。強さとは人によって異なる。
だが、この月詠の場合、強さではない。ただ、悦びの為だけに剣を振るっているようにしか見えんよ」
 呆れたように話すスカアハだが、刹那はうなずきたい心境であった。
刹那の場合、このかを守りたい。その一心で神鳴流を学んだ。その刹那からすれば、月詠のやり方は決して賛同出来るものでは無い。
むろん、それが正しいか否かは別問題ではあるが、今はあえてそれには触れないでおこう。
 もし、月詠が本当にそうすることが強さだと考えていたのなら……自分以上の強さに会った時、彼女はどうするのだろうか?
「もし、本当に月詠が現われたら……私は勝てるでしょうか?」
 ふと、刹那はそんなことを聞いてみる。もし、実際月詠が現われたとしたら……そんな不安があったのである。
「そうだな……確か、お前は気というもので体なんかを強化していたな?」
「え、ええ……」
 スカアハの問いに刹那はうなずく。場合にもよるが、刹那は基本的に気を使って身体を強化している。
これは式神や魔物など、明らかに人間よりも強い存在と戦う為の手段であるからだ。でなければ、対抗すら難しくなる。
また、使っている武器にも気を使うが、理由としては同じである。
「それを最低限に使うように心掛けろ」
「え? ですが――」
「それが無意識に出来る様になれば、少なくともこんな奴に簡単には負けんよ。大体、翔太はどうする?
確かにこのボルテクス界の特性もあるが、気なんぞ使ってもおらんだろうが」
「ちょいと待った。ボルテクス界の特性って?」
 いきなり言われて戸惑う刹那であったが、スカアハは構わず話を続けた。
ちなみにスカアハはなぜこんなことを言ったかといえば、集中力を養わせるためである。
むろん、それだけではないのだが、刹那は基本が出来ているので、それを高める意味もあった。
 で、スカアハのひと言に気になった翔太が手を軽く挙げて問い掛けた。
「そうだな……このボルテクス界にいる悪魔は基本的に人間よりも高位な存在というのはわかるな?」
「まぁ……」
「お前達はそんなのと戦っているんだ。しかも、目的を考えればより高位な悪魔と戦うことになる。
そんなのを続けていれば、嫌でも強くなるだろうな」
「なるほど……」
 聞かれて曖昧ではあるが答える翔太にスカアハは説明を続け、それに刹那はうなずいた。
もっとも、今スカアハが話したのはあくまでも表向きの話だ。
ボルテクス界の特性のことはスカアハが思わず漏らしてしまったことであり、本来はまだ秘密にしておくべきことだった。
なにしろ、生体マグネタイトが人に与える影響は――
「なぁ……この月詠って奴が俺の前に現われたら……俺が相手していいか?」
「は? なんでまた?」
 と、いきなりクー・フーリンが言い出したことに翔太が顔を向ける。
見れば、クー・フーリンの顔には怒りが浮かんでいた。
「気にくわなくてな……」
「あ、そぉ……」
「やりすぎるなよ」
 クー・フーリンの返事に翔太は呆れるが、スカアハはクー・フーリンの思惑に気付いていた。
気にくわないとは文字通りの意味なのだろう。オニだった頃、強い相手を求めて戦っていた。
しかし、誰かまわずというわけではない。オニなりの信念を持ってのことだ。
それがどんなものかは言葉にするのは難しいが、自分がどこまで行けるのかを確かめたい。そんな想いを持ってのことだった。
そんな想いを持つクー・フーリンからしてみれば、月詠の行動は許せなかった。
ただ、強き者と斬り合いしたいが為にその者に関わる者達さえも巻き添えにしようとするやり方が――
これが果たしてどんな結果をもたらすのか……今はまだ、誰にもわからなかった。


「あれ? どこに行くんですか?」
「なに、少々外に出るだけだ。すぐに戻る」
 夕食を食べて各人が思い思いのことをしている時、スカアハが外に出ようとしていた。
問い掛けた刹那にそう答えるとスカアハはそのまま外へと出て、どこかへの路地へと入っていく。
そして、人気が全く無い所まで来ると立ち止まり――
「で、何故呼んだのかな?」
「申し訳ありません。少々気掛かりなことがありまして」
 スカアハが声を掛けると、建物の影からシンジがそんなことを言いながら現われた。
そう、スカアハは念話……いわゆるテレパシーを受けて、ここへと来たのである。
「何かあったのか?」
「本命とは別に妙な動きをする者達がいるようでしてね。もしかしたら、翔太さん達に接触する可能性もありましたので」
 スカアハの問い掛けにシンジはいつもの穏やかな調子で答える。
こうしているとふざけているようにも見えるが、スカアハはその中に不穏な物を感じ取っていた。
「どんな奴らだ?」
「それはまだ……ですが、ただ者では無い可能性もありますので……」
 それを聞き、スカアハは考える。自分とクー・フーリンの加入により、翔太達はなんとか盛り返すことは出来た。
だが、完全ではない。そんな時に余計な負担は出来れば与えたくはないのだが――
「どうにか出来ないのか?」
「本命が聖杯に手を出し始めましてね。そちらをなんとかするので精一杯ですよ。
翔太さんのことが無ければ、すぐにでも阻止は出来るのですがね」
 シンジからの返事にスカアハは舌打ちしたい衝動に駆られる。
そう、シンジならすぐにでも解決は出来る。しかし、それが出来ないのは翔太がネックとなっているからである。
翔太の運命に掛けられた呪い。こればかりはシンジも手だし出来なかった。
解けないわけではないが、下手をすれば翔太の運命を狂わせかねない。
翔太のことを無視して……というのは論外だ。翔太自身もそうだが、世界そのものにも救いが無い。
なにしろ、翔太に掛けられた呪いは世界にも影響し、例え今回の事が解決出来てもまた似たようなことが起きてしまう可能性がある。
その呪縛を解く方法は1つ。翔太自身に解かせる他無い。そして、その方法は今回の事件を翔太に解決させること。
故にシンジが解決することは出来ない。してしまえば、翔太の運命に掛けられた呪いを解くことが出来なくなる。
シンジに出来ることは今回の事件の元凶の足止めと妨害。それと翔太達への間接的な手助けだけなのである。
「あやつには……苦労をさせるな……」
「まったくです。彼は偶然にもボルテクス界に来てしまったが故に、こんなことに巻き込まれてしまったのですから……」
 スカアハの言葉に、シンジは首を振りながらため息混じりに答える。
翔太がボルテクス界に来てしまったのは事故に近い偶然であり、理華がボルテクス界に飛ばされたのもまったくの偶然だった。
本来ならば、それだけで翔太は事件に関わることなんて無かった。もっとも、理華は助からなかったかもしれないが……
 そうはならなかったのはあのゴスロリの少女の目に止まってしまったことだ。
偶然にも襲いかかってきた悪魔を翔太が倒す所を見てしまい……
面白そうという理由だけで翔太の運命に呪いを掛け、この事件に関わらせてしまったのだ。
そう、翔太にとって不運だったのはあのゴスロリの少女の目に止まってしまい、興味を持たれてしまったことである。
ゴスロリの少女は何者なのか? 現時点ではシンジとはある意味同極の存在とだけ言っておこう。
「ともかく、その件は私の方で気を付けてみる」
「お願いします」
 スカアハの言葉にシンジは頭を下げる。しかしながら、スカアハとしては頭が痛いことであった。
事件の本命とは別の動き。それがどう影響してくるのか、今の所予想が付かない。
下手をすれば一気に危機的な状況にもなり得るために、今の所なんの情報も無いのが痛すぎた。
「では、翔太さんをお願いいたします」
「わかっているよ……」
 スカアハの言葉を聞き、頭を下げていたシンジはまるで景色に溶け込むかのように消えていった。
1人残ったスカアハはため息を吐き、空を見上げる。空は満天の星で輝いていた。
「私も難儀な者の師となってしまったようだな」
 思わず漏れる言葉……でも、不思議と嫌な感じはしなかった。いや、むしろ喜びさえ感じる。
故にスカアハは自然と笑みが漏れていた。そう、翔太といると――


 洋風の造りをした薄暗い部屋の中にその者はいた。全身を……顔さえも鎧で包んでいる者は、ただ静かに窓から外を見ていた。
その時、ドアをノックする音にその者は顔だけを向け――
『入れ……』
「失礼します」
 顔も鎧で包んでいるせいか、くぐもった声を掛ける。それを聞き、ドアを開いて現われたのは女性だった。
だが、全身を黒いヴェールのような物で覆う姿……そのヴェールの下は、何も纏っていないように見える。
「宇宙の卵の反応が見つかりました」
『ほぉ……』
 女性の言葉に鎧を纏う者は体ごと振り返る。宇宙の卵……それが鎧を纏う者が探していた物……
『やっと……やっとだ……これで……この世界を……ふふふ……ははは……あ〜っはっはっは!』
 自分が求める物が見つかったことに喜び、あまりのことに笑い出してしまう鎧を纏う者。
女性はそれをただ静かに見守っていた。果たして、この者達はいったい?
そして、宇宙の卵とは――




 あとがき
さてさて、新たなサマナーの登場。しかし、トニオは翔太をライバル視してるようで?
それにしても翔太君は自分の現状知らなかったようで。まぁ、人に聞いたりしてなかったのでしょうがないかと。
そして、鎧を纏う者の正体とは? そして、宇宙の卵とは?
次回は護衛のお仕事。そして、商人達が向かった先の村ではある人がいて――
なんてお話です。というわけで、次回をお楽しみに〜



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