in side

 さて、次の日の朝――
「あ、おはようございます」
 朝食の準備をしている士郎がいました。ちょいと待てい。
「お前……体大丈夫なのか?」
「ええ……今はなんともないですけど?」
「普通は早々立ち直れるようなものではないはずなんだがな」
 顔を引きつらせながら聞いてみるが、士郎はなんともありませんって顔で答える。
うん、橙子さんも呆れてる。俺もあれは簡単に治るもんじゃないと思うけどね。
まぁ、言いたいことはあったが、朝食を準備してくれてたのでとりあえずそれを食べることにしました。
「で、これからどうするのさ?」
「1週間ほど士郎達の世界への穴の近くで修行がてら悪魔と戦おうかと考えている。
幸いと言っていいのかわからんが、サーヴァントの力と士郎達の世界への穴の周辺に現われる悪魔の力は近い。
あの世界ではサーヴァントと戦うことになるだろうからな。その為にお前を鍛えておきたい……といった所だ」
「あ、それなら俺も――」
「却下だ」
 俺の疑問にスカアハが腕を組みつつ答えるが、そこに士郎が右手を挙げて何かを言おうとする前にスカアハに睨まれた。
うん、士郎君。何言おうとしたかなんとなくわかるけどね……それはマズイと思うよ?
「言っとくが、行く所はお前が近付く前に簡単に殺すことが出来る悪魔がゴロゴロいる所だ。
それにお前は戦いの心構えを間違えている。そんな奴を連れていけるか」
 睨みながら話すスカアハ。うん、そうだよね。俺もあそこに行ったばかりの時は怪我が絶えなくてねぇ……
ま、何度か死にそうにもなったけどさ――
「ですけど――」
「ま、何もするなとは言わんよ。今日の所は橙子に魔術を習ってもらうとして、お前を鍛えてもらう者は別に頼む」
「やれやれ……私としてはこの世界のことを調べて見たかったんだがな」
 それでも何かを言いたそうな士郎にスカアハはそう言うのだが、橙子さんはといえば呆れた顔をしている。
「すまないな。今日はそいつらに声を掛けて――」
「おはようございます」
 ひと言謝ってからスカアハは何かを言おうとしたのだが、そこに来客が……って、おい。
「メアリにメリッサじゃないか。また仕事か?」
「はい、お父様がお呼びです」
 俺の疑問にメアリの横にいた小柄なメイドさんが答えてくれた。彼女はメリッサ。
メアリをそのまま少し小さくしたような少女だが……なんとなく、涼宮ハルヒの憂鬱に出てくる長門 有希に似てる気がするのは俺だけか?
ちなみにヴィクトルさんのことをお父様と呼んでるが……
でも、この子が現われたのって、俺達がスリルさんから代わりのドリー・カドモンをもらった後なんだよね。
もしかしなくても造魔? いや、聞きにくいんで聞いて無いけどね。
「またか……まぁ、いいけど……」
「彼女達は?」
「ヴィクトルさん……まぁ、悪魔合体をやってくれる人のとこにいるメイドさんです」
「悪魔合体?」
 呆れてると橙子さんが聞いてきたので答えるのだが……そういや、サマナーや悪魔のこととかは簡単にしか話してなかったっけ。
なんで、首を傾げる橙子さんに悪魔合体のことを説明したんだが――
「ほぉ……それは面白いな。私も行っていいかな?」
「別に構わんよ。用事がなんなのかは聞いてみなければわからないがな」
 そんなことを言い出す橙子さんにスカアハは呆れた様子で答えるが……まぁ、やっぱりって感じだしな。
しかし、今回の仕事はどんなものになるんだか……


「業魔殿にヨーソロー!」
 はい、相変わらずなヴィクトルさんでした。士郎と橙子さん、式にキャスターは呆然と見てたけど。
初めて出会った途端にこれだと当然か。
「ええと……で、仕事ってなんすか?」
「ふむ、実はな……む?」
 とりあえず、そっちは無視して話を進めようとしたんだが、ヴィクトルさんは話そうとして何かに視線を向ける。
向けてる先は……キャスター?
「あの……キャスターがどうかしましたか?」
「彼女はキャスターというのか……悪魔では無いようだが……ふむ、しかし彼女なら……」
 問い掛けるけど、ヴィクトルさんは考え込むように何かをぶつぶつと呟いている。
いや、マジでどうしたんですか? キャスターがどうかしたのかね?
「実はな、前に君に持ってきてもらったドリー・カドモンなのだが、使えなかった理由がわかった。
あれは悪魔に体を持たせるだけでなく、悪魔本来の力を出すことが可能となる。
しかし、その為か並の悪魔では力が足りないらしく、合体が出来なかったようなのだ。
それで君に力ある悪魔を連れてきてもらおうと思ったのだが――」
 ヴィクトルさんはうつむくような形で話したんだけど……それでキャスターを見るのとなんの関係が……力ある悪魔?
いや、キャスターは悪魔じゃ無いし……でも、強いのは確かだよな。昨日だってキャスターのおかげでだいぶ楽に戦えたし。
「しかし、キャスターは悪魔じゃないですし……合体出来るかわかりませんよ?」
「その点に付いては問題無い。キャスターの体はどちらかと言えば悪魔に近いようだからな」
「サーヴァントは魔力を用いて現界するからな。悪魔も生体マグネタイトで実体化するのだろう?
合体というものがどういうものかはわからないが、その点で言えば似てると言えるな」
 俺の疑問にヴィクトルさんがそう言うと、橙子さんがうなずくように説明してくれましたが……でもなぁ……いいのかね?
「むろん、この合体は安全とは言い難い。なにしろ、私としても未知の部分が多いからな。
下手をすれば……という可能性も無いわけではない。なので断っても構わない。どうするかね?」
 と、問い掛けるヴィクトルさんだが……俺はふとキャスターを見てみる。
キャスターはというと口元に手を添えて考えてるようだった。しかしなぁ……断られると思うぞ。
だって、下手したら死んじゃうかもしれないし――
「1つ聞くけど……それで私は自由になれるかしら?」
 と、キャスターはそんなことを聞いてきたけど……どういうことさ?
「自由って……どういうことですか?」
「そうね……私は聖杯戦争のために呼ばれた存在……だから、自由なんてありはしない。
あの魔術師がマスターのままなら、それこそ好き勝手されてたでしょうね。それに関してはあなた達には感謝してるわ。
でも、それでも自由になったとは言えない……聖杯戦争が終われば、私は消えなければならないわ。
生体マグネタイトの供給を受け続ければ現界はしていられるけど……それも無くなればそれまでよ。
まぁ、消えると言ってもここにいる私は英霊の座にいる私の複製……その私が消えるだけだけど……
でも、複製の私だけでも……高望みだとはわかってる……でも、それが叶うなら私は……」
 理華の疑問にキャスターは遠い目……といっても、フードで顔が隠れてるんでそんな感じに見えるんだが……
ともかく、そんな顔をしてると思うんだけど、そんな感じで話していた。そういや、ゲームでも一般人……だったっけ?
名前とか忘れちゃったけど、その人をマスターにした時もそんな感じなことを言ってたような気がするな。
 ゲームの内容忘れまくってるよ。でも、しょうがないじゃん。やったのが2年くらい前だよ?
後はたまに二次創作の小説読むくらいだしさ……うん、しょうがないよね?
「そうだな……確かに合体が成功すれば、生体マグネタイトの供給無しでも生きていくことは可能だ。
その代わり、お前は悪魔という存在になる。それでも良いのかな?」
「別に構わないわ。さっきも言ったけど、ここにいる私は英霊の座にいる私の複製だもの。
ここにいる私がどうにかなったとしても、本体となる方は影響なんて受けないわよ。
だったら、好きにやってもいいとは思わない?」
 ヴィクトルさんの話にキャスターはどことなく笑みを浮かべた感じを見せながら答えていた。
そういや、複製ってどういうことだっけ? うん、元の世界に戻ったら調べておこう。
「では、やってもいいというのだな?」
「ええ……どの道、どうなるともしれない身だし……
それにもしかしたら、私の願いを叶えることが聖杯を得るよりも確実になるかもしれないもの。
同じ命を賭けるなら、こちらの方がマシよ」
 ヴィクトルさんの問い掛けにキャスターは見えていたらそれは清々しい笑みを浮かべてる感じで答えていた。
でもいいのかなぁ……失敗したらそれこそ……ねぇ?
「わかった……翔太。君にはあのドリー・カドモンを造った者をここに連れてきて欲しい。
その者と協力すれば、成功率を上げることが出来るかもしれん」
「あ、了解」
 ヴィクトルさんの話にうなずく俺。確かにスリルさんも造魔のカスタマイズとかやってるしな。
あの人なら確かに成功率を上げることが出来るかもしれないな。
「なら、私はこの町に残る。士郎を鍛えてもらおうと思っている者と話を通しておかなければならないからな。
スリルの所なら、私が一緒に行かなくても大丈夫だろう?」
「まぁ、確かにそうだけどさ……」
 スカアハの話に呆れながらもうなずく。確かにあそこら辺の悪魔なら普通に戦えるようになったしな。
でも、誰なんだろ? 士郎を鍛える人って?
「そういうわけだから、お前は私と一緒に来てもらうぞ」
「え、ええ!?」
「なら、私も残らせてもらおう。色々と見たい物があるからな」
 スカアハに言われて驚く士郎だが、その横では橙子さんがそんなことを言い出した。
まぁ、橙子さんは別にいいかね? 問題になるようなことされなきゃ見て回ってもいいと思うし。
「まぁ、それはいいですけど……式はどうすんの?」
「俺は付いていく。少し体を動かしたいしな」
 とりあえず答えてから式に聞いてみるとそんな返答が来ました。
ま、いっか……と、投げやりに考えつつ、俺達はスリルさん所に向かうことになった。
なお、向かうメンバーは俺と理華にミュウ、クー・フーリンとルカに式にキャスターと……
あそこら辺の悪魔だと俺はともかく他がオーバーキルのような気がしたのは……気のせいか?


「なるほどな……わかったわ。リゼル、リゼッタ、支度や。ちゃっちゃと行くで」
「わかりました〜」
「はいはい」
 というわけであっさりとスリルさん所に到着し、事情を話して来てもらうことになったんだが――
「やぁ!」「でぇい!」
 町に戻る時はリゼルとリゼッタも戦ってくれます。うん、あの子達強いね。おかげですっごく楽だよ。
それはそれとして――
「なぁ……あの子達の服……戦う時くらい変えた方が良くね?」
「何言うてんねん! あれがいいんやないか!?」
「見てんじゃない!?」
 俺の疑問にスリルさんは興奮気味に答えるが……いやね、リゼルとリゼッタって素手で戦うのよ。
まぁ、それは別に問題じゃない。問題なのは彼女達の服が露出が高いメイド服ということで……
そんなので動き回ればねぇ……胸の揺れとかスカートの中とか……ていうか、ヒモパン? いや、マイクロビキニ?
後、リゼッタさん。怒ってるけど、だったらその格好で戦うなと言いたいんだが……
「翔太ぁ……」
「何見てるのよ?」
「いや、見るなと言われてもな……」
 ミュウと理華に睨まれて思わず明後日を向く俺。でもな、不可抗力と言いたいんですけど。ダメですか?
それに今更感が……だって、ランタンなんてさぁ……いや、あれを見た時はみんなに睨まれたけど……
あの格好じゃ見える時は見えると思うんですけど? ランタンに何か着せた方……いいよな、やっぱ……


 まぁ、そんなこんなもあってヴィクトルさんの所にこれまたあっさりと戻り――
「おっしゃ、準備OKやで」
 スリルさんも協力して合体準備が進められ、そのスリルさんが立てた親指を見せることでやっと準備が整ったようである。
いや、それはいいんだけどさ……
「本当にいいのか? もし、失敗したら――」
「言ったでしょ? 同じ命を賭けるなら、こちらの方がマシだって?」
 気になって声を掛けたんだけど、キャスターはそう答えるだけだった。
でも、表情としては清々しいといった感じに思える……フードのおかげで相変わらず顔が見えないけど。
「それではあの台に立ってくれたまえ」
「ええ……そうだ……」
 声を掛けたヴィクトルさんにキャスターがうなずくとこちらを向いてフードを下ろす。
そこから出てきたのはエルフ耳の若奥様風といった感じの綺麗な女性の顔だった。
「約束するわ。もし、成功したらあなたに協力することを……」
「俺も成功を祈ってるよ」
「私もです」
 キャスターの言葉に俺と理華はそう返した。うん、ホントに成功して欲しいよ。
そんなことを思ってる間にキャスターは言われていた台の上に立ち――
「では、始めるぞ」
 その言葉の後にヴィクトルさんは機械のレバーを下ろしたのだった。


 out side

「む?」
 ここ冬木にある言峰教会。その中にいた神父、言峰 綺礼はあることに気付く。
「キャスターが脱落したか……ふむ、存外に楽しませてくれるかと思ったのだが――」
 などと呟く言峰。彼は聖堂教会より聖杯戦争の監督役を受けており、同時にある目的を果たそうとしているのだが――
目的の方はいずれ話すことになるので今は省くが……それはそれとして、彼は監督役として各サーヴァントの存在の有無を確認出来る。
そして、それによってキャスターの存在が確認出来なくなったのだ。
そこから判断されること。キャスターの脱落……すなわち、消滅であった。
このことに言峰は落胆したかのような印象を受ける。表情があまり変わってないので判断しづらいが……
 なぜ、落胆しているのか? 実はキャスターのマスターが変わっていることをランサーから聞いていたのである。
そう、バゼットのサーヴァントであったランサーを奪い、なおかつ彼女の左腕を失う重傷を負わせたのは言峰なのだ。
彼は目的を果たすためにランサーを手に入れたのだが……
それはそれとして、そのランサーからキャスターが妙な連中を連れた者のサーヴァントになったと聞いていた。
ちなみにだが、ランサーはそこでスカアハとクー・フーリンに出会ったことは話していない。
これは自分で片を付けたかった……そんな思いからの判断であったが……
ともかく、これを聞いた言峰は面白いと思った。なにしろ、ランサーの見立てではその者は魔術師では無いようなのだ。
それなのにキャスター……サーヴァントを従えた。これは面白いことになると言峰は思ったのだが――
 余談となるが、キャスターを喚び出した魔術師はどうなったかというと、ランサーに出会ってしまったばっかりにすでに退場している。
あの世に逝ったとも言うが……
 しかし、1日も経たずにキャスターの脱落。
となればその者も……いや、ランサーの話では仲間もいるそうだから、脱落したのはキャスターだけかもしれない。
まぁ、キャスターが早々に脱落したとなれば、マスターとなったその者は大した事は無かったのだろう。
まだ生きているかもしれないから、この後どうなっていくか……それを確かめるのも一興か?
ともかく、キャスターを失えば聖杯戦争に関わるのが難しくなるか……などと言峰は考えていた。
 もしこの時、言峰がランサーからスカアハとクー・フーリンの存在を聞いていたら、こうは考えなかっただろう。
そう、言峰は気付いていない。この時すでにある者の策の中にあることなど……
自分の思惑の中で事が動いているために、言峰はまだその存在に気付くことは無かった。


 in side

 キャスターとドリー・カドモンの合体はあっさりと終わった。
煙が出ていたが、それも晴れていく。やがて、その姿が見えてきたんだが……ええと、何その服装?
マントとかは元のままなんだけど……服の方はどこか学校の制服にもゲームの冒険者が着るような服にも見えるんだけど。
そのおかげか、露出とかもそれなりにあったりとかして……ミニスカみたいだったり横乳見えてたり……
「地母神メディア……ここに参上しました……って、どうしたの?」
「いや、服装がな……」
「服装?」
 キャスター……から、メディアになったようだけど、首を傾げていたので答えておいた。
で、メディアはといえば首を傾げながらも自分の体を見回し――
「あら、これ中々いいじゃない」
「そうやろ? わいのデザインや!」
「「あんたの仕業かぁぁぁぁ!?」」
 なにやら気に入った様子のメディアにスリルさんがうなずいた。って、あんたの仕業かよ!?
リゼッタと突っ込んだけど、俺は悪くないよね?
「あ、あれ? そういえば若くなってない?」
 と、首を傾げる理華。そういや、キャスターの時は若奥様って感じだったけど、メディアになったら理華と変わらない感じがするな。
「え? そう? 鏡ないかしら?」
「こちらに」
「あ、ありがとう……これって……」
 理華の声を聞いて気になったメディアがメアリから鏡を渡されて自分の顔を見て、少しの間を空けて驚いていた。
しかし、メアリ……良く鏡なんて持ってたな? ていうか、なんで持っていたの?
「淑女の嗜みでございます」
「いや、なんも聞いてないんだけど?」
 優雅な仕草でスカートを持ち頭を下げながらメアリは答えるが……俺、声に出してないよ?
うん、最近メアリってお茶目になってきたよな。お茶目程度じゃ済まないかもしれないが……
「まさか、この顔を再び見ることになるなんて……」
「なんや? ダメやったんか?」
「そういうことじゃないわ。ちょっと思う所があっただけよ」
 なにやら感慨深げに呟いてるメディアはスリルさんにそう答えてたけど……
しっかし、なんというか……今のメディアって、清楚なお嬢様って感じに見えるな。
「まぁ、別に気にするものでもないわね。約束通り、あなたに協力するわ」
「ああ、よろしく頼む」
 そんなことを言いつつメディアが右手を差し出してきたんで、俺も返事をしつつその右手と握手した。
なぜか、メディアの顔が赤くなったような気がするんですが……気のせい?
「しかし、またしても女性か……レディースサマナーの面目躍如といったところか?」
 が、スカアハのひと言に固まるはめになったけど……
「レディースサマナー? ああ、そういえば彼の仲魔は全員女性だったな。そういう趣味なのかな?」
「なんか、違うみたいだぞ?」
 橙子さんがこちらを楽しそうに見つつそんなことを言うが……うん、こっちを指差す式の指摘通りに違うんだよ。
ちなみにこの時、俺は床に両手と両膝付いて落ち込んでたけど……気付け、俺……
「まったく……まぁ、いい。そういえば、先程病院の者が呼んでいたぞ。バゼットが目を覚ましたらしい」
「了解……後、よかねぇよ」
 スカアハの話に返事をしつつ、そう断っておく。いや、メディアが悪い訳じゃないんだ。
そのことを言ったら――
「あら、そうなの? 私も女性ばかりだから、あなたの趣味だと――」
「泣いていいか?」
 遠慮無しのメディアのひと言に泣きそうになりました。いや、泣いていいよね? 俺……


 そんなこんなはあったが、スリルさん達と別れてから病院に向かうことにした。
ああ、メディアのことも調べさせてくれとヴィクトルさんに言われたんで、メディアに確認してからOKを出しておいた。
後、スリルさんも今のメディアは基本的に造魔と変わらないんで、カスタマイズが可能だと言っていたな。
 それはそれとして、俺達はバゼットがいる病室に行き――
「お邪魔しま〜す」
「ん? 君達は?」
 入ってみたら、バゼットが上半身を起こした状態でこっちを見ていた。
お〜、ちゃんと左腕がある。ていうか、あれって義手なのか? 見た感じ普通の腕にしか見えんけど。
「この人達はあなたをここへ連れて来た人達ですよ」
「む、そうなのか……どうやら、助けてくれたようだな。そのことには感謝をする。しかし、なぜここへ連れてきたのだ?
ここが冬木ではなく、ボルテクス界という異世界だと聞いた時にはどうしたらいいか本気で悩んでしまったんだが?」
 看護士さんが代わりに答えてくれたが、話を聞いていたバゼットはそんなことを聞いてきた。
まぁ、無理もないかな。目を覚ましたら異世界でしたなんて、普通はありえないし。
「ま、あちらの世界では少々問題があったのでね。こちらに連れてきたのだが……やけにあっさりとここが異世界だと認めたな?」
「外の景色を見てみれば誰だってそう思うと思うのだが……」
「まぁ、確かにな」
 スカアハが説明した後にそんなことを聞くが、バゼットは呆れた様子で答えていた。
橙子さんは納得していたが……まぁ、町にも悪魔はいるしねぇ。それを見れば普通じゃないことくらいはわかるか。
「とりあえず、こちらに連れてきたのは納得しよう。しかし、どうやって封印指定の人形師が造った義手を手に入れたんだ?」
「おや、わかるのかな?」
「ここまで違和感の無い義手を造る者など、そうはいない。そうだろ? 蒼崎 橙子?」
 話を聞いて橙子さんがそんなことを聞くと、バゼットさんが意味ありげな笑みを向けてました。
途端に殺気が吹き荒れてます。うん、なんだろうね? この殺伐とした雰囲気? 士郎が戸惑ってるよ?
しっかし、バゼットも良くわかったな。魔術師だから、そういうのがわかったりするんだろうか?
「おっと、別にあなたをどうこうする気は無い。そんな命令を受けていないからな。
逆にこの義手の代金を支払わねばと思っているのだが……だから聞きたい。なぜ私を助け、義手を与えてくれた?
私が封印指定の執行者だと知らないあなたではないはずだ。なのになぜ――」
「変な奴に頼まれたんだ。ああ、代金はいらないぞ。そいつから結構もらってるからな」
「変な奴……とは?」
「それに関しては私から話そう」
 両手を軽く挙げながら降参といった様子で話し、その上で問い掛けるバゼットに橙子さんはそう答えるんだが……
うん、バゼットも首を傾げてるけど、変な奴ってどんな奴なんだろう? 俺も名前以外は知らないんだけど。
で、スカアハがそいつのことを交えつつ俺達のことを話して――
「なんというか……凄まじいことをしてるね、君も……」
「ええ……なんでこんなことになってんだか、未だに疑問なんですがね……」
 話を聞き終えたバゼットさんのつぶやきに落ち込み気味に返す俺。いや、ホントになんでこんなことになってるんだろうかね?
まぁ、原因はわかってるんだが……そういや、最近あのゴスロリボクッ娘に会ってないな。何してんだろ?
「いや、その程度で済むような話じゃないような気が……」
「ま、その辺りは少しずつわからせていくつもりだがね」
「え?」
 しかし、戸惑ってるバゼットと呆れているスカアハの話に思わず戸惑う羽目になったけど。
いや、わからせるって……何をさ? あの、嫌な予感が全開なんですけど?
「それはそれとして……私は戻れるのかな?」
「戻ることは可能だ。しかし、1人で戻るのはお勧めしない。町の外の悪魔は人を襲うからな。
お前も腕に覚えはあるだろうが、サーバント級の悪魔を群れで相手するのは無理だろう?」
「それは……確かにそうだが……」
 スカアハの返事に問い掛けたバゼットは微妙な表情を浮かべるけど……まぁ、あそこはなぁ。
町の周りはバゼットだけでも大丈夫そうだけど、士郎達の世界への穴の周辺にいるのはマジでサーヴァント並の奴らばっかりだし。
「まぁ、戻ったとしても私にはどうにも出来ないがな。サーヴァントを失ってしまったし……」
「サーヴァントを失った? どういうことかな?」
「ああ……協会の命令で聖杯戦争に参加したのだが……知り合いに騙されてね……左腕ごと令呪を奪われてしまったのさ」
 橙子さんが首を傾げながら聞いてきたんで、話していたバゼットはつらそうな顔をして答えていた。
そういや、バゼットって言峰に騙されたんだっけ? しかも、言峰のことを信頼してたようなことを言ってたような覚えがあったな。
その分だけショックも大きいのかな?
「なら、サマナーになってみてはどうかな?」
「サマナー? 召喚士のことか? しかし、私は――」
「なに、ここじゃサマナーになるのは難しいことではなくてね。現に翔太も魔力も何も無しにサマナーをやっている」
 戸惑うバゼットだが、そのことを話したスカアハは俺のことを引き合いに出しながらそんなことを言い出した。
で、ここでのサマナーはどんなものかを話――
「なるほど……それなら確かに私でもなれそうだな」
「ああ……もっとも、今すぐは無理だろうがね。医者の話じゃ、後3・4日は入院してなきゃならんそうだし」
 なにやらやる気を出しているバゼットにスカアハはそんなことを告げた。
看護士さんもうなずいてるのでそうなんだろうが……普通、左腕無くす重傷は3・4日で退院出来るもんじゃないと思うんだけど?
「ああ、そうさせてもらうよ。魔力の方はこの世界のおかげか回復は早いが……体調は万全とは言い難くてね。
そうだ……ここの入院費だが、私はこの世界のお金は――」
「なに、立て替えておくさ。退院したらサマナーで稼いで返してくれればいい」
「勝手に話を進めてるけど、出すのは俺だよね?」
 困った顔をしてるバゼットにスカアハはそう言うのだが、出すのは俺だよな?
いや、別に立て替えるのが嫌じゃないけどね。また、出費が増えるかと思うと……泣いていいですか?
「いや、すまないな……この借りは必ず返させてもらうよ」
「ははは……あまり気にしないでくださいな……」
 すまなそうにしてるバゼットにそう言っておくが……渇いた笑みになってるのは気にしないで欲しい。
うん、そういや今人増えたよね。メディアに士郎に橙子さんと式と……なんか、不安になってきたんだけど……



 あとがき
そんなわけでキャスターは悪魔へを転生し、地母神メディアとなりました。これが聖杯戦争にどのような影響を与えるのか?
そして、バゼットはこれからどうしていくのか? しかしながら、ボルテクス界の珍道中はまだまだ続きます。
次回はひょんなことから聖杯戦争の真相を知った士郎。そこで聖杯戦争の参加を決意し、セイバーを召喚するのですが……
なぜか、翔太の命の危機に。いったい何が? というお話です。次回をお楽しみに〜



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