in side

 で、バゼットとは後日また話し合うことにして、今日は家に戻ることにした俺達なんだが――
「あら、あなたのその手――」
「はい?」
 メディアが何かに気付いて士郎の左手をつかんだ。士郎は戸惑ってるが、メディアは遠慮無しにその手を顔に近付けてる。
「聖痕……そう、あなたもマスターだったのね……」
「なるほど……あのシンジという奴がなぜ君を巻き込んだのか気になっていたが……そういうことか……」
「どういう……ことですか?」
 呆れている様子のメディアになにやら納得顔の橙子さん。士郎は逆に戸惑ってたけど。
て、そういや士郎も聖杯戦争の参加者じゃん。ていうか、主人公だよね?
う〜む、ゲームも2年前にやってからはプレイしてないし……二次創作のSSもたまに読むだけ。
しかも、読むのは聖杯戦争とは関係無いのが多いし……いや、最近のは他の作品のクロスが多くてね。
例えば、ネギま!とか……あ、士郎がネギま!に行ったら、その物だよな。ごめん、自分でも何言ってるかわからなかった。
「私がどういった存在だったか、聞いているわよね?」
「ええ。確か聖杯戦争に呼ばれるサーヴァントだって……」
「そうよ……そして、サーヴァントを呼ぶ者にはあなたのように聖痕が現われる。すなわち、あなたはマスターに選ばれた……そういうことよ」
 メディアに聞かれてうなずく士郎。そういや、士郎の世界からノーディスの町に戻る時に聖杯戦争のことを簡単にだけど話してたっけ?
でもって、メディアに言われてる士郎はといえば、きょとんとしてたけど……もしかして、わかってない?
「私達が翔太の世界で物語の人物だとは聞いてはいたが……もしかして、彼もか?」
「そうだ。そして、士郎は色んな意味で重要な位置に立つ者だ。それ故にシンジは士郎を関わらせたのだろう」
 橙子さんの問い掛けにスカアハは腕を組みつつ答えるんだが……いや、なんでそこまで知ってんの?
士郎は確かに主人公だけど、ゲームやったことあるのか? なんか、すっげぇ気になるんですが――
「でも、聖杯戦争は――」
「あいにくだが、今の聖杯戦争はまともではない」
「ああ、そういや呪いかなんかで聖杯が汚染されてるんだっけ?」
「なに?」
 嫌悪感を見せる士郎。聖杯戦争では殺し合いをするというのは聞いてたしな。
ゲームでもそういうのを嫌がってたような覚えがあるし。それで嫌がってんだろう。
で、スカアハの言葉に俺もそのことを思い出した時に反応したのは橙子さんだった。
「どういうことかな?」
「えっと……詳しくは覚えてないんですけど……」
「アインツベルンの奴らがバカなことをしてくれたのだよ。3回目の聖杯戦争の時にアインツベルンはアンリ・マユを喚び出した。
もっとも、そいつはアンリ・マユの名を持つだけのただの人間であったがな。そんな者が勝てるわけも無く、あっさりと敗れた。
不幸なことと言っていいかはわからぬが、そやつは全ての悪たれとアンリ・マユの名を付けられて生け贄として殺された者だった。
そして、それは喚び出されても変わらず……そやつが聖杯に取り込まれた結果、聖杯はその願いを聞いてしまった。
全ての悪たれと願う者達の願いを……それによって、聖杯は世界の憎悪という呪いを取り込んでしまい、まともに機能しなくなっている。
衛宮 士郎。10年前のことを覚えているか? あれはそれによって汚染された聖杯が引き起こしたことなのだよ」
「え?」
「いや、なんでそんなことまで知ってんのさ?」
 橙子さんの問い掛けに俺は後頭部を掻きつつ返答に困ってるが、代わりにスカアハが答えてくれました。
それを聞いた士郎が唖然としてるが……うん、思わず聞いちゃったけど、なんで知ってんのさ?
俺だって内容をかな〜り忘れてんのに……
「ま、シンジの奴のおかげだよ。必要な知識をある方法で得られるんだ。方法は教えられんがね」
「それってチートっぽくね?」
 こめかみを指で差しつつ、スカアハは答えてくれましたが……チートだよね、それって?
思わず言っちゃったけどさ……ていうか、そのシンジって奴は何者なんだよ? 本気で……
「それを聞いたら合体にして良かったわ。ホント……」
 と、呆れた様子のメディアだが……そういや、メディアの願いってなんだったっけ?
うん、忘れてる。なんか、幸せとかどうとかだったような覚えはあるんだが……
「さてと……このままでは今回の聖杯戦争も同じ事が起りかねない。お前はそれを良しとするのかな?」
「ふざけんな!? そんなのいいわけないだろ!?」
「どうでもいいが、町中で話すようなことじゃないよね?」
「翔太……気持ちはわかるけど……」
 スカアハの問い掛けに士郎が叫ぶが……あんたら、ここ町中だぞ? 士郎が叫んだせいで注目浴びてるんだけど?
後、理華。微妙な表情をしないでくれ。なんか、突っ込まないとダメな気がしたんだって。
「その通りだ。私としてもそんなものは終わらせた方がいいと考えている。
しかしながら、今の私達の目的を考えるなら、それは難しいと言わざるおえない。
だが、お前にやらせようにもお前はあまりにも未熟すぎる。力では無く心がだ。故にお前は今のままでは正義の味方にもなれはしない」
「俺のことは無視かい」
 スカアハに言われて士郎は悔しそうに拳を握りしめてたが……俺のことは無視ですか、そうですか……
しかし、スカアハの奴、士郎に何させる気なんだろうか?
「なりたいか? 正義の味方に? 止めたいか? ただ、滅びだけをまき散らす今の聖杯戦争を?
ならば、教えよう。その術を……お前にその気があればだがな」
「お願いします!」
「ノリノリだな、おい」
「本当だな」
「まったくだ……」
 スカアハに言われて頭を下げる士郎。それに思わず突っ込んでしまったが、クー・フーリンと式も同意してくれている。
だよねぇ……でなきゃ、町中で出来ないって……ていうか、人だかり出来てないか?
「ま、そうしてもらわぬと私としても困るがな。メディア、サーヴァントを喚ぶ手助けは可能か?」
「その方がいいわね。士郎の今の魔力じゃ喚ぶことも出来ないかもしれないし」
 スカアハに聞かれたメディアは品定めをするかのように士郎を見ていたが……あれ?
それじゃあ、ゲームじゃ士郎はなんでセイバー喚べたんだろ? 確か、ゲームだと初めは魔術もろくに使えなかったと思ったけど。
やっぱ、帰ったらそこら辺調べた方がいいのかなぁ……なんてことを思いつつ、この人だかりをどうしようかと考えてしまうのだった。
ていうかあんたら、周りを気にしてくれ。


「サーヴァントセイバー、召喚に応じ参上いたしました」
 そんなわけで、俺の家のガレージでセイバーを召喚しました。うん、あっさりすぎね?
しかし、サーヴァントの召喚って、なんというか魔法って感じだよな。GUMPの召喚は味気ないというかあっさりというか――
「へぇ〜、GUMPの召喚とは違うんだな」
「私も詳しいわけじゃないから確かなことは言えないけど、原理としては一緒のはずよ。
もっとも、プログラムだけで全てを代行するなんて普通は無理なはずだけど……作った者は間違いなく天才ね」
「ち! マスター、下がってください!?」
「のぉぉぉ!?」
 感心してるとメディアがそう言ってくれましたが、いきなりセイバーに斬りかかれました。
なんとか剣で受け止めたけど……いや、なんで!?
「貴様!? 何者――」
「ちょっと待て!? その人は――」
「少し、落ち着いたらどうだ」
「いや、マジで助けて欲しいんだけど!?」
 睨みつけるセイバー。それを止めようとしている士郎。呆れているスカアハ。
どうでもいいけど助けてくんない!? 見えない剣が近くにあるのってすっげぇ怖いんだけど!?
「落ち着きなさいセイバー。少なくとも私達はあなたの敵では無いわ」
「なに?」
「そうだ。訳あってお前の召喚を手伝ったに過ぎない。だから、剣を引いてもらえるとそいつが助かるのだが?」
「ていうか、マジで助けてよ!?」
「そうだ! やめてくれセイバー!」
 メディアの言葉に首を傾げるセイバーだが、スカアハが呆れた様子で止めに入る。
いや、いいから本気で助けてくんない!? リアルで命の危機は何度でも慣れないんだけど!?
ほら、士郎も必死じゃん!? 頼むからプリーズ!?
「それに剣を引かないと、そいつらが黙ってないぞ?」
「え?」
「そういうこった」
 スカアハの言葉にセイバーが顔を向けた時、クー・フーリンが槍を首元に向けていた。
良く見ると理華とミュウ、ルカもセイバーを睨んでいる。あの〜、出来たら止めて欲しいんだけど……今すぐに!?
「わかりました……申し訳ありません……」
 ようやくセイバーが剣を引いてくれました。あ〜……マジで死ぬかと思った……
「うん、マジでやめてね……リアルで命の危機は本気で勘弁して欲しいから……」
「何度も死にかけた奴が言っても説得力が無いと思うのだが?」
 顔を引きつらせながらそう言っておくが、スカアハにツッコミを喰らう羽目になった。
まぁ、大怪我した所を狙われて……というのは何度もあったのは事実だけどね?
でも、怖いのは事実なんだけど……ていうか、それで怖がらない奴は異常だと思うんだが?
「それでこの者達は何者なのですか? 明らかに人では無い者達もいるようですが……」
 と、戸惑いがちに聞いてくるセイバー。その目はミュウに向けられていた。
確かに喚び出されたら怪しい奴らがいたとなれば怪しむのは当然か。でも、いきなり斬りかかるのは本気でやめて欲しいけど。
「そうね……それは話さなきゃダメね。いいわ、話してあげる。ただし、質問は話が終わってからにして頂戴ね」
 そう言ってからメディアは話し始めた。ここがボルテクス界という異世界であるということ。
ミュウやルカ、クー・フーリンにスカアハはこの世界に存在する悪魔という者達で、悪魔とはどういった者なのか?
自分は元々はサーヴァントとして喚ばれたが、今は特殊な方法で悪魔となったこと。
そして、メディアが今現在知っている聖杯戦争の実情なども話した。前回の聖杯戦争で起きたことはスカアハが話したけど。
「な……それでは私の願いは……」
「今のままでは叶えられないどころか、前回の聖杯戦争で起きた悲劇が再び起きることになるだろうな」
 愕然としているセイバーにスカアハは容赦ないツッコミを入れる。で、それを聞いたセイバーはへたり込んでしまった。
知らなかったとはいえ、起きてしまった悲劇がショックだったんだろうか? セイバーの瞳が虚ろに見える気がする。
「さて、セイバー。お前に聞いておきたいことがある。お前の願いはなんだ?」
「そ、それは……我が故郷の救済です……故郷の滅びの運命を変えるために――」
「それが新たな滅びを喚ぶと知っていてもか?」
「え?」
 戸惑いながらもセイバーは答えるんだけど、問い掛けたスカアハはそんなことを言い出しました。
セイバーはきょとんとしてたけど……それってどういう意味?


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「どういう……ことなのですか?」
「言葉通りだよ。歴史を変えるということは、元あった歴史を滅ぼすということだ」
 戸惑うセイバーにスカアハは真っ直ぐ見据えながら答えた。
マンガやアニメ、映画などでタイムトラベルによって歴史が変わる……という作品を見たことはないだろうか?
歴史を変えるということはどういうことなのか? 今から話すことは筆者の私的見解を含んでいることを先に述べておこう。
 例えばある人物がいたとしよう。その人物は性格がとても暗く、それが起因して自殺してしまった。
それを止めるべくある者が過去に行きあれこれした結果、その人物の性格は明るく活発的になった。そして、自殺はしなくなった。
この時点ではいいことのように思える。だが、本当にそうなのだろうか?
例えば、変わる前にいた性格が暗かった人物をAとし、変わったことで性格が明るくなった人物をBとしよう。
変わった事で人物Bが現われた時、人物Aはどこへ行ってしまったのか?
AからBに変わっただけと思う方もいるだろう。しかし、私的見解で言わせてもらえれば、それは消滅と変わりない。
人物Aが消えたことで人物Bが現われたと言えるからだ。
そして、セイバーのやろうとしていることは人が国単位に変わった以外、ほぼ先程の話と変わらないのである。
 本来ならばそれ以外にもあるのだが、長くなるためあえて割愛させて頂く。
ともかく、それは変える前の歴史を滅ぼすのと変わりないとも言える。スカアハが言おうとしていることはこのことなのだ。
「それを踏まえて改めて聞く。お前は今あるものを滅ぼしてもやり直しを求めるというのか?」
「それ……は……」
 先程の説明を話した上で問い掛けるスカアハ。それにセイバーは困惑した表情を浮かべた。
国の滅びから救う。それがセイバーの……アーサー王としての願いだった。それこそが滅びた国の民を救うと考えたから――
だが、先程話したとおり、そんなことをすれば今ある歴史を滅ぼすことになりかねない。
セイバーとて、そうまでして国を救いたいと思ってはいない。だからこそ悩んでしまうのだ。
それではどうすればいいのかと考えてしまうが……今のセイバーにはその答えが見つからなかった。
「それにお前は生き残った民までも滅ぼそうというのか?」
「え?」
「確かに国は滅びた。だが、そこに生きた民が全て滅んだわけではない。
生き残り、子孫を残し……そして、その子孫は今も生きているだろう。お前はその者達まで滅ぼすというのか?」
 いきなりの言葉に顔を上げたセイバーは、話しかけたスカアハの言葉を聞いて愕然とする。
そう、確かに国は滅びた。だが、全てが滅びたわけではない。セイバーの故郷は伝承という形で残り、生き残った民も子孫を残している。
もし、セイバーが国の滅びを無かったことにしたら、その伝承も……そして、子孫も消えることになる。
それはある意味人殺しと変わりない。それに国の滅びが無くなるということは、それ以降の歴史も変わることとなる。
それがいったいどのような影響を与えるのか……
「俺もそんなのは間違ってると思う……全てを無かったことをするのは、自分に関わってきたことへの裏切りだと思うから……」
 つぶやくかのように士郎は静かにそのことを述べた。確かにセイバーは裏切りにあった。
だが、全てに裏切られたわけでは無い。自分を信じて付き従ってくれた者達もいたのだ。
もし、国の滅びを無かったことにすれば、その者達の想いも無かったことになる。果たして、それが良いことなのだろうか?
それはその者達に対する裏切りとも言えるかもしれない。
 そんな士郎の言葉を聞いたためか、セイバーは崩れるようにして床にへたり込んでしまう。
「それでは……私はどうすれば……いいというのですか?」
「さてな……それは今はわからぬよ。だが、それを探してみるのも一興かと思うがな。
ま、それで答えが見つかるか否かはお前次第だと思うがね」
 うつろな表情のセイバーにスカアハはそう答える。今のセイバーは自分が何をすべきなのかを見失っていた。
そのことにスカアハは呆れた様子でため息を吐いていたが――
「こんな時にこんなことを言うのはおかしいとはわかってる。でも、言わせて欲しい。
力を貸してくれ、セイバー。俺はあんな惨劇を生み出した聖杯戦争を止めたいんだ。
でも、そうするには聖杯戦争に参加しなきゃいけないって言われた……だから、頼む……
怒るかもしれないけど……俺は止めたいんだ。もう、あんなことは二度と起こしたくないから……」
 セイバーの両手を握りしめながら、士郎は懇願していた。確かに今のような状況で言うようなことではないだろう。
実を言えば士郎としてはセイバーを励ましたかった。だが、なんと言えばいいかわからず……このようなことを言ってしまったのである。
「あ……」
 だが、それはセイバーの心に響いていた。その瞳は士郎の顔に向けられ、頬がわずかに赤らんでいるように見える。
この時、セイバーは思った。士郎の言葉は本意であると。セイバーとて国を守ると誓ったことがある。
だからだろうか? 士郎の言葉は本意であると感じられたのだ。
「わかりました……」
 その言葉を漏らしたセイバーの顔に覇気が戻ると立ち上がり――
「今ここに我が剣はあなたと共にあり、あなたの運命と共にあることを誓おう……」
 瞳を閉じながらセイバーは誓いの言葉を告げる。その様子を士郎はきょとんと見ていたが……
なお、士郎は知る由もないのだが、この時のセイバーの誓いの言葉が違っていた。
それはセイバーの心境の変化によるものなのかは……今はまだわからないが――
「これからよろしくお願いいたします、マスター……」
「あ? ああ、こちらこそよろしく。それと俺の名前は衛宮 士郎だから……」
「では、シロウと……」
 どこか焦っているようにも見える士郎をセイバーは微笑みを向けていた。
なにはともあれ、今ここにサーヴァントの契約は完了したのである。だが、問題もあった。
「水を差すようで悪いんだけど……今の士郎の魔力じゃ、セイバーを全力で戦わせるのは無理だと思うわよ?」
 頬に指を当てつつ、メディアはそんなことを告げる。
原作の時とは違い、士郎はメディアの助力もあってセイバーと正式に契約出来た。これにより魔力の供給も正常に行われる。
だが、今現在の士郎の魔力量ではセイバーへの魔力供給は完全にとはいかない。
今もメディアの補助があるからこそ、なんとかなっている状態である。
その補助もいつも出来るわけではないため、このままではセイバーへの魔力供給が滞る可能性があった。
 なお、補助の方法だが、あえて割愛する。一応、原作とは違うとだけ言っておくが……
「それなら考えがある。一応、前例があるのでな。可能かもしれん」
「前例?」
「ああ……そのためにヴィクトルの所にもう一度行くぞ」
 話を聞いたメディアは首を傾げるが、言い出したスカアハは笑みを見せながらそんなことを言うのであった。


 なお、まったくの余談だが、この後の夕食でセイバーは感動したような顔を見せ――
その後はコクコクとうなずきながら食べていたことを述べておこうと思う。


 in side

「ちょっと大きいね」
「まぁ、俺のお下がりだしな」
 さて、次の日の朝。理華と俺は今の士郎の姿を見て、そんなことを漏らしていた。
どういうことかというと、今の士郎は俺が前に使っていた防具を着込んでいたからである。
しかし……背の方は俺の方が高いせいか、士郎にはちょっとぶかぶかだったりするけど……
 ちなみになんでこうなったかというと、スカアハがこうしろと言ったからなんだよねぇ。
士郎を鍛える為には装備は必要だが、いきなり強力な物を装備させるわけにはいかないって。
 それはそれとして――
「しっかし、セイバーも本当に大丈夫なわけ?」
「はい。むしろ良すぎると言っていいかと……全力で戦っても余りあると言っていいくらいですし」
 俺の疑問にセイバーはやる気を見せながら答えていた。こっちはどういうことかというと……
実はスカアハの考えた方法ってのは、セイバーに魔力ではなく生体マグネタイトを供給するというやり方だったんだわ。
メディアがキャスターだった時に出来たんで、セイバーにも出来るだろうと考えたらしい。
で、ヴィクトルさんにCOMPをもらって、俺のGUMPにあった生体マグネタイトを少し分けてからセイバーを登録してみたら出来てしまったと。
ただ、キャスターの時とは違ってセイバーはCOMPに吸い込まれることは無かったけど。
スカアハの話だと、セイバーが普通の英霊とは違うかららしいんだが……どう違うんだろうか?
やっぱ、元の世界に戻ったら、そこら辺調べ直した方がいいよな。
 まぁ、それはそれでいいんだけど……
「だけどさ、なんでお前までGUMPにしたわけ?」
 思わず聞いてしまう。そう、士郎は俺と同じGUMPを選んだのである。ただし、色は青だったけど。
「あはは……なんていうか、翔太さんは俺の目標みたいなもんですから……」
 と、士郎は照れくさそうに後頭部を掻いていたけど……いや、目標って……俺はそんなに凄くないよ?
戦いもいっつもギリギリだしね。なので「そんなことないんだけど」と、右手を振りながら断っておいたが。
「では、よろしく頼む」
「ああ、わかってるよ」
 スカアハの言葉に答えたのは君嶋さんだ。なんでここにいるかというと、スカアハが士郎を鍛えるのを頼んだ人が君嶋さんだからだ。
しっかしなんでまた君嶋さんなんだろうか? なお、当然ながら香奈子さんと美希も同行することになるけど。
「さて、言っておくことがある。お前は守るという意味を、救うという意味を勘違いしている。
それに気付かなければお前は誰も守れないし、救う事も出来ない。意味を教えるのは簡単だ。だが、お前が理解しなければ意味が無い。
君嶋にお前を鍛えることを頼んだのは、そうした方が勘違いに気付きやすいと考えたからだ」
 と、スカアハは答えるんだけど……そういう事だったのか。しかし、守る意味と救う意味ってなんだろうか?
「もう1つ。自分の命を簡単に捨てるような真似はするな。お前は自分の命を考えていない。
それは同時に他人の命を考えていないにも等しい。それがどんなことをもたらすのかを学んでこい」
「え? えっと……」
 スカアハに言われて士郎は戸惑ってたが……うん、俺も意味がわからないよ。
どういうことなんだろうか? いや、大事なことだってのはわかるんだけどね。
「すまないが、そろそろ行かせてもらう。ほら、行くぞ」
「あ、はい!」
「わかりました」
 君嶋さんに言われて士郎は慌てて返事をし、セイバーもうなずいてから香奈子さんと美希と一緒に歩き出したのだった。
「大丈夫なのか、あれって?」
「君嶋には出来るだけ町の近くでと言ってあるからな。よほどの事がない限りは大丈夫だろう。
むしろ、君嶋に同行させたのは鍛えるよりも勘違いを正すためだしな」
 見送った後、思わず指を差しながら聞いてしまうが、スカアハ腕を組みながら答えてくれました。
勘違いって、さっき言ってたことか? でも、本当にどういうことなんだろうか?
「それに君嶋は紛争地域に行ったことがあるそうだからな。そういった意味では適任とも言える」
 なんてスカアハ言うんだが……本当にどういうことなのさ? マジでわからんのだけど……
「さてと、私達も行くぞ。1週間でお前をマシにしておきたいからな」
「へ〜い……」
 スカアハに睨まれて、俺は気の抜けた返事を返した。いや、あそこら辺の悪魔って結構キツイんだよね。
大丈夫かな、俺……
「がんばってこいよ。式も迷惑を掛けるなよ?」
「ええ……」
「言われなくてもわかってるよ」
 手を軽く振る橙子さんに思わず肩を落としながら返事を返し、式は呆れた様子で返していた。
なお、橙子さんは家に居残りである。本人は研究の為に残ってあれこれ調べたいそうな。
式の場合は体を動かしたい為に俺達と同行すると……
そんなわけで俺達も出発することにしたが……これからどうなっていくんだろうか?



 あとがき
そんなわけでセイバーを召喚した士郎。スカアハが言う、士郎の勘違いとはなんなのか?
そちらはいずれ語られることとなります。ていうか、幕間で書いた方がいいかな?
それはともかく、翔太達はどうなっていくのか? 士郎はどう変わっていくのか?

次回は翔太の元になぜか文とある少女がやってきます。その目的は取材?
そこにもう1人の少年が。なんでサマナーギルドが翔太を呼んでいるとのことですが――
そんなお話です。お楽しみに〜



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