in side

 さて、次の日。俺達はバゼットと合流し、元の世界へ通じる穴にたどり着くと俺と理華だけが元の世界に戻った。
ああ、言い忘れてたが橙子さんはいない。まだ幻想郷にいるはず……だよね?
っそちは後で考えるとして、前にもスカアハ言ってた通り数日掛かるかもしれないので着替えを取りに戻ったわけだ。
一応、ボルテクス界でも着替え用の服は買ってあるんだけど……なんて言えばいいかな……
ボルテクス界の服ってドラクエとかの村人の服とかそういう感じの物なんだよね。まぁ、早い話古くさいというか……
士郎の世界は元の世界とほぼ同じ世界なので、そんな服を着たら完全にコスプレになってしまう。
なので、元の世界の服を持ってくる必要があったと……まぁ、持ち出す時に家族から訝しげな顔をされたけどな。
とりあえず、元の世界で一晩を過ごしてから着替えを持ってボルテクス界へ。
なお、理華と合流したら抱きつかれました。なんでも俺がそばにいないと不安で眠れなかったらしい。
これはヤバイかなぁと感じてしまう。なんか、理華が不安定になったような気がしてさ。
スカアハに相談した方いいよな、やっぱ……
で、待ちわびていたスカアハ達と合流し、そのまま士郎の世界に通じる穴へと向かい――
「喜んでるね」
「喜んでるな〜」
 なんてことを理華と言い合ってみる。どういうことかというと、士郎の世界に穴に向かう途中で悪魔と戦い――
何度目かでバゼットが念願の仲魔を作ることに成功したのである。
ちなみに仲魔になったのは妖魔カラステングと魔獣ネコマタ。バゼットの喜びようったら――
「これで私も立派なサマナーになれたのですね……」
 と、ほぼ自己陶酔してるしな。でもね、バゼットさんよ……
「出来れば、人のアイテムを頼りにして欲しくなかったんだが……」
「う……」
 俺のつぶやきにバゼットは顔を引きつらせる。そう、バゼットは退院したばかりでお金もアイテムも無い状態だった。
しかし、悪魔の交渉では時としてそういうのも必要になる。で、それらを持ってないバゼットが頼ったのが俺だったと。
なんだろうね……泣いていいよね、俺……
 後驚くことがあったと言えば理華のことだ。というのもね、理華の戦い方が変わっちゃったのよ。
前は後ろの方で銃を撃ったり魔法を使ったりして援護してくれたんだけど――
「はぁ!」
 今は俺の横で銃を撃ったり剣を振り回したりしてます。いや、なんでよ?
「おいおい、大丈夫なのか?」
「大丈夫……それにこうしないと私が不安だから……」
 と、心配する俺に理華はそう答えてくれるが……表情が曇っているように見えるのは気のせいか?
しかし、なんでまた急にこんな戦い方をしたのかと気になったのだが――
「理華は腕輪によってある程度力が抑えられているとはいえ、悪魔化しているのは変わりないからな。
それによってお前並……とまではいかないが、それだけの身体能力が使えるようになったのだろうよ。
後は……お前に無茶させないためにそんな戦い方をしだしたんだろうな」
 と、スカアハは教えてくれたけどね。でも、本当に大丈夫なんだろうか?
それと俺に無茶させないって……俺、そんなつもり無いよ? と言ったら、なぜか睨まれました。なんでさ?
 まぁ、そんなこともあったが無事に士郎の世界にたどり着く事が出来た。
で、スカアハ、クー・フーリン、メディアを除いた仲魔達をGUMPに戻し、
俺と理華、士郎はバゼットが倒れていた洋館で着替えを済ました。
なお、前回来た時にわかってたからちゃんと冬服だぞ。で、洋館を出ると――
「なにそれ……」
 その光景を目の当たりにした。何がどうなったかというと……スカアハ達が悪魔としての服ではなく、普通の服を着てたんだよね。
スカアハは赤い女性用のスーツ。クー・フーリンはジーンズにシャツとジャケット。メディアは黒タイツにスカートと薄紫のセーターと。
セイバーもゲームでお馴染みの服を着ている。いや、いつの間に?
「なに、お前達が自分達の世界に戻っている間にシンジが来てな。
服装を変える事が出来るアイテムを渡してくれたんだよ。他にも色々と受け取っているがな」
 と、左腕を見せつつスカアハが答えてくれました。確かに左手首に銀のブレスレッドがあったけどさ……
なに、その魔法少女的なアイテムは? って突っ込んじゃ……ダメなんだろうか?
うん、気にしないでおいた方がいいよね? なんてことを考えつつ、士郎の家へ向かうこととなったのでした。
しかし――
「どうした?」
「あ、いや……なんでもない」
 スカアハに気付かれたが、なんでもないと右手を軽く振っておく。
でも、今誰かに見られていたような――


out side

 士郎の案内で彼の家に向かう翔太達。そんな彼らを遠くから見ている者達がいた。
「ようやく……見つけたな」
「申し訳ありません……私がふがいなかったばかりにご苦労をお掛けしました」
 翔太達を見る者にその者は頭を下げながら謝罪の言葉を口にした。
そう、この者は翔太達を……正確には翔太を捜していたのである。
しかし、捜索は困難を極めた。なぜなら、翔太が持っているある物の反応がつかめなかったからだ。
そちらの方はシンジが対策を施したからなのだが……そんな時、偶然にも士郎の世界への穴に入る翔太達を見かけ――
遅れて入ったために見失ったが、こうして再び見つけることが出来た。
「それでどうするの? 今すぐ襲っちゃう?」
「いや、しばし様子を見る。この場所……我らが先程までいた場所とは何か違うようだ。
それを確かめながらでも遅くはあるまい」
「なるほど……では、仰せの通りに……」
 女性の声の問い掛けにその者は答え、それに男性の声が静かに同意を示した。
「ふふ、ショウタよ……貴様との決着、ここでつけさせてもらうぞ」
 と、その者は……長い銀髪を風になびかせる凛々しき女性は不敵な笑みを翔太に向けるのであった。


 in side

 さて、俺達は士郎の家の前に来てます。あの後、何事も無くたどり着けたんだけど――
「あれ? 電気が点いてる? おかしいな……出る時はちゃんと消したと思ったんだけど――」
 と、首を傾げる士郎君。確かに士郎の家に明りが点いている。
ていうか、でっかい家だよな〜……確か、ゲームの最初の頃は訪ねるのは桜と大河くらいじゃなかったっけ?
その時以外は基本的に一人暮らしと……良く暮らせるな〜と思うのは俺だけだろうか?
あ〜そうそう、元の世界に戻った時にFateのことはそれなりに調べ直しておいたので大丈夫……と思いたい。
いやね、ネギま!でもそうだけど、俺達が関わったことで色々と変わっちゃったからなぁ……
ネギま!で思い出したが、刹那達大丈夫だろうか? 修学旅行間に合ってるといいけど。
「ただいま〜……って、誰かいるのか?」
「あ、は〜い」
 士郎が玄関を開けて入ると奥の方から女の子の声が……つ〜ことは桜かな?
士郎の家で女の子の声と言ったらそれしか思いつかんし。あ、大河もいたか。こんな声かはわからんが……
「あ、先輩。お帰りなさ……」
 で、奥から出てきたのは紫の髪を背中まで伸ばす優しさを感じさせる少女でした。
うん、間違いなく間桐 桜だね。でも、なんで固まってんだ?
「ただいま、桜。でも、どうしてここに?」
「え? あ、そのちょっと先輩にお願いしたいことがあったのですが……あの……後ろの方々は?」
 士郎が挨拶しつつ問い掛けると桜は戸惑いながら答えてくれましたが……ああ、俺達のことが気になってたのか。
確かにいきなり俺達みたいなのが来たら驚くのは普通だよな。
「ええと、この人達はなんというか……その〜」
 で、言いよどむ士郎君。まぁ、いきなりこうなるとは思ってもいなかっただろうし、言い訳が思いつかないんだろ。
それはそれとして……なんでスカアハとメディアと式は顔を向けあって小声で話し合ってるんだ?
かすかにしか話が聞こえないから、何を話してるかわからんし。
「ああ、驚かせてすまない。私達は士郎君の父親である切嗣の知り合いでね。訳あって訪ねてみたのだよ。
それとこの人数なのは仕事も兼ねているからなんだが……ところで君」
「は、はい?」
 話し合いがすぐに終わったのかスカアハが話し出したけど……良くもまぁ、そんな言い訳が思いつくもんだな。
で、声を掛けられた桜は戸惑いながらも返事をして――
「え?」
「いきなりで驚くだろうが……すまない。我慢してくれ」
 いきなりスカアハに手で目隠しをされたかと思うと――
「あ……」
「桜!?」
「な!?」
 式に刺されていました。驚く士郎とセイバー……俺と理華はいきなりすぎて呆然としております。
ええと、何がどうなってんのよ?
「何をしてるんですか!?」
「ちゃんと説明するから落ち着け。メディア、準備はいいな?」
「ええ。でも、ここじゃなんだから寝かせられる所に連れて行った方がいいわね」
 怒鳴る士郎君。ま、当然だわな。知り合いがいきなり刺されたんだし。
で、スカアハはそう言いつつ問い掛けると、問い掛けられたメディアはなにやら取り出しながら答えていました。
もう、何がなにやらわからんのですけど? そんな状態のまま、スカアハは桜を居間に連れていって寝かせ――
「頼むぞ」
「ええ……」
 声を掛けたスカアハにメディアが答えると、なんか金粉みたいなのを桜に振りかけながら呪文を唱え始めた。
すると桜が寝かされている畳の上に金に輝く魔方陣が現われたが……何してるんだろうか?
「何をしているのですか?」
「桜の体内にいる蟲を排除しているんだよ」
「蟲って……どういうことですか!?」
 問い掛けるセイバーにスカアハが答えると士郎が怒鳴りながら聞いてくる。
「ああ、そういや桜って……名前忘れたけどじいさんに蟲を埋め込まれたんだっけ?」
「え?」
「正確にはそうではないが……まぁ、そんな所だ。で、桜をそのままにしておくと私達にはネックになりかねないからな。
シンジもそのことを懸念していたのだろう。蟲を排除するための道具を渡してくれたよ。
まぁ、心臓に巣くっているのは簡単にはいかないそうだから、式の力を借りたがね」
「ああ……あいつが言ってた俺なら助けられるってのはこういうことだったんだろうな。
ま、簡単だったし、俺としては別に構わないけど」
 ポンっと手を叩きつつそのことを思い出す俺。そのことに士郎が顔を向けるとスカアハが説明してくれました。
しっかし、シンジがねぇ……あいつ、本当に何考えてるんだろうか? 良くわかんなくなってきたんだけど……
で、式も呆れた様子でそんなことを言っていたが……良くはわからんが、式の直死の魔眼で心臓の何かを殺したってことなんだろうか?
うん、やっぱり良くわからん。
「そんな……桜が……」
「気持ちはわからなくもないが、あまり自分を責めても意味は無いぞ。今回ばかりはお前だけではどうにもならなかっただろうしな」
 なんか落ち込んでる士郎にスカアハは慰め……になってるかは微妙だが、そんなことを言い聞かせた。
でもまぁ、スカアハの話も納得出来るかも。普通、体内にある物を取り出すって手術でもしなきゃ無理だし。
で、士郎はそんなこと出来るわけないと……確かに士郎だけじゃ無理だわな。
「でも――」
「そこまでにしておけ。それに桜がお前と出会うずっと前からくだらない物を仕込まれたんだ。
確かにお前は未熟だが……出会っていなければ、私でも止めることは出来んよ」
 それでも何かを言いたそうにしている士郎だが、スカアハはそう言いながらなだめようとしていた。
まぁ、そうかもな。会ってもいない人が何かをされてるなんて、普通はわからないし……
会ってからも様子がおかしいとかじゃないとやっぱりわからないと思うけどな?
いや、俺も詳しくはわからないけどね。
「治療終わったわよ。しばらく安静にしていれば、明日には普通に生活出来るでしょ」
「あ、ありがとうございます」
「お礼ならシンジに言って。私は彼からもらった道具を使ったにすぎないから」
 頭を下げる士郎にメディアはそう言うのだが……本当にあの野郎は何考えてるんだろうか?
むかつくことをしたかと思えば人助けとか……本当にわけわからんのだが……
「ん? あ、あれ……私……」
「桜!? 大丈夫か!」
「せん……ぱい? 私、どうして……」
 と、目を覚ましたらしい桜に士郎が慌ててそばに寄った。
桜の方は何がどうなってるのかわからないって感じだけど……まぁ、目隠しされたら刺されたとかわかんない方がいいかもしれない。
刺されるのって、結構痛いんだよ……いや、マジで……
「あ、あの……私どうして……何があったんですか?」
「さて、何から話したものか……む」
 困惑気味の桜にスカアハが何かを言おうとした時、なんか鐘を鳴らしたような音が聞こえてきた。
いや、なんでこんな音が聞こえてくるんだ?
「じいさんの……結界?」
「ふむ、来るとは思っていたが、意外と早かったな。まぁ、その方が手っ取り早く済むがね」
 天井を見上げる士郎だが、スカアハは何が起きているのかわかっているらしい。
「ねぇ、翔太……嫌な予感がするんだけど……」
「安心しろ。俺もだ」
「にしてはあまりにも落ち着いているように見えますが?」
「もう慣れたよ……」
 理華のひと言に同意しておく。バゼットに呆れられていたが、こういうは一度や二度じゃなかったしな。
うん、本当に慣れって偉大ですよねぇ〜……いらんことばっかりに慣れてる気がしてならないけどな。
「さてと……何をしに来たのかな?」
「く! シロウは私の後ろに!」
「あ……ああ……」
 と、スカアハが障子を開けるとその先は庭になっていて、そこに和服を着たしわくちゃの老人が立っていました。
その老人が心なしか怒っているように見えるのは俺の気のせいだろうか? それに変な気配感じるけど。
その気配のせいかセイバーは士郎をかばうかのように前に立ち、桜にいたっては怯えていた。
て、あのじいさんって桜のじいさんじゃなかったっけ? 名前は……ええと……ぞう……けん……だったっけ?
「なに……孫を心配して、こうして来ただけよ」
「何が孫を心配してだ。あんな物を仕込んでおいて、白々しい」
 臓硯(って、こんな漢字だったよな?)の言葉を聞いて眼を細めるスカアハ。
うん、俺も嘘くさいと思う。ていうか、心配しているようにはまったく見えないもん。
後、地面が何か蠢いてるように見えるのは俺の気のせい?
「まったく……余計なことをしてくれたものよ……貴様のせいで長い年月を掛けてきたことがすべてが台無しとなってしもうた……
おかげで儂の願いは……この落とし前をどうしてくれる!?」
「自業自得という言葉を知っているか?」
 明らかに怒っている臓硯にすました顔でスカアハはひと言だけ返してますが……うん、俺も自業自得だと思う。
まぁ、俺は臓硯が何をやったかは詳しくは知らんけど、少なくとも人の体に勝手に蟲を埋め込むとかはありえねぇとか思うしな。
「そうか……ならば、その落とし前を貴様らの体で償ってもらおう!」
「に、逃げてぇ!?」
 と、臓硯が叫ぶと地面で蠢いていた物が……ええと、あんまり声に出したくない形の蟲がスカアハに迫ってきた。
それで桜が叫ぶけど……あれ? 蟲が俺達にも迫ってないか? ああ、巻き込んだんですか……
「なぁ、なんとかなるの?」
「落ち着いている場合ですか!?」
「そうですよ!?」
 思わず聞いてしまうとバゼットとセイバーに怒鳴られました。いや、だってねぇ……スカアハ全然焦ってないし。
「マハンマオン!」
「『うぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??』」
 で、スカアハが右腕を上げて指を鳴らしたかと思うと真っ白な光が庭を包み込んだ。
その途端に臓硯は悲鳴を上げ……うっわぁ〜、蟲が溶けてる〜……臓硯も溶けてるし……
うん、もの凄く気持ち悪いよ。理華も俺の横で顔を青くしてるし……
「ふむ、穢れているから存外に効くとは思ってはいたが……にしてはしぶといな」
「う、あ……あが……が……あが……」
 呆れた様子で話してるスカアハだが……マハンマオンって確かハマの強化バージョンで破魔魔法じゃなかったっけ?
悪霊とかそういうのを倒すのにシルフが良く使ってたな。で、スカアハも使えたと……ていうか、使ったの今初めて見たぞ。
 一方の臓硯はというと蟲はほとんどが溶けていなくなってしまい、本人もかろうじて形の残ってる程度……
しかし、なんかもうドロドロになってて元の形がわからん……ていうか、ハッキリ言って気持ち悪い。
「おぐ、あ、が……うぐ、ぐ……ぐが、お、おぉ……」
「よほど怒り狂っていたのかな? ろくに確かめもせずに攻め入るとは……
それともサーヴァント1人ぐらいならどうにかなるとでも思っていたのか?」
「あ、ば、あぶぶ……ぶば、ば……あ?」
 なんか逃げようとしている臓硯を見ながら話しかけるスカアハ。
そんな臓硯の前にメディアが立ちはだかった。それに気付いた臓硯が顔を上げるけど――
「あらあら、どうしたの? そんなに怯えちゃって……大丈夫よ。すぐに終わるから……あなたがね」
 と、くすりと笑いながら話すメディア……うん、怖いと思うのは俺だけか?
「ムドオン」
「うぼあぁぁぁぁぁぁぁ!?」
 で、メディアはひと言……いや、それって呪殺魔法だよね?
案の定、臓硯は苦しみだし……完全に溶けてしまいました。うっわ〜、アッサリすぎね?
なお、生き残ってた蟲も残らず溶けております。
「ふむ、これで終わったと思うが……念のために調べておくか」
 などとスカアハは言いつつなにか魔法を使っておりますが……いや、今ので完全に終わったんじゃないの?
何となくそんな気がするんですけど……それはそれとして――
「とりあえず、終わったの?」
「この場での話ではあるがな」
「え? あ……あ!」
「さ、桜!?」
 とりあえず聞いてみるとスカアハはあっさりと答えてくれました。
直後、なにやら後ろが騒がしかったので振り向いてみると桜がなにやら動き出そうとし、それに士郎が驚いているところだった。
「やれやれ……あなたの体は治療したばかりだから、ろくに動けないわよ?」
「ダメ……ダメなんです……私は本当は先輩のそばにいたら……」
 呆れているメディアだが、桜はなぜか逃げだそうとしている。
もっとも、メディアの言葉通りにろくに動けずにいたけど……でも、なんで逃げだそうとしてるんだろうか?
「ダメなんです……私は穢されてしまって……先輩のそばにいる資格なんか……なのに……なのに私は……」
 で、なぜか泣き出す桜。そういや、桜って臓硯に色々とひどい目にあわされてたりしてたんだっけ?
それを気にしてるんだろうか?
「え?」
 そんな桜を士郎が抱きしめる。桜はいきなりのことに呆然としてたけど。
「ごめん……俺……俺、桜がそんなことになってるなんて知らなかったから……ごめん……ごめん……」
「せん……ぱい……せ……んぱい……うわぁぁぁぁぁ……」
 で、抱きしめる士郎はといえば涙を流してるし、桜も最初は呆然としていたがいきなり泣き出してるし。
でね、なんでセイバーは羨ましそうな顔を向けてるかな? まぁ、それはそれとしといて……
「まぁ、一件落着なのかね?」
「とりあえず、彼女に関しては……となるがな」
「へぇ……どういうことか聞かせてもらえないかしら?」
 俺の疑問にスカアハが答えた時、そんな声が聞こえてきた。
初めて聞く少女の声……俺達はそこへと顔を向ける。そこには赤いコートに赤い服に黒いスカート……
ツインテールの黒髪に凛々しいと言える顔立ちの少女が立っていた。うん、紛れもなく遠坂 凜ですね。
で、その横には長身で赤い外套に浅黒い肌と白い髪の男が立っている。うん、アーチャーだね。
 さて、問題です。なんで2人がそこにいるの?
「サーヴァント……シロウ!」
 と、セイバーが鎧姿になりながら前に立ちました。いや、それはいいんだけど……なんで俺の横に立つの?
巻き込まれない? ていうか、巻き込まれるよね、俺……
「サーヴァント……ふ〜ん、どでかい魔力を感じてきてみれば……そういうことかぁ……」
 で、凜さんはそんなこと言っております。どでかい魔力って、もしかしてスカアハの魔法の事だろうか?
なんてことを考えていた時だった。一陣の強い風が吹いたのである。いや、それは別段問題は無い。
あるとしたら、凜に起きたことだろうか……いやね、その強い風がコートのすそを舞い上げ……
あろうことかスカートまで舞い上げてしまったのである。
風の方はすぐに収まり、スカートもすぐに元に戻ったけど……凜の顔が真っ赤です。
ま、あんなことが起きたら女の子とかはなぁ……
「なぁ、士郎……」
「は、はい?」
「俺達、悪くないよな?」
 呼びかけに顔を向けてくれた戸惑う士郎に腕を組みつつそう言っておく。いや、マジで俺達悪くないよね?
風は俺達が起こしたわけじゃないし、あの服装が凜が選んだ物だろうし……あそこに立ってるのも凜が決めたんだろうし。
だから、赤い何かが見えたとしてもそれは俺達のせいじゃ――
「記憶を失えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「いきなりぶっ放すなぁぁぁぁぁ!?」
「おわあぁぁぁぁぁぁ!? おぶ!?」
「先輩!?」
 顔を真っ赤にして叫ぶ凜が指先を向けたかと思うと黒い塊をぶっ放してきました。
叫びながら避けます。士郎は……あ、顔面に当ってる。桜が驚いてるや。
それはそれとしといて――
「やめんかぁぁぁぁぁぁ!? ていうか、今のは俺達のせいじゃないだろうが!?」
「うっさい!? あんたは大人しく記憶を失えばいいのよ!?」
「無茶言うなアカイアクマぁ!?」
「なんですってぇ!?」
 避けまくる俺。叫びながら撃ちまくる凜。
「何をやっているのかな……さて、そこ弓兵……殺気を向けられても困るのだがな?」
 で、スカアハなにやらアーチャーに視線を向けつつシリアスやってるし。
それはそれとして――
「死ねえぇぇぇぇぇぇ!?」
「なんでじゃあぁぁぁぁぁ!?」
 こっちをなんとかして欲しいんですけど!?



 あとがき
そんなわけで士郎の世界に戻り、さくっと桜の問題を解決した翔太達。
が、なぜか凜とアーチャーが現われました。さて、彼女達の登場がどう関係してくるのか?
次回は凜達との話し合いになります。そこで話し合われることとは……というお話です。
次回をお楽しみに〜



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