in side

「これはなんなのよぉぉぉぉぉぉ、はぐ!?」
「ん〜……」
 そんな叫び声が聞こえて体を起こす俺。なんだ、今のは?
「なに……今の……」
「さぁ?」
 同じく目を覚ました理華に首を傾げながら答えてみる。
今の声はスカアハ達や士郎達じゃないよな? じゃあ、誰だろ?
とりあえず、俺も理華も服を着てから居間へと向かってみる。
するとどうでしょう。へたり込んでいる士郎の前に女性が床に突っ伏してるじゃありませんか。
いや、何さこの状況は? なぜに士郎がへたり込んでる? この女性、誰?
「何があった?」
「いや、黙らせようとして打ち所を間違えた」
 その突っ伏している女性の後ろに立っていたスカアハに聞いてみると、そんな言葉が返ってきました。
いや、なにやってんだよ? ていうか、打ち所を間違えたって何?
「で、どういうことよ?」
「いきなりこの人がやってきたと思ったら、私達がいることに騒ぎ出してね。スカアハが静かにさせようとしたみたいだけど――」
 まったくもって状況がわからなかったので改めて問い掛けると、メディアがスカアハに視線を向けつつ答えてくれました。
スカアハ達がいたことに騒ぎ出した? あ、もしかしてこの人って藤村 大河か? うん、見覚えのある服装だし。
なるほど、ゲームのように士郎を問い詰めようとしたわけか……でも、スカアハよ。他にやりようなかったわけ?
で、朝食の準備が終わる頃には目を覚ましたけどね。
「で、どういうことなの?」
 睨む藤村さん(大河と呼ぶと怒るのを思い出した)だが、士郎は困った顔をする。
まぁ、言いにくいこともあるだろうし、士郎はこういうのは苦手だったはずだし。
「そう睨まないでください。彼は何も悪くないのですから」
「でも――」
「藤村さん?」
「う……」
 スカアハに言われても最初は文句を言おうとした藤村さんだが、睨まれたせいか縮こまってしまう。
お〜、ゲームじゃ傍若無人の塊のような藤村さんが大人しくなってる。スカアハに殴られたせいかね?
「おほん。自己紹介がまだでしたので……私の名はスカアハ。ここへは仕事で来ました」
「仕事……ですか?」
「ええ……そこにいる凜さんと桜さんとイリヤさん……
イリヤさんのフルネームは後ほどお教えしますが、彼女達以外は私と同じ職場で働く者達です」
 首を傾げる藤村さんにスカアハはうなずきながら話していたが……仕事で来たことにしたのか。
でも、それって無理がないかね?
「仕事はわかりましたが……それがなんで士郎の家にいるんですか?」
「それなんですが……彼女……イリヤスフィール・フォン・アインツベルンというのですが……
実は彼女……衛宮 切嗣氏の娘でして――」
「……へ?」
 問い掛けた藤村さんだが、なにやら言いにくそうにしているスカアハの言葉を聞いて呆然となってしまった。
イリヤがなにやら睨んでいたが……ていうか、スカアハさん。その表情って演技? だとしたら、上手すぎないか?
「私どもはいわゆる探偵業のようなものをしているのですが、その私どもにイリヤさんが父を捜して欲しいと依頼がありまして……
それで調査をし、ここへ来たというわけなのです」
「……え、えっと……本当……なの、かな?」
「はい……改めまして、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンです。よろしくお願いいたしますわ」
 スカアハの話を聞いてゼンマイ仕掛けの人形みたく首を動かす藤村さん。
それに対し、イリヤは立ち上がってスカートの両端を持ちつつ、優雅に挨拶をしていたが……
俺は見逃さなかった。イリヤがわずかに笑みを浮かべていたのを……からかってるんだな、あれ……
「え? あ、う……切嗣さんに……子供……」
「ええ、まぁ……ですが、それ故に切嗣さんの行動に不審な点がありましたので、詳しい調査が必要になり……我々が来たわけです。
イリヤさんがいるのは、切嗣氏の死を知って線香を手向けたいと言いまして……それで一緒に来た次第でして……」
 なにやらぶつぶつと言い出した藤村さんにスカアハはすまなそうに言うのだが……
良くもまぁ、そんな嘘が言えるもんだな。士郎なんか顔が引きつってるぞ。セイバーも何か言いたそうな顔をしてるし。
「え、ええと……それはわかりましたが……それでなんで遠坂さんまでいるのかな?」
 明らかに動揺している藤村さんだが、そんなことを聞いてきた。
まぁ、確かに凜は藤村さんが勤める学校の生徒だし、本来ならこの場にいないはずの人物だしな。
そのことを聞くのは当然かね?
「彼女には道案内をしてもらったのです。切嗣氏の調査の際に住んでいた場所の住所はわかっていましたが……
なにぶん、不慣れな土地だったので迷いまして……それで彼女に声を掛けて、道案内をお願いしたのです」
「本当……なの?」
「はい。夕食の買い物をしていた時に声を掛けられまして……
別に急いでもおりませんでしたし、本当に困っておられたようなので――」
 動揺したまま聞いてくる藤村さんに凜は微笑みなんぞ浮かべて答えていました。
昨日までの凜を見ている身としてはそれは明らかに猫被ってるだろとツッコミを入れたくなったけど。
「で、でも……それでなんで……士郎の家にいるのかなぁ?」
「はい……最初は案内だけですぐに帰ろうと思ったのですが、イリヤさん達にお礼がしたいと言われまして……
そのまま話し込んでしまい、気が付いたら夜も遅くなり……良かったら泊まっていかないかと衛宮君に言われまして……
最近、物騒な噂も聞きましたので、衛宮君のご厚意に甘えさせてもらった次第です」
 それはもう可哀想なくらいにおどおどしてる藤村さんに凜はさわやかな笑顔を向けていた。
で、その笑顔を士郎にも向けるんだが……士郎の顔が引きつっている。
いやだってね……見た目こそ笑顔だが、感じとしては般若……だよな? あれは絶対に。
しかも、なんか殴っ血KILLとかの雰囲気出してるし……たぶん、うなずいとけとかそういうのを士郎に伝えたいんだろう。
ならば、なぜそんな雰囲気を出す必要があるのか問い詰めたいのだが……
「本当……なの?」
「え? あ……そ、その……ほら! 最近、ガス漏れとか人が襲われたとかニュースでやってたじゃないか!
だからさ! 危ないと思って……その……」
「それに関しては私からも頭を下げさせてもらいます。彼女を引き留めてしまったのは私達ですし……」
 なにやら訴えるような目を向けつつ問い掛ける藤村さんに士郎は慌てて答え……
スカアハも頭を下げつつ言うのだが、その表情は明らかに呆れている様子であった。
凜もしてやったりって感じの笑顔になってやがるし……狙ってたな?
「他の者達の紹介は……失礼ですが、食事中でいいでしょうか? 料理も冷めてしまいますし」
「あ、そうですね。私もお腹空いたし」
 スカアハの話に藤村さんが笑顔で乗ってくる。ちなみに朝食は士郎と桜の手による物だったりするけど。
そんなわけで朝食となり、その最中にスカアハが俺達の紹介をし、俺達はそれに合わせて頭を下げたりしていた。
俺や理華、セイバーや式は若いということから見習いとされたけどな。
で、朝食もみんなが食べ終えようとしていた時――
「ああ、そうでした。藤村先生……言い忘れていたことがありまして」
「ん? 何?」
 茶碗と箸を置いた凜……ちなみに食事中にガッツポーズを取っていたのは見間違いじゃないよな?
ともかく、その凜の言葉にまだ食べ続けてる藤村さんが顔を向け――
「はい、実は……衛宮君の家に下宿させてもらうことになりまして――」
「……はい?」
 凜のその一言に物の見事に固まりました。いや、いきなり何を言い出す?
士郎だけじゃなく、スカアハも驚いてるじゃないか……いや、俺も驚いてるけどさ……
「ど、どういうことよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?
遠坂さんが下宿って……お前はどこのラブコメの主人公だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「おわわわわわわ!? お、落ち着け!? 藤ねぇ!?」
 ただいま大絶賛で混乱中の藤村さんに思いっきり揺さぶられる士郎君……
うん、あんたが落ち着けよ……そんでもって凜……そこで笑うな。ていうか、なんで諸葛凛の姿が見えるんだ?
狙ってたのか? うん、狙ってたのね……なんでまたそんなことするんだよ?
「とっとと話せぇぇぇ、え?」
「藤村さん、それでは話を聞くのは無理ですよ?」
「……はい」
 未だにわめく藤村さんだったが、スカアハに襟をつかみ上げられた途端に大人しくなった。
うん、流石だスカアハ……ていうか、今のを良く止められたよな? なんていうか、手懐けてないか?
「そういえば……そんな話をしておりましたね……」
「ええ……住んでいる家の老朽化が進んでおりまして……それでリフォームをすることにしたのですが……
そのことを話しましたら、それならリフォームが終わるまで家で下宿したらどうだい? と言われまして――
学生なので節制に努めるべきと思いましたので、お言葉に甘えようと思った次第です」
 顔を向けて……もっとも、かな〜り呆れた顔をしてたけど……問い掛けるスカアハにこれまたさわやかな笑顔で答える凜。
しかし、俺達には殴っ血KILLといった様子の表情を士郎に向けてるようにしか見えないんだが……
「本当……なの?」
「え? あ、ああ! ほら、ホテルとかアパートとかじゃお金が掛かるだろ?
だから、もし良かったらと思って――」
 藤村さんに睨まれてか、士郎は慌てた様子で答えるが……凜よ、楽しそうに見てんじゃない。
周りの奴らは呆れかえってるぞ。桜の場合はどっちかというと驚愕って感じがするが……
「うう、でもぉ……もし、間違いとかがあったら――」
「あら、藤村先生は衛宮君が間違いを起こすとお思いなのですか?」
「そ、そんなことないもん!」
「なら、何も問題はありませんわね?」
「う……」
 それでも反論しようとする藤村さんなのだが、凜の切り返しに何も言えなくなってしまう。
ひでぇ……何がひでぇって、人の厚意を逆手に取ってるのが……凜、あんた詐欺師になれるよ……
その後、時間ということで藤村さんは学校へと出勤するのだった。
トボトボというのが似合っているような歩き方を見た時はすっげぇ気の毒に思ったけど……
「ていうか、なんで士郎を困らせるようなことしたんだよ?」
「だって、士郎の魔術のデタラメさに腹が立って……」
「気持ちはわからなくもないけどね……」
 それを見送ってから凜に聞いてみたらそんなことを言ってきやがりました。
メディアが呆れつつも同意はしてくれたが……いや、それであんなことするのはどうかと思うぞ?
ん? ちょいと待てよ……確か、ゲームでも凜は士郎の家に下宿してたと思ったが――
「そういや、なんでここに下宿することにしたんだ?」
「まぁ、手を組んだからというのもあるけど、ここだと色々と重宝するのよ。
申し訳程度とはいえ結界はあるし、士郎には魔術のなんたるかを教えておきたいし――
それにメディアやバゼットがいるから、出来たら魔術のことをちょっとでもいいから聞いてみたいし――
後はボルテクス界の魔法って奴にも興味があるから、出来れば見せてもらえないかなぁ〜とね。
それにここだと泊まれる部屋があるから、いちいち家から来るより楽だし」
 疑問に思ったんで聞いてみたら、凜は指を折りながら教えてくれました。
なんというか……自分のために下宿するとか言い出してるようにも聞こえるのは気のせいだろうか?
それにボルテクス界の魔法を見たいって……昨夜、俺の治療で使った魔法だけじゃ飽き足らないのかね?
「まったく……翔太。体の方はどうだ?」
「一応、何ともない」
 スカアハに聞かれたんで正直に答えておく。昨夜の戦いの後に治療を受けたおかげか、これといって異常は感じられない。
普通に戦う分には問題は無い……と、思う。いや、俺はそういうのは詳しいわけじゃないからさ。
「そうか……この後のことだが、士郎、凜、桜は学校に行くのかな?」
「え? あ、はい。流石に行かないわけにはいかないでしょうし――」
「ま、当然よね」
「桜は少し様子を見た方がいいと思うわ。昨日の今日だしね」
 スカアハの問い掛けに士郎と凜が答えるが、桜の方はメディアが代わりに答えていた。
そういや、桜は昨日治療をしたんだっけ? 見た目的には元気に見えるけど? 確か、朝食の用意もしてたよね?
「あ、あの……私は大丈夫ですけど……」
「体の方はいいけど、あなたの場合は魔術的な要因だから……もう少し様子を見ておきたいのよね」
「それはメディアが見ておかないとダメなことか?」
「対処を知っていれば、誰でもいいけど……」
 桜がすまなそうな感じでそんなことを言い出すが、それにメディアが待ったを掛けた。
スカアハの問いにはメディアは桜を見つつ答えてたけどな。
「そうか。イリヤ、申し訳無いが残って桜の様子を見てもらえるかな?」
「ん〜……まぁ、いいわ。でも、セラとリズを呼んでもいいかしら?」
「構わない。変なことをしなければ……だがな。式はどうする?」
「俺も家にいるわ」
 イリヤの返事を聞いたスカアハがそう答えてから式に問い掛けるとそんな返事が返ってくるが……
なんだろ? スカアハは何をするつもりなんだろうか?
「わかった。では、士郎と凜は学校に行ってもらう」
「あ、あの……私は霊体化が出来ないのですが――」
 スカアハの言葉にセイバーがおずおずと手を挙げる。そういや、なんか理由があってセイバーは霊体化出来なかったんだよな。
それでゲームじゃ学校に行く士郎と一緒に行動出来なかったんだっけ?
「それも含めて説明する。その間、私達は町を歩いて異常が起きていないかを調べる。といっても、町は当然広いからな。
そこで二手に分かれる。翔太は理華とメディアとセイバーと一緒に士郎の学校の近くを回ってくれ。
そうすれば、士郎に何かあってもセイバーはすぐに駆け付けることが出来るからな。
私はクー・フーリンと一緒に町の方を回る。バゼットは悪いが私達と一緒に行動してくれ」
「わかりました」
「でも、それって大丈夫なの? いくら近くにいるっていっても、下手したらヤバイ所じゃないわよ?」
 スカアハの説明にバゼットがうなずくが……見回りかぁ。まぁ、悪魔に襲われない分、まだ楽な方かな?
しかし、凜の疑問ももっともだな。いくら学校つっても、襲ってくる時は襲ってくるし……
あれ? そういえば、ゲームじゃ実際に学校で襲われてなかったっけ? 確か、そんなことをした奴がいたような――
「確かにな。だから、凜には士郎と出来るだけ一緒に行動して欲しい。
そうすれば、自動的にアーチャーの護衛に入ることになるしな。最悪、令呪を使えばいい。
ただし、目立つようなことはしないでくれよ? それで目を付けられたら、それこそ本末転倒だからな」
「それもどうかとは思うけど……ま、いいでしょう。それに目立つような真似なんてするわけないでしょ?
どこで敵が見てるかわかったものじゃないもの。当然でしょ?」
 スカアハの説明にまだ納得し切れてないようだが、それでも凜はうなずく。
まぁ、凜だから目立つとかはしないだろうけど……桜が羨ましそうな顔を向けてるのは突っ込んじゃダメだろうか?
 ちなみに目立つことはしないと言った凜だが……この後、凜が学校でやった行動が墓穴を掘ることになったりする。
今の段階じゃわかることじゃないのでツッコミも出来ないけどな。
「では、話したとおりに行動してもらうぞ。それと何か見つけてもすぐに何かしようとするな?
一応、メディアに頼んで連絡が取り合えるようにするが、それでもすぐに駆け付けることが出来るわけじゃないからな」
「いや、しねぇって……」
 スカアハの話に右手をイヤイヤと軽く振りつつ断っておく。
俺は自殺志願者じゃないからね。やばそうなもんに近付くつもりなんてありませんよ?
まぁ、そんなわけでこの後、スカアハの指示通りに動くことになるのだが……戦いにならないよね?


 out side

 登校する士郎であるが……この時、彼はもの凄く目立っていた。というのも――
「あら? どうしたかしら、衛宮君?」
 凜と一緒に登校していたからである。凜は学校ではミスパーフェクトとか呼ばれて人気が高い。
そんな彼女と別の意味で有名人な士郎が並んで登校しているのだ。しかも、凜の方からだが話し掛けていたりする。
そのために周りの登校中の生徒達から注目を浴びてしまっているのである。
 これには士郎としては居心地が悪かった。なにしろ、今まで受けたことの無い注目を浴びているのである。
そのせいか、どこか自分が悪いような気がしてならなかったのだ。
「どうしたって……なぁ……あのさ……スカアハさんは一緒にいろとは言ったけど……こんなに近くでなくても良くないか?」
「あら、なにか不満なの?」
 なので、士郎は思わずそんなことを言ってしまうのだが、凜は首を傾げながら問い掛けてしまう。
その仕草に士郎は顔が赤くなるのを感じて……何も言えなくなってしまった。
 ちなみにだが、今回のことはどちらかというと士郎の言い分が正しかったりする。
確かにスカアハは一緒に行動しろとは言ったが、このようにそばにいてとまでは言ってはいない。
せいぜい、目が届く範囲でという意味で一緒にいろということだったのだが……
凜は何を思ったのか、このような形で士郎と一緒に行動しようと考えたのである。
それに凜にしてみれば注目を浴びるのはいつものことなので、今の状況も大して気にはしていない。
 そんなこんなで学校にたどり着く士郎と凜であったが――
「なんだ……これ……」
 そのことに気付いてたじろぐ士郎の横で、凜は顔をしかめていた。何があったのか?
感じたのだ。学校から異様な雰囲気を……でも、周りの生徒達は気にした様子も無く学校へと入っていたが……
「なんだよ……これ……」
「結界ね……どんな物かは調べてみないとわからないけど……少なくともまともなもんじゃないわね」
「そんな……」
 見上げるような形で学校を見る凜の話に問い掛けた士郎は呆然とした。
話していた凜もその表情はどこか怒りを我慢しているようにも見えるが……まぁ、これはある意味当然とも言える。
魔術師ならばすぐに気付く異常性……まるで結界を隠す気が無いと言っているようなものだ。
しかも、設置された場所が学校ともなれば、最悪学校にいる者達が巻き込まれる可能性が高い。
明らかに魔術師としての義務とも言える秘匿を完全に無視した行いだ。故に凜は怒りを感じたのだ。
 ちなみに余談となるが、士郎が異常性に気付いたのはボルテクス界で戦ってきたから……
というのもあるが、魔術の基礎を学び直したのが大きいだろう。
それに封印指定された人形師、蒼崎 橙子とメディアに封印指定の執行者のバゼットから魔術を習っているのだ。
今の所は魔力の扱い方などの基本くらいだが、その3人から学んでいるおかげで魔術の練度が少しばかり向上したのである。
「今は流石に無理だから……昼休みに屋上で会いましょう。その時に対策を話し合いたいから……」
「わかった」
「それじゃあ、後でね……」
 士郎と凜はうなずき合うと、別れる様な形で学校へと入っていくのだった。
しかし、その様子は周りから見れば何かがあったと思わせるような物で……
その様子を含め、登校時から2人を見ていたある者は拳を振るわせていたのだった。
 この2人の行動が一般人の生徒を巻き込むことになろうとは……今はまだ、士郎も凜も気付くことは無かった。
その拳を振るわせていた者に気付いていたアーチャー以外は――


「なぁ……」
「なんでしょうか?」
 さて、少し時間が経って、翔太、理華、メディア、セイバーはスカアハに言われた通りに士郎が通う学校の近くにいたのだが――
翔太に声を掛けられて振り返るセイバー。その右手には肉まんが握られていたりするが……
「どんだけ喰う気だ?」
 翔太がジト目で問い掛ける。
というのも、学校に向かうまでの間に食べ物を売っている店の前を通りかかると、決まってセイバーが足を止めてしまうのである。
翔太が声を掛けるもののセイバーは動こうとせず……仕方なく買ってあげる羽目になっていた。
 ちなみにお金の方はシンジから預かっていたというスカアハから渡された物である。金額的にそれなりにリッチといった所だが――
「そうですね。今の時代の食べ物、特にこの国のは本当に美味しい。なので、もう2、3軒程回ってみたいですね」
「まだ喰う気か!? ていうか目的忘れてるだろ!?」
「失敬な。私が士郎を守ることを放棄するわけが無いでしょう? ですが、腹が減っては戦は出来ぬと言うではありませんか」
「明らかに喰いすぎだぁぁぁぁぁぁぁ!?」
 セイバーの返事に翔太は思わず絶叫……ある意味、ちょっとしたコントにも見えなくはないが……
この光景に理華は苦笑し、メディアは呆れていたのだった。
なお、周りが無関心なのはメディアが目立たないようにと軽い認識阻害を起こす結界を張っているからである。
騒がしくはあるが、それなりに楽しそうな翔太達。だが、今はまだ気付かない。


 新たな戦いがすぐそこまで迫っていることに――



 あとがき
そんなわけで新たな1日が始まり、それぞれ行動する翔太達。
しかし、士郎が通う学校では結界が張られており、なにやら起こりそうな様子。
そんなわけで次回はその学校でのお話。
結界を調べようとする士郎と凜だが、士郎は異変に気付いて単身そこへ向かってしまう。
そこにいたのは親友とサーヴァント……それに士郎の知り合いの生徒達であった。
いったい、何が起きようとしていたのか? 次回はそんなお話です。お楽しみ〜



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