in side

 さて、理華がようやくどいてくれたので立ち上がって状況を見てみる。
まず、士郎。後ろにはなんか見たことがある女生徒達がいた。ええと、美綴と……
名前なんだったっけ? あの3人組の……確か、氷室と三枝と蒔寺だったかな?
 で、そんな士郎達と向かい合うように立っているのはワカメっぽい髪をした奴と……あれってライダーだよな?
あ、あのワカメっぽい髪をしたのって確か桜の兄で慎二だっけ? なぜだろうか?
同じシンジという名前の奴と比べると、こっちの方が安っぽく見えるのは……
 で、セイバーはランサーと戦闘中か……ふむ――
「なぁ、士郎……逃げようか?」
「はい……って、はぁ!?」
「あなたって人は……」
 俺の提案に士郎はうなずきかけて驚いたように顔を向けていた。メディアには呆れられてたけど。
けどさぁ……
「いいの、それって……」
「そうですよ!?」
「いや、だってさぁ……たぶんだけど、その子達を守ろうとしてんだろ? だったらさ、戦う必要なんて無くね?」
 同じく呆れてる理華と戸惑ってる士郎にそう言ってやる。
いや、ただ単にその方がいいんじゃないかって思っただけなんだけどね。
「確かにそうだけど……あいつらがそれを許してくれると思う?」
「やっぱダメか」
 もっとも、メディアのツッコミにすぐに諦めたけど。だってねぇ――
「なんなんだよ、お前らは!」
 ワカメがこっちを睨んでるしね。
「黙れ、ワカメ」
「誰がワカメだ!?」
 とりあえず黙らせようとしたら怒られました。はて、なんで怒られてるんだろうか?
「いや、だって髪型がどう見たってワカメだもん。うん、お前ワカメで決定」
「ぷ……」
 指を差しながら答えてやる。うん、なんかこいつのことを慎二と呼ぶのが嫌なんだよね。
だから、ワカメで決定と。あ、蒔寺が笑ってるし。
「ライダー、そいつを殺せぇ!?」
 だが、ワカメは気に入らなかったようで大層怒っていました。
「ダメだったのかな?」
「いや、普通そうでしょう?」
「余所見をするなんて、余裕ですね」
 顔を向けると、理華が呆れた様子でため息を吐いていました。まぁ、冗談はさておいて……
いつの間にやら目の前にいるライダーさん。すでに殴りかかっておりますが――
「な!?」
 拳を受け止めただけなんだけど、なぜか驚かれました。いや、普通に受け止めただけなんだけど?
「く!」
「おっと」
 すぐさま蹴りが来たので、後ろに跳んで避けるんだけど……
「な!?」
「なに驚いてんの?」
 なぜかライダーに驚かれました? はて、なんか動きが遅いような気がするのは気のせいか?
前に戦ったランサーほど速くは感じないような――
「この!」
「おっと」
 が、なんか怒り出したライダーが鎖に繋がれた杭っぽい物を振り回してきました。
「てぇ!? 鎖は危ないって!?」
 しかも、一緒に鎖も振り回してくるし。当ると痛いじゃ済まないので当然避けるけど。
「だぁ!? 理華でもメディアでもいいからなんとかしてくれぇ!?」
「しょうがないなぁ……ガルーラ!」
「な!? く!」
 一応、剣とGUMPはリュックの中だが、この状態じゃ取り出せないって。
なのでお願いしてみたら理華が魔法を使ってくれました。最近、火炎系以外の魔法も使えるようになったよねぇ……
おかげでライダーが吹き飛ばされそうになってます。その間に離れて――
「わりぃ! 時間稼いでくれ!」
「わかった!」
 急いでリュックを降ろして剣とGUMPを取り出しつつ、そんなことを頼んでおく。
それで理華が剣を持って前に出てくれたんで、その間にリュックを背負い直してGUMPを開いて操作。
「なんなのですか、あなた達は!?」
「なんだっていいじゃない!」
 なにやら怒ってるライダーに理華も言い返す中、俺はすでにGUMPの操作を終えていた。
「な!?」
「なんだありゃ!?」
 なんか、ワカメとランサーが驚いてるが……そっちは無視しておこう。あ、美綴達も驚いてるや。
とりあえず、今喚び出したのはルカとシルフにモーショボー。
本音を言うと全員喚び出したかったが……全員を呼ぶと別な意味でやばそうな気がしたのでやめた。
「なんなんだ……なんなんだよ、お前!?」
 なんかワカメが戸惑ってるが……ふむ、答えてやるか。
「通りすがりのサマナーだ。覚えとけ」
 なんて、どっかの仮面ライダーみたいなことをしてみました。
後悔はしない。もちろん、反省も――
「翔太……」
 うん、理華に呆れられてるけど、しない……んだよ? いや、マジで……


 out side

「で、どうする気なの?」
「とりあえず、二手に分かれようかと。ランサーとライダーの相手にな」
 理華の問い掛けに翔太は頭を掻きながら答えるが、メディアは当然かと内心納得していた。
士郎の知り合いらしき少女達を守るとなれば当然の対処と言える。
「てめぇ! 邪魔をする気か!?」
「なんて言ってるけど、実際はどうなわけ?」
「いきなり戦いを挑まれたのです! おかげでシロウを守ることが出来ない!」
 それを聞いてか、ランサーが怒鳴ってきた。彼にしてみれば命令とはいえ、セイバーと戦いたいという思いがある。
それに対してセイバーも翔太の問いにランサーと戦いながら、やや怒った様子で答えた。
まぁ、士郎を守ろうとして邪魔されたのだから、ある意味当然とも言える。
「人のこと言えねぇじゃねぇか」
「なら、彼の相手は私がさせてもらおうかしら? 前のお礼もしたかったしね」
 腕を組んで呆れる翔太に、メディアは悪魔の姿に戻りながら問い掛ける。
「こっちも変身した!?」
「もう、何がどうなってるのよ!?」
 その光景に蒔寺が驚くが、美綴は頭を抱えている。
あまりにも非常識なことが立て続けに起こった為に理解が追いついていないのだ。
「わかった。シルフ、セイバーを手伝ってくれ。
ルカとモー・ショボーは俺と一緒にライダーの相手をするぞ。理華、悪いけど士郎達を頼む」
「は〜い」
「わかりました」
「仰せのままに」
「うん、がんばってね」
 一方で返事を返した翔太は指示を出し、モー・ショボーは手を挙げながら、シルフはうなずき、
ルカは頭を下げて返事をし、理華も声を掛けてから士郎の元へと向かう。
「すまないが……あなた方は何者なのだ? 何が起こっているのだ?」
「あ〜……後でいいかな?」
 問い掛ける氷室に理華は困った顔で答える。というのも何を話したらいいのかわからないのだ。
それに話してもいいのか? という疑問もあったのもある。それで今のような返答になってしまったのだ。
「どういうことか……話してくれるんだろうね?」
「え、えっと……」
 一方で士郎も美綴に睨まれて困ってしまっていた。
凜やメディアから魔術は一般人には秘匿するものと教えられていたが……この場合どうすればいいのかわからなかったのだ。
相手の気を失わせたり記憶の操作なんて士郎には出来ないし、出来ればそんなことを美綴達にしたくはない。
なので、どうすればいいのか困ってしまったのである。
「行きますよ、セイバー!」
「はい!」
「ちぃ!?」
 その間にセイバーはシルフと共にランサーに襲いかかる。
シルフは剣技こそセイバーほどでは無いが、悪魔としての身体能力に元々素早さに定評がある種族である。
故にセイバー並の動きを見せる。おかげでランサーとしてはたまったものではない。
2対1の上にそれだけの実力があるために攻め込む隙が見出せない。
ただ、セイバーとシルフは今まで一緒に戦ってきた経験が無い為か、連携はさほどでもない。
そんな連携の隙を狙おうとするのだが――
「ガルーラ」
「くそ! 邪魔するんじゃねぇよ!?」
 それを承知なのか、メディアが魔法を撃ってくる。しかも、火炎や氷結、電撃では無く疾風属性の魔法で。
おかげで弾道が見えず、威力も馬鹿には出来ないためにランサーは引くしかなかった。
「あら、あの時のお礼をさせてもらおうかと思っただけよ」
「あの時の……だと?」
「忘れたかしら? 夜の林の中であなたに倒されそうになったのよ、私」
 不敵な笑みを浮かべるメディアにランサーは首を傾げるが、その話を聞いて表情を変える。
「まさか……てめぇ、キャスターか……」
「ご名答……今は悪魔となって、地母神メディアと名乗ってるけどね」
 驚愕といった表情を見せるランサーにメディアはくすりと笑みを見せた。
それを聞いて、ランサーは驚愕の表情を深めた。なぜなら――
「てめぇ、死んだんじゃ……それにどう見たって若すぎるだろ!?」
「それ、どういう事かしら?」
 そう、言峰からキャスターは死んだと聞かされている。
聖杯戦争の監視役であり、そういったことを知ることが出来るからこそ、ランサーはその話を信じたのだ。
むろん、使い魔でこの様子を見ていた言峰も驚いていたが……
が、ランサーの不用意なひと言でメディアは睨みつけていた。確かにメディアは悪魔になったことで姿も変わった。
見た目的に若くなったのは……まぁ、否めないわけではない。
だが、それは以前の時は若くはなかったと言われてるようにメディアには感じたのだ。
その結果――
「ガルダイン」
「なんじゃそりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
 とんでもねぇ竜巻を発生させて、ランサーを襲わせたのでした。
一応、結界は張ってあるとはいえ……それでも下手すれば一般人に気付かれない行為である。
それでも実行した辺り、相当怒ったようである。そんなわけで、その竜巻から逃げる羽目になったランサー。
そんな光景をセイバーとシルフは呆れた様子で見ているのだった。
 一方、翔太達の方はというと――
「女王様か、てめぇは!?」
「なんですかそれは!」
 ライダーと打ち合っていた。こちらはほぼ翔太とライダーの一騎打ちのような状態になっている。
振るわれるライダーの釘剣と鎖。翔太はそれを剣で受け流したりして攻め込む。
明らかに互角。前回のランサーとの戦いを見ると翔太が強くなったように思えるが、実を言うとそうでは無い。
翔太は今回起きている事態に巻き込まれたことで様々なストレスを抱え込む羽目になってしまった。
それがリニアスとの戦いで吹っ切れてしまったのである。そのおかげか、戦いへの集中力を高められた。
ライダーの動きがランサーより遅く感じたのはそんな理由があったのだ。
また、ライダーが正規の契約状態で無い為に全力を出せないというのも互角な戦いを可能にしている。
 これに対し、ライダーは困惑していた。明らかな異常……戦っている相手から魔力を欠片も感じない。
それは魔術などで強化をしているわけではないということになるが、ならばなぜサーヴァントたる自分に付いてこれるかがわからない。
「おわっと!?」
 だが、先程も言ったが強くなったわけではないので、ライダーに攻め込まれる場面もあったろするが――
「ええい!」
「く!?」
 そこはモー・ショボーが爪を振るい――
「アギ!」
「ちぃ!?」
 ルカが魔法を放ってライダーの動きを止めた。
こちらはいつも一緒に戦っているだけに、その連携もよどみがなかった。
「なにやってんだライダー!? さっさとそいつらを殺せよ!?」
 なのだが、状況がまったくわかってないワカメこと慎二はわめいていたりする。
「やかましいぞ、ワカメ」
「また……さっさと殺せ!? ライダァー!?」
 それを翔太に突っ込まれたことで怒りを深めた慎二は叫んでいたのだが……
ここで翔太は気付いた。慎二が持つ鞄に――
(そういや、ゲームとかでワカメって本とか持ってなかったっけ? ライダーを操るために)
 なんてことを考える。正確には違うのだが、この辺りはあえて割愛させてもらう。
翔太は行く先々の世界のことをマンガやゲームなどで知ってはいたが、その知識を活用出来る場面はほとんどといっていいほど無かった。
まぁ、翔太は元々一般人故にそのことが出来る力が無かったし、策略などの素質も無かったためではあるが……
しかし、今回はその知識が役に立つ時が来た。慎二が持つ鞄……もしかしてと翔太は考える。
「2人とも、ライダーに目くらましをしてくれ!」
「わかった!」
「わかりましたわ!」
 走り出した翔太の指示にモー・ショボーとルカは返事をし――
「「ガルーラ!」」
「くわ!?」
 2人一緒に疾風魔法を放つ。それを受けたライダーは動きを止めてしまうものの、なんとかかがむことでやり過ごしていた。
その状態のまま身構える。翔太がいつ攻撃してきてもいいようにと――
「え? うが!?」
 だが、それが間違いであるということを聞こえてきた悲鳴で知ることとなる。
「な!?」
 ライダーが振り返ると、そこには慎二の顔をわしづかみにする翔太の姿があった。
そう、翔太は始めから慎二を狙っていたのである。
「あ、が……や、やめ……ひ、卑怯だろ……こんなの!?」
「は、戦いに卑怯もくそもあるか!」
 戸惑う慎二に翔太はそう言い放つが……前にも話したと思うが、翔太には正義感も義務感も無いが、同時にプライドも無い。
もっとも、これはある意味仕方が無かった。なにしろ、翔太が戦っているのは格上である悪魔。
そんな相手にそんなことをこだわる暇なんて無かったのだ。まぁ、元からそんなものは無かったが……
その為、プライドにこだわるよりどんなことをしてでも勝つ方がマシというのが翔太の考えになってしまったのである。
「さてと、その鞄……渡してもらおうか?」
「な、なんでそんなことを――」
 翔太のいきなりの言葉に慎二はわずかに動揺を声に出してしまう。
それに気付いた翔太は眼を細め――
「ちなみに俺、リンゴを握り潰したことがあるんだけど、信じる?」
「あがががががが!?」
 少しだけ握る力を強めたのだが、慎二はなぜか悲鳴を上げた。
まぁ、少しだけと言ったが、慎二には頭が本当に潰されるんじゃないかというくらいに痛かった。
マジで骨が軋む音が聞こえたし……ちなみにだが、翔太はリンゴを握り潰したことは無い。
無いが……やろうと思えば出来なくはないだろう。というか、あっさりと出来るはずである。
それだけの力を身に付けたのだから……本人、その辺りの自覚が弱いために手加減が出来ていなかったが。
「わ、わかったぁ!? や、やめてくれぇぇぇぇぇ!?」
 それが幸いしたか、あっさりと鞄を差し出す慎二。
翔太をそれを受け取ると地面に置いて鞄を開け、中を物色する。慎二の顔をつかんだままで。
少しして、何かを見つけたのか眉を跳ね上げ――
「お、これかな?」
「それは――」
 1冊の本を取り出すと慎二の顔が慌てたように豹変する。
それを見た翔太はアタリかと本を放り投げ――
「あ――」
「ルカ! その本、燃やせ!」
「はい! アギラオ!」
 慎二が呆然と見送る中、翔太の指示にルカはすかさず火炎魔法で放り投げられた本を焼いた。
「あ……つっ!」
 そのことでライダーがなにやら反応したが、周りを見てからどこかへと跳び去ってしまった。
「待てよライダー!? どこ行く気だ!? こいつらを殺せよ!?」
 それを見た慎二は怒鳴り散らした。何が起きたのかわかっているはずなのに……それを認めたくないために虚勢をはるのだが――
「さてと……あいつは行っちゃったけど……どうする?」
「え? あ、ああぁぁぁぁぁ……」
 翔太に視線を向けられながら問い掛けられたことで現実に戻される慎二。
もう、完全に怯えている。聖杯戦争は殺し合いだというのは聞いていた。
しかし、自分にそんなことは起きないだろうと高を括っていたのだが……実際に起きようとしていることを感じてしまったのだ。
「や、やめ……こ、ころ、殺す……殺すなぁ!?」
「はぁ? なんでんなことしなきゃならねぇんだよ?」
 怯えたままでそんなことを言い出す慎二に翔太は怪訝な顔をする。
実際の所、翔太にはそんな気は一切無い。慎二が翔太を怒らせるようなことをしない限りは……
「そ、そうか……殺さないん……だな?」
 翔太の表情を見てかほっとする慎二。殺されないとわかってか余裕が出来――
「な、なぁ……物は相談なんだが――」
「まぁ、殺しはしないな」
 しかし、状況が悪いのは変わらないため、どうにかしようと慎二が話しかけようとした所で翔太がそんなことを言い出す。
「は?」
 その意味を慎二は理解出来てなかった。直後に理解する羽目になったが――
「ぶおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
 いきなり振り回されることによって。ちなみに翔太は片手で慎二の顔をわしづかみにしたままである。
人間が人間を片手でジャイアントスイングの如く振り回す……明らかにアニメやマンガでもないとありえない状況が起きていた。
「すっげぇ……」
「う、うそ……」
「なんと……」
 その光景に蒔寺は目を輝かせていたが、美綴と氷室は呆然とそれを見ていた。
2人にとってはあまりにもぶっ飛んだ光景だったために完全に理解が追いついていなかったのだ。
ちなみに三枝はというと凄いなぁ〜といった表情で見ていたが……
「飛んでけぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――」
 その間に翔太は叫びと共に慎二をぶん投げた。もう一度言う。ぶん投げたのだ。
野球ボールを投げるが如く、空高々と……それによって慎二は悲鳴と共に空を舞うはめとなった。
「す、凄いですね……翔太さん……」
「いや、あれはやり過ぎだとは思うけど……」
 そんな光景を士郎と理華は呆れた様子で眺めつつ、そんなことを話し合っていたが――
直後、でっかい水柱が起こる。どうやら、裏庭にあったため池に落ちたようである。
落ちた高さが高さだけに、そのままご臨終になっているかもしれないが……
「な、なぁ……あれって……やばくない?」
「たぶん大丈夫だろ」
 指を差す美綴の言葉に翔太はそう言うが……顔は完全に背けている。
翔太自身、ちょっとやりすぎたかな〜と今更思ってたりするのだが……
「さ〜て〜と〜……まだやる気?」
「く……」
 気を取り直して振り向く翔太に、ランサーは思わず舌打ちをしてしまう。
ライダーは撤退し、慎二は……一応死んではいないが、どの道戦えはしない。
となると自分だけで翔太達を相手にしなければならなくなる。
「くそ……だが、この屈辱はいつか晴らさせてもらうからな!」
 結果、ランサーは撤退することにしたが……本人としてはかなり不本意な形であった。
なにしろ、満足な戦いが出来ずじまいだったのだ。ランサーとしては面白いはずもない。
このままでは負けるのは目に見えていたために、苦渋の決断となったのである。
「あ〜行ってくれたか……」
「ところで……あの子達はどうするの?」
 それを見送った翔太は深いため息を吐くが、メディアが指を差しつつ問い掛けてきた。
指した先には美綴達がいて、誰もが士郎や翔太などをじっと見ている。
「どうしたらいいと思う?」
「普通なら記憶を消したい所だけど……ランサーのマスターがその気ならこの娘達を人質になんてこともやりそうだと思うけど?」
 メディアの返事を聞いて翔太は考えてみる。確か、ランサーの今のマスターはあの言峰のはず。
そんでもって、その言峰は人の不幸を見るのが好きというこまった性格をしている。
そんな奴が美綴達に何もしないと言えるだろうか? やりそうな気がすると翔太は即座に判断した。
「話しても……いいのかなぁ……」
「さぁ? でも、そっちの方が色々とやりやすくなると思うけど?」
 翔太の疑問にメディアはそう答える。
確かに内緒にするよりは知っておいてもらった方が色々とやりやすいのは確かだが……
「でも、なんかすっげぇ不安な奴がいると思うんだが?」
「そっちは魔術とかで話せないようにしておくわ」
 ある人物を指差しつつ半眼で問い掛ける翔太に、メディアはため息混じりに答えた。
ちなみに翔太が指差した人物は冬木の黒豹だったりするが……


 その頃――
「く、なんなのだあやつらは!」
 台を叩きながら言峰はそんな文句を漏らした。
自分の目的と愉しみの為にランサーに孤立した士郎を襲わせたが、結果はランサーの撤退。
自分が望んでいた場面はわずかしか見れず、逆に不愉快な物ばかりを見るはめとなった。
それはまだいい。このままでは自分の目的に支障が出ると言峰は考え始める。
どうするか……と考えるものの、答えはすぐに出た。
「あやつに頼むか……まったく、どこを歩いているのかな?」
 などと、無表情でそんなことを言い放つのだが……そんな言峰がいる教会の外にシンジの姿があった。
「ふむ、動き出しましたか……まぁ、予想通りですが……さて、どうします――」
 背を壁に預けながらそんなことをシンジは考える。
言峰が翔太達を知れば、”あれ”を動かすのは目に見えていた。それはもう少しすれば翔太達の前に姿を現すだろう。
そうなれば、翔太達は負けるかもしれない。なぜなら、あいつは――
などと考えていた時、シンジは空を見上げるような形で顔を上げた。
「やれやれ、これは流石に予想外でしたね」
 どこか呆れた様子を見せるシンジ。何があったのか? 感じたのだ。ある世界の危機を――
「どうやら、急いだ方が良さそうですね。まったく、次から次へと問題が起きますねぇ……」
 などと言いながら、シンジはその場から姿を消すのであった。
ある世界の危機の状況を知るために――



 あとがき
そんなわけで戦闘編……書いといてなんですが、ダメだなこりゃ……
何がダメなのかは……いつの日かのお楽しみといことで(おい)
さて、次回は美綴達に事情を話すことにした翔太達。
更に詳しい説明をするために士郎の家に行くのだが、そこにある者達が現われて――
というようなお話です。次回をお楽しみに〜



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