in side

 さて、一夜経った次の日の朝。俺達は関西呪術協会の総本山の一室で朝食を食べていたりする。
もっとも、俺だけは別なことをしていたが……
「あう……」
「大丈夫?」
「う、うん……なんか、違和感が……」
 で、ミュウは朝食に悪戦苦闘していたが……まぁ、無理もないか。
だって、お人形サイズからいきなり普通の人のサイズになったからなぁ。
お人形サイズだった時は手づかみで食べていたけど、今は箸を使おうとして上手く使えずに落としてるし。
理華が心配してるが……まぁ、あっちはあれで大丈夫だろう。俺の方はやばいんだが……
あ、そうそう。美綴達やハルナ達も普通に食事をしている。ただ、眠れなかったようで、若干寝不足気味に見える。
そんだけ怖かったんだろう。それが当たり前だとは思うんだが……うん、なんで慣れてるかね、俺……
「ふふ……」
 不意にエヴァが笑い出した。見ている先は……セイバー?
「どうかしましたか?」
「なに、600年も生きると色々な奴に出会うが、まさかお前のような者に出会えるとは思っていなかっただけだよ」
 朝食をコクコクとうなずきつつおかわりまでしていたセイバーも流石に気付いて問い掛けるのだが、
エヴァはというとふっと笑みをセイバーに向け――
「なぁ、アーサー王?」
 なんてことを言ってくれやがりました。
「「「え?」」」
 それに反応したのはのどかに夕映とネギ。あ、氷室も顔を向けてら。
「え、エヴァンジェリンさん……それはどういう――」
「なに、エクスカリバーの持ち主となれば、思い当たるのは1人しかいなくてな」
 戸惑う夕映にエヴァは得意気な顔で答えるのだが……そういや、セイバーの正体のこと忘れてたな。
なので、アーサー王というのがどういう人なのかは、ほとんど知らなかったりするんだよね。
「ほ、本当にアーサー王なんですか!?」
「坊やも見ただろう? あの剣の神々しさと力を。あれがエクスカリバーというのなら、納得というものだ」
 で、なぜかネギは興奮している。なんでだ? エヴァも笑みを見せながら説明してたけど。
「ええ……かつて、私はブリテンを治めていました」
「す、凄い!? 本当にアーサー王なんだ!?」
 なんかやれやれといった感じにも見えるが、白状するセイバー。
で、ネギは更に興奮してるし。だから、なんで興奮してるのよ?
「どうしたの、ネギ君……」
「アーサー王はイギリスなどでは物語や伝説などで広まっているからな。
確か、ネギもウェールズが出身だったはずだから、それで知っていてもおかしくはあるまい」
 理華の疑問にスカアハが腕を組みつつ答える。なるほどねぇ……あ、ネギがセイバーに詰め寄ってる。
セイバーも困ってるなぁ……あ、明日菜に殴られてら。
「ごめん……迷惑掛けちゃって……ほら、あんたも謝りなさい!」
「あうう……ごめんなさい……」
「あ、いえ……お気になさらずに――」
 明日菜に強引に頭を下げられてるネギが謝るが、セイバーはおろおろとするだけ。
まぁ、ある意味コントだよな。あれって……
「で、お前はメドゥーサか……ギリシャ神話に出てくる奴に会えるとも思っていなかったぞ」
「良く、わかりましたね?」
「切り落とされた首から流れ出た血よりペガサスが出たという話があったからな。それでだよ」
 で、相変わらず笑みを浮かべるエヴァにライダーは少し驚いたって顔をしている。
しっかし、切り落とされた首からって……なんか、明らかにろくなことじゃねぇよな。
なんでまたそんなことになってんだよ?
「あ、あのエヴァンジェリンさん……メドゥーサとはあのギリシャ神話の怪物のことでは……」
「ふむ……なるほど。お前はそちらの方を読んでいたのか……言っておくがメドゥーサに関していくつか話があってな。
そっちの方も読んでみろ。まぁ、それでギリシャ神話の見方が変わるだろうが」
 なんか戸惑ってる夕映にエヴァは意味ありげな視線を向けつつ答えていた。
後で聞いた話なんだが、メドゥーサってポセイドンに浮気を迫られ……それが元でアテナに恨みを買って怪物にされたらしい。
いや、正確には違うかもしれないけどな。なんか、聞いた話だとそんな感じがするんだが――
「ぶぅ〜……バーサーカーだって凄いんだからね!」
「ほほぉ……どういうことかな?」
「ふ、聞いて驚きなさい。バーサーカーはね、ギリシャ神話の英雄のヘラクレスなのよ!」
「は……なんと、あの大英雄か……はは、まさかそんな者にまで出会えるとはな!」
 なぜか不満気なイリヤだったが、聞かれると打って変わって胸を張って答えた。
それに対し、意味ありげな視線を向けていたエヴァはというと、話を聞いて喜んでいる様子。
なんか、夕映とのどかも驚いてる……あ、ネギもか……しっかし、神話とか知らない身としては、どんだけ凄いのかわからんのだが。
「今日という日は色んな意味で面白いな……で、お前はどのような者なのかな?」
 と、エヴァはアーチャーに視線を向ける。なんか、品定めをしてるというか……何か期待してるような……
まぁ、そんな感じに見えるだけだけどな。
「悪いが、そやつに関してはまだ聞かないでもらえるかな?」
「なぜかな?」
「なに、そやつはまだ答えを見つけていなくてな。それが出来るまでは教えることは出来んのだよ」
「答えだと?」
「ちょっと待ちなさい」
 首を傾げるエヴァだが、話していたスカアハの話に更に首を傾げるはめになった。
代わりに待ったを掛けたのが凜であって――
「その言いようだと、アーチャーの正体を知ってるってことかしら?
ていうか、色々とありすぎて気付かなかったけど……あのアスラってのと戦ってた時ももしかして――」
「さっき言った通り、まだ話すことは出来ん。答えの意味もな……しかし、大事なことでもある。
だから、時が来るまで待っていて欲しい。その時が来れば、嫌でも話さねばならないからな」
 睨みつける凜であったが、スカアハは腕を組みつつ答えていた。
まぁ、アーチャーの正体を考えるとな。なんか、騒ぎ出しそうだし……暴れそうだと思うのは俺だけか?
「ところで……さ……あの人達、なにやってんの?」
 そんな中でハルナに指差される俺だが、答える余裕なんて無かった。ていうのもね――
「あだだだだだだだだだ!?」
「まったく、何をやったらこんなにひどくなりやがるんだ?」
 権三郎さんに整体を受けてたから……ちなみに権三郎さん、シンジに連れて来られたらしい。
それはいいんだが……
「て、ていうか……もうちょっと痛くないように……して欲しいんだけど……」
「そうなるようにやってるがな。お前の体はそんだけひどいんだよ。たく、どんだけ無茶すればこうなるんだか」
 ほとんど痙攣のような震えを起こしてる俺に、権三郎さんは呆れたように言ってくるし……
いや、そんなこと言われてもね……無茶しないと戦えないんだって……
「どういうことなのかな?」
「翔太は特別な力を持ってはいないからな。だから、無茶をしなければならないのだが……
そのせいで体のダメージが激しすぎてな。ああして整体を受けてるのもその回復の為なのだ」
 氷室の疑問にスカアハがため息混じりに答えているが……うん、確かにそうなんだよね。
ていうか、悪魔やアスラみたいな奴らに無茶しないで戦えるか!?
「難儀な奴だな。どうにか出来ないのか?」
「したいのは山々だが……戦いに関する才能は皆無な上に変に戦闘スタイルが確立してしまっていてな。
矯正しようにも難しいのだ」
「あの……泣いていいっすか?」
 エヴァの問い掛けにスカアハは腕を組みつつ話すのだが……それを聞いて落ち込みそうになる。
うん、わかってたよ? わかってたけどね……実際に言われるとすげぇ悲しいんだけど?
「え、嘘でしょ!? あんだけ強いのに!?」
「本当だ。翔太は常に格上の相手と戦ってきたが……いつもギリギリだ。死にかけたことも何度もある。
魔法で治療しなければ、今ここにいないのは間違いないな」
「すいません……本当に泣いていいですか?」
 驚いてる明日菜にスカアハはこっちを睨みつつ話してたが……すいません、本当に泣きそうです。
いや、確かに言われたことを守らなかった俺も悪かったけどね……俺、基本近接戦闘なんですけど……
「死にかけた……というのは初めて聞きましたが?」
「初見の悪魔だと、どう戦えばいいかわからないから……それでね……」
「まぁ、自業自得の面が強いがな」
 セイバーの疑問に答えるのだが、相変わらず睨んでるスカアハに言われてしまう。
うん、ごめんなさい……本当にごめんなさい……
「なるほど……その辺りはまだガキということか」
 ふっと笑みを浮かべるエヴァはそんなこと言うが……まぁ、なんつ〜か……
反論出来ない自分が悲しい……なまじその通りだったりするし……
「おや、なにやら賑やかですね」
 そんな時ににこやかにやってきたのは詠春さんであった。
まぁ、実際はにぎやかなんてものじゃないんだが……俺、泣きそうだしね。
「さて……まずはあなた方にお礼を言わせてください。
あなた方が来なければ、この総本山は……文字通り無くなっていたかもしれませんからね」
「なに、我々も目的があって来たにすぎない。礼を言われるようなことはしておらんよ」
「それでもです。あなた方の目的のことは刹那君から聞いております。
あいにく、立場上大した事は出来ませんが、せめてお礼だけでもと思っております」
 正座をし、頭を下げる詠春さんにスカアハはそう言うんだけど……
まぁ、ネギ達が危ないって聞いて来ただけだしな。アスラのことも予想外だったし。
「そういえば、千草だったか……あやつはどうしている?」
「彼女ですか……少し前に目を覚まして尋問していますが……どうも、操られていたようです」
 エヴァの問い掛けに詠春さんは渋い顔をしながら答えてたんだが……操られていた?
それってどういうことよ?
「やはり、そうでしたか……」
「お前は気付いていたのか?」
「はい、初めて会った時に瞳の色がどうにも正気では無いとは思っていたのですが……」
 顔を向けるエヴァにつぶやきを漏らした刹那が答えるんだけど。
そういやマンガでも千草の瞳って光が入ってなかったような……やっぱり、そうだったのかね?
「確かに東の魔法使いを毛嫌いしている割には白髪の小僧を使っていたり、穴だらけの行動だったりするからな。
それが操られていたとなれば、納得出来るか……」
「それで千草はどうなるのですか?」
「難しい所ですね。操られていた間の記憶は曖昧のようなのですが……
スクナの封印を解いてしまったりなどがありましたから……何かしらの罰を受ける可能性はあります」
 腕を組むエヴァの話を聞いて刹那が問い掛けると、詠春さんは難しい顔で答えていたが……
ううむ、千草のことはマンガでしか知らんしな。下手な事を言うわけにもいかないか。
「あ、あの……コタロウ君は……どうなるのですか?」
「彼ですか……彼は千草の依頼を受けただけのようで、目的の方は詳しく知らなかったようです。
罰は受けるでしょうがそれほど重いものにはならないでしょう。どうにも、利用されただけのようですしね」
「良かった……」
 詠春の話に問い掛けたネギはほっとしていた。
こっちもマンガのことしか知らないけど、ネギなりに小太郎のことは気に入ってたのかね?
「まぁ、それらはまだ先の話となるでしょう。今は色々と後始末に追われてまして……
なにしろ、色々とやられてしまいましたから……」
 と、苦笑混じりに詠春さんは話してた。
そういや、総本山で石にされていた人達は、戻ってきた人達の手によって戻されたそうな。
まぁ、そうしてもらわないと困るけど。ディストーンは流石に数が足りないし。
「あのよろしいでしょうか?」
 と、そんなことを考えていたら凜が詠春さんに声を掛けていた。
ちゃんと正座し、静かな物腰をしているんだが……なぜだろうか? 獲物を狙うアカイアクマに見えるのは?
エヴァもそれがわかったのだろう。なんか、笑いをこらえてる。
「なんでしょうか?」
「実は……ここにある魔術書の類を見せてもらえないかと思いまして……」
「と、いいますと?」
「はい、私が元いた世界では魔術という物が存在し、私はその魔術を探求する者でした。
その一環としてこの世界の魔術を学びたいと思ったものでして――」
 詠春さんの問い掛けに凜は物静かに答えるんだが……エヴァさん、笑いすぎだって。
確かに今の凜は猫被ってるけどさ……あ、凜に睨まれてら。
「なるほど、異世界の方でしたか……刹那君からある程度ですが、話を聞いております。
重要な物は流石に無理ですが、教本といった物ならばお渡しすることは出来るでしょう。
すぐにお渡し出来るように手配させておきます」
「ありがとうございます」
 笑顔の詠春さんに凜は頭を下げるのだが……エヴァさん、笑いすぎだぞ。
こらえてるつもりなんだろうが……あ、良く見たら美綴とアーチャーもだ。
お〜い、いい加減にしとけ……凜からすっげぇ嫌な気配感じるんだけど? とばっちりはごめんだぞ?
あ、スカアハも笑いこらえてやがるし。
「では、私はまだやることがありますので、後ほど――」
 そう言って詠春さんは去っていったのだが……姿が見えなくなると凜が睨みつけてきた。
いや、なんでこっちまで睨む? 俺、笑ってないよ?
「くくく……そうやって猫を被らんと話が出来んのかな?」
「あら、研究資料をもらうんですもの。こちらが頭を下げるのは当然じゃなくて?」
 未だに笑いをこらえてるエヴァに凜は不機嫌だって様子で答える。
いやまぁ……猫被ってたのは確かだけど、笑うほどじゃないとは思うんだがね?
「所で魔術師とは……魔法使いとはどう違うのかね?」
「魔法使い?」
「そうだな。魔法使いをアウトドア派だとすれば、魔術師はインドア派……こもって研究する者が大半だ。
凜や士郎みたいなのは少数派だと思ってくれればいい。詳しいことは凜かイリヤにでも聞いてくれ」
 エヴァの問い掛けに凜は訝しげな顔をするが、代わりにスカアハが答えていた。
あれ? そういや、凜とかの魔術師って魔法に関しては特別だったような気がするんだが……
「そうさせてもらおう。それでお前達はこれらどうするのだ?」
「それなんだが……シンジが話すことがあると言ってい――」
「まぁ、ちょっと面白いことが起きてましてね」
 エヴァの疑問にスカアハが答えようとした時、遮る形でそんな声が……って、おい。
「や、どうも」
 そこにいたのはシンジであった。正座して、どこから持ってきたのかわからんが、湯飲みを両手で持ちつつお茶飲んでるし。
「はぁ……で、面白いこととはなんだ?」
「ええ、実は新たな世界へ通じる穴が現われたのですが……その世界は少々面白いことになっていましてね。
もしかしたら、翔太さんが少しばかり楽が出来るかもしれません」
 呆れた様子で問い掛けるスカアハに、シンジは指を立てつつ答えるんだが――
「楽が出来るって?」
「まだ、流動的ではありますが、そこで起きている事態がその世界の人達で解決される可能性があります」
「大丈夫なのか? 翔太の呪いの件があるんだぞ?」
 聞いてみたら、シンジはお茶を飲んでから答えたんだが……
スカアハの言うとおり、俺の呪いのせいで俺が倒したりしないといけないんじゃなかったっけ?
「ある程度までなら修正は可能ですが、何かしら下手な事が起きない限りは大丈夫でしょう」
 なんて、シンジはにこやかに答えてたが。
まぁ、ある程度か……それがどの程度かはわからないけど、完全に人任せにすることは出来ないってことかね?
「アオイ シンジとか言ったな。貴様、何者だ?」
「ある時は通りすがりの人。ある時はお節介好きな小悪党です」
 と、エヴァが睨んで聞いてくるが、シンジの野郎はにこやかに答えやがった。
いや、全然通りすがってないんだが……あ、俺も人のことは言えないか?
ちなみに話を聞いたエヴァは微妙にこめかみが引きつってるように見える。
「あ、あの……ありがとう……ございました」
 と、今度は桜が頭を下げている。ていうか、お礼? なんでだ?
「その、あなたの薬のおかげで私は――」
「お礼なんていりませんよ。あれはあのままにしておくと厄介になるだけだったので、早々に対処しただけです」
 少し怯えた様子を見せながらも桜はお礼を言おうとしたみたいだが、シンジはにこやかにそう話していた。
ああ、そういや桜の体の中にいた蟲を倒したのって、こいつが渡した薬のおかげだっけ?
未だにご飯食べてる式を連れていったのもあいつの手引きらしいし……
「それはそれとして……その世界の動向を見ておく必要があります。
それに関しては2・3日掛かると思いますので、翔太さん達は今日明日この世界でお休みなさってください。
エヴァさんの別荘を使えば1週間は余裕で休めるでしょうしね」
「時間が無かったのではなかったのかな?」
「その前になんで私の別荘のことを知っているんだ?」
 シンジの話にスカアハがそんな疑問を投げかけた。そういや、時間が無いとか言ってたもんな。
後、エヴァ。それはたぶんあいつだからだと思う……いや、確信があるわけじゃないけどな。
なんか、知ってても不思議じゃない気がするんだって。
「確かに時間はありませんが……かといって、下手に動いてもいいというわけではありませんよ。
後、別荘を知っているのは……ちょっとした情報網があるからとだけお答えしておきましょう。
あ、そうだ。忘れる所でした」
 答えていたシンジだが、何かを思い出したかのように懐に手を入れる。
で、出したのは……封筒と4つの大きさと色が違う腕輪? なんだこりゃ?
「封筒にはこの世界での滞在費と麻帆良までのチケットが入っています。
腕輪の方はサーヴァントのみなさんとミュウさんのお着替え用のアイテムです」
「私……の?」
「ええ……それがあなたの為でもありますしね」
 話を聞いて首を傾げるミュウに、話していたシンジはにこやかに答えた。
ミュウの為ってなんでだよ? ていうか――
「いや、真面目に何がどうなってるか話して欲しいんだけど?」
「ゴスロリボクっ娘さん並に後悔すると思いますけど?」
 聞いた方が早いと思って聞いてみたが……シンジ、なんだそれは……
いや、あれもとんでもなかったけどね? それ並って……本気で何が起きてるんだよ。
「ボク達も欲しいホ!」
「そうだホ!」
「あなた方は……もう少し学んだ方がいいでしょうね。人とはどんなものかを」
「「ホ?」」
 騒ぎ出すフロストとランタンであったが、シンジは微笑みながらそんなことを言い出す。
フロストトランタンは訳がわからなくて首を傾げてたけどな。
まぁ、フロストとランタンに常識的なもんを学んで欲しいとは考えたりもしたことはあったけどさ。
「あの、私にはもらえないのでしょうか?」
「あ、私にもお願い出来ませんか?」
「私も欲しい〜」
「あ〜、申し訳ありません。あなた方の分は用意していないのですよ。
今すぐというのも無理ですので……待っていてもらえませんかね?」
 ルカがそんなことを言い出すと、シルフとモー・ショボーも自分もとばかりに言い出した。
しかし、シンジは困った顔をしつつ後頭部を掻いて、そんなことを言ってたけど。
「そういや、ケルベロスはいいのか?」
「ふん、この世界はどうにも窮屈そうだからな。COMPの中で昼寝している方がマシだ」
 気になって聞いてみたんだが、ケルベロスは肩をすくめながらそう答えてくれました。
まぁ、それならいいんだけどね。でも、しっぽがそわそわしているように見えるのは気のせいか?
「では、私もそろそろ……ああ、腕輪ですが一番大きいのがバーサーカーさんの。
黒いのがアーチャーさんので、紫がライダーさんの。赤いのがミュウさんの物ですので。お間違いなく。
それでは、近い内にまたお会いしましょう」
 そんなことを言ってから、シンジはにこやかな顔を見せつつ消えていった。
相変わらず意味不明だと思うのは俺だけだろうか?
「ねぇ……あいつって本気で何者なのよ?」
「それは……説明しにくいが……まぁ、まともで無いのは否定出来ないな」
 顔を引きつらせる凜にスカアハは呆れた様子でため息を吐いてたけど。
うん、凜の気持ちもなんとなくわかる気がする。あの神出鬼没さはどうにかならないのか?
後、かなりうさんくさいんだけど?
「ねぇねぇ、とりあえずこれを付けてみたら?」
 なんて、イリヤが腕輪を指差しながらそんなことを言い出す。
互いに顔を見てから、恐る恐るといった様子で付けるのはミュウとライダー。
あっさりと付けたのはアーチャーとバーサーカーであった。
で、腕輪を付けた4人の体が輝き――
「わぁ〜……」
「ふむ……」
 ミュウは可愛らしい白のワンピース姿に。アーチャーはクロのズボンに白のシャツに黒のジャケットという出で立ちになる。
ミュウは回転しながら、アーチャーは感心した様子で今の自分の服装を見ていた。
「ふむ……」
「バーサーカー……だよね?」
 自分の両手を見つめて変化に戸惑う男にイリヤが声を掛ける。そう、この男の人ってバーサーカーなのよ。
体は二回りくらい小さくなり、黒っぽい肌は普通の肌色に戻り、ゴツゴツした体は筋肉質ながらも締まった物へと変わっていた。
顔の方もキリっとした凛々しい顔立ちになってるし。でもね、なんで着ている服がターミネーター?
「これは……」
 で、ライダーはゲームでもお馴染みのメガネにノースリーブの白いシャツの上に青いジャケットとジーンズであった。
そんなライダーに桜は目を輝かせ、士郎はぼ〜っと見ていたりする。お〜い、凜とセイバーが睨んでるぞ。
蒔寺や氷室に美綴はなにやら感心した様子を見せ、三枝は憧れの人を見ているような顔をしていた。
バゼットはなぜか羨ましそうな顔をしてたけど……
「あ、あの……やはり、醜い私ではこんなのは似合わないですよ……ね?」
「お前、ここで土下座して謝れ」
「なぜに!?」
 なぜかおどおどするライダーだが、俺のひと言に驚いていた。
いやね、今のあんたのひと言は色んな意味でケンカ売ってると思うぞ。
俺の横で理華と美希に香奈子さんもうんうんうなずいてるし。
 あ、ネギも士郎と同じ状態になってら。肩にいるカモは興奮してるって様子だな。
そんな2人を明日菜は横目で睨んでるし、のどかは心配そうに見ている。
エヴァは感心した様子で見てたけど、茶々丸が微動だにしないのは気になるんだが……
夕映は三枝と同じか。朝倉は写真を撮りまくってるし、ハルナは……なんだ、その企んでる目は?
まったく、こいつらは……まぁ、着替えるのはいいんだが……これからどうしろと?



 あとがき
ええ、まずは……申し訳ありません。
本来なら千鶴達の登場だったのですが、思ったよりも長くなってしまったのでわけることにしました。
本当に申し訳無いです。うう、時間を作らないとなぁ……

さて、次回は今度こそ翔太と千鶴達の再開編です。その後、翔太達は麻帆良に戻るのですが――
というようなお話です。お楽しみに〜



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