out side

 一方、翔太はというと――
「なんなのだ、こやつは!?」
「こやつ、人間か!?」
 4人のライダーを相手に互角の戦いを演じていた。
「ふむ、体が思い通りに動くってのはいいもんだ、な!」
「ぐお!?」
 自分の体の感触を確かめつつ、剣を振り落とそうとするレッドライダーを蹴り飛ばす。
このアーマーを装着してから先程までが嘘のように体が軽くなり、なおかつ思い通りに動けるようになった。
このことに翔太はちょっとした感動を感じていたりする。
なにしろ、アーマーを装着する前は体を動かし続けると痛みが出るだけでなく重くなったようになってしまう。
それに下手に動くと勢いが付きすぎてしまい、それを抑えるのに苦労していた。
それが無くなり、なおかつ戦いやすくなったことが翔太にはある意味新鮮に思えたのである。
「す、凄い……」
「かっこいい……」
「あいつ……いつの間に……」
 そんな翔太に理華とミュウは見惚れてしまい、クー・フーリンも表情こそ少し驚いたものだが、内心は理華達と一緒だったりする。
「ねぇ、どんな手品を使ったのかしら?」
「翔太さんの力は生体マグネタイトによって身に付いた物ですが……それはいわば外的要因です。
そうですね……例えば右腕を上げようとしたら、操り人形の如くその動きを補助するのですが……
その補助が腕が抜けそうになるくらいに強すぎるものなんですよ」
 両肘をテーブルに置き、組んだ両手の上にあごを載せるレミリアの問い掛けに、シンジはコーヒーを一飲みしてから答えた。
シンジの説明を補足すると、翔太が身に付けた力は平成仮面ライダーで主流になっている強化装甲のような物――
正確には違うが、そういう物を想像してもらうとわかりやすいかもしれない。
ただ、その強化装甲の力が強すぎて、翔太が扱いきれずにいたのである。
「あのアーマーはその外的要因の力をコントロールし――
なおかつ、特殊パルスを発生させて翔太さんの体に当てることにより筋力を負担にならない範囲で活性化させています。
この2つの作用により、翔太さんは身に付けた力をほぼロス無く使えるようになったのですが……
まぁ、あそこまで戦えるのは私も正直予想外でしたがね」
 頬を指で掻きつつ説明するシンジであるが、レミリアにしてみればそうなのか程度の認識である。
が、パチュリーやエヴァ、凜の認識は異なっていた。筋力の増大は魔法や魔術に似たような物があるのでまだわかる。
しかし、外的要因のコントロールとなると話が違ってくる。
それがどんな物かにもよるが、話を聞く限りでは翔太の外的要因の力は超常の物に近いと思われる。
それをコントロール出来るかと聞かれたら、3人とも出来なくもないと答えるだろう。
ただし、どこまでコントロール出来るかはわからないけど……という前置きが付いてしまうかもしれないが。
どのような構造になっているかはわからないが、その外的要因の力をあのアーマーで常時コントロールしている。
それがどれほどまでのことなのかわかっているエヴァ、凜、パチュリーは戸惑いながらシンジに顔を向けてしまうのだった。
「今更なんだけど……君は何者なんだい?」
「そうですね……今はお節介好きな小悪党とお答えしておきましょう」
 そんなエヴァの様子を見てか、シンジをただ者では無いと見た高畑。
それと同時に彼は誰なのか? という疑問に気付き問い掛けたのだが、シンジはというとにこやかな笑顔で答えていた。
小悪党というひと言に高音とシャークティが思わず睨んでしまうという一場面があったが――
「でも、あの人大丈夫ナノ?」
「ん? どういうことよ?」
「あの4人……たぶん、ヨハネの四騎士じゃないカナ? 持っている物がそれっぽいシ」
「は、なにそれ?」
「ヨハネ……ヨハネの黙示録!?」
 ポツリと呟いたココネのひと言に首を傾げる美空。その理由を聞いても首を傾げるだけだが、逆にシャークティは慌てだした。
ヨハネの黙示録とは大雑把に言ってしまうと聖書の1つであり、予言書的な性格を持っている書でもある。
その中で四騎士は黙示録に書かれた七つの封印の内の四つの封印が解かれた時に登場するとされている。
また、それぞれの騎士が人間に災厄をもたらすだけでなく、人間を殺す権威も与えられているという。
 余談だが、第四の騎士であるペイルライダーはタロットカードの死神のモデルとなったとされてたりする。
「あれがもし本当にヨハネの黙示録の四騎士なら……ダメ、その者達と戦っては!?」
「いやぁ……その心配の必要は無さそうですよ」
 そのことを思い出したシャークティは慌てた様子で叫んでしまう。
もし、あの4人が本当にヨハネの黙示録に出てくる四騎士ならば、人間が敵う相手では無いと思ったからだ。
それに対し、シンジは落ち着いた様子でコーヒーを飲んでいた。
 さて、翔太はどうしていたかというと――
「な、なんだ……こやつは!?」
「奴は人間か!?」
「てめぇら、人をなんだと思ってやがる!?」
 ホワイトライダーとブラックライダーがたじろぎながらのひと言に、剣を振るう翔太は思わず叫んでいた。
現在は正気に戻った理華達の援護を受けて戦っているのだが、互角と言っていい状況で戦っている。
自分達が1人づつ戦っているのならばまだわかる。しかし、今は4人全員がそろい、一緒に戦っている。
これなら、いかにサマナーであろうとも簡単に屠れるはず……だったのだ。
だが、現実は仲魔の援護もあったとはいえ、互角の戦いをさせられている。
それに翔太から近寄りがたい雰囲気も感じてしまい、これが4人のライダー達を戸惑わせていたのである。
「う、嘘……ヨハネの黙示録の四騎士を相手に……」
「翔太さんはボルテクス界の悪魔と呆れるほどに戦っていますし、それに神や魔の名を司る悪魔とも戦ったことがありますしね。
確かにあの四騎士の強さはかなりの物です。ですが、今の翔太さんなら対処出来る範囲だったということですよ」
(しかし、神魔殺しですか……まったく、厄介ごとが増えますね)
 その光景に呆然とするシャークティにシンジは説明するのだが、内心ではため息を吐きたかった。
神魔殺し……神や魔に属する者を文字通り殺せる概念である。ただし、神魔対して強くなるというわけではないが――
そんな概念を翔太が持ち始めていたのだが、本来ならそれはありえないのである。
例えボルテクス界の悪魔と戦ったり、メムアレフの手の者達と戦ったとしてもだ。
では、なぜそんなことになったのか? 実はゴスロリの少女に原因があったりする。
ゴスロリの少女の力が翔太の魂に影響を与えていた。ただし、それだけなら神魔殺しの概念を得るまでにはならなかった。
しかし、翔太にはゴスロリの少女が掛けた呪いがある。翔太の運命を蝕む呪いが……
その呪いが翔太の魂に更なる影響を与え……ボルテクス界の悪魔やメムアレフの手の者と戦うことで、その概念が出来てしまったのである。
 そして、シンジがため息を吐いたのは、その神魔殺しの厄介さが理由であった。
先程も話したが、神魔殺しはあくまでも神や魔を殺す概念であり、神や魔に対して強くなれるというわけではない。
だが、神や魔にしてみれば、それだけでもたまったものではないのだ。なにしろ、自分達を確実に殺せる力なのだから。
もっとも、自分がそんな概念を持っていることを知らない翔太だが、例え知ったとしても彼は神魔殺しをするつもりは無いだろう。
今、戦っているのも色んなことに追い詰められているからにすぎないのだし――
 しかし、神や魔に属する者達がこのことを知れば、翔太は確実に狙われることになるだろう。
自分達の脅威として……それはあまりにも理不尽と思われるかもしれない。だが、例えばだが……
皆さんはいつでも爆発可能な高性能爆弾を「爆発しないから大丈夫」と言われて、そばに置かれても平気でいられるだろうか?
神魔としてはそれと同じ心境なのだ。故にどうにかしようと考える者が出てもおかしくはない。
「おのれ……」
「我らを愚弄するな!」
「なんて言ってるけど、どうするんだ?」
「ぶっ倒すに決まってんだろ。これ以上付き合ってられるか」
 ホワイトライダーとブラックライダーが睨む中、槍を担ぐクー・フーリンの問い掛けに翔太はため息混じりに答えた。
翔太にバトルマニア的な趣味は無い。故に早く終わらせたいというのが本音だったりする。
「ふざける――」
「マハラギオン!!」
「ぬお!?」「うぐ!?」「ぐお!?」
 それを聞いたペイルライダーが怒鳴ろうとした瞬間、理華が火炎魔法を放ち、4人のライダーを巨大な炎で包んだが――
「こんな物は我には効かぬわ!!」
 レッドライダーが炎の中から飛び出し、剣を振り上げて翔太に襲いかかろうとする。
それを翔太は動かずに見ていたが――
「だろうな。お前は赤いから、わかりやすかったぜ」
「な!?」
 すぐ側にまで迫っていたクー・フーリンのひと言にレッドライダーは驚き、思わず体を向けてしまった。
まぁ、同じ姿の悪魔が4人もいて、なおかつそれぞれ違う色の馬に乗っていたのだ。
属性に対して耐性を持っていたとしても不思議では無い。それを見越して、クー・フーリンが仕掛けていたのである。
「でぇぇぇい!!」
「ぐはぁ!?」
 そして、体を向けたことが致命的な隙となり、レッドライダーはクー・フーリンが振り下ろした槍に切り裂かれ――
「おおりゃ!!」
「がはぁぁぁぁぁ!!?」
 クー・フーリンは手を休めずにとどめとばかりに槍を突き出し、それによってレッドライダーは貫かれ……砕け散っていった。
「く、おのれ――」
 残された3人のライダーは炎に耐え、こちらを睨みつけた。
そこでレッドライダーが倒されたことに気付いたホワイトライダーが弓を持つ手を握りしめ――
「メギドラオン!!」
「な!? がああぁぁぁぁぁ!!?」「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!?」
 ミュウが放った極光にブラックライダーごと呑み込まれて……そのまま消えていった。
「な、馬鹿な……我らがこうもたやすく……そんなはずがない!?」
 かろうじて逃れることが出来たペイルライダーだが、3人のライダーが倒されたことに混乱してしまう。
確かに4人のライダーはカテゴリー的には魔人であり、その力は侮れるものではない。
だが、今回はそれが油断に繋がっていた。4人が連携していれば、状況は違っていたかもしれない。
しかし、所詮は人間と高を括っていたら本来の力で戦えるようになった翔太の力に戸惑い――
その隙を突かれることで3人が倒されてしまったのである。
そして、そのペイルライダーも決定的な隙をさらしていたことに気付いていなかった。
「は!?」
 気が付けば翔太がすでに目の前にいて――
「がはぁ!?」
 鎌を構えようとしたところで翔太の剣によって切り裂かれ――
「おらよ!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
 すかさず飛び込んでいたクー・フーリンの槍に貫かれ、ペイルライダーも砕け散ってしまうのだった。
『ホ……ば、馬鹿なホ……あの方が遣わした4人があっさりと……』
 一方で4人のライダーが倒されたことに気付いたキングジャアクフロストはたじろいでいた。
萃香との戦いは防戦一方になっていた。なにしろ、攻撃してもすり抜けたりしてほとんど効かない。
更には勇儀の力も侮れないために、どうにか身を守るので精一杯だったのである。
キングジャアクフロストにとっての不幸は、萃香が翔太達と一緒に来ていたことであろう。
だが、これで終わるつもりはキングジャアクフロストには無かった。
「翔太、あれ……」
「ん?」
 理華がそのことに気付いて指を差し、声を掛けられた翔太が顔を向けると、宙に浮いていたはずの霊夢が地面に降り立っていた。
しかし、様子がおかしい。背を丸めているせいでうつむいて表情がわからないし、両手をだらりと下げている。
が、不意に顔を上げたかと思うと数枚の札を持ち、構えたのである。虚ろな瞳と共に翔太達へと向かって――
「れ、霊夢、さん?」
「ホホホ、無駄だホ! そいつはオイラが操ってるホ! どうだホ? 仲間を攻撃出来ないだろうホ」
「そ、そんな……」
 霊夢の様子に理華が戸惑っていると、キングジャアクフロストが自慢するかのように話していた。
そのことにミュウが困った顔をするが、言われたことは事実であった。
なにしろ、翔太達は霊夢を助けに来たのだ。それ故にいかに操られていようと攻撃出来るわけがない。
『さぁ、そいつらを倒して――』
「お〜い、霊夢〜」
 自身の優位を確信したキングジャアクフロストが命令しようとした時、翔太がいきなり声を掛け――
「そのでっかいのがお前の賽銭箱から賽銭盗もうとしてるぞ〜」
「なにやってんだ?」
 そんなことを言い出した為にクー・フーリンが呆れるが――
「なんですってぇぇぇぇぇぇぇ!?」
 と、いきなり霊夢が叫んだ。このことに理華達どころか、言い出した翔太も目を丸くして驚いている。
「あんた、良い度胸してんじゃないの……」
『ホ、ホ? なんでだホ? なんで、元に戻ってるホ!?」
「翔太……あれで元に戻るってわかってたの?」
「いや、俺も冗談のつもりだったんだが……」
 札とスペルカードを構えて睨む霊夢にキングジャアクフロストは困惑するどころか完全に怯えていた。
一方、その状況を指差す理華に、翔太は顔を引きつらせながら答える。
翔太としては場を和ませ、その後に霊夢を押さえ込んでからキングジャアクフロストを倒そうと考えていたのだが……
まさかこうなるとは思わず、逆に戸惑ってしまったのである。
なお、賽銭箱の話は同人誌を見ていたのを思い出して言ってみただけだったりする。
「やれやれ……ま、もう1つの機能を試すにはちょうどいいですね。翔太さん、GUMPのトリガーを3回引いてください」
「は? トリガー?」
 この様子に呆れるシンジはため息を軽く吐いてからそんなことを言い出し、言われた翔太は戸惑いながらGUMPを見てみた。
そこでGUMPの表面に炎にも翼にも見えるマークが浮き彫りされていることに気付く。
それが気になったが、言われた通りトリガーを3回引き――
『トリガーチャージ!!』
「ぬお!? てぇ、なに!? なにこれ!?」
 GUMPから聞こえた音声と持っていた剣の刀身が緑色の炎のような物に包まれたことに驚く翔太。
なお、GUMPから聞こえた音声だが、某牛丼好きの王子が登場するアニメのOPを歌っていた人の声に似ていた。
「生体マグネタイトの一部を攻性エネルギーに変換することで、一時的に攻撃力を増大出来るんです。
ま、ちょっとした必殺技ですね。まぁ、結構生体マグネタイトを消費しちゃうので、多用しない方がいいんですけどね。
それはともかく、とっとと攻撃しちゃってください」
「あ、く……萃香、頼む!」
「あいよ!」
 右手を振りつつ答えるシンジに翔太は文句を言いたかったが、萃香に声を掛けると返事を聞いてから駆け出した。
その間に霊夢の周りに8個の陰陽球現れて、浮かびながら彼女の周囲を回転し――
「『夢想天生』!!」
『ホオォォォォォォォォ!?』
 霊夢の掛け声と共にその陰陽球から無数の札が全方位に向けて放たれた。
キングジャアクフロストは体の大きさ故にかなりの数の札を体中に受けてしまう。
しかしながら、全方位に向けられて放たれているだけに――
「ちょ、ちょっとぉ!?」
「く! こっちのことも考えろ!?」
「きゃあ!?」
 理華、クー・フーリン、ミュウにも飛んできている。こっちは驚きながらもしっかりと避けていたが。
巨大化している萃香はというと元の姿に戻り、能力を使って勇儀を守る形で防いでいる。
シンジ達の方はというと、シンジが指を鳴らしたことで結界が張られ、その結界によって阻まれていた。
霊夢の攻撃にみんなが驚いたり、シンジの力の一端にエヴァと凜とパチュリーにメディアが少し驚いていたりするが。
一方の翔太はそんな中をかいくぐり、萃香と勇儀に近付き――
「ほら、行きな!」
「おおよ!」
 萃香と勇儀が組んだ手の上に足を載せ、萃香の励ましの声を聞きながら飛ばされる形でキングジャアクフロストよりも高く跳び上がり――
「せいやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
『ホオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!??』
 ほとんど落ちる形でキングジャアクフロストを剣で縦に切り裂いた。
脳天から股下まで切り裂かれたキングジャアクフロストは、切り裂かれた所から体中にヒビが奔り――
そのまま砕け散ってしまうのだった。
「ふぅ……また蘇ったりしないよな?」
 その間に地面に膝を付く形で着地していた翔太はため息を吐きながら立ち上がり、ふとそんなことを考えてしまう。
そのことはまさかなと思いつつ振り返り……そこでうつむいている霊夢を見つけた。
「よぉ、霊夢……大丈夫だった、か?」
 その様子に首を傾げる翔太であったが、右手を挙げて声を掛ける――
が、霊夢は顔を上げたかと思うと札を構えて睨んできたのである。そのことに翔太は思わずたじろいでしまうが……
「え、えっと……怒ってる?」
 そうなのかなと思った翔太が問い掛ける。実際、霊夢を正気に戻したひと言もどうかと翔太自身思っていたし。
しかし、霊夢はしばらく黙っていた……と思ったら、いきなり瞳を潤ませ――
「う、うわぁぁぁぁぁぁ!?」
「へ? え? え?」
 いきなり泣き出したかと思うと、翔太の胸に顔を押しつける形で抱きついてきたのである。
このことに翔太は戸惑い、思わず周りを見てしまう。怒られると思ったら、いきなりこれである。
予想外の事に戸惑っていたのだが……
「翔太……翔太〜……」
 霊夢はといえば翔太の胸に顔を押しつけたまま、ただ泣いているだけだった。
翔太の声が聞こえた時、霊夢は賽銭を盗まれてたまるかとばかりに攻撃はした。
しかし、その後に本当の意味で正気に戻り、翔太の顔を見た時に新聞のことを思い出して1回ぶん殴ろうと思ったのだが……
そこで自分に何が起きたのかを思い出したのだ。その時、怖いと思ってしまった。自分の身に起きたことが。
それと共に翔太が自分を助けてくれたのだと思い至り……
恐怖から解放されたのも相まって、嬉しさのあまり泣き出してしまったのである。
翔太に抱きついたのは……まぁ、無意識だったりする。
「やれやれ、一件落着……ですかね?」
「そうは見えんがな」
 にこやかなシンジだが、エヴァは呆れた顔で答えていた。
というのも、理華や美希に刹那と真名、スカアハやクー・フーリン、ミュウといった仲魔達が翔太を睨んでいたのだから。
そんな時であった。何か甲高い音が聞こえたかと思うと、青い水晶のような物が翔太の前に現れたのである。
「なんだ、これ?」
「あ……」
 いきなりことに戸惑う翔太であるが、ミュウは何かに気付くとその水晶に近付き――
「ミュウ? どうしたんだ?」
 ミュウの様子がおかしいことに気付いた翔太が声を掛けるが、ミュウはそれを無視する形で水晶を手に取る。
手に取るとそのまま頭上に掲げ……たかと思うと水晶は青い光の塊となり、天へと飛んで行ってしまった。
それから少しして、青い粒子が雪のように舞い落ちてくる。
「なに、これ?」
「おめでとうございます」
 その現象に翔太や他の者達は戸惑ったり興味深げに見ている中、シンジは軽く拍手をしながらそんなことを言い出した。
「は? 何がさ?」
「今、この時をもって、幻想郷は崩壊の運命から解き放たれたのです。あなたは幻想郷を救ったのですよ。
どうですか? 世界の1つを救った感想は?」
「え? あ、ああ……なんつ〜か、実感が無いんだけど……」
 にこやかに答えてから問い掛けるシンジに、聞いていた翔太は後頭部を掻きつつ答えていた。
まぁ、実感が無いというのは紛れもない本音だった。翔太自身、自分が何かをしたというつもりはない。
ただ、戦っていた。翔太としてはそんな実感しかなかったのだから――
「ふふ、それでいいのですよ。えてして、世界を救うというのはそういうものですからね」
 その様子にシンジはにこやかな笑みを浮かべる。
一方でその様子をアーチャーは睨むかのように見ていた。この後で自身にあることが起きるとは気付かずに。
「それはそうと……何してる?」
「何って、取材に決まってるじゃないですか〜」
「そうは見えん」
 ジト目で問い掛ける翔太に、文は嬉しそうに写真を撮りまくっていた。
そのことに翔太は呆れていたが……まぁ、こうしてこの幻想郷での戦いは終わったのだった。


 in side

 さて、霊夢の救出も無事終わり、博麗神社に戻ってきた俺達。
霊夢も正気に戻ったようで俺から離れてくれたが……なんで、戻ってくる最中顔を真っ赤にしてたんだろうか?
で、博麗神社に戻ってみると……宴会の準備をしてるし。なんか、ここに来るたびに宴会してる気がするんだが?
「翔太さん! この幻想郷は素晴らしいです!!」
 で、夕映はなんで興奮してるんだ? 後ろで氷室が同意するかのようにうなずいてるし。何があった、何が?
「まさか、竹取物語のかぐや姫に会えるとは……それに閻魔に毘沙門天の代理にまで……感激なのです!!」
「ああ、あのニート姫って一応そうだったな」
 興奮が続く夕映の話に思わず納得。輝夜と映姫はそうだったな。でも、毘沙門天の代理って?
ちなみにだが、この時の俺は寅丸 星がそうであるとは知らない。だって、星蓮船がまだ発売されてないんだもん。
それにそういう話も聞いて無かったしな。それはそれとして――
「あいつらはどうした?」
「あ、あの……閻魔様に説教されたみたいで――」
「いい、それで何となくわかった」
 蒔寺、ハルナ、朝倉が体育座りしたまま落ち込んでるのでどうしたのかと聞いてみたんだが……
おどおどとした様子で答えるのどかの話を聞いて、思わず納得する。あいつら、直貴と克也みたいなことしやがったな。
後で詳しく聞いたんだが、あの3人はどうもルーミアにちょっかいを出そうとしたらしい。
それを映姫に咎められたと……まぁ、ルーミアは人喰い妖怪だしな。下手すりゃマジな意味で喰われてたかもしれん。
そのことを話したら、すっごく驚かれたけど。まぁ、こっちはいい。問題は――
「では、今ここであなたを裁きます!」
 なんてことを言ってるのは映姫である。博麗神社の……なんて言えばいいんだ?
ほら、賽銭投げ入れて手を叩いて拝む所があるじゃん? そこに立ってるんだよ。賽銭箱を机に見立てて。
で、その前には不機嫌そうにアーチャーが立っている。なんでも、映姫に言われてこうなってるらしいけど……
うん、なんでこんなことになってるのさ?



 あとがき
というわけで無事霊夢を救い出せた翔太達。
しかし、戻ってみれば、なぜかアーチャーを裁こうとする映姫がいました。
彼女の心意とは……次回はそんなお話です。
ついに明かされるアーチャーの正体と過去。そこでアーチャーは正義を否定しますが――
それを否定したのは意外にもシンジであった。さて、どうなることやら。
というわけで、次回をお楽しみに〜



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