麻帆良――
その郊外にある一件のログハウスの地下……
そこに人が持つには大きすぎるフラスコが置いてあり、フラスコの中には塔のような建物らしきミニチュアがあった。
そして、その塔らしき建物の屋上にその者達はいた。
「気を抜くな! そんなことでまともな魔法が使えると思っているのか!?」
「は、はい!?」
 怒鳴っているのはエヴァジェリン。思わず返事を返したのはネギである。
今、2人がいる所はエヴァが別荘と呼ぶ魔法で創られた空間である。で、ここで何をしているかといえば、ネギを鍛えていた。
なぜ、このような所で行うのか? この別荘と呼ばれる空間で1日すごしても、外の世界では1時間しか経たないのである。
教師として仕事をしているネギが、修行に掛けられる時間がそう多く取れるわけでは無いのでこのような形となったのだが――
 それはそれとして、エヴァは怒鳴りながらも内心は感心していた。というのも、ネギの覚えがいいのである。
今は魔法の制御を中心に鍛えていた。強力な魔法を使うには必要となるからだ。
ネギはそれを乾いた砂に水を染み込ませるかのように自分のものにしていった。
これはエヴァとしては少しばかり予想外であったが、流石はナギの息子かと思いつつ、次の段階へ入ってもいいかと考えていた。
 一方、そんな2人を明日菜とその肩にいるカモは眺めていた。
「ヒュ〜……わかっちゃいたつもりだったが……流石は真祖の吸血鬼……鍛え方が半端じゃねぇぜ……」
 その光景にカモは息を呑むが、対照的に明日菜は呆然と眺めていた。
それでふと考えてしまう。自分は何がしたいのかと……
 翔太達が来たことでネギ達は本来の出来事とは違う道筋を辿ることとなった。
その証拠として、行われるはずであったネギとエヴァの対決は行われず……それどころか茶々丸の襲撃すら行われなかった。
その為、明日菜はネギと仮契約を結んではいない。だから、明日菜がここにいる理由は無いはずなのだが――
(なんか、ほっとけないんだよね……)
 ふと、そんなことを考えてしまう。そう、ネギを見ていると放ってはおけなかった。
なんだか、とても危なっかしくて……だから、こうして見守りに来てしまう。でも、どうしたらいいのかわからない。
そんなことで明日菜が悩んでいた時――
「む? なんだ?」
 それにエヴァが気付いた。続いてなぜか、スカートが短いメイド服を着る茶々丸もエヴァが見る方へと顔を向ける。
ネギと明日菜、カモはそんな2人に首を傾げつつ、同じように顔を向けて――
「何……あれ?」
 明日菜が思わず疑問を漏らした。それはひと言では形容しがたいものであった。
まず、裂けていた。何が裂けているのかは明日菜にはわからなかったが……とにかく、何かが裂けていた。
そして、裂けた中にあったのは……いくつもの目。それがこちらを見ているかのようで……
それを見てしまったネギと明日菜は思わず怖いと感じてしまう。
 その裂けた何かから5人の女性が、まるで家の中に入ってくるかのように現われた。
1人は変わった形の日傘を差し、白いドレスに僧侶が付けるような紫の前掛けのような物を纏っていた。
1人は道士が纏うような服を着ており、その腰には九つの尾がある女性だった。
1人は薄い紅色をしたワンピースドレスを纏う少女。だが、その背中にはコウモリのような翼を持っていた。
1人は赤いワンピースを着た少女。だが、その背中には枯れた枝のような物に宝石らしき物が付いている翼があった。
1人は茶々丸が着ているのと同じようなメイド服を着た女性。しかし、その仕草は瀟洒という言葉が似合いそうな物だった。
「なんだ、貴様らは……どうやってここに来た?」
「ふふ、初めまして。私の名は八雲 紫。相川 翔太に頼まれてここに来た者よ」
 殺気を交えて睨みつけるエヴァであったが、紫は気にした風も無く閉じた扇子で口元を隠しながらそんなことを言うが――
「なんだと?」
 その一言にエヴァは眼を細めた。実を言えば、翔太の言っていたことを期待していたわけではない。
なにしろ、自分に掛けられた呪いはナギ・スプリングフィールドが自身の持つ巨大な魔力を使って力任せに掛けた物だ。
その結果、ナギ・スプリングフィールド並の魔力を用いねば解呪出来なくなってしまう。
むろん、エヴァもその気になれば、それだけの魔力を出すことは出来る。
だが、呪いによって麻帆良に囚われたエヴァは麻帆良に張られた結界によって力を封印されている。
また、吸血鬼という特性ゆえか、吸血でないとそれだけの魔力を得ることは出来ない。
なのに力を封印されたことによって、一時的ではあるが吸血すらままならない状態にされてしまったのである。
これによって、エヴァ自身で呪いを解くのはかなり困難となってしまった。
 かといって、ナギ並みの魔力を持った魔法使いが早々いるわけでもなく……
これにより、エヴァはネギから吸血による方法以外を半ば諦めていたのだが――
「解けるのか?」
 思わず、エヴァは期待を込めて聞いてしまう。
この別荘に入ることは別段難しいことではない。エヴァがそうしない限り、簡単に入ることが出来る。
だが、麻帆良は侵入者に対してはそれなりの対策をしている。それに別荘はある意味、外とは別世界と言ってもいい。
しかし、紫はあっさりとここへと来てしまった。まるでそんなのは関係無いとばかりに。
先程のは転移とはある意味違った物なのだろうが、それが出来た紫がただ者ではないと考えたエヴァは思わず期待してしまったのだが――
「いえ、あなたの呪いを解きに来たわけではないわ」
「は?」
 まったくの予想外な紫の返事にエヴァは思わずぽかんとしてしまう。もっとも、すぐさま正気に戻り――
「では、なぜここに来た?」
「ふふ、怒らないの……翔太と約束したのよ。ソーマを持ってきたら、すぐにでもあなたの呪いを解いてあげるとね」
「なんだと?」
 くすくすと笑う紫の言葉に、睨んでいたエヴァは軽く驚いていた。
ソーマとはある宗教では神酒とも言われる物だが……そんな物が存在するわけが無い。少なくとエヴァはそう思っている。
なので、紫は自分の呪いを解く気が無いと考えてしまっても仕方がないだろう。
「貴様……解く気があるのか?」
「さて、どうかしらね? それはそれとして……今、翔太にはある厄介ごとを片付けてもらってるのだけど……
そのお礼として、あなたを修学旅行に行けるようにとお願いされたのよ」
「は?」
 意味ありげな視線を向けながら話す紫に、怒りと共に睨んでいたエヴァはまたもポカンとしてしまった。
「いや、ちょっと待て!? 本気でそんなことが出来るのか!?」
 しかし、すぐにそのことに思い当たって、エヴァは慌てだす。
呪いを解かずに修学旅行に行けるようにするというのは、実は呪いを解くよりも難易度が格段に高くなる。
確かにネギまの原作では学園長がエヴァを京都に行かせていたが、
あれは複雑高度な儀式魔法を用いた上で何枚もの書類に学園長がハンコを押し続けることで呪いを誤魔化して行けるようにした物であった。
この方法では学園長の体力などを考えると時間制限付きだし、いつ呪いが復活してもおかしくないというリスクがある。
 なのに、紫は修学旅行に行けると言った。修学旅行に行けるということは、そのようなリスクも無く――
「本当に出来るのか?」
「もちろん……というか、すでに終わったのだけれど」
「なに?」
 くすりと笑う紫の言葉に問い掛けたエヴァは訝しむ。別段、何かをされた覚えはない。
確かに紫が持つ『境界を操る程度の能力』を使えば、呪いを解かずに修学旅行に行かせることは難しくないだろう。
だが、それを知らないエヴァにしてみれば怪しいことこの上ない。
「貴様、嘘だったら――」
「修学旅行までのお楽しみにしておきなさい」
 似た見つけるエヴァだが、紫は気にした風も無く微笑んでいた。
この時、エヴァは紫が何者なのかと考えていた。なにしろ、かなりの殺気を向けているのに感じてないように振る舞うのだ。
本当に気にして無いのか、鈍いのか……エヴァとて無視出来るような殺気は放ってはいない。
その証拠に九つのしっぽを持つ女性とメイド服の女性は顔をしかめてるし、ネギ、明日菜、カモにいたっては怯えてしまっている。
「まぁ、いい……それで貴様らは何者なのだ?」
 色々と気にはなったが、紫と共に来た女性達も気になったエヴァが顔を向けて問い掛ける。
「お初にお目に掛かる。私は八雲 紫様の式、八雲 藍と申します」
「式……だと?」
 早速名乗る九つしっぽを持つ女性子と藍であったが、エヴァの表情は訝しげになっていた。
というのも、エヴァにとって式とは関西呪術協会の術者が使うような式神のことであった。
むろん、エヴァも式神は何度か見ているが……だからこそ言える。藍が式に見えないと。
藍と式神はあまりにも違いすぎるのだ。姿がではなく、あり方が……
言葉にするのは難しいが……藍ほどの存在感は式神ではまずいないはずだし――
「まぁ、いい……それでお前は……」
「初めまして、異世界の吸血鬼。私はレミリア・スカーレット。あなたと同じ吸血鬼よ。
隣にいるのは私のメイドの十六夜 咲夜。この子は私の妹でフランドール・スカーレットというわ」
「よろしくね〜」
 今は置いておこうとエヴァは視線を向ける。
それに答えるようにレミリアが咲夜とフランドールの紹介を交えてニヤリという言葉が似合いそうな笑顔と共に名乗った。
もっとも、レミリアと笑顔で手を振るフランドールの正体ははエヴァの予想通りではあった。
というのも、2人から自分に近い何かを感じたのだ。
 だが、一方でなぜかレミリアを嫌悪しそうな物を感じた。それがなんなのかは、今はわからなかったが――
「翔太からあなたのことを聞いてね、見に来たのよ。あっちじゃ、吸血鬼は私やフラン以外にはいなかったしね」
 くすくすと笑いながらレミリアは話すが……実は意図的に幻想郷のことは隠していた。
なぜ、そうしたのかといえば、紫の指示されたのだ。幻想郷への影響を極力無くす為に。
下手な干渉を受けて、幻想郷の存在の危機……ということにもなりかねない。それを避けるためであった。
「で、それだけなのか?」
 そのことに気付かないエヴァは睨みを向ける。それだけのはずがない……なぜか、そう思えてならなかったからだ。
「ただ会いに来た。私はそのつもりよ?」
 それに対し、レミリアは軽い挑発も込めて不敵な笑みを向ける。
こうすることでエヴァがどう出てくるか見たかったのだが――
「く……」
 エヴァは歯を食いしばり、右手の拳を握りしめていた。
殴ってやりたいという衝動はある。しかし、何かありそうな気がした。故に睨みはしたが耐えた。
 エヴァのこの予感は当っていた。レミリアはエヴァを挑発し、手を出させようとしたのだ。
エヴァがどれほどの者なのかを確かめてみたいが為に。
もっとも、レミリアもこれで乗ってくれればという程度の考えだったので、それ以上挑発するようなことはしなかった。
「さてと……あなたがネギちゃんね?」
「え? ええ……そう……ですけど?」
「スカアハからの伝言よ。自分を見ろ。そして、周りを見ろ。今のお前は1人ですべてを救えるほど強くは無いと……ね?」
「は?」
「ちょっと待て!?」
 紫に呼ばれてうなずくネギであったが、続いて出た言葉が理解出来なくて首を傾げた。
一方でエヴァは思わず叫んでしまう。というのも、聞き捨てならないひと言を聞いたからだ。
「スカアハとはあれか? ケルト神話の――」
「さてね……ちなみに彼女は翔太の師をしているわ」
「な!?」
 紫の返事に問い掛けたエヴァは驚愕した。
アイルランドに伝わるケルト神話。その中にスカアハと呼ばれる女神が登場する。
影の国と呼ばれる異界を統べる女王であり呪術師。もっとも、武芸に秀でていたとされている。
 なお、クー・フーリンが難所を乗り越えて影の国に来たことに驚嘆し、彼を弟子にして様々な奥義を授け――
後に魔槍ゲイボルグを与えることとなる。
 そのスカアハが翔太の師をしているという事実にエヴァはただ驚くしか出来ない。
そんなエヴァを紫は楽しそうに眺めていた。実際、彼女はスカアハがスカアハ本人だとは思っていない。
正体まではわからないが、別の何かだと思っている。だから、エヴァに言ったことは嘘では無い。
紫も正体がわからないから、「さてね……」と誤魔化したのだから――
「なるほどね……スカアハの言うこともわかるわ……ネギ……と言ったわね? あなた、うぬぼれもいい加減にしなさい?」
「え?」
 なぜか、レミリアがわずかばかりに嫌悪感を見せながらそんなことを言うのだが、ネギには理解出来ていなかった。
だが――
「故郷があなたのせいで滅んだ? 違うわね。なぜ、あなたの村が襲われたのかはわからないけど、ハッキリと言うわ。
故郷が滅んだのはあなたのせいじゃない。そう考えるのはあなたのうぬぼれよ」
「え? あ、あ……」
 レミリアの次の言葉にネギは驚愕し、がくがくと震えだした。
違う? 違わない……だって、自分があんなことを願ったから、故郷は襲われて――
「あなたの願いなんて関係無いわ。どこの誰が、あなたの願いごときで村一つ潰そうと考えるっていうの?」
「う、あ……ああぁ!?」
 だが、無情な紫の言葉に、ネギは両手で頭を押えながらへたり込んでしまった。
「ちょ、ちょっと!? いきなり何ひどいことを言ってるのよ!?」
「ひどいこと? でも、今言っておかないとネギちゃんはもっとひどいことをしてしまうかもしれないわよ?」
「え?」
 たまらず明日菜が怒鳴ってしまうものの、紫の言葉に意味がわからずにきょとんとしてしまう。
そう、紫とレミリアにはわかるのだ。ネギのあり方が……
レミリアは『運命を操る程度の能力』がある為、ネギが辿ってきた運命が見えており――
紫も『境界を操る程度の能力』によって、ネギの記憶の境界を操って見たために。
ネギがなぜそんな想いを抱くのかがわかってしまったのである。
「どういうことだ?」
「ネギちゃんに聞いてみなさい。昔、ネギちゃんの村で何が起きたのか……そうすれば、あなたにも私達の言うことがわかるはずよ?」
 睨みつけるエヴァであったが、紫は気にした風も無く答える。
そして、へたり込んで泣き出しているネギへと向き――
「さて、私からも言わせてもらうわね。故郷が滅びたのはあなたのせいじゃない。
そう思うのはあなたのうぬぼれ……だから、怖がる必要も無い。あなたが1人で何かをする必要も無い。
1人で何でもやろうとするのは1人になろうとするのと一緒。だから、あなたは気付かない。
それが誰かを傷付けることだと……例え、その意志があなたに無かろうとね。
だって、あなたは弱いもの。それが嫌なら、誰かを頼りなさい。独り善がりはあまりにもみっともないわよ?」
 静かに語る紫の言葉を、ネギはただ呆然と聞いていた。すでにネギの心はボロボロだった。
昔起きた出来事……ネギにはそれをなじられた気がした。でも、それは仕方がない。
だって、あれは自分のせいで――
「何度も言うわ。それはあなたのうぬぼれよ。独り善がりは本当にいい加減にしなさい」
「ひ!?」
 それを考えようとした時、レミリアの殺気を含んだひと言にネギはすくみ上がる。
そう、紫とレミリアにはわかっているのだ。それはネギの独り善がりな……あまりにも勝手な考えだと。
その一方でエヴァは舌打ちしそうな思いに駆られた。今のレミリアの殺気で、わずかながらにその実力が見えたのだ。
本気ではないだろうが、それでもあんな殺気を簡単に出せる者がただ者なはずが無い。
「さっきのスカアハの言葉はそういうことよ。あなたは自分も周りも見ていない。
何をどうすればいいのかも考えようとはしない。1人でなんでも助けようとして、傷付けてしまっていることにも気付かない。
閻魔では無いけど……あなたは独り善がりが過ぎるわ」
 見る者によっては嘲笑にも見える笑みを浮かべながら、紫はネギを見つつ話していた。
幻想郷の閻魔がここにいれば、そんなことを言うのだろうと考えながら――
「貴様ら……いい加減に――」
 怒りを浮かべながら、エヴァは紫達を睨む。紫達がネギの心をなじり、傷付けているのはわかった。
エヴァがそれが許せなくて、怒りを燃やし――
「あら? あなたもきっと、私達と同じことを考えるわよ?」
「な……な!?」
「え、あ……あぁ……」
「な、が……」
 視線を向ける紫を見て、体がすくみ上がってしまった。感じてしまったのだ。
紫の気配を……圧倒なんて生ぬるい……自分をたやすく塗りつぶし、押し潰してしまうような存在――
その気配に明日菜とカモも同じくすくみ上がっていた。
「あ、ああ……」
「ネギちゃん、覚えておきなさい。あなたの強さと思いをくだらない理由で容易く潰してしまう存在がいることを……
それに1人で勝とうなんて……それこと独り善がりな考えだとね。さてと、それじゃあ帰るわよ」
「ええ、ここにいる理由はもう無いものね」
「え〜……もうちょっといたかったのに〜」
 ネギもまた、その気配にすくみ上がり……その気配の元である紫はといえば、あっさりと気配を消してそんなことを言い出した。
それにレミリアはうなずくが、フランは不満そうな顔をしている。
「また、ここに来ることになるかもしれないわよ?」
「そうなの?」
「ええ……いつかはわからないけど……じゃあね、ネギちゃん。エヴァンジェリン」
 話を聞いて笑顔になるフランを微笑ましそうに見てから、紫はネギとエヴァに声を掛け――
「翔太に言っておけ……覚えておけとな……」
「ええ、伝えておくわ」
 恨みがましそうに言うエヴァに、紫は楽しそうに答えると空間に出来た裂け目にレミリア達と一緒に入り、消えていくのであった。
ネギ達は呆然とそれを見送り……
「くそ、翔太め……とんでもない奴をよこしおって……おい、小僧! さっきの奴らが言っていたことはなんだ?」
「え? あ、その……あの……」
 苛立ちながらも気になったエヴァが問い掛けると、ネギは戸惑っていた。
また、なじられると思った。でも、心配そうにこちらを見る明日菜を見てると逃げれないと思ってしまい……昔、何があったのかを話した。
こうして、明日菜とエヴァはネギの過去を知り……明日菜はネギを抱きしめた。それはあなたのせいじゃないと涙を浮かべながら――
 この時、明日菜は誓った。ネギを守ろうと……これにより、明日菜は仮契約をしてネギの修行に付き合うこととなる。


 さて、その頃スキマの中にいる紫達はといえば――
「しかし、珍しいですね」
「何が?」
「いえ、紫様やレミリアさんが人間の子供に助言するのがですよ」
 首を傾げる紫に藍はそう答えた。基本的に紫が他者に何かをすることは無い。
何か必要に迫られた時か、からかうか……紫が他者に何かをするといえば、このくらいなのだ。
もちろんそれ以外でもあるが、それはここではあえて語らないことにしよう。
 ともかく、その紫がネギに助言したことに藍は珍しいと思ったのだが――
「たぶん、それは違うわね」
「え?」
 咲夜のひと言に藍は首を傾げる。咲夜にはわかっていた。主たるレミリアが、なぜネギにあんなことをしたのかを。
「あの子がどうなるのか……楽しみよね」
「ええ、そうね」
 微笑みながら話し合う紫とレミリア。それを見た藍は察してしまった。
すなわち、紫とレミリアはネギに揺さぶりを掛けたのである。ネギの心境が変化するようにと――
「今以上に歪んでしまうのか……それとも何かどんでん返しが起きるのか……ふふ、楽しみが増えたわね」
 微笑む紫を見て、藍はネギを不憫に思ってしまった。
願わくば、まともな道を歩んで欲しいと思いつつ、藍は深いため息を吐いてしまうのだった。



 あとがき
というわけで幕間でした。にしても、今回は紫っぽく出せたかな?
ちなみになんでこんな話かといえば……趣味です。ええ、趣味ですとも(おい)
まぁ、こんなやりとりもありですよね? と、思いつつ書いてみました。
さて、次回は幻想郷異変編最終回。悪魔となぜか襲ってくる幻想郷の妖精を倒しながらついに元凶にたどり着いた翔太達。
が、そこで翔太はピンチになってしまい――というようなお話です。お楽しみに〜。



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