幻想郷『紅魔館』……の地下にあるヴワル魔法図書館――
大図書館とも呼ばれるそこに2人はいた。
1人はその図書館の主である、パチュリー・ノーレッジ。もう1人は綾瀬 夕映である。
 パチュリーはともかく、なぜ夕映がここにいるのか?
まぁ、単純な話で、本格的にパチュリーに師事してもらうことになったからである。
弟子に誘われたということもあるが、パチュリーの魔法使いとしてのあり方に何かを感じたのだ。
それで夕映は自ら弟子になることを了承し、麻帆良から通いながら色々と師事してもらっているのである。
 なお、麻帆良にあるエヴァの家から、この紅魔館の一室に通じるドアがシンジによって創られ、
それを使って夕映達は麻帆良と幻想郷を行き来していた。
 今も辞書を片手に魔導書を必死に読む夕映。そんな彼女を視線だけを向けていたパチュリーは、思わず笑みを浮かべていた。
夕映は興味があることにはかなりの集中力を見せ、驚異的な成長をする傾向にある。
現に弟子になったばかりの頃は、魔導書をほとんど読み進めることなど出来なかった。
これは魔導書がラテン語やヘブライ語などで書かれていることが多いので、生粋の日本人である夕映が文字がわからなかったこともあるが……
それから2週間近く……未だ辞書が必要とはいえ、かなり読み進められるようになった。
これにはパチュリーも少しばかり驚いていたが、同時に才能の高さに今後が楽しみとなっている。
「やはり、今日も来ていたか」
 ふと、そんな声が聞こえたために2人が顔を向けている。そこには1人の女性が立っていた。
床に付きそうな程の長いブロンドの髪に、まるで人形のように整った美しさがあり……どこか刃物のような鋭さも感じさせる顔立ち。
陶磁器を思わせるような白く透き通った肌にすらりと伸びる四肢。それにかなりの豊満といえる胸――
そこまでならば、美女がそこにいたというだけなのだが……問題なのはその格好であった。
というのも、黒のビスチェに黒のショーツという、一応黒いマントは纏っているものの、どう見たって下着姿であった。
そして、夕映とパチェリーは最初、この女性が誰かはわからなかったが――
「もしかして、エヴァンジェリンさんですか?」
「ふ、良くわかったな」
 夕映の疑問にエヴァと呼ばれた女性は不敵な笑みを浮かべた。
なお、夕映がわかったのは、エヴァの横にメイド服姿の茶々丸がいたからである。
「ふ〜ん……肉体操作の魔法か……また、無茶なことをしたわね?」
「一目でわかるとは流石だな。昔は幻術を使っていたが、聖のおかげでこのようなことが出来るようになったよ」
 視線を向けるパチュリーに感心しつつ、エヴァは不敵な笑みで答えていた。
実は宴会の時、聖 白蓮がある理由から若返りの魔法を使っていたり、肉体強化の魔法を得意としていたのを聞いていたのである。
それで興味を持ったエヴァが聖と話し合った結果、それらの魔法を教えてもらえることとなった。
で、あれこれ試行錯誤したことで、今の姿になれる魔法を習得したのだ。
「しかし……なぜ、そのような格好なのですか?」
「う……そ、それはだな……」
「魔法によって体が大きくなりましたが、服まで大きくなるわけではありません。
なので、大きくなった体によって服が破けてしまい、完全にダメになってしまいました。
今は私の下着を代わりに着ている状態です」
「ば、馬鹿!? ここでそんなことを話すな!?」
 夕映の問い掛けにエヴァはなぜか照れくさそうに顔を背けるのだが、あっさりと理由を話した茶々丸に思わず慌てだしてしまう。
ちなみにだが、茶々丸のビスチェのサイズが合わなかった為か、胸がこぼれ落ちそうになっていたりするし、
ショーツもやはりサイズの違いで食い込みが凄いことになっており、お尻は完全にTバック状態である。
なお、命蓮寺の人達から服を借りれば良かったのだろうが、エヴァは慌てていたのか、そのことに思い至らなかったようである。
 そんなエヴァの今のスタイルを羨ましく思いつつも、なるほどと納得する夕映――
「ドジねぇ〜……そんなこと、気付かなかったのかしら?」
「う……い、いや……物は試しのつもりだったからな……こうなるとは思っていなかったのだ」
 いつの間にかいたレミリアが呆れた様子で問い掛けると、エヴァは戸惑った様子で答えていた。
実はエヴァも試しでここまで大きくなるつもりはなかったのだが、加減がつかめなかったために現在の状態になってしまったのである。
まぁ、翔太と一緒にいる女性達のスタイルを意識してなかったわけではないのだが……
 一方で今のエヴァの様子を茶々丸はどこか微笑ましく思っていた。昔なら、全力で否定していたかもしれないのに。
きっと盟友が出来たからだろう……ふと、そう考えてしまう。
「しょうがないわね……咲夜、エヴァに服を適当に見繕って頂戴」
「わかりました」
 レミリアの言葉に側に控えていた咲夜が頭を下げると、その姿が一瞬で消える。
しかし、そのことに誰も驚かない。最初の頃こそ、夕映やエヴァなどは驚いたりしていたが……
「にしても、そんな姿になる必要なんてあるの?」
「普段ならばな……だが、あちらでは外を出歩く時は元の姿は何かと不便でな。
かといって幻術で姿を誤魔化しても、見る者によっては見抜かれて面倒になることもある。
まぁ、これもまだ課題はあるが……それをなんとか出来れば、見抜かれる心配はかなり低くなる」
 首を傾げるレミリアに、エヴァは笑みを交えて答えていた。
確かに10歳前後の姿では場所によっては不審がられるし、幻術で姿を誤魔化すのも魔法を使った物なので見抜かれないわけではない。
それに見抜かれたら見抜かれたで厄介だ。幻術で姿を誤魔化すのは、自分が不審者だと言っているような物だから……
かといって、肉体操作によって姿を変えるのも魔法を使っているのは間違いないので、それで不審がられる可能性がある。
ただ、肉体操作の方はより誤魔化しやすいので、その辺りをどうにかすれば、幻術よりも見抜かれにくいのだ。
「その事で橙子と相談したかったのだが……今日は来ていないのか?」
「しばらくはお仕事で来れないそうなのです。ところでネギ先生達は?」
「今は美鈴に任せている。あれは教えるのが上手いからな。少し楽をさせてもらっているよ」
 疑問に答えてから問い掛ける夕映に、問い掛けていたエヴァはふっと笑みを浮かべながら答えていた。
橙子も自分の事務所に紅魔館と通じるドアが設置され、こちらへとやってくる。
しかしながら橙子も仕事があるので、そう毎日来ることは出来ないが……
 それはそれとして、エヴァの返事に夕映はなるほどと考える。
エヴァはネギ達を幻想郷に連れてきては、色んな者と相手をさせている。
なにしろ、幻想郷は実力者が多いので、修行としてはうってつけでもあったのだ。
「そういえば、なんでその姿で来たのよ? 元に戻れば良かったじゃない」
「まぁ、少々混乱していたこともあったが……一応、魔法の感覚をつかんでおきたかったのでな」
「ふ〜ん……翔太の為じゃないのね」
 少々照れくさそうに答えるエヴァだが、問い掛けたレミリアは不敵な笑みでそんなことを言い出した。
そのことにエヴァは眼を細め――
「なぜ、そやつの名前が出る?」
「ん〜……気があるのかな〜って、思っただけよ」
「お前は……確かに興味が無いと言えば嘘になるが……その程度の話だ」
 レミリアの言葉に、眼を細めていたエヴァは呆れたように首を振っていた。
「ふ〜ん……その程度ねぇ……」
 などと、その話を聞いたレミリアは、不敵な笑みを浮かべていたりするが……
エヴァは忘れている。レミリアの能力を……そして、レミリアは能力で確かに見たのだ。
再び麻帆良を訪れる翔太に、エヴァが輝きを見出す所を――


 さて、こちらは紅魔館外。ここでネギは美鈴と組み手をしていたのだが――
「うちな……心配なんよ……せっちゃんが……」
「あ〜……それは良くわかるわ……」
 見学していたこのかのつぶやきに、同じく見物していた明日菜が引きつった笑みでうなずいていた。
ちなみに3人以外にここにいるのはのどかにハルナ、朝倉に古菲に楓といった面々である。
このかとのどかはこの後でネギやエヴァに魔法を教えてもらうことになっており、明日菜と楓に古菲は修行の為に来ていたりする。
ハルナと朝倉は興味本位でといった所である。
また、千鶴やアキラ、裕奈も魔法を教えてもらうためにこの場にいた。
3人は知ってしまったのだ。翔太の体のことを……それでなんとか出来ないかと思い、魔法を覚えようと思ったのである。
しかし、この3人。なぜか、このかの話にわかるな〜といった様子でうなずいてたりするのだが……
 さて、このかが刹那の何を心配しているのか? その理由を明日菜は知っている。
ていうか、見てしまった。それで思ったことは、刹那に何があったのか? と、本気で心配してしまったことである。
刹那に何があったのか? それは麻帆良にいる刹那に視線を向ける必要がある。


「やぁ!」
「ぎゃあぁぁぁぁ!!?」
 さて、夜の麻帆良郊外では、その場にいたボルテクス界の悪魔を刹那が斬り倒していた。
シンジの言った通りにここ最近、麻帆良にボルテクス界の悪魔が現れるようになった。
幸いなのは人が多くいる場所に現れないことと、現れる数がそれほど多くないことである。
しかし、悪魔の強さや耐性のせいで刹那のようにまともに戦える魔法先生や生徒の数が少なく……
現状としてはなんとか抑えていられるといった状態であった。
「お疲れ。今回はこれでおしまいかな?」
「うむ……そのようだな」
「はい、周りには悪魔はいないようです」
 やってきた真名に刹那はCOMPを操作しながら答え、さよも空から舞い降りながら答える。
現在の麻帆良で主力となっているのは刹那達であった。
エヴァや楓、古菲などもいるが、戦った経験などで言えば、刹那達に一日の長がある。
そのため、ほぼ毎日のように悪魔対峙にかり出されるはめとなったが、刹那達は修行と割り切って勤しんでいた。
少しでも翔太に近付くために――
「しかし、今更だけど……相変わらず、凄い格好だね」
「それはそのまま返しておこう」
 なんてことを言い出す真名に、刹那も若干睨みを交えながら返していた。
どういうことなのか? それは2人の服装にある。まず、刹那だがジーンズ……のような物を履いている。
いや、確かにジーンズなのだが右足の方は膝下から無く、左足の方も股下から丸々無い上にお尻がちらりと見えている。
上の方も胸当てが付いたスポーツブラのような物を纏っているので、見事なくびれを見せるお腹が出ている。
後は翔太と同じデザインの防具付きジャケットを着ていた。某インデックスに出てくる、聖人のような格好であった。
 真名の方はなぜか艶やかに輝く銀の水着を着ている。しかも、ほぼV字型の……一応胸当てはあるが、横乳や下乳にへそが出ている。
両足は白のストッキングのような物を履き、後は刹那と同じジャケットを着ている。どことなく、公安9課の少佐にも見えなくない。
まぁハッキリと言うと、2人とも露出満天な格好をしていたのである。
なぜ、こんな格好をしているのか? 原因は翔太の周りの女性達の姿にあった。
知っての通り、翔太の周りにはスタイルが良い上に露出が多い服装をしている女性が多い。
なので、2人はこうすれば翔太に近付ける……と、思ってしまい――
翔太が読んでいたラノベやアニメ雑誌からデザインをチョイスし、シンジに頼んで防具をこのような形にしてしまったのである。
 ちなみにこのか達にこの格好を見られており、あの状況になってしまったりする。
「にしても、刹那のは……ちょっと物足りなくないかな?」
 ふと、ふっと笑みを浮かべながら、そんなことを言い出す真名。
しかし、その視線は明らかに刹那の胸に向けられていたりするが……
が、刹那は怒るどころか不敵な笑みを浮かべ――
「悪いが……その余裕もそれまでだぞ」
「ほぉ……」
 ふんと鼻を鳴らしながら言い放つ刹那を、真名は目を細めながら見ていた。
この自身……何かあったのか? と考えていたのだが――
「この間、測ったらバスト自体のサイズが3cmアップしていたぞ」
 などと、不敵な笑みを浮かべ、胸を張りながら刹那はそんなことを言い出したりする。
確かに少しではあるが胸の谷間も見えているが――
「それに今現在も順調に成長中だ」
「ほぉ……」
 得意そうに語る刹那を真名は目を細めたまま相づちを打つ。
最近、嬉しそうにしていたが、それでか……なんてことを考える真名だが、ふと不敵な笑みを浮かべる。
「実はな、私もサイズ自体が2cmアップしてね。今も大きくなっているんだ。
でも、別に構わないけどね。あの人が喜んでくれるなら」
 やれやれといった様子で語る真名。そんな彼女を刹那は少しばかり悔しそうに見ている。
サイズで言えば、真名が圧倒的に優位である。このままでは……と、刹那は焦ってしまうのだ。
 ちなみに2人はまだ知らないが、千鶴、アキラ、裕奈のバストのサイズも成長してたりする。
生体マグネタイトの影響か、はたまた別の要因かは不明だが……
そんな2人をさよはあたふたしながら見ているのだった。


 その頃、超 鈴音は1人公園を歩いていた。
夜中という時間でこんな事をするのは、1人であることを考えたかったからである。
 ここ最近、超にとって予想外のことが起きすぎている。
ボルテクス界という異世界の存在に、そこに存在する悪魔達の麻帆良への襲撃。
それに幻想郷などの異世界の存在など……超が知る『歴史』とはかけ離れたことが起きていた。
また、翔太達の存在が超の焦りを強くする。
茶々丸の映像データから見る限りでも翔太の強さは群を抜いているし、その仲間達の強さも侮れない。
もし、彼らが自分の目的を知って、敵対したら……対策が無いわけではないが、それは麻帆良祭限定という物でもある。
なので、どうにかこちらに引き込めないか……と、考えていた時だった。
ふと、超は足を止めて、前方へと顔を向ける。そこには茶々丸の映像データで見知った顔がいた。
「アオイ シンジ……」
「初めまして。そちらは知っているようなので、自己紹介はいりませんかね?」
 睨みつける超に、シンジは気にした様子も無く穏やかな顔を向ける。
それでも超は油断無くシンジを睨みつける。映像ごしでもシンジの得体の知れなさは伝わっていたのだ。
だから、警戒していたが――
「いきなりですが……あなたは歴史を変えるというのはどういうことか、考えたことはありますか?」
「く!?」
 シンジのひと言に思わず超の表情が歪む。知られている? なぜ?
そんな疑問がよぎるが、なんとか平静を取り戻し――
「なぜ……知っているネ?」
「独自に調べさせてもらった……とだけ、お答えしておきましょう」
 睨む超にシンジはウインク混じりに人差し指を立てつつ答えていた。
シンジもネギま!のコミックスは読んでおり、それでここの超はコミックスと同じ事をしようとしているのか?
それを確かめ、その通りだとわかると、こうして接触してきたのである。
「で、お答え頂けるのでしょうか?」
「く……あれは……あんなことは、あっていいはずがないネ!」
 シンジの質問に、超は叫ぶように答えていた。
そう、あって良いはずがないのだ。あんな悲しすぎる未来は……超はそんな未来を変えるために、ここへと来たのだ。
そんな超に対し、シンジは呆れた様子で頬を指で掻き――
「では、あなたは大量殺人犯になる勇気はありますか?」
「は?」
 シンジの言葉を、超は理解出来なかった。
しかし、理解し始めると、その表情が怒りへと変わっていった。
「私はそんなことをするつもりはないネ!? 確かに私がやろうとしていることには、犠牲は出ル!
しかし、死者が出ることなんてありえないネ!?」
「そう考えている時点で、あなたは自分の勘違いに気付いていないのですよ」
 怒りの形相で叫ぶ超に、シンジはため息混じりに答えていた。
しかし、超はわからない。わかろうともしない。戯言だと思ったのだ。
だが――
「あなたは1つの歴史を変えようとしているようですが……歴史とは様々な要因が重なって出来る物。
つまり、あなたが変えようとしている歴史に関わっている物も変えることになるのですよ」
「それが……なぜ、大量殺人になるネ?」
 気にしていない様子のシンジの話を、超は訝しげに問い掛ける。
言われて、そうなのだろうと超は思ったが、それがどうして大量殺人に繋がるかがわからなかったのだ。
「人の生き様もまた歴史となるのです。その歴史もまた、あなたが変えようとしている歴史に関わっています」
 シンジの言葉にそうなのだろうと超は考える。だが、やはり大量殺人に繋がる理由がわからない。
睨みながらもじっとこちらを見る超を見て、シンジもそのことを察したのか、ため息を吐いていた。
「やれやれ……ま、後のことはご自分でお考え下さい。あ、麻帆良祭前日にまたお会いすることになるでしょう。
その時までに、答えにたどり着いていることを祈っていますよ。
あ、もう1つだけ……気付かなければ、あなたは蝶に弄ばれることになりますよ?」
 そんなことを言い残し、シンジは超の横を通り過ぎて去っていった。
それを超は振り返ることなく、考えに没頭していた。意味がわからない。
なぜ、自分がしようとしていることが大量殺人になるのか?
それに蝶に弄ばれるとはどういうことなのか? 考えるが……超は答えに行き着くことが無く、しばらく呆然と立ち尽くすのであった。


 さて、一方のシンジは超から見えない所で立ち止まり――
「ということなのですが?」
「見ておったよ……しかしの……」
 声を掛けると、ある木の陰から学園長が姿を現す。
なぜ、学園長がここにいるのか? 実は超の企みをシンジが話した為だ。
もっとも、それだけでは学園長も信じられなかったため、今のようなことをしたのである。
まぁ、シンジとしても一度超と話をしておきたかったため、別に構わなかったが。
「それでワシらはどうすれば良いのかの?」
「いえ、今回の一件、私に一任してもらえれば大丈夫ですよ」
 シンジの返事に問い掛けた学園長は訝しげな顔をする。
だが、それもすぐに真剣な顔になり――
「それはどういうことかの?」
「なに、超さんが狙ってるあれは、翔太さん達が戦っている者も狙っています。
超さんはともかく、他の方々はあれの相手をするなんてのは無理ですからね」
 呆れた様子のシンジの話を学園長は最初は首を傾げるが……翔太達が戦っている相手と聞いて顔を青くする。
ミトラスやアスラ……話を聞いただけだが、その強さはエヴァですら全力で遠慮したい程だという。
そんなのがあれを狙っているとすれば……シンジから超の目的の全貌を聞いているだけに、嫌な考えしか思い浮かばない。
「どうにか出来るのかの?」
「しなければなりませんよ。私としても、ここで人類終了……なんてのはごめんこうむりますしね」
 学園長の問い掛けにシンジは呆れた様子で答えていた。
もっとも、シンジは何も正義感などで言っているわけではない。彼はある理由があって、人類にはこのままでいて欲しいのだ。
それがなんなのかはいずれ語ることもあるかもしれないが……ともかく、なんとかしなければならないのは事実である。
「ま、麻帆良に被害が出来る限り出ないようにいたしますよ」
「そうしてくれると助かる……ところで、彼女は歴史を変えなければならないほどの地獄を見たのかの?」
 シンジの言葉にうなずいてから、学園長はそんなことを聞いてみる。
超の目的の全貌を聞くと共に、彼女がなぜそんなことをすることに至ったのかも聞いていた。
同時に超が目的を達した時に起こるかもしれない悲劇も――
学園長としてはまだ半信半疑だが、事実ならばあまりにも不憫だと感じていた。
だから、出来うることなら、円満な解決方法がないかと思っていたのである。
「それは超さん本人に聞かなければわからないことですが……問題なのは、それによって歴史を変えることに固執してることです。
歴史を変えるというのは人の手に余ること……それによって起こる最悪の事態は、下手をすれば彼女の考えの範疇を超えるでしょう。
そうなれば、彼女は自分のしたことに押し潰され、壊れてしまう。
ま、今回の事が起きれば、超さんは歴史を変える前に絶望してしまうでしょうがね」
 呆れた様子で首を振りつつ、シンジはそんなことを語る。
映画などで歴史を変えるという物があるが、実際はそんなに単純なことではないのだ。
セイバーに話していたのが、その例の1つであった。もし、そうなれば、超はどうなるか……あまり考えたくないこととなる。
それ以前にあれを狙っているのが超だけではないのは問題だ。もし、あれと対峙すれば、超は否応なしに絶望するだろう。
それほどの存在があれの元に現れようとしていたのだから……
「こんなことを言えた義理では無いのはわかっておる。だが、なんとかして欲しい。
このままではあまりにも不憫すぎるのじゃ」
「そのつもりですよ。私としても、歓迎出来る事ではありませんからね。
では、私はやることがありますので……また、お会いしましょう」
 頭を下げる学園長にシンジはそう答えると、景色に溶けるかのように消えていく。
顔を上げ、それを見送った学園長はため息を吐き――
「超君も誰かを頼れれば良かったのじゃがな……」
 今となってはあまりにも難しくなったことに、学園長は心を痛めるばかりであった。



 あとがき
そんなわけで幻想郷と麻帆良での出来事でした。
今回はお色気満載……の中で、なにやら暗躍してるシンジ君。果たして、シンジは何をするつもりなのか?
それはいずれのお話になるとして、次回も幕間編。今回は士郎達が主人公。
悪魔の対処をしていた士郎達にあのお嬢様がサーヴァントと共に登場。
しかし、あの最凶のサーヴァントまで現れて……そんなお話です。
果たして、士郎達はどうなってしまうのか? 次回をお楽しみに〜



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.