あの洞窟から出た士達はそのままフォトショップへと向かう。
というのも――
「本当に……帰ってしまうんですか?」
「ああ、俺達がこの世界でやることは終わったみたいだしな」
 不安そうな士郎に士はあっさりとした様子で答えた。
そう、士達は元の世界へ帰る為にフォトショップへと戻り、士郎達はその見送りとして来たのだ。
「あら、人を助けるのは最後まで面倒を見なくちゃいけなかったんじゃないかしら?」
「俺達が出来るのはここまでってわけじゃないが、他の世界にも行かなきゃならない。あんな奴らの好きにさせるわけにもいかないしな」
「そう……ですね」
 凛の皮肉にも士は気にした様子も無く答え、士郎はそのことに沈痛な面持ちでうなずいた。
あの怪人達が言っていた理由を、士郎としても認めるわけにはいかなかった故の同意である。
「まったく、忙しいことね」
「そうだな。ま、俺達が大変なことにならないようにするには仕方が無いが」
 呆れた様子の凛に士は肩をすくめながら答えた。士とて好きこのんでやってるわけではない。
しかし、このままでは自分達の所まで危険なことが起きることになる。それを阻止する為に士達は戦っているのだ。
「あ、あの……また、会えますか?」
「さてな。でも、この世界にまた何かあれば、来ることになるかもしれないが」
 少し怯えながらも問い掛ける桜に士はこれまたあっさりした様子で答えるが、内心そんなことはあって欲しく無いとも考える。
自分達がこの世界に来るということは、怪人達に狙われてることを意味するのだから。
「それじゃ、そろそろ行くか」
「ああ、そうだな」
「あ、あの……士さん、俺……やっぱり、正義の味方を目指してみます!」
 士の言葉に雄介がうなずくと、士郎が意を決した様子でそんなことを言い出す。
実を言えばまだ悩んでいたのだ。正義の味方とはどんな者なのかを。
それでも目指してみたかった。士達の戦う姿を見て、自分なりの正義の味方に。
「別にいいんじゃないのか? ちゃんとどうするのかを考えてやるっていうのならな」
「あ、はい!」
「だが、2つだけ言っておく。正義ってのは人によって違うってこと。それと自分のしてることは正しいとは思わないこと」
「は?」
 士の返事に嬉しそうな顔をする士郎だったが、次に出た言葉に思わず首を傾げてしまう。
正義が人によって違うというのはなんとなくわかるのだが、自分のしてることが正しいと思うなとはどういうことなのか?
それがまったくわからなかったのだ。
「人の数だけ考え方がある。正義もまたしかりってことさ。後、自分のしてることが他人から見たらどう見えるのか?
それを考えろ。でなけりゃ、時には人の迷惑にしかならないこともあるからな」
「は、はぁ……」
 士の言葉に士郎は戸惑いながらも返事を返す。といっても、この時は士の言葉の意味をちゃんと理解してなかったが。
ただ、後にこの言葉が士郎に多大な影響を与えたりもするのだが。
「そんじゃあな。がんばれよ」
「あ、はい!」
「士さん達もお元気で」
 振り返り、手を振りながらフォトショップへと入ろうとする士。
望や雄介、麗華と麗葉もそれに続く所に士郎が慌てた様子で返事をし、桜も右手を振って見送っていく。
慎二も事情を聞いてないので良くわからなかったが、釣られるように手を振っていた。
「士……ありがとうね」
「礼はいらない。勝手にやったことだからな」
 凛の言葉に士は答えてからフォトショップのドアを閉める。
それと共にフォトショップは光に包まれ――次の瞬間には建物その物が消えていた。
「ほ、本当に……異世界から来たんですね」
「そうみたいね」
 その光景に呆然とする桜に、凛はため息混じりに答えた。
自分達以外の魔術師がこの光景を見たらどうなるか……それを思わず考えてしまったからだ。
ちなみにその想像は全く持って嬉しくない物だとだけ答えておこう。
「さてと、これからやることはたくさんあるわよ。今回のことの後始末に士郎と桜の弟子入りとかね」
「弟子入りって……誰に?」
「私に決まってるでしょ? 冬木の魔術師は実質私だけなんだから。それに士郎は未熟すぎる。そんなの見過ごすわけにはいかないのよ」
「ボクはどうすればいいんだい?」
 戸惑う士郎に話していた凜は腰に両手を当てながら答える。
後始末の方は色々と面倒だが、自分達の保身を考えると手を抜くわけにはいかない。
それに昨日聞いた限りではあるが、士郎は魔術師として……いや、見習いとしても未熟すぎる。
まぁ、士郎の考え方は魔術師としてはあまりにも異質ではあるので、その呼び方もどうかとは考えるが。
良くて魔術使いだろうか? などとも考えてしまう。
そんな中で慎二は思わず問い掛けてしまったが――
「そうね。今回のことで私も色々と考えさせられたし、共同研究ってのはどう? 魔術回路無しで魔術を行使するってのも面白そうだしね」
 ウインク混じりに凛は答える。士の言葉で色々と考えさせられたのは事実だ。
だから、魔術回路無しで魔術を行使する方法を探すのも面白いかもと考えた。ただ、実現は難しいだろう。いや、無理かもしれない。
でも、やってみるのもいいかもしれない。士の言うとおり、絶対なんて物はありえないのなら――
「それにしても、士達ってもしかしたら守護者だったのかもね」
「守護者……ですか?」
「ええ。ただ、ガイアともアラヤとも違う人の為の守護者……『仮面ライダー』という名の、ね」
 首を傾げる桜に思わずそのこと漏らした凛はウインク混じりに答えた。
守護者とは士郎達の世界に存在する、この世界の危機に動く存在のことだ。
ただ、凜が言うガイアやアラヤは本当に危ない時でしか動かないとされる。
それ故にそこにいる者達は手遅れだった場合もありえた。
そんな者達とは違う、本当に人の為の守護者。それが士達ではないか? 凛はそう考えてしまうのだった。
そんな中で士郎は、また士達に会えるといいなと考えていた。


その考えは数年後に叶えられることとなるのだが――


 さて、元の世界に戻った士達はいつも通りの生活を送る。
変わったと言えば、麗葉が小学校に行き始めたことだろう。彼女にとっては初めての経験だったようで色々と戸惑っていた。
それは士達がアドバイスすることで協力していたが。そんなこんなで1週間後。新たな世界へ行く日となった。
「次はどんな世界なのだろうな?」
「とりあえず、魔法使いとか魔術師とかは勘弁して欲しい所だがな」
「あはは……そうだね……」
 麗華の言葉に士がため息混じりに返すと、思わず同意する望や雄介は苦笑していた。
確かに前々回、前回とそういった関係だったのもあって、食傷気味なのは事実だが。
そんな時に垂れ幕が落ちる。淡い光を放つ垂れ幕には近代的な都市が描かれていたのだった。


「待てっていてるでしょうが!?」
 近代的な都市の中を栗色のショートカットにどこかの制服を着た少女が怒った顔で何かを追いかけていた。
と、その少女が右手から電撃を放つ。その電撃の先にいたのは黒いツンツン髪をしたこれまた制服らしき物を着た青年。
その青年が慌てて振り返って右手を突き出すと共に電撃が突き刺さるものの、右手に触れた瞬間に電撃は最初から無かったかのように消えてしまう。
「くっそぉ〜!? 不幸だぁ〜!?」
 しかし、青年はそのことを気にする間もなく、振り返って駆け出してしまうのだが。


「やれやれ、今回は未来世界って所かな?」
 どこか安心したような顔をする士だが、この時はこの場にいた者達も含めて気付いていなかった。
この世界には魔法使いや魔術師に近い存在がいることに――




 あとがき
というわけでFateの世界での出来事を解決した士達。ただし、色々と変化を与えたようですが。
さて、その変化がどのようになるかは……いずれお話で出ることになりますが。
それはそれとして、次なる世界は『とある魔術の禁書目録』の世界。
この世界で士達はどんな出会いをし、どんなことをするのか? そんな話となります。
ちなみにインデックスは今回は出てきません。それ以前のお話ってことで――
そんなわけで次回またお会いしましょう〜



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