店内から外の景色を眺める士達。そこに広がるのは近代的な都市の光景であった。
「なんか、俺達の世界とあんまり変わらないな?」
「まったくってわけでもなさそうだがな」
 雄介の感想に士は外の景色を眺めつつそんなことを返す。
良く見るとポリバケツのような円筒形の機械がいくつもせわしなく動いているのが見えた。
「ロボット……かな?」
「たぶんな。しかし、茶々丸を見た後だと陳腐に見えるのは俺だけか?」
「あ〜……わからなくもない」
 望の疑問に士が答えるが、その話を聞いて麗華は苦笑する。
確かにエヴァンジェリンの世界にいた茶々丸を見ていると、あの円筒形の機械がおもちゃに見えてくる。
良く考えると茶々丸みたいなのを良く造れたなと思うのだが……そこはあえて考えないことにした。
「お兄様、これからどうするの?」
「ま、外に出るしかないな。どんな世界か確かめなきゃならんし」
「そうなるよなぁ」
 麗葉の問い掛けに士が答えると、雄介も同意するようにうなずく。
前回、前々回もそうであったように、この世界がどのような所なのか確かめなければ始まらない。
そんなわけで叶を残して都市へと出た士達であったが――
「なんか、学生が多くないか?」
「麻帆良みたく、学校が多い所なのかもな」
 辺りを見回す雄介の疑問に士は気にした風も無く答えた。
麻帆良も学園が中心となった所と聞いていたので、そのような所なのかと思ったのだ。
そんな風にしばらく都市を歩き回る士達。その結果、ここが学園都市と呼ばれている名の通りの都市であることがわかった。
それと――
「なんか、すっごいハイテクっぽい感じがするね」
「確かにな」
 望の言葉に士も同意を返す。
都市としては士達の世界の都市とあまり変わりないように見える。しかし、技術の方は士達の世界よりも進んでいるように思えた。
現に携帯にしても士達が持っている物より高性能であり、買い換えられないものかと考えていたのだし。
そんな感じで都市を見回っていた士達であったが、いつの間にやら人気の無い広い場所に来ていた。
「お兄様、あれ――」
 ふと、何かに気付いた麗葉が指を差したので士達が顔を向けると、そこには青年と少女がいた。
少女の方は栗色のショートカットに可愛らしくも勝ち気な表情を見せ、どこかの制服を着ている。
青年の方は黒いとんがった感じの髪をしており、顔立ちは普通といった所だろうか? しかし、なぜか困ったような表情をしていた。
 良く見るとその2人以外にも人はいた。
その2人から少し離れた所に立っているのはショートカットの少女よりも少し小柄で栗色の髪をツインテールにしている少女。
その少女もショートカットの少女と同じ制服を着ているが、なぜか呆れた様子で2人を見ている。
なお、可愛らしい顔立ちであったというのは述べておく。
 その者達を見て、これはどんな状況なのかと士達は思った。
良く見ればショートカットの少女は青年を睨んでいるように見え――たかと思うと右手を向けていた。
なんだと士達が思う間も無く、そのショートカットの少女は向けた右手から電撃を放ったのである。
その電撃は青年へと襲いかかるが、青年は少し慌てながらも右手を向け、同時にその右手に電撃が突き刺さる。
すると電撃は何事も無かったかのように消えてしまった。
「な、なに、あれ?」
「まったく……魔法やら魔術やら関係の無い世界に来たと思ったんだがな」
 今の光景に雄介と共に目を丸くする望だったが、士は呆れたようにため息を吐いた。
魔法や魔術とは関係の無い世界にこれた思った矢先に、それっぽい力を見せられたのだ。
食傷気味だった士にとって呆れてしまう光景だったのである。
「しかし、今のは魔力や気を感じなかったのだが――」
「まったく、相変わらずどんな能力なのよ。私の電撃を無力化するなんて」
 しかし、麗華は疑問に感じていた。今の電撃からは魔力も気も感じられない。
どんな力なのかと疑問に感じていた所で、ショートカットの少女が青年を睨みながら問い掛ける。
能力ということは何かしらの力か? と、ショートカットの少女の言葉を聞いて考える士だったが、そこであることに気付いた。
青年が動かないのだ。電撃を防いでからまったく。そのことに士は疑問に感じた。
ショートカットの少女の言うとおり、あの青年も先程の電撃を何かしらの能力で防いだのだろう。
そこまではいい。ただ、一見すると戦っているように見えるが、睨んでいるのはショートカットの少女の方。
青年は遠慮しているというか、引いているというか、そのように見える。
となれば、ショートカットの少女に何らかの理由で襲われているのか? とも考えるが、それでも反撃しないのはおかしい。
何かしらの能力を持ってるなら反撃は出来そうな気がするのだが。
そこまで考えて、士はある推測を立てた。あの青年はもしかしたら――
「なぁ、いい加減に、って、へ?」
「え?」
 青年が諦めたようにため息を吐いてから何かを言おうとした時だった。
士が2人の間にいたことにショートカットの少女と共に軽く驚いてしまう。
この時、青年が思ったのは士がなぜ自分達の間に入ってきたのかという疑問であったが――
「なによ、あんた? そいつの仲間?」
「少し黙ってろ」
「う……」
 睨むショートカットの少女だったが、士に睨まれたことに思わず怯えてしまう。
怖かった。不良に睨まれても何とも思わなかった自分が、どことも知れない男に睨まれただけなのに。
それ故にショートカットの少女は思わず自分の体を抱きしめてしまう。
そんなショートカットの少女の様子に青年やツインテールの少女は訝しげな顔をしていたが。
「おい、お前」
「は、はい?」
「もしかして、あの子に攻撃出来ないんじゃないか?」
「う……」
 士にいきなり声を掛けられて戸惑う青年であったが、次に来た問い掛けに図星だったという顔をしてしまう。
それを見て、士はやはりかとため息を吐いた。青年の能力がどんな物かはわからないが、もしかして防ぐことしか出来ないのでは?
もしくは性格的にショートカットの少女を攻撃出来ないのでは? そう考えたのだ。で、結果は見ての通りというわけである。
「とりあえず、なんでこんなことになってるか、話だけでも聞かせて欲しいんだがな?」
「ちょっと! 攻撃出来ないってどういうことよ!?」
「それを聞くんだよ。とりあえず、ここで話すのもなんだから、場所を変えよう」
 どうやら、青年の反応を見ていたショートカットの少女が怒り出したが、話していた士はこのことにため息を吐く。
厄介なことに首を突っ込んだかと後悔したが、関わってしまった以上このままというわけにもいかない。
とりあえず、話し合わせようと思い、そう提案したのだった。
そのことにショートカットの少女は文句がありそうな顔をしながらもうなずき、青年もこの状況を何とかしたかったようで同じようにうなずく。
「いいみたいだな。そっちの嬢ちゃんはどっちかの知り合いか?」
「ええ……お姉様の付き添い……みたいなものですわ」
「そうか。悪いが付いてきてもらえると助かる」
 ツインテールの少女の返事を聞いて、そう言い放つ士。
ツインテールの少女も不承不承ながらもうなずき、青年とショートカットの少女と共に移動することとなった。
で、目的の場所に着くまでの間、全員は簡単な自己紹介をした。
青年は上条 当麻(かみじょう とうま)。ショートカットの少女は御坂 美琴(みさか みこと)。ツインテールの少女は白井 黒子(しらい くろこ)
で、歩いている間の様子で美琴はなにやら当麻を目の敵にしており、黒子も別な意味で当麻を目の敵にしてるらしい。
この様子に士はどうしたもんかと思っている間に目的の場所であるフォトショップへとたどり着いていた。
「こんな所に喫茶店なんてありましたかしら?」
「今日来たばかりだからな」
「来たばかり?」
 首を傾げる黒子に士はあっさりした様子で答えるが、美琴は当麻共に首を傾げていた。
まぁ、いきなり異世界から来ましたと言っても信じられないだろうから、誤魔化しただけなのだが。
とりあえず、当麻達を思い思いの席に座らせた後、話を聞くことになったのだが――
「1つ聞いておきたい。お前はチンピラか?」
「なんでよ!?」
「いや、当然の反応だと思うぞ?」
 呆れた様子で問い掛ける士に怒り出す美琴であったが、麗華も呆れた様子で士の言葉にうなずいていた。
話を要約すると、ある日偶然出会った際に美琴の電撃を当麻が防いだのがきっかけらしい。
なお、当麻の右手は『幻想殺し(イマジンブレイカー)』という物で、それが異能であるならば右手で触れるだけで消せるという。
美琴の電撃を消したのもこの能力故であり、これを聞いた美琴はなにやら舌打ちしそうな顔をしていたが。
話を戻すが、このことを知らなかった美琴は以来当麻を目の敵にし、ことあるごとに電撃を喰らわせてるそうなのだ。
これを聞いた士と麗華がチンピラかという感想を持ったとしても仕方がなかっただろう。
なお、雄介や望も同じ感想を持っていたのを述べておこく。
「だって、なんか悔しかったし――」
「だからって、会うたびに電撃を喰らわせるのはどうかと思うぞ? それにお前、自分の力がどんな物なのかわかって言ってるのか?」
「当たり前じゃない。でなきゃ、能力なんて使えないわよ」
「違う。そんなことじゃない」
 口をとがらせる美琴であったが、問われたことに何言ってんのという顔をする。
しかし、問い掛けた士は真剣な顔をし――
「自分の能力が人殺しの力だって自覚はあるのか?」
「へ?」
 士の言葉に美琴だけでなく、当麻も目を丸くしてしまう。黒子は若干驚いていたものの、すぐさま冷静さを取り戻していたが。
「な、何言ってるのよ……私がそんなことするわけ――」
「例え、お前がそのつもりでなくても、お前の能力は人を殺せるんだよ。それに事故って言葉を知ってるか?
お前は手加減したつもりでも、そうなってしまう場合もあるんだ。というか、あの電撃をまともに受けてたらどうなるよ?」
「運が良くても重傷だろうな」
 戸惑いながらも反論しようとする美琴であったが、呆れた様子の士と麗華の言葉に何も言えなくなる。
確かに士達がいた所で放った電撃の威力は人を殺せるほどの威力があった。
その時は当麻にはこれくらいの威力でなければ通じないと思ったからなのだが、今になって思うと身震いしてしまう。
もし、当麻がまともに喰らっていたら――
「なんでこいつにそこまでこだわるかはわからんが、こいつにしてることがなんなのかわかってやってるのか?」
 士に聞かれるが、美琴は答えることが出来ない。本音を言えば見返してやろうとか、そんな気持ちだった。
でも、ただそれだけで……そこまで傷付けようと思ったわけじゃない。
けど、自分が今までやってきたことを思い返すと、そうだとは言えなくなってくる。
「く!」
「おい、ビリビリ!」
 いたたまれなくなって、フォトショップを飛び出す美琴。呆然と見ていた当麻がそのことに気付いて慌てて追いかける。
そんな光景を黒子はため息を吐きながらも見送っていた。
「追いかけないのか?」
「そうした方がよろしいのでしょうね。あの類人猿に任せるわけにもいきませんし。でも、これはお姉様にはいい薬なのかもしれませんね」
「いい薬って?」
 士の問い掛けに肩をすくめながら答える黒子だが、その言葉に雄介は訝しげな表情を見せていた。
その問い掛けに黒子は外の景色に顔を向け――
「お姉様は大変な努力をなさって、『レベル5』にまで能力を高めた方なのですの。
それは尊敬するのですが……そのせいなのか、お姉様は厄介ごとに良く首を突っ込まれる方でして……
ことあるごとに注意はしてるのですけれども……」
「力に固執しているのだろうか? それでそのようなことを――」
「いや、自分で何をしたいのか、わかってないんだろ?」
 ため息混じりに話す黒子の言葉に考える仕草をしながらつぶやく麗華だったが、士は肩をすくめながらそんな意見を出した。
ちなみに『レベル5』などわからない単語が出てきた物の、それは後で聞こうかと士は考えていたりする。
「わかってないって?」
「たぶんだが、強い力を持ってしまったせいで、その力で何をすればいいのかわからないんだろ。
でも、何もしないわけにはいかない。自分の力で役立てることをしようと考えたんだと思うが」
「なるほど……」
「当麻へのちょっかいも、そんな自分を否定されたようにかんじたんだろうな。
だから、自分を認めさせようとして、あんなことをしてるんじゃないか――」
 望の問い掛けに答える士の話を聞いてうなずく雄介。その話に黒子も納得する。
確かに言われるとそうなのかもしれない。むろん、真実とは限らないが、どこか意地になっているように見えるのは確かだった。
その後も話を続ける士だったが、いきなり話を止めたかと思うと眼を細めていた。
「どうしたの、お兄様?」
「追いかけるぞ。なんだか、急激に嫌な予感がしてきた」
「へ?」
「士がそう言うのなら、そうなのだろうな」
 麗葉の問い掛けに士が答えるのを聞いて、黒子は思わず呆然としてしまう。
いきなり何を言い出すかと思ったからだが、なぜか麗華は同意していた。
士の勘は困ったくらいに当たるので、今回もそうなのだろうと望達は思ったのだ
こうして黒子の首を傾げさせながらも、士達はバイクで美琴達を追いかけることにしたのだった。


 一方、美琴は人気の無い公園で1人ベンチに座っていた。そこで今まで自分が当麻にしてきたことを思い返す。
出会い頭に電撃……毎回というわけではないが、しては文句を言ったりしてる。
そのたびに当麻に逃げられるが、普通に考えたら当然かと思えてきた。
だって、人を殺せるくらいの威力の電撃を放っていれば――自分としてはそんなつもりは無かった。
でも、何度も防がれたせいで意地になって威力を上げていたのは事実だった。
そこまで思い返すと、自分は何をしてるのかと悩んでしまう。
自分はそんなためにここまで力を高めたわけじゃないのに――そんな時だった。
「ぐるるるるる……」
「え?」
 獣のうなり声が聞こえ、美琴は思わず立ち上がってしまう。そして、辺りを警戒していたのだが――
「なに……あれ?」
 それを見て、思わず呆然としてしまった。
それは人の形をした豹……と言えばいいのか? 見た目的にはそのように見えるのだ。
しかも、首にはマフラーのような物も巻いている。それがマフラーと共に黄色、黒、灰色と色違いで3匹もいた。
その3人の怪人の姿を見て、美琴は思わず身構えてしまう。姿はもちろんのこと、感じる気配も普通では無い。
なにより、3人の怪人は自分を見たままこちらに向かってくる。
何かある。そう思った美琴は威嚇のために電撃を放とうと右手を向け――
「あぐ!?」
 しかし、電撃が出ない。それどころか、激しい頭痛で思わず地面に崩れ落ちてしまう。
「く、な、なんで? ああ!?」
 疑問に思いながらも電撃を出そうとするが、やはり頭痛がするだけで電撃が出ない。
その間に3人の怪人は頭の上に光の輪が現れると、そこから武器を取り出していた。
黄色が剣、黒が槍、灰色が両手にかぎ爪。それらを構えて美琴に迫ろうとしていた。
「あう!? う、あ、ああ……」
そのことに美琴は怯えていた。電撃を出そうとしても激しい頭痛がするばかりで出来ない。
その上、怪人達は明らかに自分を襲おうとしている。何も出来ず、しかも頭痛でろくに動けない。
このままでは……恐怖で震える美琴であったが――
「ビリビリ!」
 そこに当麻が駆け付け、美琴の前に立った。
「あ、あんた……どうして……」
「それはその……ともかく、あんたらはなんのつもりだ!?」
 当麻が来たことに戸惑う美琴だったが、当麻自身もなんで来てしまったのか良くわかってない。
なんだか、放っておけなかったのは事実だが……ともかく、そのことで言いよどみながらも当麻は怪人達を睨む。
しかし、怪人達はそんなのは知るかと言わんばかりに襲いかかろうとしていた。
「くっ」
「ぐおぉ!?」「ぐが!?」「ぐごぉ!?」
「へ?」
 そのことに身構えると当麻であったが、いきなり飛び込んできた3台のバイクに怪人達がはね飛ばされた事に思わず呆然としてしまう。
「まったく、嫌な予感がしてみれば、こういうことか」
「て、士さん!?」
 そして、そのバイクの1台に士が乗っていることに当麻は驚くはめになったが。
「お姉様! あれはいったいなんですの?」
「く、黒子……私にもわかんない……」
「お姉様?」
 後では瞬間移動で現れた黒子に美琴は怯えた様子で答えるが、その様子に黒子はいぶかしんでいた。
普段の美琴ならば怪人を睨み返すくらいはするはずなのに、それをしなかったのだから。
「あいつらの相手は俺達がする。お前達は離れてろ」
「で、でも――」
「望、頼む」
「うん、ほら、こっち来て」
「え? ちょ、ちょっと――」
「ま、待ってよ――」
「何をするんですの!?」
 士の言葉に戸惑う当麻。士達に任せるのは気が引けたからだが、士に頼まれた望に美琴と黒子と共に引っ張られてしまう。
その間に士はベルトを装着し、麗華と麗葉、雄介はカードを構え――
「「「へ!?」」」
「「「変身!!」」」
『仮面ライド――ディケイド!!』『ターンアップ』
「「「ええぇぇぇぇぇぇ!!?」」」
 麗葉がカードに吸い込まれる場面を見て、当麻、美琴、黒子が驚く中、士達は変身する。
その光景に更に驚く当麻達。一方の士は気にした風も無く、ケースを剣に組み替えて構えていた。
「おっと!」
「くっ!」
「うおぉ!」
 士が黒の怪人が振り下ろした槍を自分の剣で受け止める。
麗華も黄色の怪人の剣を自分の剣で受け止め、雄介は灰色の怪人に突っ込んでいく。
その光景に当麻達は息を呑んだ。不良のケンカや能力者の能力行使とは違う何か。
それが目の前で繰り広げられ、言い知れぬ雰囲気を出していたのだ。
その雰囲気に当麻達は飲まれていたのである。
「ち、中々素早いな。じゃあ、こいつで行くか――」
『フォームライド――アギト、ストーム!!』
「アギト!?」
「す、姿が変わった!?」
 怪人と槍と剣をぶつけ合っていた士は、このままではらちがあかないと姿を変える。
その姿はどことなく雄介のクウガを思わせるが、左腕と上半身の色が青くなっており、左手には青い棍が握られていた。
その上、肩当ての形が左右で違っている。その姿に戦っていた怪人と当麻が驚きを見せる。
当麻は知らないのだが、今の士は仮面ライダーアギトと呼ばれる者で、今戦っている怪人と戦ってきた者でもあった。
ちなみにだが今の姿はストームフォームと言い、素早さを高めた形態である。
「うおっと!? く、負けるかぁ!」
 一方、押されがちで怪人の攻撃を何度か受けた雄介はよろめきながら後へと下がっていた。
それでもすぐに体勢を立て直すと自分のバイクの片方のグリップを引き抜き、伸ばして警棒にする。
すると姿に変化が現れる。上半身がふちに紫のラインが入った銀色の鎧のような物に変わり、目も赤から紫へと変わる。
また、警棒も紫の刀身を持つ剣へと変わっていた。
「がぁ!?」
 それに構わず襲いかかる灰色の怪人であったが――
「が!?」
「ふん!」
「ぐぼぉ!?」
 かぎ爪は雄介の鎧で止められた挙句、殴り飛ばされる羽目となった。
「く! まったく! 私は士や雄介のように姿は変えられんが――」
 麗華も黄色の怪人の剣を自分の剣で受け流してから、柄のホルダーを広げてカードを一枚抜き取り――
『ビート』
「はぁ!」
「ぐがぁ!?」
「こういうことは出来るのでな!」
 柄にカードをスラッシュし、威力を高めたパンチで黄色の怪人を殴り飛ばしていた。
「おがぁ!?」
 そんな中、黒の怪人を棍で突き飛ばした士はディケイドへと戻り、腰のケースからカードを一枚取り出し――
『ファイナルアタックライド――ディ・ディ・ディ・ディケイド!!』
「は!」
 ベルトにセットすると、発生した何枚ものエネルギーフィールドを引き連れるような形で跳び上がり――
「おおぉ!!」
「ぐがああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
 エネルギーフィールドを突き破りながら放つ跳び蹴りを喰らわして突き飛ばし、頭の上に光の輪が現れた黒の怪人を爆発させる。
『ぐああぁぁぁぁぁぁぁ!!?』
 それとほぼ同時に麗華と雄介も怪人達を倒していたのだった。
「ふむ、今回は比較的に楽だったな」
「ま、前回の事もあるし、油断は出来ないけどな」
 元の姿に戻りながら話しかける麗華に士は渋い顔で答える。
前回、備えをしていたにも関わらず怪人に人をさらわれてるだけに、そのことを警戒していたのだ。
「あんた達……何者よ?」
「ん? 俺達か? 俺達は――」
 そんな時に美琴は睨みながら問い掛ける。士達がしたことは明らかに普通じゃ無かったから。
それに対し、元の姿に戻った士は人差し指を立て――
「通りすがりの仮面ライダーだ」
「通りすがりの――」
「仮面、ライダー?」
 と、決まり文句になりつつセリフを聞いた当麻や黒子と共に美琴は呆然としてしまうのだった。


 一方、その頃――
「さてと、ここに例の鉱石があるらしいし。とっとと、手に入れちゃおうかな」
 などとつぶやくのは1人の青年だった。年の頃は20歳前後。
シューズに動きやすそうな黒のズボン、シャツにジャケットとラフないでたち。
肩に掛かりそうな黒髪は若干ソバージュっぽくなっている。
その顔は整っており、見た目的には好青年に見えた。
その青年はどこかを見上げ、不適な笑みを浮かべながらジャケットの内ポケットからある物を取り出す。
それは一枚のカードだった。どことなく、青いディケイドを思わせる姿が描かれた――




 あとがき
そんなわけで『とある魔術の禁書目録』の世界へとやって来た士達。といっても、正確には本編開始の数週間前になりますが。
士達と出会ってなぜか能力が使えなくなった美琴。彼女に何が起きたのか? それは次回にて明かされます。
そして、最後に登場した青年の正体は……というのは冗談ですが、本格的な登場は次章にて。
次回は話し合う士達と当麻達。その中で美琴が能力が使えなくなった理由を推測した士はある提案をするのだが――
といったお話です。ではでは、次回またお会いしましょ〜



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.