麻帆良に降り立った夜天の騎士 課外授業編『それは平凡な夜の一幕』
By EFF





流石に二日目のラブラブキッス作戦で大量の犠牲者を出しても3−Aのメンバーが懲りるわけがなく……三日目の夜を迎えた。

「イイな〜アスナ達、今頃自由に羽を伸ばしているんだろうな〜」

第四班班長明石 裕奈の……この一言から始まった。
自由行動で楽しく遊んで帰ってきた3−Aの生徒達は夕食の時間になって源 しずなから聞いた事に驚きと不満だらけだ。
事情は聞いていないが、第三班全員と他の班の一部のメンバーがホテルに戻ってこないで実家が京都にある近衛木乃香の家の泊まる事になった。

「ずるいよね〜ネギ君と一緒に木乃香ちゃんとこでお泊りなんて」
「いや、それもあるけど……鬼の新田先生のいない方が重要だよ!」

昨日、罰として正座をさせられた裕奈が恨みの篭った声を上げる。
今頃、木乃香の実家に泊まっているメンバーを思うと不満というか、羨ましい気持ちで一杯だった。

「何を仰っているのです! ネギ先生と一つ屋根の下に泊まる事の方が遥かに重要です!!」
「そうだよ! いいんちょの言う通りだよ!!」


いいんちょこと、雪広 あやかが不満を爆発させ、佐々木 まき絵も同じように爆発する。

「くっ! あ、朝倉さん! あなたの裏 切りを絶対に許しませんわよ!!」

ちゃっかりと自分達からはぐれて、ネギ達に同行した朝倉 和美を思って憤るあやか。
この裏切りを絶対に忘れないとあやかは思っているが、後日和美からネギの写真を貰って……あっさりと忘れたが。

「いいんちょもまき絵も疲れ知らずやなー」
「そうだね」

少し距離を取るようにして喧騒の場を眺めている和泉 亜子と大河内 アキラ。
流石に三日目となると連日の騒ぎで若干疲れた様子を見せていた。

「あれ? 龍宮さんは?」

亜子はふと気付いて隣のアキラに聞くと、アキラも周囲を見て気付く。

「……いないね。他の班の部屋かな?」
「探しに行かへん……ここに居ても疲れるさかい」
「……そうだね」

この後、どういう展開になるかはまだ分からないが……最悪はいいんちょとまき絵のネギの惚気話になる可能性がある。
それに付き合うのも悪くないが、他の班のメンバーが何をしているのかが気になって二人は部屋を後にする。


ちなみにこの部屋の残っていた裕奈はあやかとまき絵に付き合う破目になってしまい……砂糖を吐きたくなるくらいの惚気話にダメージを受けてしまったのは言 うまでもなかった。

「どこから行く?」
「……順番通りで」

廊下に出て亜子がアキラに聞き、少し考えてから返事が出る。

「そやな。ほな一斑から行こか?」
「うん」

3−Aの騒ぐ傾向のある面子が居ない所為か……いつもよりは騒がしさがない。
二人はのんびりと落ち着いた様子でまず一斑の部屋へと足を運んだ。



「いらっしゃい♪ ちょうどこれからエッチな話をするんだ けど……付き合いなさい」

一斑の部屋に入った途端柿崎 美砂が二人の退路を断つ様にして背後に回る。

「え、ええっ!? う、うちはええわ!」
「わ、私もそういう話は……」

二人は即座に逃げようとしたが既に退路を断たれた後で……逃げられなかった。
純情な二人はエッチな話には多少興味はあるが、いざ聞くとなると逃げ腰気味だった。

「ホントはさー、怪談話を しようかと思ったんだけど……この二人が嫌がって」

残念無念といった感じで美砂が肩を竦める後ろでは鳴滝風香、史伽の二人が怪談話と聞いて怖がっていた。

「べ、別に怖くないよ!」
「あ、あぶぶ……怖いのはやめようよ!」

風香は意地を張っているが、史伽のほうは完全に逃げ腰の様相で座っていた。

「ネギ君にも聞かせてみたかったけどね」

残念と肩を竦めて美砂はネギに猥談を聞かせられたない事を惜しんでいた。

「ネギ先生に聞かせるのはダメだよ」
「そやで、ネギ君はマジメだからビックリするわ」
「いやいや、その反応を見たかったのよ」
「そうそう。ネギ君が真っ赤な顔になるのを見るのが楽しいんだよ」
「……美砂も桜子もそういう悪趣味なマネはやめなさいって」

釘宮 円が苦々しい表情で二人に注意する姿に亜子もアキラも同意して何度も頷いていた。
そんな三人にクスクスと笑いながら美砂は亜子とアキラの肩を掴んで、部屋の中央へと連れて行く。
この後、彼氏持ちの美砂が彼氏から聞いた猥談を聞かされて二 人は……少し生々しい男の生態を知る事になる。

「そ、そうなんだ?」
「し、知らんかったわ」

大河内アキラ、和泉亜子はレベルアップした♪

――男の生態知識が10増えた。
――耳年増LV2になった。

――次のレベルアップまで経験値21必要です。

二人は若干頬を赤く染めて第一斑の部屋を出た。




「……まーいいんスけどね……でも、戦力外とはいえ一声くらい掛けてくれても……いや、でも一緒に行くのは……」

第二班の部屋に入ると何故か、三人しか居なく……残っていた面子で春日 美空がどんよりと澱んだ空気を出しながら壁に向かってブツブツと独り言を呟いていた。

「どしたん?」
「気にしないで下さい。役立たずという現実からの逃避ですから」

歯に衣着せぬ……無情な発言で更に落とす葉加瀬 聡美がのんびりと杏仁豆腐を食べている。
美空は先ほどあった朝倉 和美からの緊急要請で出掛けたリィンフォース一行から戦力外通告もなく……最初から当てにされていないと知ってラッキーと喜ぶべきか、怒るべきか、悲しむ べきか、お悩み中だった。

「良かったらどうぞ」
「いいの?」
「うちもええの?」

四葉 五月が差し出した杏仁豆腐を二人は美味しく頂きながら聞く。

「くーちゃん達、三人は?」
「リィンフォースさんとお出掛けです」

聡美があっさりと超 鈴音、古 菲、長瀬 楓がいない理由をバラす。

「え?」
「ほんまなん?」
「はい、そうですよ。美空さんは置いてきぼりを食らって拗ねているんです」

アキラと亜子は顔を見合わせて驚いている。

「もしかして……龍宮さんも?」

五月に顔を向けてアキラが聞くと苦笑いで肯定された。

「ゆーなに言ったら大騒ぎするから内緒やな」
「……そうだね」

火に油を注ぎかねない事態に発展しそうだと亜子もアキラも判断して黙っておこうと決めた。

大河内 アキラ、和泉 亜子は杏仁豆腐を食べて、体力を10、スタミナを15回復させた。

春日 美空は戦力外の通告さえ貰う事なく……ショックで精神に30のダメージを受けた。





第三班の部屋は穏やかで癒されるような空気があった。

「いいよな……静かな夜って」

長谷川 千雨の心の底から出ていると思われる気持ちにアキラも亜子も昨日の一件を思い出して……納得する。
昨日の夜、千雨を襲った不運は二人から見ても同情の余地があった。
鬼の新田と言われる先生だが、本当に容赦がないわけじゃない。
昨日は二時間ほどの正座で千雨達は解放されたが、足の痺れはきついものがあってしばらくは身悶えていたのだ。

「ほんっとうに早乙女と朝倉が居ない事に 感謝するよ」

何かと3−Aを騒がす二人の存在を苦々しく思う千雨は若干ハイな状態だった。

「あ、あはは……そ、そうやな」
「……そうかもね」

うっかり否定するような事を言えば……間違いなくキレそうな雰囲気を感じさせる千雨に二人は反射的に頷いていた。

「うふふ、長谷川さんも苦労しているわね」
「いや、ちづ姉がそれを言うのはどうかと思うな」

そんな三人を微笑ましく見守る那波 千鶴と昨日の事を思い出して……深いため息を吐いている村上 夏美だった。
事実、昨日のラブラブキッス作戦に千雨と夏美を生贄の子羊ように差し出したのは他でもない彼女だったのだ。

二人は千雨の愚痴を聞いてストレス18のダメージを受けた。




二人は第四班のドアを素通りして、第五班のドアの前で止まるが、

「……よー考えたら留守やん」
「……そうだった」

うっかりと言うか、千雨の愚痴を聞きすぎて……ちょっと忘れかけていたみたいだった。
アキラと亜子は互いに微妙な笑みを浮かべて、そそくさと恥ずかしそうにして足早に移動した。





第六班の部屋に入ったアキラと亜子の二人は途惑う。

「他のみんなは?」

桜咲 刹那とリィンフォース・夜天がいないの既に聞いていたが、ザジ・レイニーデイだけしか部屋に居なかった。

「……お出掛け」

ポソっと呟いたザジの一言にアキラが聞く。

「ザジさん、行かなかったの?」
「……行きたくなかった」
「そ、そうなんや」
「……うん」

ポソポソと呟く声を聞きながら二人はどうしたものかと顔を見合わせる。

「……お茶用意する」
「え、ええで。そんなん気にせんでも」
「そ、そうだよ」

二人が行動する前にザジが立ち上がって部屋に備え付けてあったものでお茶を用意して配る。
アキラと亜子は恐縮しながら、差し出されたお茶に手を伸ばす。

「……美味しい」
「ほんまや」

自分達の部屋にもあるお茶なのに何故か美味しく感じられて、ちょっとビックリする。

「……茶々丸さん直伝」

ちょっと褒められて気分が良かったのか、ザジは微笑んで応える。

「そう言えば、絡繰さんって茶道部やったわ」
「そうだね」
「……コツ教えてもらった」
「へ〜、うちも教えてもらおかな」

亜子が感心しながら話し、アキラもそうしようかと思案している。
口数こそ少ないがザジの精一杯の持て成しにアキラも亜子も心地好くなる。
穏やかで静かな時間が流れ……二人は消灯時間が近付いて部屋へと戻った。



「新田先生、お休みなさい」
「お休みなさい」

戻る時に新田と鉢合わせしたが、注意をされる事もなく。

「うむ、騒がずにさっさと休みなさい」

何か注意されるのではと身構えていた二人に新田は一言だけ告げて自身の部屋へと戻って行った。
二人は少し安心して部屋へと戻ると、

「「なるほどね」」

「う、ううぅ……足が痺れて痛い」
「裕奈さんが騒ぎ過ぎたのが全ての元凶です」
「い、いいんちょがそれを言う!? 一番大騒ぎしていたのはいいんちょじゃない!」

おそらく新田に注意されて……今まで正座していたと思われるまき絵、裕奈、あやかの三人の姿があった。

「……寝ようか?」
「そやな」

締めるところはきっちりと締める新田の容赦のなさを恐れながらアキラと亜子は用意されていた布団へと潜り込んだ。






「ご苦労様でした、新田先生」

教師用の部屋へ戻ってきた新田に瀬流彦がお茶を差し出す。

「今日は静かな夜になりそうですね」
「……そうだな。3−Aの一番騒がしい面子が居らんからな」

ふぅと一息吐いて新田はゆっくりと少し熱めのお茶を飲んで疲れを癒す。

「その分のしわ寄せがネギ先生に行かなければ良いんだが」
「そ、それは……そうですね」

新田の懸念を否定しようとした瀬流彦だったが……否定できない部分があるだけに苦悩している。
もっとも瀬流彦の場合は教師と魔法使いの二つの立場で心配していただけに……気苦労が増えるばかりだった。

「新田先生は先に汗でも流してお休み下さい。
 次は僕が見回りに出ますよ」
「そうかね……すまんな」
「いえいえ、昨日の夜に比べたらマシですよ」
「…………そうだな」

昨日夜の事件を思い出して新田は苦々しい表情に変わる。

「全く以って……もう少し落ち着いてくれると楽なんだがな」

新田の嘆きみたいな意見に瀬流彦は乾いた苦笑を浮かべるしかなった。




修学旅行三日目の夜は一部の生徒を偶然にも隔離する事が出来たおかげか……静かで穏やかな時間だった。


そのおかげで教師陣はネギを除いて休息を取る事が出来た。


代わりにと言う訳ではないが……ネギ達だけが苦労した。

これもやはりネギのラック値が低い所為かもしれなかった。








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EFFです。

これは修学旅行で語られなかった裏話であるはず?
ま、まあそういう事にしてください(核爆)

シルフェニア四周年記念に書いてみました。
それでは本編の方も読んで頂けると嬉しいです♪



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