一同は彼を集会場の中心に位置する場所に座らせ、事情を聞く事にした。

全身黒服で包まれた、この男の事を知るために。















黒衣の男


第二話

『リィンバウム』
〜 Welcome to our world 〜










「で、貴方は何者なの?」


まず、口を開いたのは眼鏡を掛けた女性、アルディラであった。

「何者?と言われてもな、さっき言わなかったか?」

先ほどの殺気立った様子とは打って変わり、穏やかな声で答えるアキト。

「質問が悪かったわね。 ――どの世界から来たの?」

「どの世界・・・? (なんだ・・・まるで、俺が異世界から来たとでも言いたげな・・っ?!)

 まさか、とは思うが・・・今、西暦何年だ?」



「「「セイレキ?」」」



返ってきた言葉に、冗談だろ・・・と唖然とした表情になるアキト。

「おい、アルディラ・・・こいつ、もしかして」

ちゃんと腰掛に座っている女性陣に対して、地べたに座って話を聞いている男性陣。

その一人のヤッファが真剣な、だが困った様子でアルディラに声をかける。

問われたアルディラは、彼に頷き返し、アキトに向きかえり次の言葉を言う。

「どうやら、貴方は【名も無き世界】から召喚されたようね」







「・・・は?」







唐突にそう言われたアキトは思わず間抜けな声で聞き返してしまう。

「つまり、貴方はこの世界では異邦人ってワケ」

カマっぽい奴・スカーレルが、そんなアキトに付け加えていった。

何故かちゃっかり女性陣の中に入り込んでいるのが、彼の特異性を醸し出す(爆

「ちょ、ちょっと待て! それじゃ、ここはどこだ!?」

まだ完全に信じ切れてないアキトは、驚いて叫ぶ。






アルディラは、落ち着かせるように彼に言葉を綴る。

「ここは、リィンバウム。 輪廻の輪から零れ落ちた者たちの楽園」

「リィンバウム・・・」

静かに話すアルディラの言葉を反芻しながら胸中で考えるアキト。

「(あの時、微かに聞こえたあの声・・・あれが俺をここに呼んだのか?  何故・・・・つーか誰だ?)

 召喚、と言ったな? それは一体何なんだ?」

とりあえず考える事を放棄したアキトは、皆に尋ねる。


「召喚とは異「えーと、召喚はですね〜」む」

「(ま、まぁ・・・説明は私の仕事では無いし、いいんだけどね。でも、なんだか腹立たしいわね・・・アティ)」


自分を遮って明るい声で答えたアティに、思わずムッとしたアルディラは

自分の中にある、不思議な感情に頭を悩ませる。

そんな事を露知らず、アティは説明を続ける。


「リィンバウムっていう世界は、周りの4つの世界に取り囲まれる様に存在してるんです。

 4つの世界にはそれぞれ違った生態系が存在し、ある日彼らはマナの豊富なリィンバウムへと侵攻してきました。

 で、そのときに別世界からの生物を追い払う為の術が送還術でぇ――

 ―――中略―――

 彼らの力を利用するために、生み出されたのが召喚術であって、

   えっと、アキトさんも召喚術によって呼び出されたんですけど・・・」


長い説明を区切りナシで言い切ったアティは、最後の方で困った顔をする。

「それなら誰が俺を呼んだんだ?それに、今の話を聞くと俺は元の世界に戻れんじゃないか?

 (戻る気は無いが・・・な)」


何か躊躇う様に口を濁すアティに、アキトは疑問点をぶつけると彼女はそれに答えるように口を開いた。


「アキトさんを呼んだのは人じゃないんだそうです・・・」

「なに?」

「それに、アキトさんが居た世界は、多分私達の知らない世界です・・・

   だから、アキトさんを送還することはできないんです」

「・・・そうか」

自分を召喚したのが人じゃない、この点が気になったアキトだがそれを聞こうとはせずにそう呟いた。

そしてアキトは何かを考える様に俯くと、黙り込んでしまう。

一同も、彼がショックを受けているのだろうと思い、雰囲気が重くなっていく。


「で、でも。 アキトさんと同じ“名も無き世界”から来て、ここに住んでいる人もいるんですよ!」


その雰囲気を打破しようと、アティが急に立ち上がりアキトを慰めるように言葉を続ける。

・・・慰めになってる気がしないのだが。

「別に落ち込んでいる訳でもない。 どうせ、元の世界に戻っても俺の居場所は無いのだから」

淡々と述べるアキトに、元気付けるのに失敗したと萎れるアティだったが



「・・・気遣ってくれてありがとう」



小声で微笑を浮かべながら言うアキトの言葉に、彼女は嬉しそうに笑みを浮かべるのであった。







「すっかり二人の空間ねぇ」(スカ)


「けっ」(カイル)  「はぁぁ(なんで羨ましいとか思っちゃうんだろう、私)」(ソノ)


「いいなぁ」(アリーゼ)   「・・・え、羨ましいの?」(ベル)


「・・・似て・・ないけど、何故、貴方の事を思い出したのかしら・・・」  「フゥゥゥゥ・・・」






これからどうするか、全員で話し合ったの結果、暫定的ではあるが

黒衣の男・テンカワ アキトは暫定的ではあるがカイル海賊一味の船に厄介になる事になるのであった。

そして、今日のところはこれでお開きになり、

アキトはアティ達に連れられて海賊船に向かうのであった。




「・・・さて、俺らも帰ると・・・おい、どうしたんだ?」

アティ達が去るのを眺めていた4人のうち、獣人の男・ヤッファがそう提案して振り向くと、

残りの護人3人、アルディラ・ファルゼン・キュウマがボーっと突っ立て居るだけで何も答えようとはしなかった。


「おい!」

「え?あ、いや何でもないわよ。 それを言うならファルゼンだって」

「フモォ?! フゥゥゥ」

「私も別に・・・」

ちょっと慌てた様子の3人に訝しげな視線を送るヤッファだが気にしないことにして話を続ける。

「それにしてもよー、あのアキトって奴・・・なんか似てたな」

「「「・・・・・・」」」

その言葉に反応しない3人に、ヤッファは微かに赤面し舌打ちする。

チッ、言わなければよかったぜ・・・じゃあ、俺も帰るぜ」

恥ずかしさを誤魔化す様に、ヤッファは駆け足で去っていった。

そして暫くした後、3人も再起動を果たし、帰途に着くのであった。













ところ変わってアキト一行


再びバイザーを掛けたアキトは、アティの先導を受けながら歩いていた。

「いやーしかし、さっきは悪かったな」

少し離れた場所を歩くカイルが、本当に済まなさそうに話しかけるとアキトは苦笑いを浮かべて答える。

「いや、俺の方も喧嘩腰になって悪いと思っている・・・それに、外見からも色々と自覚してるしな」

突っ込みたいところを必死に抑える一同だが、

「ならそんな服着なければ良いではないじゃないの」

「べ、ベル?! 失礼だよ」

ベルフラウが、すっぱりと突っ込む。

「まぁそうなんだけどな・・・前の世界では必要な事だったしな」

「必要な事?」

「その、眼鏡みたいな物も・・・ですか?」

「ああ、掛けてみるかい?」

いつの間にかアキトの両端にポジションを置いていたベルフラウとアリーゼが、

興味深そうに彼のバイザーを見ていたので、アキトはバイザーを外して渡そうとするが、

「え、遠慮しておくわ(おきます)」

断られたので、少々残念そうに懐に仕舞い込む。


「そうだ!」

前を歩いていたアティが、突然大声出してをアキトの方へクルリと振り向く。

「?」

「自己紹介がまだでしたね! 私、アティって言います!」

最初は何事かと思った周りの仲間達だが、意図に気づいたのか次から次へと続いていく。

「俺はカイル、海賊の船長をやっている。よろしくな」

「アタシはスカーレル、よろしく」

「ヤードです。 一応召喚士をやっております」

「ベルフラウよ」

「あ、あのォ・・・私、アリーゼです」


誰かが喋る順に、アキトは忙しそうに首を動かして顔を確認する。

そして最後に、自分の後ろを歩いている少女の方を見る為に後ろ向きで歩く。


「・・・私は、ソノラ。 その、さっきはゴメン」

何時ものような元気が無いソノラに、スカーレルとヤード以外の皆が不思議そうな表情を浮かべる。

「気にしないでいい。直してくれるんだろ?」

アキトの問いかけに、ソノラは微かに頬を染めたが気づかれない様に俯くと

彼はそれを肯定と取ったのか、満足して再び前を向いて歩き始めた。


そして、未だに後ろ向きで歩いているアティに目が合った瞬間――

「あ?!」

木の根か何かに躓いたのか、背後に倒れていくアティはやってくる衝撃に備えるべく目を閉じるのだが・・・

「・・・へ?」

何時まで経っても訪れない地面の感触に疑問を抱きながら、ゆっくりと目を開けたそこには、

「大丈夫か?」

すぐさまアティを支える為に近づいたアキトの顔があった。

「あら、中々イイ絵になってるわね」

「あ、はい・・・ってあわわ!(///

一瞬普通に受け答えしたが、彼に抱きかかえられているのに気づいたアティは、パッと彼から離れる。

そして真っ赤になった顔を隠しながら、前方へと走り出していった。


「・・・・どうしたんだ、彼女は?」

何が起こったか分からないアキトは、立ち止まっている皆に尋ねるが・・・

「「「「・・・・・・」」」」

「俺、なんかしたか?」

一部の者から、刺すような視線を受けてうろたえるのであった。















「じゃ、食事の時までここで待っててくれや」

「悪いな」

海賊船に到着したアキトは、カイルに連れられ部屋で待つことになった。

アキトは備え付けのベッドに腰掛けると、今後の事を考える。

が、睡魔に襲われるて考えが纏まり難くなってくる。。

復讐していたときなら、どのような状況になっても我慢するのだが、

この柔らかな雰囲気を持つこの世界に身を任せるように横たわると、静かに、そして深い寝息をたて始めるのであった。










コンコン    ガチャ

「あ、アキトさん夕食が出来ましたので(///

 ・・・寝てるのですか?」

何故か恥ずかしそうに部屋に入ってきたアティは、彼の顔を覗き込む。

「寝てます、ね」

起こすのも可哀想だと思ったアティは、シーツをそっと彼に被せてあげると静かに部屋から出て行くのであった。















〜あとがき〜

元々あったのを大幅に書き足しました。

自分的に点数を付けると・・・52点くらいでしょうかね^^;

それでも楽しんで頂けるのであれば幸いです。






感想

エフィンさん今回も良い感じでテンポ良く進めています♪ 全員の自己紹介とまでは行かなかったですが、メインキャラは本日で紹介されましたね、しかも女性 陣はしっかりアキトの虜(爆)

わわわっ!!と私そんなに早く決めてません! 夫婦になるのはもう少し知り合ってからでないと… (喜) 

いってくれますね、この私の目が金 色なうちは断じてそんな結婚認めません!

別にそんな事は言ってないんですが…(汗)

でも何で
アキトさん 私から逃げるのでしょう? 照れ屋さんなのは知っていますが…

ああ、それは簡単。劇場版のラストでアキトが去っていく時に言った台詞があるよね。アレの所為だと思う。

まあ、去っていくアキトさんを前に追っかけるなんて堂々ストーカー宣言しちゃったんですから仕方ないですよ♪

だったら貴女ならど ういうんですか!? 貴女は追いかけないとでも言うんですか?

いや〜ははは…そん な状況にならなくてよかったですよ!

なっ!?

ふふふふふ・・・

また忘れ去られちゃった(汗)
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m

エ フィンさんへの感想はこちらの方に。

掲示板で 下さるのも大歓迎です♪



次の頁に進む      前の頁に戻る

戻 る

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.