ぶーんという呑気な駆動音と共にトラキアの空を35年式156型汎用航空機(こうのとり)が舞う。近くで聞けば耳を(つんざ)くばかりの轟音が直線で数キロメートル離れた上空に至ると、蜜蜂が花と花を渡り合う音の様に気怠い物になるから不思議なものだ。


 「ダウディング大尉、御国には慣れましたか?」


 座ってぼんやりと次の飛行訓練を待つ私に彼、イソロク・タカノ大尉は声を掛けてきた。





◆◇◆◇◆







榛の瞳のリコンストラクト
   

第3章第11話






 我が祖国の三流娯楽新聞(パルプペーパー)をやり取りしたことから彼と懇意にしている。至極真面目に軍務に取り組む彼だが、小説……いや昨今流行りのサイエンスフィクションには御執心の様で科学の行きつく先や其の世界の在り方について事細かに議論の種にする。挙句は私の趣味である錬金術や妖精といったこの世の裏の事象の話にも及び、『科学とは? 魔法とは??』数時間にわたり二人で真剣に議論する羽目にもなった。其の伝手で単なる交換留学生扱いの私も【飛行実習】に参加できるのだから正に【趣味が実益を生む】だろう? 先程の飛行の評価を聞こうと彼が話しかけてくる。羨ましいのだろう? 彼としては。


 「どうですか、考課のほうは?」

 「悪くない、といったところです。離陸して、周りを一周して着陸なら誰でもできるはずです。私が求めているのは陸上目標に対する精密爆撃、または海上艦艇に対する集団攻撃です。こんな子供の遊びではない。」


 彼の言葉がいたわりであったのに気付かず、つい厳しい言葉をぶつけてしまった。バツ悪く謝罪の言葉を口にすると彼は笑って言葉を続けた。


 「僅か1月で座学(基礎教育)を完了し、こうのとりで飛べるようになるだけでも大したものです。僕は半年かかっても座学すら及第しないんですから誇ってもいいと思いますよ。」

 「それは大尉が海軍としての務めもあるからでしょう? 務めを果たし、さらに新軍種の空軍搭乗員としての技量を得ようとする大尉の努力は敬服に値します。」


 彼が大日本帝国海軍征京鎮守府軍務課に所属しているのは知っている。大日本帝国海軍の組織は英王室海軍を模倣、再構築して作られた。だから彼に軍紀違反覚悟で聞き出そうとしなくても何をやっているかはなんとなくわかる。私の任務の一つは日本帝国トラキア方面軍事戦力の調査でもあるのだから。
 彼の務めは艦艇への補給業務、地味な仕事だが大尉という任官でこれを行うのであるならば将来のエリート確定だ。なにしろ軍政官という立場、仕事をこなし艦隊勤務でも優秀な成績を収めれば第一海軍卿(海軍大臣)すら狙える職種なのだ。
 後ろ手に頭を掻き彼は言い訳じみた言葉を発した。


「単に不器用なだけです。あの日、乃木大尉に御国を救えと言われた……あの時の約束を果たすために今も足掻いているのが僕です。その理由もわからないままね。」


 彼の経歴は聞いているし酒食の席でも少し話した。日露戦争にて少尉候補生をして参陣、戦闘中に指2本を失う程の重傷を負っている。事実、彼が座学を及第したとしても練習用のこうのとりを操縦させてもらえるのかすら危ういらしい。ただツシマ沖で負傷したのか聞いた時笑って首を振ったことから別の戦場、消去法で考え、その時に聞けなかった質問をしてみた。ん、ノギ? 私の聞き間違いか…………


 「渤海海戦ですか、あの時私は旅順にいました。あのこうのとりに乗ったこともありますよ。あれほど心躍る戦は――。」

 「本当ですか? 私は【初瀬】乗り組みでしたよ。奇遇なものですね。」

 「え!!!」


 絶句した。もう機密も総督の口止めも関係無かった。其処で気がついた! キャプテン・ノギ……まさか総督のファミリーの一員か!? 慌てて尋ねてみる。


 「本当なのですか! あの【ハツセ】にいたのですか!? ならば教えてください! アレはなんなのです? アレと乃木総督に何の関係があるのです!?」


 彼は口を濁した。軍機も含んでいるだろうから口も重くなるだろう? 彼が言葉少なに話し、かろうじて解ったのは彼は初瀬沈没の折、海に投げ出された時には既に気を失っていたこと。気が付いたら乗ってもいない初瀬の連絡艇(カッター)に独り横たえられていたこと。自分の周りにびっしりと銀色の泥がこびりついていたこと。


 「ナノマテリアル……」

 「なんですか? その妙な単語は。」


 戦慄と共に漏れ出た単語に不思議そうに聞き返してくる彼。軍機なので話したくはないがと一拍を置き、彼に我が祖国が躍起になって調査している物質、ハツセにそれが運び込まれたのではないか? という疑念を我が祖国が持っていることを小声で伝える。更に日清戦争の前、シンガポール沖で沈んだ日本帝国の軍艦・ウネビについても祖国が調査対象にしている事も。


 ――半分以上嘘だ。真実の中に巧妙に嘘を混ぜ相手を誘導する。私にもそれくらいはできる――


 彼が顎に手を付け考え込んでいると突如、金属音が鳴り響く。別にこうのとりが墜ちたというわけではなく、鍋釜を杓子やお玉で打ち鳴らす音だ。土手のほうで女学生達が手に手に厨房道具をもっているのが見える。トーキョーの大学校の生徒が留学扱いでこちらに来ているのだ。昼飯が出来たのを伝えているのだろう。彼女達の傍らに装甲野戦炊飯車やフィールドキッチン、食材を運ぶ貨物車(トラック)が並んでいる。


 「行こう、考えるのは後だ! まずはメシにしよう。」


 私の言葉で彼も立ち上がり連れだって走る。日本人のメシは薄味だが野菜中心だ。慣れてしまえば大雑把で肉中心の祖国料理より口に合う。この時には私、ヒューダウディング大尉は彼・イソロク大尉と駆けながら彼の眼がその中のひときわ小柄な少女、総督の御孫嬢に注がれていることに気づくことはできなかった。





―――――――――――――――――――――――――――――






 征14号作戦……これで14回目の移民船団だ。御国の法案では征号作戦は1年に2回、計4万人の日本人を御国中から集めトラキアに移民させるとされている。実際の所それには及ばず、現在トラキアの日本人は25万人とやや少ない。今回でやっと26万人台の予定だった。


 その筈が!


 二倍以上に膨れ上がった移民船、その後ろから続々と続く貨物輸送船。スエズ運河の地中海側出口、ポートサイド湾が『(ウミ)より(フネ)の方が多い!』とイタリアのお騒がせ新聞記者が絶叫した程埋まったのだ。全てはフィリッポス金鉱山の発見が原因である。
 金鉱利権という大輪の花に群がる蜜蜂のように列強各国は開発計画を提案、総督府はその処理に大童だ。しかし流石は乃木閣下、各国からの労働力供与提案は尽く断り、研究者・技術者の招聘に留めた。『国を作るはあくまで日本人・日本人あっての大日本帝国欧州領』ホーフブルグ講和条約にもあるこの建前が大いに効いた為各国も黙らざるを得ず、逆に限られた枠内で激烈なる凌ぎ合いを繰り返したという。御雇い外国人の数イコール各国に割り当てられるトラキア開発能力イコール分配される金ならば当然だ。
 だが各国とも直ぐに抜け道を見つける。そう、日本人でありさえすれば良いのだ! 大日本帝国に籍を置く企業、商店を買収し、その社内の人間(にほんじん)をトラキアに送り込む。中抜きこそあろうが親会社たる列強にも相応の金が流れ込むだろう? 中小会社だけでなく三菱・三井・住友といった大財閥にまで買収の手は伸びたのだ。結果は計画の倍以上に膨れ上がった移民船団である。それを万年中佐艦長たる私が広告塔戦艦【三笠】と巡洋艦2隻で率いねばならん。


 「千早中佐! 見えました、マスト3つ!!」

 「艦形照合急げ、手すき乗員総……いや! 砲術のみ即時戦闘待機!!」


 喇叭(ラッパ)と最近総督の御孫嬢のアイデアで装備された手回し式警告音発生器(ジェリコのラッパ)が鳴り響く。元は旅順堡塁を粉々にした【さぎ】にくっついていた敵兵威嚇用のものらしいが音を変えられない点を除けば便利なものだ。その点を会議で述べると早速改良型を試作しているという。マストの方角を睨みつける……相手は解っている。
 ここはエーゲ海サントリーニ島沖合、エーゲ海は御国の瀬戸内程ではないが大きさの割にに多数の島がある多島海域だ。海流が島によって複雑に絡み合い浅瀬や岩礁も少なくない。出入り口、特に大型船舶多数が一度に入れる海峡など限られている。
 ミルトア海からキクラデス諸島を抜けスキロス島沖合を通るルートは論外。海流が逆向きの上、陸地に近すぎる。友好国でもなければ領海侵犯と難癖をつけられかねない。ならば逆方向のカソス海峡からドデカネス諸島を掠めてイカリア島沖からエーゲ海に入るルートが順当だ。本来はさらに隣、カルバトス海峡から入る手もあるが海流の激しさと複雑さから大船団を入れるのは無理と判断した。


 「艦形照合確認! 一番艦ギリシャ海軍レムノス、二番艦同じくキルキス!!」

 「来たか。電信員、『邂逅を慶賀す、ワレ大日本帝国地中海艦隊旗艦ミカサ』発信。距離3000で信号旗掲揚! 手旗信号開始。」

 「了解! 電信員発信、信号班所定の信号旗掲揚準備、手旗員前へ!」

 「船団密集を始めました!」


 怒号、注意、命令が飛び交う。


 「駒城少佐、奴らはやる気かな?」  


昇進したばかりの部下に尋ねる。若手で少し瓢軽な性格だが、伸びると思い抜擢した男だ。無精髭を掻き、癖毛の頭を無理矢理軍帽に押し込みながら彼が答える。


 「やる気はないでしょう。わざわざ英米仏の国旗を掲げた移民船の前で発砲でもすればあの国は御陀仏です。いつもの嫌がらせかと思いますが……」

 「成程、君の懸念は3隻目がいないということか。」


 双眼鏡から目を離すが艦形は確認済み。今、キルキス級前弩級戦艦と連れ立って近づいてくる3番艦、イドラ級海防戦艦のことではない。ギリシャ海軍、真の主力艦がいないのだ。今まで出てきて今度ばかりはいないというのは考えにくい。
 艦容が見えてくる。ギリシャ海軍……いや大本の建造国であるアメリカ海軍でなければ絶対に見ることが出来ない狂艦


 【キルキス級】


 ぱっと見るだけならば列強はおろか中小国でも保有する前弩級戦艦というカテゴリーに属する。艦の前後に連装主砲ひとつづつ、左右両舷に副砲と補助砲多数、中央部に頭脳足る艦橋と心臓である機関部を配して、煙突をそびえ立たせている。この【三笠】もその眷属だ。最近、列強に限って倍の巨体に主砲ばかり8門も10門も備える弩級戦艦(ドレッドノート)も就役しているが数は少ない。しかしこのキルキス……いや元艦名【ヴァーニジア】に至っては………

 前後の主砲塔の上に一回り小ぶりの連装副砲塔を乗せているのだ! はっきり言えば英国名物【二階建てバス】ならぬ、米国唯一【二階建て砲塔搭載戦艦】である。

 就役時のお披露目で各国武官が呆れ返ったとは良く言ったものだ。確かに装甲の無い舷側に副砲をむき出しにするよりは安全だし、これなら主砲塔に並み外れた一撃を喰らわない限り戦闘力が落ちることはない。しかし征京鎮守府で書類仕事をしている高野君ならこう言うだろう。


 「あれが三笠なら僕は対馬に行きませんよ。」


 要するに理屈倒れの玩具! そう言い切ったのだ。だからこそ見かけだけでも戦艦が欲しいギリシャと、兵器輸出をしたいが欧州列強は刺激したくないアメリカの思惑が一致したのだろう。


 「ギリシャ艦隊返信ありません!」

 「千早艦長……」


 信号員の連絡と駒木の緊張した声に引き戻される。私はこちらに飛ばされて以来延ばしている顎髭を一度引っ張って声を上げる。


 「電文繰り返せ。筑摩、矢矧に信号。第3警戒序列、船団速度そのまま」

 「筑摩、矢矧、第3警戒序列。船団速度そのまま、宜候(ヨーソロー)

 「本艦は船団左翼に附く。奴らと船団の間に割り込め!」


 本艦を唯の広告塔だと思ったら大間違いだ! イタリア海軍工廠(タラント)のドックを貸し切りにして秘密裏に改装を行った御蔭で速力は18ノットから23ノットに上昇。巡洋艦並みの行き足と運動性を併せ持つ【前弩級高速戦艦】と呼べるモノになったのだ。水面を蹴り砕き、波涛を切り裂いて三笠が突進する。……詳しくは知らない、知ろうとも思わない。総督閣下と御孫嬢の専管事項なのだから。
 船団を避け三笠が左翼に移動する。キルキス級は速度が遅いが移民船団はさらに遅い。割り込むのが精いっぱいだろう。有利な位置取りなど期待してはいない。


 「いないな。」   腹立たしく呟く。


 駒木も怒りを隠さず床を革靴で蹴飛ばす。そう軍艦同士の邂逅は国際法上、外交官の挨拶に準ずる。敵対国家でもなければ、双方出せる限りの乗員を甲板に挙げ、敬礼や帽振れによって相手に最大の敬意を贈るものなのだ。それが誰もいない、誰も出てこないということは敵対行動をするという脅しそのものなのだ。


 「キルキスより手旗信号!『貴船団は我が領海上を侵している。直ちに退去されたし。』」

「なぁにが領海侵犯だッ! 糞野郎がっ!!」

「挑発だ、そう意気がるな。」


 駒木の罵声を押しとどめる。半分は自らへの戒め、相手はこちらに最初の1発を撃たせるつもりなのだ。しかし此処で無言は相手に自らの非を認めてしまうようなもの。相応の返礼はしてやらねばな。


「電信員、『トラキア移民はホーフブルグ講和条約の規定である。貴艦隊に特使は乗艦せしや?』発信せよ。」


 電信員が必死で電鍵を叩くうちに次の言葉を考えておく。ギリシャ艦隊に特使など乗っていないだろう? 証拠を見せろと我々に言われて接舷を許せばギリシャ艦隊は皆停船せざるを得ず、移民船団は悠々とエーゲ海に入れる。勿論、対象となった艦以外が独自行動すれば明確な海洋条約違反、それも国家軍の規律を無視した不法海賊行為という最悪のレッテルが貼られる。
 講和条約など関係ないと言い出すならばこちらの思う壺だ。電信は移民船団でも聞かれている。列強の意思を無視すればあの国はとんでもないことになる。
 いくら現場の暴言や独断と取り繕っても艦隊司令とギリシャ海軍司令部の何人か、それも提督クラスの首が飛びギリシャ海軍そのものが列強に接収されかねない。誰でも保身の想いは有る。将来を棒に振る勇気はなかろう?
 列強の威を借る狐と憎まれるだろうが、そもそも列強の威すら借れない方が悪い。これが国際政治の(まご)う事無き現実だ。


 「!! 敵艦レムノス、主砲塔が旋回しています!!」

 「見張り員、敵ではない! ギリシャ海軍だ、間違えるな!!」


 絶叫に近い報告を無理やり押し潰す。列強同士でこんなことをやろうものなら艦長の首だけで納まらない。海軍大臣や艦隊司令官の首まで飛びかねない暴挙なのだ。『中立国の艦艇に対して主砲を向ける。』……武力行使という意味であり、戦略兵器足る【戦艦】がこれを行えば宣戦布告と同義だ。だからこそ!


 「レムノスは就役して1年はたっていない。駒城副長、君ならどう考える?」

 「は?……ハッ! 海軍では就役一年を完熟航海期間と定めております。主に熟練の乗組員と新規の乗組員を混在させ完熟訓練を行います。」

「宜しい。では今のレムノスの砲塔員は平時であればどんな状況と考えられるかな?」


 御国ですらそうなのだ。より小規模で熟練乗組員の少ないギリシャ海軍、しかも輸入艦ならばどういうことなのか自らで判断させる。これも艦長の務めだ。独語を呟いておく……少し甘いかな?


 「レムノスは輸入艦だ、熟練乗組員は揃わないだろうな。」


 つまりは主砲塔操作員や配属した士官が瑕疵(ミス)をやらかした、または初期不良による誤作動と言い逃れるつもりだろう。その証拠に旋回したのは前の主砲搭のみ、後ろは動いていない。しかし隣の駒木は違う意味にとったようだ。


 「まさか、米国人を乗せていると! ……奴らなんてことを。」


 少し彼の判断に呆れたがそれも有りだな。自らの想定を修正しつつ話を合わせる。


 「人質云々はないだろう。取り繕っても簡単に暴露(バレ)る。むしろアメリカさんも一枚噛んでいるのかな?」


 最近アメリカ合衆国の動きが慌ただしい。英国にキプロス島の購入を持ちかけたり、仏国にコルシカ島に租借地を作りたいと交渉してみたり。欧州を旧大陸として馬鹿にするあの国らしくもないが、地中海に自らの拠点を作れないか探りを入れてくるのだ。欧州領トラキアにも西マケドニア最大の都市テッサロニキ市に米国の信託金塊を置く租界が作れないか? と打診してきた程なのだ。
 表向きは友好と信頼関係醸成の為とポーズをとって見せるが中身は違う。その証拠に英国がこれらの話全てに次から次へと介入し潰しているのだ。ホーフブルグ講和条約を出し抜く経済的侵略。策を毎度潰されるアメリカさんの腹も、さぞ煮繰り返っているのだろう。橙子御嬢さんの言葉を思い出す。


 「アメリカは羨ましくなったのでしょうね? 二流国の御国が欧州の一国になった端からこの幸運。ヨーロッパは一流、アメリカは二流。東洋の二流国すら欧州の一国というだけで大きい顔が出来る。羨ましい、妬ましい……故郷を捨てても欧州の血族、そんな彼らが箔だけでもと焦るのは仕方がないのかもしれません。」


 頭を掻き毟り完全に思考停止している駒城の背をどやしつける。それは恐慌もしたくなるだろう。奴らは明らかに敵対行動をしている。しかしアメリカ人を撃てば御国は間違い無く滅びる。いったいどうしたらいいのかと狼狽えるのも当然だ。かつて東郷長官が挑んだ高陞号事件、それに匹敵する難事だ。

 ――さて、面白くなってきたな。――


「もう一度だ。『貴艦隊に特使は乗艦せしや?』追伸でレムノス宛に発信、『貴艦との邂逅を慶賀す。処女航海無事なりや?』だ。……追伸、『地中海の陽は過酷だ、日射病でも起こしたか?(たいほうがフラついているぞ)


 この場合、特使を乗せている可能性があるキルキスにのみ発信するのが礼法だがあえて追伸として艦隊旗艦たるキルキスを飛び越えてその僚艦に電信を出す。『特使が乗っていないならお前に用はない。後ろのレムノスに話を繋げ。』と言う軽い恫喝ということになる。
 アメリカ人を出さねば我等はもう一段踏み込んだ挑発を送りつけ相手を激昂させる。そうすれば向こうは中立民間船舶の前で威嚇射撃と言う愚行を行うべきか悩むことになる。それは後でこちらの無礼をギリシャ政府が非難してもギリシャ海軍が先に発砲したと世界各国の商船隊が喧伝するからどちらに非が有るかは明白だ。
 逆にアメリカ人が出れば訓練不足に対し苦言を吐く。移民船団では戦艦を買いながら満足に動かす事も出来ぬ三流海軍と嘲笑の的になろう? なんなら移民船団に当たり障りのない言葉で『下手糞』と言わせてもいい。これでギリシャ海軍が激高し挑発的な行動に出ればギリシャ海軍は人質を盾に国際条約に泥を塗らんとしていると後の交渉で主張できる。相手の逃げ道を塞ぎながら、こちらの用意した着地点に誘導していく。


 『艦隊を射ようとすればまず将を射よ。』  といったところか。


 返信は無い……向こうも手詰まりのようだな。思えば山本閣下の海軍軍縮案に抵抗する馬鹿共を論破したのもこの手法だった。始めは息子のことも考え忌避したが、日露戦争でロシア海軍が壊滅すれば御国に当面の敵はいなくなる。欧米列強は遥か海の彼方、貧乏国を征服するために大枚はたいて遠征するわけにもいくまい。そう考え【対馬の戦】前にこの役を引き受けたのだ。そして御国の海軍制度、どの国にもあり得るがとにかく肥大への道突き進む傾向がある。どこかで止めねばならないと思ったのも事実。


 
「筑摩、矢矧こちらに向かってきます! 中央に【イェロギオフ・アヴェロフ】!!」

「来たか。」


【イェロギオフ・アヴェロフ】……ギリシャ海軍にとってこの艦こそが真の主力艦だ。列強国でなくとも数隻は保有できる巡洋艦を蹴散らせる9インチ砲と7.5インチ砲、巡洋艦相手なら耐えられる装甲、巡洋艦並みの速度性能、我が海軍も保有する【装甲巡洋艦】というカテゴリーの艦だ。
 うん、上手く挟み込んでいる。迂闊な発砲はできない以上、速力と数は力だ。恐らく我らがキルキス級に全力でかまけている間に無防備な移民船団、それも日章旗を掲げる船を停船させ、船団を止めると同時に臨検を開始、あることないことでっちあげるつもりだったのだろう? だからこそ16ノットしか出ないキルキス級を囮に分離行動させていたのだ。
 しかしそれはお見通しだ! ギリシャ海軍が主力艦全てをこちらに振り向けるならばどうしても自らの軍港は手薄になる。イタリア海軍とも溝が深いのは知っているから防備兵力は残しておくだろう。イドラ級海防戦艦の残り2隻や駆逐艦、水雷艇が全く姿を現さないのはその為なのだ。そこまで相手の窮状が遥か天空の高みから【視える】からこそ真の敵が単艦なのを見抜いて数で抑えにかかれたのだ。そして……その後ろから波を蹴立てて猛然と追いすがる艦影、


 「日進! 日進です!! 助かった!!!」


 「皆、残念だがあれは日進ではない。イタリア海軍装甲巡洋艦アマルフィだ。」


 ――艦長兼移民船団司令として皆と心を共に出来ないのは残念だな――そう思い艦橋の乗組員全てが沸きかえる中、私は気を引き締めるよう皆に促す。そう、私が計画した軍縮案、その中には建造中の艦はおろか現在就役している艦の整理まで含まれていたのだ。海軍全体から敵意を買うのも仕方がないだろう。
 そう私は【春日】と【日進】、対馬沖で勇名を馳せたイタリア製装甲巡洋艦【改ジュゼッペ・カルバルディ級装甲巡洋艦】も売却対象にしたのだ。屑鉄にならなかったのはイタリア海軍が安値とはいえ再度購入してくれたことに起因する。御国は僅かでも金を手に入れ、イタリアは殊勲艦という名誉を手に入れることが出来る。日露戦争で活躍したという箔は彼の国に仮想敵国であるオーストリア海軍に対し抑止力になるだろう。その準同型艦が【イェロギオフ・アヴェロフ】とは皮肉だが、同格の艦に加えて数で勝る巡洋艦に追いかけられれば襲撃は諦めざるを得ない。二つの電文が入る。ひとつはアマルフィから、もうひとつはギリシャ艦隊からだ。


 「発イタリア王立海軍装甲巡洋艦アマルフィ、宛日本帝国海軍戦艦ミカサ及び移民船団各位、欧州へようこそ! 祖国と貴国の栄光と未来と幸に杯を掲げん。」

 「発イタリア王国海軍戦艦キルキス、宛日本帝国海軍戦艦ミカサ。来訪を慶賀す。欧州の一員として共に歩むことを期待する。」


 スエズの港町、ポートサイドで御嬢がこの船に乗り込んできて初めてこの策は実現した。英米仏独、列強に遅れに遅れたイタリアは実績によってトラキア開発に参加しなければならない。頭を使いこなせなかった者は汗をかいて其れを取り戻さねばならない。良く言ったものだ。
 千早真之…………おまえは上手くやっているか? 秋山の姓を捨てても、世界の果てに飛ばされても私は私だ。そう思い命令を発する。


 「移民船団に信号、船団集まれ! 集結の後、征京へ向かう。」


 両国の返電を考えながら双眼鏡を構えなおした。征京に着いてから私は衝撃を受けることになる。奴等は本気なのだと。





―――――――――――――――――――――――――――――






 執務室の中で降って沸いた様な難題に、儂は部下共々頭を抱えている。


 「セルビアが3個師団の常備兵の戦力化、ブルガリアも3個師団の動員下令、そして極めつけはギリシャが超弩級戦艦を購入ですか。」

 「セルビアの裏にはフランス、ブルガリアの裏にはオーストリアですな。ギリシャでもモーゼル社(ドイツせい)の小銃が出回っていると駐在員から連絡がありました。列強もこちらが何も言えないことを良いことに……。」

 「武器輸出については貿易と言ってしまえば終わりですしね。しかも厄介なことに三国とも我等を警戒し、そして列強陸軍が我等の御蔭で装備更新に大童なのも知っている。廃品を安く売られており、安く買える物を安く買って何が悪い……そう言われるのが関の山でしょう。」


 そうなのだ、たしかにトラキアは開発資金や移民資金を手に入れ、列強は金という未来の担保を得て経済力を伸ばし御国はそのおこぼれに預かっている。敵がいないということから御国の海軍予算は削られっぱなしで、今期の建艦運動資金としてトラキアが債権から供与した資金が無ければ英国への新型巡洋戦艦(こんごう)の建造依頼すら危ぶまれたほどだ。顧問官として帝都に帰った折、東郷元長官やゴンベさん自ら挨拶に来たほどだから海軍の感謝は相当なものだろう。
 何故列強に金の運用を握られているのにトラキアにそれほど余裕があるのか? 答えは簡単だ。孫が作り出したのはあくまで金鉱石、楓の言うには金鉱石は金と雑石だけでできている物ではないらしい。本来の金鉱石は銅、水銀、鉄といったありふれた資源だけでなく銀、白金といった価値の高い希少金属も混じっているのだそうだ。我々は金を担保としているだけで他の金属についてはトラキアの所有物としている。勿論、金鉱石の精錬は、当分列強の工業地帯でやらざるを得ないので費用と称して幾分は差し引かれるが、それでもトラキア地方を賄うだけの予算を組むほどの量になるのだ。となれば本来の統治費用分だけ資金が余る。それがトルコ帝国と御国に流れていくのだ。
 当然両者ともその返礼はせねばならない。トルコ帝国は先年メソポタミア中流域で発見された油田を開発資金の対価として、利権の一部を総督府に譲った。そう日本政府でなくトラキア総督府にだ。御国の議会は非難轟々だったが、政府では海軍や財界が猛烈な擁護を行い御国の利権であることに変わりはないと論陣を張ったのだ。裏は利権の移譲、財界はドイツと組んで初の日の丸油田試掘に挑んでおり、海軍は巡洋戦艦の建造費用をトラキアから融通してもらっているのだ。昨年伝え聞いた海軍の大弁論、


 「虎騎亜は日本の生命線である! 油田と金山なくして日本が列強に相対するなど考えられない!!」


 『橙子の史実』から考えれば笑い出したくなる言葉だ。時の彼方で我等陸軍が満州を指して吐いた暴論を、今世では海軍が虎騎亜如きで吐く羽目になるとは…………。そうここまで行くならば我が国も列強もトラキアも万々歳だった筈だった。しかし我等は侮っていた。列強の意向にバルカンの中小国如きが逆らう訳が無いと。それでこの体たらく(ザマ)だ。机に広げられたバルカン半島の大地図を見ながら高橋財務官が唸っている。


 「セルビア首府ベオグラードからアルバニアに向けて道路の再整備、ブルガリア首府ソフィアからマケドニアの都市スコピエに向けて道路の再整備ですか。明らかにこちらを狙ってくるでしょうな。」

 「でも金山は実質的に列強の利権でしょう? マケドニアに攻め込めば皆黙っていないと思うのですが。」


 橙子の言う言葉も最もだ。軍備増強と戦争は全くの別次元の問題である。軍備を増強するなら内政の一環だが、戦争は既に外交懸案である。しかし、理由が無い。
 以前の橙子がやらかした『相手が気に入らないからぶちのめす』的な論理は国際慣例では通用しない。何故戦争をするのか理由を出さねばならないのだ。それも世界をそれなりに納得させられるモノを。其れが出来ないのであれば諸国から私戦と銘打たれ、何かと干渉を受けるだろう。


「御嬢ちゃん? 事はそう簡単に済みませんよ。向こうは勝手気ままに大義名分を立てることが出来ます。『元々、此処はヨーロッパだと』それで欧州諸国は納得です。」

 成程、欧州史にある国土奪回運動(レコンキスタ)か。そもそもこのバルカン半島は欧州の始祖であるギリシャ都市同盟、そしてローマ帝国の中心地でもある。欧州から見ればトラキアは愚か、オスマントルコ帝国全土すら欧州の一部分なのだ。 小村君が橙子の浅はかさを注意するときに使う言葉が【御嬢ちゃん】の言葉。案の定、橙子は顔を真っ赤にしてもごもごと独り言を呟いている。それを余所に、地図と書物を見比べていた楓君が肩を竦めて自らの想定を切りだす。


 「可能性として考えられるのが国境紛争からなし崩しに戦線を拡大させ、民族自決の名のもとに北及び西マケドニアを奪い取るという手ですな。東マケドニアたる大日本帝国領トラキアに手を出さないのは自明でしょう。そうすれば即座に英米が三国に宣戦布告しますからね。特にビルマ併合に昨今の韓半島浄化作戦(コリアパージ)、二国が敵に対して呵責無いのは悪名甚だしいですし。」


 そもそも大日本帝国領マケドニアという現欧州領は国際法令上複雑怪奇な代物だ。元オスマントルコ領マケドニア地方を欧州列強の承認で大日本帝国が植民地として施政権を得てそれを儂という総督が行使する。これが建前、しかし大日本帝国欧州領となった東マケドニア(トラキア)こそ直接に儂が命を下すことが出来るが、西マケドニアの中心地テッサロニキ市や、北部マケドニアの都市スコピエ市にはオスマントルコの総督(パシャ)が居り欧州で見れば儂が代表だが、トルコの官職序列では同格と見られているのだ。
 儂は他の総督にあれこれ指図するつもりはないが、欧州諸国はもし他の総督が不始末を仕出かせばそれは即ち儂の責任と言い立てるだろう。
 トルコ本国でも儂の立ち位置は微妙である。改革派たる青年トルコ党や、一刻も早く近代化を成し遂げたい軍部は儂を後ろ盾に改革を強行しているが、それが国内守旧派・宗教界・そして半独立状態にある各総督の怒りを買っているのだ。テッサロニキとスコピエ、つまりマケドニアの総督を切り捨てて儂の権威と勢力を削ぎ、改革派を弱体化させる。そう考える国賊がいてもおかしくはあるまい? 今の楓の発言はそれを暗示させたのだ。


 「すこし待っていただきたい!! 楓政務官の発言は性急過ぎると考えます。」


 今それに反論したのは長らく民間人でありながら駐トルコ日本大使として活躍していた山田寅次郎特務大使だ。トルコ軍艦エルトゥールル号遭難事件において各地から義捐金を集め、自らトルコ皇帝に献じた剛の者である。そのままトルコに残り、民間大使として骨を埋めるつもりだった言うがその彼も仰天しただろう? なにしろ御国の方が彼の後を追いかけてきたのだから。


 「楓政務官、その想定は実質的に不可能です。もし今バルカンの国家がマケドニアを攻めればトルコの民衆が黙っておりません。トルコ政府が逡巡するだけで『日本籍のエルトゥールル号を沈める気か!』という声が澎湃(ほうはい)と湧き上がり、革命がおこること必定です。唯でさえ日露戦争を聖戦と言い続ける国民が多いのです。確実にトルコはバルカン諸国に宣戦を布告します! それが解らぬ三国ではない。国境問題どころか大戦になり関わった国全てが大損を被るのに自ら戦端を開く馬鹿はいないでしょう?」


楓がすかさず反論する。書物を見せつけ、ページを叩きながら厳しく糾弾した。


 「山田君、君が言っているのはトルコ国民ではなくイスタンブール市民だろう? 混同すべきではない! 彼らの実態は専制国家の名を借りた古臭い封建国家に過ぎない。」

 「なんですと! 政務官は友好国の心情を理解する気が無いというのですか!!」


 双方席を蹴り、火花を散らす。経済と国民国家という利害を軸にする楓と、親トルコと現場主義を至上とする山田、目指す物が違う以上対立すれば凄まじい。すこし声を柔らかくし割って入る。


 「楓君、山田君。君達の至誠は有難いが感情に任せては話が進まん。皆に聞こう。今トルコに戦が降りかかったとして耐えられるのか?」


 何人かが発言し最後に浦上中佐が声を出す。


 「先年度、私がトルコ皇帝師団を見学した印象ですが戦闘はできると思います。しかし数が足りなすぎます。たかだか2個師団、しかもその全てがイスタンブールとメソポタミアに配置され動かせません。……となれば、通常の動員部隊か各総督の兵団に頼るしかありませんがこれらは完全に戦力外です。武器云々より軍隊としての意識に欠けます。彼の国が宣戦布告したところでマケドニアに投入できる兵力は僅かな義勇兵を除けば皆無でしょう。」


 補足して橙子も発言する。其の内容の真偽にかつて我々とは違う世界で起きた事実を断定できる少ない。寧ろ巫女としてのダウディング大尉の言うオカルト紛いの情報と聞き流す方が普通だ。それでも一定の信頼があるのは其の異常な的中率こそである。


 「皆さんにも以前話した通り“第一次バルカン戦争”は一方的なトルコの敗北でした。理由はトルコ側にバルカンに割ける兵力が無かったこと。シリア、メソポタミア、アラビア半島、そして“戦争中だったキレナイカ”本土アナトリア……どんな弱兵を動員してでも全てを守るには足りなさすぎたのです。今回、遥かにトルコの国際情勢は好転していますが、皆様方からの意見では逆に国内対立は激化しているように思えるのです。トルコ近代化の為に国内での勝ち組と負け組が生じ、国外に余裕が向けられない。いえ余裕が出来たからこそ内紛を起こしている様に思えます。

「あちらが立てばこちらが立たず……そういうことですな。」


 小村が最後に結論を言うと方針は決まった。儂が命を下す。


 「橙子、タソスにある武器庫を解放しろ。2個師団分をトラキアに、2個師団分をポートサイドに、そして2個師団分をエディルネの皇帝師団に送り込め。」

「イスタンブールに戻り、皇帝師団の戦時動員をスルタンに要請いたします。」


意を汲んで山田が先に走る。そう皇帝師団はただ戦場に赴くだけの部隊ではない。『橙子の史実』“ドイツワイマール共和国”であの中佐(ゼークト)が作り上げた高速動員システム――世界大戦で負け軍備を防衛すらままならぬほど制限されたドイツ陸軍が作り出した部隊の殆どを士官と下士官で構成し、一朝事ある時は制限された軍備の3倍もの兵力が動員できる――の試験として作り上げたのだ。まだまだ使えるとまではいかないが数合わせにはなるだろう。
 楓、一戸、浦上、高橋、他の政務官達にも次々を命を下す。最後に小村さんに儂は命じた。


 「小村さんには帰国をお願いしたい。廣島第5師団と薩摩級何としてでも引っ張ってきてもらいたいのです。


 少し寂しそうな顔と共に彼は微笑んだ。御役御免にしたくはないが彼も長らく国に帰らず激務に耐えてきた。最近は体調もすぐれないという、頃合いだろう。
 数少ない征京司令部軍官だけが残った執務室で儂は結論を出す。


 「覚悟を決めよ、持って二年、最悪年内に戦になる!」







 あとがきと言う名の作品ツッコミ対談







 「どもっ! とーこです!! 前回の話から一転現場に戻ってきたわね作者?」


 前回、戦争の発端は書いたからね。いよいよ拙作を戦場に戻す下準備に取りかかる。本来ならここから第4章にするつもりだったんだよ


 「でもしなかったのは……3章15話下書きの最後を組みたてたからだよね?」


 まぁな、プロット作ってからそれに沿って下書き書いて言ったつもりだけど此処は完全に予定外の動きになった。だからプロットそのものが一度作り直し、その上、歴史の再構成までやる羽目になってふた月位下書きが止まったよ。


 「その影響が4章下書きまで続いて月2連載の筈が3週置きに伸びたもんね。さーどう責任とるのやら? まーいいや、ツッコミ行こう。まずはその一、最初からアルペジオ側の話が出てるよね? とういうこと??」


 「まさに其処こそプロット再構築の原因さ。実際まだ霧や人類評定について書く必要は無かったけど第4章において2つの戦、4つの戦場を同時に書くと言う拙作としても無謀極まる挑戦をする。乃木希典、石鎚橙洋、乃木橙子、そしてもう一群。彼らの意思がコアユニットを通してお互いに影響しあい一つの結末へと動いていく。文字通りのクライマックスに雪崩れ込むのさ。だからこそ霧の戦闘を書く。そのための助走なのさコレは。」


 「つまりハツセの乗組員は56とヒューは確定。@一人も解ったけどさ……言っちゃダメ?」


 ダメだよ(笑)


 「ちぇ……じゃツッコミ2、もうビックリ! うわ秋山弟司令官にして海戦やる気かーって思っちゃった。それに原作転移キャラの新顔を! ここで原作白鯨艦長を出しますか(笑)」


 なんか仮想戦記では史実の帝国海軍が安直に軍艦動かして戦争仕掛けまくっているような書き方だけどなんか戦争ありきな煽情的な書き方だなー?と思ってね。戦争にならない戦闘行動の収め方を書こうと思った訳。「すわ海戦!」と期待しちゃった読者の皆様にはごめんなさいだけどね。あー駒城副長はかなり作者の御贔屓キャラだしね。これからも何回か出番があるよ。


 「でも思ったけどコレ楽勝でトラキア艦隊勝てるんじゃない? 前弩級高速戦艦(笑)に魔改造された三笠に利根級重巡の筑摩、阿賀野級軽巡の矢矧なら……」


 何言ってるんだ? そんな時代に二次世界大戦の巡洋艦在るわけないだろ?

「 え? 誤植」

 解った解った! コレ読んでみ(資料ポィ)。今回出てきたのは第二次世界大戦時の2艦ではなく筑摩級二等巡洋艦の筑摩と矢矧だよ。


 「は???」


 とーこ、さては第二次世界大戦以前に巡洋艦なんていないと安直に考えていたんだろ? そもそも軍縮条約のころが日本巡洋艦の絶頂期、未だ歴史上では日露戦争と第一次世界大戦の間なのよ? やっと弩級戦艦が出てきたばかりなのにそんなチートをコアユニットが投げ与えてどうする!?


「投げ与えたって……今回日本ビンボーだし2艦もコアユニットが投げ与えたの?」」


 いや艦政本部に「こんな感じの植民地警備用の船」という感じに仕様書出して設計させた。それを元に部品だけコアユニットが削り出して海軍工廠まで運んで組み立て。ノックダウン生産だね。まぁ軍艦をノックダウンするという破天荒なやりかただけど。


 「うわー(資料パラパラ)なにコレ? 史実における帝国海軍5500トン級標準軽巡洋艦のプロトタイプなのか。よくこんなの作者知ってたわねぇ。」


 細部は史実の筑摩級と少し違うけどね。少し機関を効率化(シフト配置&小型化)したりして全体的な耐久力を上げてる。なにしろトラキアにはまともな海軍工廠がないから長く使える物を……てなわけ。


 「やっぱ魔改造してるし(笑)でもさーギリシャ海軍どうなってるの? 本来キルキス級は元米国2等戦艦ミシシッピ級の筈だし超弩級戦艦建造って史実から言えば……。」


 ミシシッピ級は失敗作だったからねぇ……トラキアの三笠に対してバランスを取ると言う意味でもう少しまともなものを、と考えてたらよりマシなのは解るがどう見てもネタな艦がある事を海軍年鑑で思い出してね。そのまま採用となった。超弩級戦艦については史実では建造中止の上に代金までボられたけど今度は米国が作るよ。米独合作戦艦みたいなネタにはしないつもり。


 「うわーこの作者サラミス級作るつもりだよ(汗)。ちと粛清しとくわ。(砲口径拡大中)」


 まった! 今回そんな暇が無い!! 絶対に書かなきゃならん事あるから。


 「は?」


 最後になりますが今回でてきました史実のギリシャ海軍装甲巡洋艦【イェロギオフ・アヴェロフ】はこのサイトの作者様からヒントを頂きまして採用と相成りました。向こうは架空艦、此方は史実艦とはいえ良き名前をリスペクトさせていただいた事、誠に感謝しております。


 「確か4章の下書きにも似たようなモノがあったような気が? どうにもダメ作者ねぇ? んじゃ……」


 「やっぱダメか?」


 「うん♪」


 (轟音と悲鳴が交錯)



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