鈴々達の方は決着ついたかな?
どうも反対側も戦が終息した感じだ。


「ねぇねぇ兄様、コレどうしたらいいの?」

「縛って連れて来な。俺は先に、鈴々達に合流してくるから」

「はーい」


蒲公英にその場を任せて走り出す。
遠目に、鈴々と紫苑と、あともう一人確認できる。
桃香だ。


「桃香があそこにいるってことは、一騎打ちは終わったんだろうな」


そのまま駆け寄ってみれば、相手の武将も武器を下ろしてる。
“酔”の文字が入った肩当をしてる、銀の長髪の武将。
紫苑並に胸がでかいが、まぁその辺は気にしないでおこう。
てか、あの武器は何だ?
ガン○ムとかが持ってそうな銃みたいだが……?


「桃香!」

「あ、直詭さん」

「お兄ちゃん!」


二人に出迎えられて一息つく。
……どうも鈴々が不満そうな顔してるんだが?


「説得、終わったのか?」

「うん♪厳顔さんこと桔梗さんも、私たちの仲間になってくれたよ♪」

「ワシが厳顔じゃ。真名は桔梗。お主は?」

「あぁ俺?俺は白石直詭。真名で呼んでもいいのか?」

「すでに主殿の軍門に下った身。好きに呼ぶといい」


剛毅な人だなぁ。
ただの体育会系と脳筋ってわけでもなさそうだ。
ま、戦好きって部分は違わなさそうだが。


「それよりお兄ちゃん!聞いてほしいのだ!」

「何だよ?」

「鈴々、桔梗の弾全部避けただけなのに、桔梗はもう納得したとか言うのだ!全然勝った気にならないのだ!」


こっちの方が脳筋じゃねぇか……


「無傷なんだからそれでいいだろ?」

「うぅ〜……なんかモヤモヤするのだ……」

「はいはい……」


不貞腐れてる鈴々の頭を撫でる。
こういう部分は子供っぽいよな。
別に子ども扱いしてるつもりはないが。


「それで直詭さん、こっちに来たってことは?」

「あぁ。向うも片が着いた。蒲公英が魏延を召し取ったからな」

「ほぉ……?あやつを召し取るとは、そやつもなかなかの腕じゃのぉ」

「まぁ、腕が立つのも認めるが……色んな意味でやり手なだけだと思う」


猪武者相手にさせたら右に出る奴いないんじゃないか?
主に手玉に取る意味で。


「兄様ー」

「お、噂をすればなんとやら」


蒲公英が嬉しそうに走ってくる。
その後ろには、縛られた状態で兵士に連れられてきた魏延の姿もある。
……よかった、普通の縛り方で……


「……っ!」

「たんぽぽちゃん、もう縄は解いてあげて」

「いいの?」

「うん」


桃香に言われて、魏延の縄を解く。
やっぱり納得はしてないって顔だな。
まぁあの敗け方だとそうだろう。


「それで桃香様ー、この人、仲間にするつもりなの?」

「うん、そうだよ♪」

「……こんなのが役にたつのかなー?」

「こんなのとは何だ!」

「だってぇー……──」

「はいはい。蒲公英、それ以上挑発すんな」


ったく……
これだから引っ掻き回すのが好きな奴は苦手なんだ。


「焔耶も弁えい。貴様は今、捕虜の身だぞ!」

「桔梗様……」


ふむ、魏延の説得は桔梗に任せたほうがいいかな。
どうも心酔してるようだし。
紫苑よりも効果は期待できるだろう。


「焔耶よ、ワシは劉備殿に降ることにした。劉璋のボウズに顎で使われるよりは、よっぽど面白くて派手な喧嘩ができそうじゃからの」

「……………」

「貴様ほどの者を野に埋もれさせるのも気が引ける。どうじゃ、ワシと共に降らんか?」

「……桔梗様はそれでよろしいのですか?」

「先にも言ったとおり……劉璋のボウズの下で働き続けるよりは、命の賭け甲斐があるというもんじゃ」


命の賭け甲斐、ねぇ。
流石は戦好きって言われるだけのことはある。
さっきから戦の事を喧嘩って言ってるし……
剛毅で豪胆で、誇り高い人間なんだな。


「……………」

「……うーむ、まだ納得はせんか。桃香様からも言ってくれんかな?」

「うん、分かった」


桔梗でダメとなると、後は桃香頼みか。
……大丈夫かなぁ……


「…………………………あなたは??」

「私?私は劉備、真名は桃香。よろしくね、魏延さん♪」

「…………………………っ!?!?」


あ、あれ?
なんか完全に硬直したぞ?
目も口もあんぐり開いて……
……桃香を見て何か思い出したとかか?


「え、えっとぉ……よろしくね?」

「ふむ……何故かは知らんが、完全に時が止まっておるようじゃのぉ」


……ふと頭を過ったフレーズがある……
『その時魏延に電流走る!!!』
……まさかな……?


「お姉ちゃんに見惚れたとか?」

「そうなのかなぁ?」

「なぜ俺の方を向く?」

「直詭さんなら分かるかなぁって」

「分かるか」


俺は万能でも何でもないんだぞ?
初対面の人間の心中とか分かるわけない。
……まぁ、ただなんとなくだが、危険な香りがしないでもないような……


「あなたが劉備殿であらせられるか?」

「え、うん!劉備です♪」


止まってた時が動き出したらしい。
魏延が桃香に声をかけた。
……説得、上手くいけばいいが──


「桔梗様!」

「なんじゃ?」

「ワタシは劉備様のシモベになります!」

「……はぁ?!」


……何を突然トンデモ発言してんのこの子?!


「い、いや、シモベにはならなくていいんだけど……」

「それは結構じゃが、お主、どういう風の吹き回しじゃ?」

「い、いえ別に!劉備様に変な気持ちを抱いたわけでもなければ一目惚れしたというわけでも無くですね──」


……あぁ、そっち方面に電流が走っちゃったわけね。
別に毛嫌いはしないぞ?
ただ、うん、他所でやってくれ。


「……そう、純粋!純粋にです!ワタシは劉備様の下で民たちのために戦いたいという気持ちが沸々と!」

「は、はぁ……」

「ですから劉備様!このワタシをシモベにしてください!」

「い、いや、その……シモベとかじゃなくって……」


桃香が圧されてるな……
でも助け舟は出さんぞ?
好き勝手やってくれ。
俺は知らん振りしててやるから。


「シモベがダメでしたら……劉備様の従者、いえ、あなたを守る盾に!」

「盾?!いやいやいや、そういうのじゃなくって……私はこう、魏延さんとはもっと違う関係になりたいんですよぉ」

「……違う関係?それは愛しあう関係と言う事ですかそうですかでしたら何の遠慮もいりませんワタシは些かの問題もありませんむしろ大歓迎でありますさぁさぁこのワタシの胸に飛び込んで──」


ゴスッ!!


「ふぎゃっ?!」

「なにをとち狂っておるのだこのバカ者!」


あ、いい音したなぁ……
それはともかく、桔梗ナイスだ。
流石に聞いてて怠くなってきたからそろそろ突っ込んでやろうか迷ってたところだ。


「あんまり悪い癖を出すでないぞ?劉備殿はこれから、我らの主となるのだからな」

「は、はぁ……」

「えっと……じゃあ改めて、魏延さん。仲間になってくれますか?」

「はっ!この命、そしてこの心、そのすべてを劉備様だけに捧げましょう!」


……………


「なぁ桔梗?」

「何じゃ?」

「魏延ってさ、そっちの気が元々あったとか?」

「いや、以前はなかったんじゃが……」


だとすると本当に桃香に一目惚れしたってとこか。
ま、この様子だと三国志みたいな流れにはならないだろう。
ここまで心酔してれば問題はないだろうし。
……これを心酔と言っていいのかは甚だ疑問だが……


「じゃあきちっと自己紹介しよっか♪私は劉備、真名は桃香。桃香って呼んでくださいね」

「真名を……真名を預けていただけるのですか!感激であります!」

「じゃあ魏延さんも自己紹介してください」

「はっ!我が名は魏延、字は文長、真名は焔耶!焔耶とお呼びください!」


……ツンツン


「ん?どうかしたか蒲公英?」

「今更かもしれないけど、こんなのが味方で大丈夫かなぁ?」

「……大丈夫だろう……少なくとも蒲公英みたいに味方を引っ掻き回すようなことはしないだろうし」

「え〜?!たんぽぽは楽しいからやってるだけだよ〜?!」


それが問題だって言ってんだ。


「じゃあ焔耶さん、これからよろしくね♪」

「〜〜〜っ!ありがたき幸せ!幸せすぎてもう……──!」

「落ち着けと言うに!」


あー、さっきよりも痛いぞ今の拳骨……
アレであの性格治るなら何百発とぶち込んでほしいところだが……
……無理くせぇなぁ……


「他の皆も自己紹介する?」

「そうするのだ!鈴々は張飛、真名は鈴々なのだ!」

「たんぽぽは馬岱、真名は蒲公英。一応よろしく……」

「白石直詭だ。真名なんてものはないから好きに呼んでくれ」

「あぁ」


……素っ気ないにも程があるだろうが!


「それで桔梗様!これからワタシたちはどうするのですか?」

「……んでもって無視か。いい度胸してやがるな」

「に、兄様、笑顔が怖い……」

「うむ……まずは桃香様にご入城頂き、準備を整えてから成都に進撃することになるじゃろう」


桔梗が淡々と焔耶に返事してくれて助かった。
このまま俺の方に話題が来ると、なぁ?


「このような流れで行きたいのだが、よろしいか?」

「うん♪じゃあ、朱里ちゃんたちにも伝えて、皆をまとめて入城しよう♪」











それから──
入城してからは、紫苑の時同様、桃香は盛大に歓迎された。
それだけ劉璋に力がないって証明でもある。
ただ、休まってる場合じゃないのは確かだった。

入城後、すぐに各地に斥候を放った。
朱里・雛里・摘里の三人の案だ。
厳顔と魏延の二人が降伏した後、劉備軍に参加した事実を流布するために。
……んで、その効果はと言うと──


「……あっという間だったねぇ」

「えぇ……やはり、紫苑・桔梗・焔耶という歴戦の武将たちが下ったことが大きな要因でしょう」

「それ以外にも、やはり桃香様のお人柄が如実に結果に表れているでしょうな」


各地の将たちは、紫苑たち三人が降ったことを知って、すぐに劉備軍への参戦を表明してきた。
文官たちの仕事は山のように増える結果になったけど、嬉しい悲鳴と言ってもいいだろう。
おかげで、劉備軍もかなりの規模に膨れ上がった。
しかも、かなりの短期間で、だ。


「後はいよいよ──」

「益州州都成都攻略、ですな」

「なんかめちゃくちゃ言い難そうなのだ」

「実際言い辛いとは思うけどな」


星も態々言い難い字面を用意しなくてもいいだろうに……


「新規に参入してきた軍の再編成は滞りなく終わっています」

「桔梗さんたちのお蔭で、兵站の準備も終わりました」

「じゃあ、それぞれの部隊はどうかな?愛紗ちゃんからお願いできる?」

「はっ!我が部隊は──」


最終調整、ってとこだ。
後は成都に向けて進軍するだけ。
だからこそ念入りに用意しておく必要がある。
各員、自分の預かる部隊の報告を上げていく。
勿論俺も同様に。


「──俺の部隊はそんなとこかな」

「ありがと、直詭さん♪えっと、それで最後だよね?」

「……あー、言いたくはないんだが……袁紹の部隊はどうする?」

「「「「「……………」」」」」


言いたくはなかったんだ。
でも誰かが言わなきゃいけない事項でもある。
今回は俺が貧乏くじ引いたんだ!
次は誰かに任せるぞ?!


「え、えっとぉ〜……」

「戦に首を突っ込ませない!これで決まり、なのだ!」

「鈴々の言う通りですな。それが最良かと」

「……なぁ朱里、マジで睡眠薬の手配とかしちゃダメ?」

「お気持ちは重々わかりますが、それだけの余裕は……」


無理ならいいよ?
諦めるから。


「え、袁紹さんの件は置いておくとして……成都での戦、どういう展開になるか予想できる?」

「恐らくは……紫苑さんや桔梗さんの時よりは楽になるかと」

「だろうなぁ。なにせ、こっちには一騎当千が何人もいるのに、相手はつい最近まで内輪揉めしてた連中だろ?相手にならないよな」

「ですねぇ〜。本城だけあって、軍勢はかなりのモノでしょうけど、わちきらの敵じゃないですよ、きっと」


……軍師なら“きっと”って言葉を使うんじゃねぇ。
でも、雛里や翠の言う通りの展開になるだろうな。
こうなると、多少気が楽になる。


「ここで負けたは格好付かないのだ!全力、突撃、撃破、なのだ!」

「そう、だな。我らの全力で、成都を制圧しましょう、桃香様!」

「うん♪じゃあみんな、成都に向かって出発!絶対に勝とうね!」




















後書き

ちょっとずつ短くなってるような……?
だ、大丈夫だよね?!
とりあえず、今月中にあと何話上げられるかが肝でしょうね。
年内完結を目標に、ただただ走ってみます。
お付き合いいただければ、作者冥利に尽きます。


では次話で



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