「お願い白石君!クラスの為を想って是非!」

「頼む直詭!一生のお願いだ!」

「い・や・だ」


委員長も副委員長もマジになってやがる……
人がこれだけ嫌だって言っても分かんないかなぁ?


「クラスの総意なの!ホント、出てくれるだけでいいから!」

「委員長……」

「大丈夫だって直詭!ウチのクラスにはセンスのいい奴いっぱいいるから!」

「俺が気にしてんのはそこじゃねぇ」

「ほ、ホラ!みんなからも言ってくれって!」


扇動すんな……
……いや、みんなもみんなで目で訴えて来るの止めてくんない?
とにかく俺は嫌だっての!


「他の奴じゃダメなの?」

「いや、これは直詭じゃなきゃダメだろ」

「そうそう。直詭君じゃないとみんな納得しないよ」

「白石以外に適任なんていないって」

「ね?みんなこう言ってるし、白石君なんとか……」

「……本気で嫌なんだけど?」

「そこを何とか……フランチェスカの文化祭の目玉の一つだし、ウチのクラスだけ参加しないって言うのもさぁ……?」


……そもそも、そんなイベント用意する学園もどうかと思うんだよ。
これ、確か教頭の趣味だろ?
付き合わされる生徒の身にもなって欲しいもんだ。


「そっちのことよりも、クラスの出し物の議論した方がよくねぇか?」

「え?だって、お化け屋敷って決まってるし、いいかなぁって」

「ったく……」

「とにかく今は直詭が出るか出ないか!これが重要なんだって!」

「だーかーらー……」


元お嬢様学園なだけあって、ウチのクラスも女子の割合が多い。
男子は俺以外に4人だけ。
その4人は我関せず的な面してやがる。
……後でどうしてくれようか?


「他のクラスからは誰が出るのかとか聞いてるのか?」

「ううん、それはお互い内緒ってことになってるの」

「……俺が出たって笑いものになるのがオチだろ?」

「そんなことないって!レベルの違いを見せつける絶好のチャンスだよ!」

「そんなチャンス要らん」


てかさ、ウチのクラスの女子、育ちがいいくせに話し方砕けすぎなんだよ……
俺としてはそっちの方が気楽だからいいんだけど……
他所のクラスのぞいたら、ギャップがすげぇんだよなぁ。


「まだ決まりませんの?」

「あ、神立先生」


……あんまりこの場に来てほしくない人が来た……


「先生からも言ってあげてください!白石君以外に適任者はいないって!」

「まぁ、それは間違いありませんわね」

「先生まで……」

「化粧品も衣装も舞台の立ち方まで、全て女子が用意すると言っているのだから、聞き入れなさいな」

「嫌なものは嫌なんですけど?」

「そこは諦めなさいな」


……ハァ、ホント嫌なんだよこの担任。
女性第一主義って言うか、男を舐めてるって言うか……


「……てかさ、白石君、何がそんなに嫌なの?」

「普通に考えてみれば分かるだろ?」

「えーっ?男子でもこのイベント好きって人多いじゃん」

「見る側ならな。実際にやる側は嫌だよ」

「はいはい、そこまでになさい。委員長は衣装のデザイン案を後で持ってくること」

「はい先生」

「他の女子も意見を出してあげなさいな」

「「「「「はーい」」」」」

「男子は何が何でも白石君を説得すること。いいわね?」

「「「「ういっす」」」」


……全力で文化祭休みたい……


「白石君は間違っても文化祭当日に休まないこと。我がクラスの命運がかかっていますからね」

「命運て……」

「間違ってないでしょ?だってこのイベントの優勝者のクラス、3泊4日の沖縄旅行ご招待なんだから」

「高々文化祭のイベント一つでそれだけの旅費が出るって言うのもすごい話だよな……」

「直詭は沖縄行きたくないの?」

「こんな形じゃなけりゃ行きたいけどな」

「じゃ、出よ?」


……軽い……
人の気も知らないで……


「まぁそんな訳だから、文化祭の目玉イベント“女装コンテスト”の出場者は白石君で決定ってことで!」

「本人の意思は完全に無視だもんなぁ……」











「──ってなことがあってだな」

「そりゃ直詭も災難やったな」

「ご愁傷様」

「ったく……佑も一刀も他人事だと思いやがって……」

「実際他人事やし?」

「よしお前後で死刑」


学園内にあるメイド風喫茶店「黎明館」で、一刀と佑相手に愚痴をこぼす。
……この位の愚痴は溢してもいいだろ?


「でも、文化祭の準備は免除してもらえるんだろ?」

「ウチの担任がそれを許すわけがない」

「あー……神立って女尊男卑やもんなぁ」

「そもそも教頭がそんなイベント企画したのが原因だろ?」

「何かの間違いで撤回してくれねぇかなぁ……」

「無理やろ。あの教頭、根っからの腐女子やし」

「女子ってレベルじゃねぇけどな」

「でも結構若いって話だろ?」

「いやいやかずぴー、アレは少なく見積もっても10歳はサバ読んでるで」


……ふぅ、男同士だと何かと気楽だ。
無茶苦茶とまでは行かなくても、多少なり箍を外した会話ができる。


「……そういや、神立と言えば、直詭は例の宿題終わったか?」

「ん?あぁ、昨日の夜に終わらせた」

「アレを?!」

「以前に一刀に貸してもらった資料が役に立った。佑も借りればいいだろ?」

「せやけど……ぶっちゃけめんどい」

「俺も同じく……」

「まったく……」

「だってさぁ、普通に考えても大学の講義のレポート並みだろ?」


まぁ一刀の言いたいことも分かる。
文化祭明けが締め切りのこの宿題……
最低文字数がなんと8000字だ。
間に合う奴がどれだけいるのやら……


「な、なぁ、直詭?」

「断る」

「まだ何も言ってないのに?!」

「手伝ってくれって言うんだろ?」

「しかもばれてる?!」

「そのうえ二人とも、まだ一切手を付けてないんだろ?」

「そこまでお見通し?!」

「……ハァ、お前らなぁ……」


世界史の偉人に関して書いて来いとは言うけど、ぶっちゃけ幅が広すぎる。
もうちょっと範囲を限定してほしかったよなぁ……
ま、どうせ神立は嫌がらせのつもりだろうし?
だから俺もその嫌がらせの意趣返しをしてやったと言うか……
……まぁ、俺もそこそこSだよなぁ……


「……ん?直詭、俺の貸した資料って……」

「あぁ、三国志関連の奴だ」

「三国志って……出てくる人物多過ぎやん……」

「でも、いろんな媒体で取り扱ってるから、元から好きな人物とかあっても不思議じゃないだろ?」

「ってことは、直詭もそう言う人物について書いたってこと?」

「まぁな」

「誰について書いたん?」

「聞いてどうする?」

「ただの興味本位」

「……まぁ別に隠す必要ないけど……呂布って知ってるか?」

「三国志の中でも最強って言うあの呂布?」

「あぁ。敢えて神立が絶対知らなさそうなラノベとかも含めて書いてやった」

「ひっでぇ……」


三国志の資料以外にも、いろんな媒体に触れてみた。
その中での呂布は、やっぱり最強って言うイメージが先行されてる。
でもどこか、人間臭い部分もあったりした。
俺が好きなのもそう言う部分なのかもな。


「でも呂布って、結構早い段階で退場するだろ?」

「まぁな」

「そんなんで8000字も書いたん?えげつないなぁ……」

「それがな?書き始めたら案外楽に書けてさ、気付いたら10000字超えてた」

「頭おかしいんじゃねぇの?!」

「失敬な奴だな……」

「常識的に考えて、俺らぐらいの人間がそんなレポート慣れしてる訳ないって……」

「それは逃げ口上だろ?もっと普段から本読め」

「読んでるで?」

「いや、ラノベとかじゃなくて、もっとこう……」

「ホント仲の宜しいこと」


あ、香崎先輩。
……まぁ、この「黎明館」の制服だから仕方ないけど、メイド服を生で見せてもらえるのは良いのか悪いのか……


「男子って、皆さんのような方ばかりですの?」

「そんな訳でもないと思いますけど……」

「取り敢えず、ご注文の品をお持ちいたしましたわ」

「ありがとうございます」


丁寧な手つきでアイスコーヒーを置いてくれる。
そうだよ、元お嬢様学園って言うなら、こういう感じの人が出てきてもおかしくないと思うんだよ。
なのに、何でうちのクラスはあんなに砕けてるんだ?


「学園祭、皆さんは例のイベントに参加なさるんですの?」

「直詭は参加することになったみたいです」

「あら♪当日が楽しみですこと♪」

「いや先輩、俺は本気で嫌なんですよ……」

「でも白石さんならお似合いだと思いますわ」

「先輩まで……」


諦めざるを得ないか?
そんな心境でコーヒーを一口……


「……あ、一刀。今何時だ?」

「えっと……17時5分前ってところだな」

「……ハァ」


面倒だ……
これから起こるイベントがものすごく面倒だ……
どん底のテンションのまま立ち上がる。


「あれ?直詭、どこ行くん?」

「女子更衣室」

「「はぁ?!」」

「あらあら♪」

「ど、どういう事だよ?!女子更衣室とか絶対男子が入れない場所の一つで……!」

「その羨ましいシチュはどういうことなん?!」

「羨ましいか?本当に羨ましいか?」

「そのご様子ですと、何やら訳ありと言う風に見えますわね」

「その通りです。これから俺は、女子たちの着せ替え人形にされに行くんです」

「うわぁ……」


どうだ?
これでも羨ましいと言えるか?
むしろ変わってくれるなら多少なり頼み事も聞いてやるぞ?


「……が、頑張れ直詭!」

「だよなぁ……」

「私もご一緒させていただいてもよろしいですか?」

「絶対先輩ソレ着させるつもりでしょ?」


満面の笑みで頷かないでほしい……
誰が好き好んでメイド服なんて着るか!


「俺見学に行って──」

「何か言ったか佑?」

「……すみません」

「では白石さん、行きましょう」

「え?マジで先輩も来るんですか?」

「勿論ですわ」


憂鬱だ……
この上なく憂鬱だ……
何かの間違いで文化祭中止にならないかなぁ……











「もう22時か」


面倒なイベントを済ませて帰宅して、ベッドの上にゴロンと寝っ転がる。
文化祭まであと2週間……
女子の提示したデザインは確かに可愛いとは思う。
でも俺は男だぞ?
着たいとか思うわけがない。
……着させられたけどもだな?!


「……何かやってるかな?」


どん底のテンションのまま寝るのが辛い。
何となくラジオでもつけてみる。
……一応、音量には気を付けておこう。
管理人のおばちゃんがうるさいし……


「別に好きな番組もねぇし……この辺でいいか」


適当にダイヤルをいじる。
ちょうど番組が始まったのか、快活なパーソナリティーの声が聞こえてきた。


『こんばんは諸君!今夜も“グチグチグッチ☆”の時間がやって来たぜぃ!お送りするのは毎度お馴染み、俺ことシーキョだ!今夜は寝かせないぜ?』


……聞く番組を間違ったかもしれない。
まぁいい。
適当なところで切ればいいだけだ。


『今夜はリスナー感謝祭!と言うことで、バンバンお便り読んでいくからそのつもりで!』


どんなお便り読むんだろうか?
ま、番組タイトルから考えるに、リスナーが愚痴でも聞いてもらうんだろう。
どんな返しするかも気になるけど、このシーキョとかいう奴の口調はあんまり好きになれないな。


『最初のお便りはP.N.“元就様の下僕になりたい”さんからのお便りだ!』


どんなペンネームだよ……
これ絶対腐女子確定じゃねぇか……


『さてさて……[シーキョさん、こんばはー♪]こんばんは![今日は私の愚痴を聞いてほしいの、いいですか〜?]勿論だぜ、ドンと来い!』


これ、リスナーのレベルも低そうだ。
早々に聞くの止めようかな……?


『何々?[今度私の学園で文化祭があるんだけど、そこで女装大会ってのがあるの]へぇー、ぜひ見て見たいね!』


……何だと?
そんな異常なイベントするの、ウチの学園くらいだぞ?
ってことはウチの学園の奴が出したのか?


『[それで、私のクラスの男子も一人出てもらうことになったんだけど、どんな服着せても私より可愛いの!女の子としてのプライドズタズタなんだよ!?そんな可愛い男子がいること、許していいのか!是非シーキョさんの意見聞かせて!]成程成程?』


……まさかとは思うけど、俺らのクラスの奴じゃねぇだろうな?


『このお便りに関して俺から言えることはただ一つ!むしろもっとやれ!どこまで可愛くできるか挑戦してみようぜ?そうすれば、“元就様の下僕になりたい”さんも対抗意識燃やして可愛くなるよ絶対!』


とんでもないアドバイスするのなこのパーソナリティー……
……何だろう、何か変な悪寒が……


『さぁさぁ!この調子でどんどん読んでいこう!続いてのお便りは、P.N.“自称ギャルゲーの主人公”さんからのお便りだ!』


さっきからまともなペンネームの奴がいねぇ……
こんなんでいいのかこの番組……?


『[シーキョ、こんばんはッス!]こんばんはッス![俺、好きな人ができて告白したんだけど、他に好きな奴がいるからってフラれちゃったんだよ……]おや、これは重い内容だぞ?』


重い内容のくせに嬉々としてるよな……


『[でもさ、俺諦められなくて、誰が好きなのか聞いてみたんだよ]ナイスガッツ![そしたらさ、S先輩っていう女子だって……どう思う?!好きになった相手がレズだったんだよ?!この俺の気持ちはどうなるんだよ?!]』


知らねぇよ……
色々ショックだとは思うけど、ラジオに投稿するなよそんなネタ……


『うーん、これは難しいねぇ。でも、告白したことも、好きな相手が誰か聞いたことも、ナイスな勇気だと俺は称賛するよ!こうなったらアレだ、好きになったその子も、その子が好きな先輩も、両方とも自分のモノにしちゃおうぜ!』


マジで何言ってんのこいつ……?
何のフォローにもなってねぇし……
……次のお便り聞いたら切るか。


『いいねいいね!出だしからナイスなお便りが続いて俺的には最高な気分だよ!』


それ本心で言ってんのか?


『続いてのお便りは、P.N.“諸行無常唯我独尊”さんからだ!』


なぁ、マジでまともなペンネームの奴いねぇの?
それともそう言うルールとか暗黙の了解でもあるの?


『[シーキョ、こんばんはー!]こんばんはー![この間バイト首になっちゃったんだよテヘッ(^_-)-☆]おっと、随分と前向きなリスナーさんからのお便りだぞ?』


前向きじゃねぇよ……
ただの現実逃避じゃねぇか。


『[それで新しいバイト探してるんだけど、高時給で可愛い子がたくさんいるのを条件に探してみたら、いいのがあったんだよ(^◇^)]いいね♪そう言うところで働けるって最高じゃない!』


……ん?
意外とマシなお便りなのか?
何だかんだで、このリスナーもちゃんと新しい職探してるし……


『[このお便りの最後にバイト先の住所書いておくから、シーキョも是非遊びに来てよ!BまでOKにしておくから(/ω\)]これは是非行かないといけないね!』


マシかと思ったらそんなことは無かった。
それって所謂風俗だよな?
しかもラジオのパーソナリティー誘うとかどんな神経してんだ?!


「……聞いてて損した。寝よ」


ラジオの電源を切って、布団をかぶる。
まだ暑いからタオルケットだけどな。


「……ハァ、何か今日は厄日だな」


良いことが殆どなかった。
明日も似たようなことが続くんだろうな……
また女子の着せ替え人形にさせられたり……
……ハァ、結局億劫なままだし……


「急に人生変わるとかねぇかな……?」


……俺も現実逃避し始めたか。
もう考えるの止めよ。
寝よ寝よ。
おやすみ……











『──続いてのお便りは、P.N.“文王の待ち人”さんからのお便り。[夜分に失礼する]……どうぞ』

[人の想念というものは酷く身勝手じゃ。これから“彼”には多大な試練が待ち受けておる。じゃと言うのに、その試練を乗り越えた先に待つモノは絶望のみ……それも、多くの人が望む身勝手な結末の糧とされる宿命……ワシはこの事実を知っていながら、それを“彼”に告げることを許されない。ただただ、絶望に向かって歩んでいく“彼”を見守ることしか出来ん……ワシは、どうすべきじゃろうか……?]

『……“彼”ならきっと、与えられた試練に立ち向かい、乗り越えることができると思う。でもきっと、事実を言おうと言うまいと、“彼”はあなたを恨んだりはしないはずだ。たとえ絶望しかない未来だとしても、“彼”なら力強く歩んでいくことができる』

[……ワシも身勝手じゃ。“彼”を救おうと尽力すれば、自身が傷つき苦しむことを知っておる。だからか、率先して“彼”を救おうと動くことが出来ん……]

『傷つくことを、苦しむことを厭わないでほしい。あなたが“彼”を本気で想っているのなら、あなたが“彼”の絶望を望まないのであれば、あなたは手を差し延べるべきだ』

[……ワシでは“彼”を幸せにすることが出来ん。それでも、手を差し延べろと?]

『どれだけ尽力しようと、人を幸せにすることは出来ない。幸せを感じるのはその人自身であって、他者が立ち入る隙はない。ただ、あなたが手を差し延べた結果、未来が変わる可能性が微塵でも存在するのであれば、あなたはその未来のために動くべきだ』

[……なぁ|紫虚≪しきょ≫よ、ワシは、ワシは──]

『定まった命運は変えられない……これが世界の通念……でも、あなたにはその通念を覆すだけの力がある。後はあなたの心次第。“彼”を殺すも生かすも、最後はあなたが決めなければならない』

[決められるかの、こんなワシに……]

『……前を見ろ太公望!』

[っ?!]

『運命も宿命も、すでに動き始めている。“彼”も“別の彼”も、すでにそれらに飲み込まれた。人々の想念が“別の彼”を生かすことだけを考えるのであれば、あなたは双方を生かすことを考えればいい』

[紫虚……]

『……俺はすでに身を引いた存在、力になることは出来ないが……あなたは“彼”の力になれるではないか』

[ワシが……?]

『理不尽でも、身勝手でも、無慈悲でも……動き始めた運命や宿命はもう止まらない。始まったものを止めることが出来なくても、行く先を変えることが出来る力をあなたは持っている。先にも言ったように、後はあなたの心次第。俺の言葉をどう捉えようと構わないが、決して後悔だけはしないでほしい』

[……ワシの、心、か]

『……あなたはとても優しい』

[詭弁は止せ。ワシはただのエゴイストじゃ]

『そんな奴がこの俺に言を求めに来るはずがない。あなたは“彼”を想っているからこそ、ここまでやってきた。誰かを想える者に、優しさを持たない者はいない』

[……………]

『そうだな……もしも、心が定まらないと言うなら、俺が後押ししてみよう』

[後押し?]

『あなたが自分の事をそう言ったように、俺もエゴイストだ。誰一人後悔することのない世界があればいいと思っている』

[紫虚、お主……]

『当然、そこにはあなたも含まれている。だから、あなたが後悔しないよう、一つだけ言葉を贈る』

[……………]

『手の届く距離に希望が見えているなら、たとえその身がどれだけ傷つこうとも、その希望を手にするべきだ。そうすれば、あなたはきっと後悔しないで済む』

[ワシは後悔しても良い。ただ……“彼”が後悔することにならなければ、それでいい]

『あなたにとっての希望が、“彼”にとっての未来に繋がっていたとしても、今と同じことが言えるか?』

[それは……]

『動くことを躊躇うな。傷つき苦しむことを厭うな。それに、あなたは一人じゃない。俺も含め、同調してくれる者は必ずいる』

[……………紫虚]

『ん?』

[礼を言う]

『礼を言われる筋合いはない。俺は今、何の力も持たないから』

[じゃが、お蔭で心が定まった]

『そうか』

[ひょっとすると、またお主の力を頼ることがあるやもしれん]

『いくらでも頼れ。俺だけに限らず、あなたと同調する者たちを頼れ。一人の力で手に入れられない希望なら、仲間を集い、多くの手を以て手に入れればいい』

[……分かった。では、行ってくる]

『あなたと、あなたの想う“彼”に、より多くの幸せがあらんことを』









後書き

えっと、まずは……
シルフェニア十周年おめでとうございます!
ここまで長く続けられたことはとても素晴らしいことだと思います。
そこに、こんな未熟者の私も参加できることを光栄に思います。

で、今回のお話ですけど……
最後にオリキャラを出してみました。
本編の方でも出すかは未定です。

呉編も完結に向けて走っていきたいですね。
そして、あわよくば魏編も書いてみたいです。
……まずは完結させることを目標に頑張りますが……


ではまぁ、また次話で



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