「──じゃから、コレの何がいかんと言うのじゃ?」

「漢女道を往く者として、お主のそれを認めるわけにはいかん」

「そうよ?太公望、あなたのそれは邪道よ?」


……どうも白石直詭です。
現在、俺の部屋に三匹の化け物がいます。
しかもどうでもいい内容の話をしています。
……誰か代わってください……


「分からんかのぉ?これは時代の先端を行くセクシーと言う奴じゃ」

「セクシーって言うのは、私くらい慎ましいのを言うのよ?」

「そこに気品を兼ね備えておるのが儂じゃ。太公望、お主のそれを言葉に表せば、“不埒”としか言えん」

「ふっ……笑止。新しきを受け入れねば進展など有り得ん」

「進む道を間違うのは愚行って言うのよ?」

「それにじゃ。現状から徐々に進展させてこそ価値があると言うのに、お主は何十歩も先に行き過ぎじゃ」

「そうかの?直詭、お主はどう思う?」

「……………」


今俺は話し掛けられなかった。
そう思うことにする。
と言う訳で刀の手入れを続行。


「あら?ひょっとして聞こえてなかったの?」

「そんな訳なかろう。これほどの近距離じゃぞ?」

「ほれ、お主に聞いておるのじゃから何か答えんか」


反応したら敗け反応したら敗け……
今この部屋には俺しかいない。
ちょっと雑音を発する羽虫がいるだけ……


「ふむ……これだけ魅力的な漢女がおると言うのに目も向けんか」

「ならもう少し魅力的な格好をすればいいんじゃないのかしら?」

「これ以上にか?じゃとすると、後はもう脱ぐしか──」

「分かった。俺が悪かった。だから脱ぐな、脱いだら微塵切りにする」


万一誰かが来たら色々とマズすぎる。


「おお、ようやくワシらの声に耳を傾けてくれるか」

「それで?やっぱり太公望の格好はやり過ぎだと思うわよね?」

「……俺から言わせれば、お前ら全員同類だ」

「何を言う!儂と貂蝉のこれは、漢女道の正式なコスチュームじゃぞ?!」

「じゃがの?貂蝉と卑弥呼のそれは時代遅れじゃと思うんじゃよ。直詭も何か言うてくれんか?」


何を言えと?
今言ったように、全員同類なんだけど?


「紐パンもスリングショットも、人前で着るのには十分アウトだと思うけど?」

「そう思うのは免疫がない証拠よ?ほらほら、遠慮しなくていいからもっと見て♪」


……誰か洗面器持ってきてくれ。
今にも吐きそうだ。


「……んで?太公望の何がマズいんだ?まぁ俺から言わせれば全員マズいとは思うけど……」

「分かるじゃろう。漢女として貧弱な体をラインをあからさまにする様な着こなしがマズい……大体なんじゃその外見は!褐色の貧乳の女子などと、マニア受けでも狙っておるのか?!」

「失敬な……この姿は単純に直詭の趣味に合わせただけじゃ」

「おいちょっと待て。俺は一言たりともそんな発言はしてねぇぞ?」

「言わんでも分かる。ワシと直詭との付き合いじゃ。こういう外見の女子を好むんじゃろ?」

「あら?なら私たちもそっち系で攻めるべきだったかしら?」

「じゃが、ご主人様の趣味にも合わせんといかん。儂らはこれで構わんじゃろう」

「……今の発言からして、外見を変化させることは可能なのか?」

「出来ないことは無いわ。ただ、ちょっと力を使いすぎるから長時間は続かないけれどね」


……まぁ、女物の水着着るならやっぱり女性に着てほしいよな。
でもなぁ……
貂蝉は紐パン、卑弥呼はマイクロ水着、太公望はスリングショット……
……この世界に公然猥褻罪が無いことが悔やまれる……


「と言うか、直詭はワシらに別の服を着ろとでもいうのか?」

「はっきり言えばそうだ。もっと言えば、貂蝉に至っては口調も何とかしてほしい」

「どういう事よそれ……」


筋骨隆々な奴がオカマ口調とか気持ち悪すぎるんだよ……


「なら具体的にどのようなものが良いんじゃ?」

「太公望は普通の服でいいんじゃねぇの?外見は普通に可愛い系の女の子だし」

「ほぉ?嬉しいことを言ってくれるの」

「それってつまり、私たちは可愛い系じゃないってこと?」

「そう言ったつもりだけど?」

「ふむ、つまり儂らは綺麗系と言うことか」

「違ぇよ」

「なら清楚系?それともグラマラス?」

「……強いて言うなら、汚物系?」

「ひ、酷すぎるわ!」

「純真な漢女の心を踏み躙るとは……」


いやだって、普通に見てて気味が悪いし……
これと一緒に行動で来てる華佗の神経を疑うところだよ。
……まぁ、アイツも普通じゃないのは承知の上だけど……


「ふふふ……どうじゃ?ワシこそ至高じゃと、今直詭が証明してくれたぞ?」

「そんな証明はしてねぇ」

「わ、私たちの何がいけないというの……?」

「ワシから教えてやろう。貂蝉に卑弥呼、お主らに足りないものは即ち魅力──」

「単純にお前ら全員の着こなしが犯罪だバカ野郎」

「「「なっ?!!」」」


……ハァ、ここまではっきり言わないと分からないのかこいつらは……
こいつら、普通にこの格好で街中歩きやがる。
元いた世界なら普通に捕まるよなこれ?


「な、直詭!これはれっきとしたオシャレであって──」

「お前らがなんと言おうが、俺からすればただの変態行為だ」

「時代の最先端を行くこの肉体美と着こなしを理解できんと言うのか?!」

「それをオシャレだという時代に生きたいと思わねぇよ」

「じゃが直詭?逆に聞くが、ワシらがどのような格好をしておればそのような発言は控えてくれるのかの?」

「世間一般論で言う“普通”の格好だよ。なんでどいつもこいつもそんな際どい水着なんだよ……」

「じゃからこれは所謂コスチュームじゃと──」


あーはいはい。
何かこれ以上は水掛け論と言うか無駄だな。


「……そんなこと言いつつも、ワシらが着ているようなものを他の者が着れば直詭も考えるじゃろ?」

「……………何だと?」

「いい考えね太公望♪試しに誰かに着せてみる?」

「おいお前らよく考えろ。そんな恰好したいと思う奴なんかいるわけ──」

「愛しの相手に気に入られたいなら、多少なり無理も出来ると思うが?」

「俺がしてほしいと望んでなくてもか?」

「本音は?」

「本音だ」

「とか言いつつ?」

「本音だ」

「そう言いつつも?」

「以下略」


相手に気の毒すぎる……
簡単に言えば、「変態になってください」って言うようなもんだろ?
そんなこと口が裂けても言う気はない。


「でも、ご主人様の方はどうかしら?」

「あー、一刀の方ならわからんの」

「……即答で否定してやりたいんだけどなぁ俺も……」


呉服屋にデザイン提供してるからなぁ一刀って……
なんか、現代の水着とほぼ同質の布地も手に入れたんだろ?
んで、それ使ってかなり際どい水着も作ったって話だ。
……すでに何人か犠牲になったって話も聞いた……


「試しに恋ちゃんとかに着てもらったら?」

「可哀想だろうが」

「ふむ……じゃが、趙子龍辺りなら喜んで着そうではないか?」

「……まぁ、以前に猫のコスプレしたこともあったしな」

「発想の逆転で、直詭が着るというのは──」

「……細切れにしてやろうか?」

「……すまん。少し調子に乗ったのは認める。じゃから喉元に刃を押し付けるのはやめてくれんか?」


……ったく、こいつらは本当に……


「でも、そう言うあなたはどんな水着が好みなの?」

「その人に似合ってればそれでいいみたいな部分はある。言ってしまえば拘りはない」

「……直詭、お主本当に男か?」

「性別不明の化け物に言われたくない」


まぁ、目を奪われるようなことが無いわけじゃない。
ただそれは、その人と水着がマッチしてるからだ。
水着単体の好みって言うのはないな。


「……そうじゃ!貂蝉に太公望、少々耳を貸せ」

「なんじゃ?」

「なぁに?」


なんかヒソヒソ話始めやがった。
……見てて目の毒だ。
誰か本気で代わってもらえませんか?


「──それは名案じゃな!」

「イイと思うわ!すぐ実行に移しましょう!」

「なら、善は急げ。直詭、これにて失敬するぞ?」

「早々に出ていけ」


……俺の言葉を待つまでもなく三匹ともいなくなった。
ふぅ……これで一息つける。


「……いや、ちょっと待て?なんか嫌な予感するんだけど……」


ここまでの会話の流れから何を思い付いたか知らねぇけど、絶対に碌なことじゃない。
だとすると、俺はどう動くべきだ?
アイツらの思惑を潰すように動くべきか?

……無理だ。
アイツらに真っ向勝負で勝てる見込みは皆無……
頭の回転の速さも自信がない。


「……ハァ、お手上げだ」


何が起こるかは分かんねぇけど、取り敢えず“待つ”以外の選択肢しかない。
ただなぁ……
他の誰かを巻き込むとかだったら色々ヤバい気が──


コンコン


ノック?
誰だろ?


「どうぞ?」

「失礼します」

「あ、月さん。どうかしましたか?」

「はい。これから何人かで小川に水浴びに行くことになったので、良かったらナオキさんもいかがかと思って」

「態々誘いに来てくれたんですか?」

「はい♪他の皆さんも、ナオキさんと一緒に行きたいと」


……多分、アイツらの策略だろうな。
水浴びってことは、月さんを始めとして皆水着に着替えるんだろう。
んで、俺が誰を一番見ていたかを観察する、ってとこか?


「……あの、ナオキさん?」


アイツらの思うように動くのは気に喰わない。
ただ、折角のお誘いを断るのも気が引ける。
……よし!


「分かりました、ご一緒しますよ」

「ありがとうございます♪では、他の方にも声かけてきますね」


そう言って月さんは小走りで去って行った。
誰が来るかはさすがに予想付かないな。


「ま、遊びたい盛りの連中は来るだろう」


俺は木陰でのんびり過ごさせてもらうか。
何せ、水着は持ってないし。


コンコン


「……また来客?どうぞ?」

「はい直詭、持ってきた」

「……いきなりすぎて分かんねぇよ一刀。順序良く話してくれ」

「これから皆で泳ぎに行くんだろ?で、直詭って確か水着持ってなかっただろ?」

「そうだけど?」

「だからコレ、直詭の水着」

「何で?」

「……この柄、嫌いだったか?」

「そこじゃなくて……何で持ってきたんだって聞いてんだ」

「皆で遊んだほうが楽しいから」

「……んで?一刀はちゃんと仕事は終わってるんだよな?」

「ばっちり!」


……ま、嘘吐いてたら愛紗と華琳の二人に報告すればいいか。


「分かった。んじゃ行くか」

「よし!あ、そうだ。皆の水着もちゃんと見てあげろよ?」

「……卑弥呼辺りから吹き込まれたのか?」

「それもあるけど、今回のは自信作だからさ!」


……ハァ、平和の象徴がこんなんでいいのか?


「ほら、置いていかれちゃうぞ?」

「急かすなって……」


まぁ、決まったものは仕方ない。
甘んじて受け入れるとするか。
……それに、さっきまで目の毒になる奴が三匹もいたんだ。
俺も一応男だし、目の保養でもさせてもらいますか。












後書き

早く本編進めたいです。
新しく始めたOROCHIの方も進めたいです。
なのに書く時間があまりなくてつらいです。
他にもやりたいことあるのでSSに当てる時間そのものが少なくなってます。

……後書きのつもりが愚痴になってました、すいません。
取り敢えず、本編(長編2つ)をしっかり書いていきたいです。
頭の中でストーリーはそれなりに完成しているので……

次回の更新がいつになるかは分かりませんが、出来る範囲で頑張ります。
ではまた、次話で



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