※この話は「黒い王子シリーズ」のIFとなっておりますので、読んでいない方はそちらからどうぞ。
テンカワ=アキトと高町なのは。
2人が婚姻関係に至ったのはある意味必然かもしれない。
少女が女性へと変化し、青年はそれを傍で微笑みながら見守っていた。
だが、青年にはかつて愛した女性の面影が付きまとい、彼の心を苛んでいた。
ミスマル=ユリカ。彼が僅かに残されていた時間を少なくしてまで救った妻。
しかし、結局彼らの道が交わる事はなかった。
それこそがテンカワ=アキトの苦悩の根源であり、彼女の影が彼の男の視線を過去だけへと向けていた。
そんなあるとき、なのははアキトの過去を、痛みを知り、そこから自身の体を、心を使って自身へと振り向けた。
多少強引ではあるものの、それこそが高町なのはの強みであり、結果的に彼を救うこととなった。
過去は過去でしかなく、自分たちは今を、未来に向かって生きているのだと、彼女は彼に告げた。
それは闇の書事件から5年後。高町なのはが中学2年生となった冬の話である。
「むにゃ…ぅ……」
テンカワ家の一室。
朝のベッドには、いつもの光景が広がっていた。
うっすらと目を覚ましたなのはは、夫であるアキトに抱きついたまま眠ったらしい。
2人とも裸ではあるが、互いの体温を直に感じていたために肌寒さはない。
被っていたはずのシーツは下の方にずれており、隣ですやすやと眠るアキトの胸の中央には数センチの傷跡が残っているのがわかる。
その傷は数年前に起きたJS事件の際、ゆりかご内部のエンジン部分を破壊するためにヴィータと行動していたとき、彼女を庇って出来た傷である。
それは流石にアキトも致命傷だったらしく、今ではその傷が原因となって現役を退き、翠屋ミッドチルダ店のウエイターに収まっている。
無論、そんなのは単なる口実だけでしかなく、本来ならばまだ第一線に立っていられるほどの実力を持ち、なのはたちも届かない強さを誇っているが、事件後の
なのはの反応を見てアキトは現役を退く決意をしたのだという。
事件後、アキトは直後にゆりかご内部へ突入したアインスに抱えられ、すぐさま病院に運ばれた。
そしてICUに運ばれ、1週間以上生死の狭間をさまよった。
そのときのヴィータも酷く鬱になっていたが、それ以上になのはが酷かった。
皆当時のことを思い出すだけで苦い表情になるほどで、もしあのままアキトが死んでいたらなのはも後追い自殺は間違いないと断言できるほどであった。
しかし、今ではその傷も思い出の1つとして存在している。
「エヘヘ…」
もう新婚ではないというのに、なのははアキトの寝顔を見つめていると顔が緩むのを抑えられない。
エッチしているときはあんなに意地悪なのに、自分が眠っているときは子供のように穏やかで甘えん坊なのだ。
そのギャップが萌え萌えで、なのははいつもアキトよりも早めに起きて寝顔を堪能している。
そして、なのはがいつものように、アキトの体を抱き枕のように抱きしめようとするが、今日は違った感触が襲った。
「………?」
アキトの反対側へと手を伸ばしたなのはが接触したのは、手首。
アキトにしては細く、なにより肌の感触が違う。
となれば、別の誰かだが…カムイか?イシュタルか?
ちなみにデバイスであった2人は、今ではデバイスのコアを心臓代わりとした肉体を得て、共にミッドチルダ店のウエイトレスとして活躍している。
ラピスが開発した擬似生命体の実験台なのだが、状態は極めて良好のようだ。
イザナミも肉体を得て共にウエイトレスとして働いている。ラピスもまた、アキトが引退すると同時に局から身を引いたのだ。
ともあれ、その手は誰の手か。
前述の2人が気遣いを見せずに夫婦の部屋に入ってくる事はまず考えにくい。
あの2人ならば夫婦喧嘩は犬も食わないと言わんばかりに我関せずを貫き、縁側で老人のようにのんびりとお茶を啜っているような性格だ。
主人と似ているのは主人からの影響というわけでもなく、元々の性格のようで。だからこその相性の良さなのだろう。
では一体誰が?
寝惚けたままのなのはがぼうっとした思考を巡らせながら頭を上げ、反対側を見やると。
そこには数年前より劇的に成長したヴィヴィオがすやすやと眠りについていた。
その姿は、かつてゆりかごで対峙したときと全く変わらず、同級生からも羨望の的になっているのだが。
何故か、彼女もまた全裸であった。
「んん………もう朝…」
「ん…まだ時間あるし、もうちょっと眠ってよっか」
「うん…」
今年で6歳となった夫婦の子供の名はテンカワ=ユウ。
父親譲りのぼさぼさの髪は、色が栗色で母親の血も受け継いでいることを示している。
瞳はオッドアイで、鳶色と金色が窓から差し込む朝日に細められている。
少年は、上の階でいつものように始まった姉と母の喧嘩による爆音を目覚ましとしているが、今日はいつもより早いためにもう少し夢の世界に旅立つ事に決めた
よう
だ。
そんな彼の周りはいつも美人で溢れている。
今日も夫婦と同じキングサイズのベッドにはラピス、フェイト、アリシアがユウを囲って眠っており、部屋の反対側の壁のベッドには桃子、美沙斗、美由希、猫
形態のリーゼ、それと3匹のミニ竜
がすやすやと眠っている。
カムイとイシュタルも桃子達側のベッドで眠っていたのだが、あの2人は朝が早いためにもういなかった。
このベッドのメンバーはローテーションで配置が決められており、ユウを中心に回っている。
皆ユウの保護者的立場であるものの、こうも美人に囲まれてはユウも気が気ではなく、6歳にして既に枯れた雰囲気を纏っている。
父親があんなふうになるのもわからないでもないと思っているが、将来彼が、父と同じように女性に追いかけられるのをまだ理解できてはいなかった。
尤も、ラピスと未亡人連中、アリシアにカムイとイシュタル以外のメンバー(ここにいないアリサやすずか等も含む)は、テンカワ=ユウ
光源氏計画を着々と
進めているため、近い未来に何かあることは間違いない。
フェイトがなのはをお母さんと呼ぶ未来もありうる。最早修羅場ではすまない。地獄が展開されそうだ。
父であるアキトは何も言わない。いや、言えない。下手に口出しすれば押し倒されるからだ。
齢50に近い桃子やリンディ、レティはなのは公認でアキトと云々しているので問題はない。
いや、その事自体が問題視されそうだが、何やら協定が交わされたらしく、夫婦仲良くやっているときには彼女達は絶対に邪魔をしない。むしろ後押ししている
応援派である。
ともあれ、そんなこんなでテンカワ家の朝はいつもの調子で始まった。
「もう、ママったら手荒いんだから…」
「姉さんも少しは自重すればいいのに」
「5歳のクセに生意気っ。私は父親っ子だからいいの!」
「………ヴィヴィオ、彼氏はいないのか?」
「私には彼氏なんて早いよ!…それに、パパよりいい男なんて見つからないもん」
朝食時は大変だ。
10時半開店の翠屋の店内を使って食事を摂るのがテンカワ家の通例である。
家のリビングでは、まずスペースが足りない。
カウンターにはアキト、両側になのはとヴィヴィオ。
4人がけのテーブル席の1つにはユウ、フェイト、ラピス、アリシア。
他のメンバーも好きな席に腰掛けて朝の時間を過ごす。
「俺よりいい男なんて一杯いるんだがな…」
「そんなことないよ!――だって、この前局内の人気の男女ランキングがあったんだけど未だにパパとラピスママが1番だったし!」
そう。未だに根強い人気を誇るのがテンカワ=アキトとラピス=ラズリである。
特にアキトは以前からメディアへの露出が凄まじく多かった事から、多くの年齢層に知れ渡り、その人柄もツンデレとして評価されているのだ。
治療費を稼ぐためとはいえ、そういった行動が結果的に自身を追い詰めている事に気が付いたのは喫茶店のウエイターになってからだ。
現在ミッドチルダ最強の喫茶店の名を欲しいがままにしている翠屋では、SSSランク魔導師が2人も住んでいる他、Sランク魔導師が数名。
非公式ではあるがSSSランクレベルの戦闘員も3人…ブリュンヒルデ、ミスト、スクルドもいる。
今は美沙斗も局から引退したためにここで隠居生活しているし、美由希も第一線から身を引き、教導官として新人を軽く鍛えるくらいだ。
しかもアキトの身体能力となのはの魔力を受け継いだ子供もいるのだ。今はまだAランクほどの実力でしかないが、それでも5歳でAとなれば10歳になるまで
にはどれほど強くなっているのやら。
ちなみに、翠屋のあるマンションは全てテンカワ家又は関係者が部屋を取っているため、実質マンション自体が要塞化していることは言うまでもない。
「……ありがとう、カムイ」
「フッ…なに、気にするな。我らが主の頼みとあれば断る理由はない。
それに、貴様の成長を見守るというのも中々刺激的でな。アキトが局を退いたとはいえ、退屈しない」
その日の夕方。地上のとある演習場にて。
カチャリと、腰に提げた鞘に西洋剣を収めたカムイは、頬に切り傷を受けて僅かに血を流すユウに笑みを見せる。
ユウもまた、カムイに笑みを返して自身の刀を納める。
「でも、父さんって本当に強かったの?」
「ああ。我々が肉体を持つ前はデバイスとして仕えていたが、あれほど戦闘に特化した人間も珍しい」
「ふぅん…」
「今は2代目である“天霊”を封印しているが、恐らく今後ともアレを扱えるのはアキトのみだろう。
アレは元々アキト専用に開発されたものだからな…息子の貴様が扱えるかはわからんが」
「天霊、か…」
「ラピスの扱っていた“フツノミタマ”と並び、局内では“神器”と呼ばれるものだ。
こと防御に至っては“フツノミタマ”、攻撃に至っては“天霊”が史上最強にして最高の至宝と称されている」
ポン、とユウの頭を一撫でしてから、カムイはユウを連れ、夕暮れの演習場を隊舎に向かって歩き始める。
これから自宅に戻り、イシュタルとイザナミに宿題を見てもらい、予習を手伝ってもらうのだ。
ちなみにユウは小学校1年生にして中学校修了時レベルの学力を習得しおえており、現在は高校2年生〜大学生レベルの勉強に勤しんでいる。
その部分に関してはアキトに似なかったのは幸いというべきか。しかし、なのはの血を受け継いだせいか国文系は苦手である。
「だが、2人が引退する際、局からは2つのデバイスに関して封印する事を要請した。
2人はそれを了承し、現在では管理局の最下層に封印されているのだが…」
「?」
「あの2人はナノマシンの恩恵を受けているからな。通常ならば転送魔法ですら踏み込めないその空間も、あの2人ならば難なく潜入できる」
「ああ、そういうこと…」
ユウは父と従姉妹(?)が特殊な体質であることを知らされており、ボソンジャンプの存在も知っている。2人には秘密にしろと言われているが。
「………あ、ユウにカムイじゃない」
「…アリサさんにすずかさん?」
演習場を出た2人に声を掛けたのは、アリサとすずか。
カムイは2人に向けて軽く手を上げてから口を開く。
「1ヶ月ぶりだな。今日はどうした?…確か休暇は来週末からではなかったのか?」
「そうよ。今日はこっちの方で調べ物があったから来ただけ。そしたら偶々あんた達がいたのよ」
「あ、怪我してるよ。ユウ君」
肩を竦めて答えるアリサの傍らで、すずかはユウの頬に出来た傷を見て顔を近づける。
それにユウは、大丈夫ですからと掌を左右に振るが、すずかはおかまいなしにユウの頬に唇をつけ、舌で傷口をピチャピチャと舐める。
「……はい、大丈夫だよ」
「あ、ありがとうございます…」
数秒後、すずかが口を離したときには、ユウの顔が真っ赤に染まっていた。
それに傍観していた2人も苦笑するしかなく、すずかが最後に舌なめずりをすると、ユウの背筋にゾクリと寒気が走る。
「……すずか、目が真っ赤」
「あ、ごめんね。美味しかったからつい…」
夜の一族の力は絶大で、身体能力だけで言えば獣人ですら足元に及ばない実力。
ただ、血を吸うと体が疼いてしまうため、未だ体を抑えるためにアキトの協力が不可欠なのだ。
ユウも献血に協力しており、最近では授業中に貧血で倒れたこともあるほど。
(今のところすずかが一歩リードかしらねえ…参戦してないけど)
(……保護者としては、少々複雑ではあるがな)
苦笑するアリサに、肩をすくめて返すカムイ。
どうやら近いうちに、またなのはの頭を悩ますような事件が起きそうだ。
「おかえり、ユウ」
「ただいま、父さん」
夕日が落ちる直前、店の前でいまや名物となったなのはとヴィヴィオの喧嘩を無視して店の中に入る。
爆音が周囲に響いているが、被害が出ることはまずないので安心だ。これもラピスの結界によるおかげだ。
「今日は何で喧嘩してるの?」
「朝のことで、小遣いを減らすとなのはが言い出してな…」
ウエイターの服をピシッと身に纏ったアキトは、店内の客と共に窓の外に映る2つの鬼を見やる。
そこには、BJをボロボロにしながら拳を振るい合う親子の姿が。
慣れっこなのか、なじみの客はどっちが勝つかに賭けたり等、イベント気分で観戦中だ。
アキトも同様に、腕を組んだままカウンター席の前でじっとその様子を見つめたままだ。
「小遣い?…姉さんは十分貰ってると思うんだけどなぁ」
「男からすればそうだろう。だが、女からすれば少ないそうだ。興味嗜好の違いとやらか」
「私も多すぎると思うけど?」
「ラピスは…そういうのには今も興味がないだろう」
「そうだね…化粧なんてしなくてもいいのに」
「……自覚がないというのは、な」
「何か言った?」
「いや、何も…」
アキトの隣にやってきたラピスもまた、今日はウエイトレス…否、ウエイターの服を纏い、のんびりと観戦している。
腰まである髪を後頭部で纏め、ポニーテールにしている。そのおかげか、いつもよりも更に凛々しさが増しているのだ。
ラピスはすっぴんでも十分街中を歩けるため、皆が羨ましいと感じているが、本人には自覚がないようで。
というか化粧をしたことが殆どないため(しなければならない場合等)、化粧の重要性をイマイチ認識できていないのだ。
現に今もすっぴんだが、誰もそれについて突っ込む人間はいない。
「お、ユウじゃねーか。帰ってたんだな」
「ヴィータ姉さん…うん、ただいま」
欠伸をしながら店の奥から出てきたのは、私服に身を包むヴィータ。
相変わらず幼い外見だが、とても頼りになる姉だというのはユウもよく理解している。
昨日は夜のシフトで、ユウが魔法学院に行っている間に帰っていたらしい。
「おう。で、またあいつらか。…今月で何回目だ?」
「7回目。尤も、今月は今日で最後だから少ない方かな」
「……アイツも子供産んだってのにますます元気になりやがんな」
ヴィータの疑問にラピスが苦笑と共に答え、彼女も肩を竦めて同様の笑みを浮かべる。
まったくもって、あの2人は大人しくする事を知らないのか。
「俺も歳だからな…もう、本気でやってもなのはには敵わんか」
「何言ってやがる。あっちの方は負けなしのくせしやがって。この性欲魔神が」
「………ほう、では俺の相手をお前もしてくれるのか?」
「バッ、ちげーよ!」
「……やっぱり父さんって強かったんだ」
「うん?」
まるで子供をあやすかのような態度でヴィータの相手をするアキトをぼんやりと眺めながら呟いた言葉に、傍のラピスが反応する。
「いや、ラピス姉さんはよく話を聞くけど、父さんの事はあまり聞かないなあって」
「…アキトはね、体の状態が完璧だったら私よりも強かったはずだよ。現役のときもNo.2だったけどね」
苦笑を浮かべてユウの頭に手を置いて、優しく撫でてやるラピス。
ユウはそんなラピスの撫で方が好きで、撫でられるとつい目を細めて顔の角度を上げてしまう。
「完璧だったら?」
「そう。アキトの体、昔は病気だったからね。今は完治しているけど、そのせいで体が上手く反応できなかった事があるんだ。
対して、私は健康一色。男女間の身体能力の差なんて魔法で簡単に補えるから、私の方が圧倒的に有利だったんだよ」
「だから父さんはラピス姉さんに勝てなかったの?」
「そのとおりだよ」
「いや、違うな。どちらにしても、俺はラピスには勝てなかったよ」
と、ラピスの隣を見ればヴィータと戯れていたはずのアキトがユウを見つめていた。
ヴィータは一旦奥に引っ込んでウエイトレスの制服に着替えに行ったようだ。どうやら手伝ってくれるらしい。
ともあれ、アキトはラピスの言葉に、首を横に振って反対の意見を示す。
「確かに体術では俺の方が上になれたかもしれない。だが、総合的に見ればどうやったって埋まらない才能の差が存在する。
魔力値がその決定的な差だ。ラピスが魔力値最大で数千万レベルだとして、俺は一千万にも届かん。
この差は戦術の幅にも差をつけるし、戦闘可能時間にも大きな差をつける。無論、他にも魔法の種類などにもな」
「その才能を覆すのがアキトだと思うよ」
「精神論ではどうにもならんだろう。仮に才能を覆す力が俺にあったとしても、そこから更に才能の差を見せ付けるのがラピスだ。
…いや、ラピス場合は才能以上の努力があるから、実力の差といえばいいか」
互いに互いが上であると意見しあい、どちらが強いのかはっきりしない。
まぁ、引退した2人にとってはどちらが強かろうがどうでもいいことなのかもしれない。
「ただいまー」
「む、またなのはの勝ちか。とはいえ、そろそろ危なくなってきたな」
「うう…ヴィヴィオも頑張ったのに」
「ああ、惜しかったな」
ヴィヴィオの手を引っ張って、その体を引き摺りながら帰宅したなのはは、かなりボロボロだ。
やはりヴィヴィオの鎧がちょろい砲撃を無効化するため、苦戦は必死のようだ。
そんなヴィヴィオをアキトは抱き上げて店の奥まで連れて行く。流石に汚れた格好で店内をうろつかれてはたまらない。
「アキトさん、私はだっこしてくれないんですね…」
「負けたらな。だけど手加減するのもダメだ」
「酷い…」
「パパ…ごめんね、服汚して」
「馬鹿、娘のためならこのくらい構わん。まぁ、喧嘩は控える事だ。ヴィヴィオも女の子なんだから」
店の奥、テンカワ家の入り口玄関に寝かせられたヴィヴィオはアキトから治癒を受けつつ頬を撫でられ、僅かに微笑んで眠りに就く。
そして傷を塞ぎきったらヴィヴィオを彼女の自室のベッドに連れて行き、シーツをかけて休ませてやる。
このようだと夕飯までは起きないだろう。
次に店内の隅でぶつぶつ呟きながら落ち込んでるなのはを強制的に抱っこして夫婦の寝室まで連れて行く。
「アキトさん…」
「はぁ…喧嘩も少しは減らせ。あまりやりすぎると、万が一が起こりそうでこちらの気が気でならん」
「ごめんなさい…」
BJの上をアキトに脱がされインナーを露にするなのはは、若干涙目で答えつつ、手に持ったレイジングハートも取られる。
アキトは、そろそろ定期整備の旨があることをレイジングハートに伝え、レイジングハートもそれに礼を述べると、アキトは軽く笑みを零して一旦部屋を出て行
く。
どうやらレイジングハートをイザナミに預けに行ったようだ。
そして、部屋に戻ってくるとなのはのBJを強制的に解除してパジャマ姿に変化させてやる。
「しばらく寝ていろ。今日はリンディが夕食当番だったから、出来たら起こしにくる」
「………一緒に寝てください」
シーツをかけ、頬に軽く口付けしてからベッドから離れたアキトだったが、なのはの言葉に苦笑を浮かべる。
当のなのはは、シーツを鼻の頭まで被って恨みがましい視線をアキトに向ける。
「うう…だって最近ヴィヴィオばっかり相手してるから、寂しいんですよ〜」
「…別に、夜だってちゃんと相手してるじゃないか」
「じ〜…」
「………わかったわかった。だけど、本当に寝るだけだぞ」
「エヘヘ…」
アキトの回答に笑みを零し、シーツを開く。
苦笑を崩さぬまま、アキトはその空間に制服のまま入り、なのはと密着する。
なのははそんなアキトの体を抱きしめて、厚い胸板に頬ずりしながらゆっくりと意識を沈めるのであった。
そんなこんなで今日も平和な一日であったとさ。
<完>
あとがき
記念SSなのはVer。
蛇足
「………っていう夢を見たんだけど」
「夢オチ?!――いや、それにしてもリアルな夢だなぁおい!」
小学校6年次の修学旅行。
なのはたちは某江戸の村が有名な観光地に来ており、就寝間際になのはが見た夢の話を聞いたアリサが突っ込みを入れる。
全員布団の中で、部屋の明かりは消えているものの、その話題のおかげで眠りに就くのは当分後になりそうだ。
「アキトさんがなのはと結婚かぁ…フフフッ、私は不倫相手かな」
「フェイト、ちゃん?…何だか黒いよ」
「いやいや、アキト兄は私と…そうすればシグナムもヴィータもアインスもリインも女体化ザフィーラもついてくるしなぁ」
「ものすごいハーレムだね…」
この中で一番まともなすずかが苦笑を漏らすが、はやては極めて真面目な意見を述べただけ。
「だったら私とだったら母さんがついてくるし…」
「私だって…」
「アタシだったら屋敷中のメイドを好きにさせてあげるわよ!」
「………ダメだこりゃ」
最早目的のために何でも使おうという執念に、すずかは耳栓で耳を塞ぎ、眠りに就く。
話を聞いていたい気持ちもないではないが、アキト攻略のためになるような話ではない。
そう、実はすずかこそが一番のしたたかさを有しており、数年後にアキトという要塞を陥落させるほどの美貌と肉体、そして知略を発揮させるのであった。
ともあれ、結局、アキト篭絡談義は朝方まで続いたそうな。
<今度こそ完>
押していただけると作家さんも喜びます♪
ガルフさんへの感想は掲示板の方へ♪
Copyright(c)2004
SILUFENIA All rights reserved.