第二次スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜

第三話「勝者の言葉 現れし亡霊」

 

     柊神社

「行っちゃったか・・・ルイ!?」

見えなくなった二機、それを見いたルイは家の影に隠れていた男、友次に言う。

彼はメルJをこちらに引き込み、なおかつアンヘルの上とも繋がっている謎の多い人物だ。

「例のもの、用意出来てる?」

「どうぞ、こちらへ。」

それをさつきは聞きながら、ルイに協力しろと言われたことを思い出す。

さつきも二人の後についていき、向かった先に膝をついた人型の機動兵器がいた。

 

 

     キョム本拠地

赤緒は突如水槽の中に放り込まれた。

「これだけのためにこんな水槽を用意させたの?」

金髪の少年が問いかけ、その声にターバンを巻いた男が答える。

「いけませんか?あのスーツがある限り彼女に手を出せませんからね。だから君にスーツだけ溶かす液体を造ってもらったんです。

 材質が分かれば簡単でしょ・・・もがけばもがくほどスーツとともに体力もなくなっていくんですから。」

少年は赤緒がもがく光景を見、

「悪趣味だね。まあ僕の仕事は死んだあとになるからいいけど・・・死体捨てないでよ。」

「・・・!?いけない、ゾール!!」

ターバンの男、ハマドは少年を見送り、水槽の中の赤緒が限界なのに気付き急いで引き揚げさせた。

引き上げられた赤緒は先ほどの戦闘と同じ自分に何も出来ないという悔しさに襲われていた。

「ボーッとしてていいんですか?あなたは自分の置かれている状況がどういうものなのか理解できていないようですね。」

「(あっ・・・力が、入らない。)」

目の前に手が伸ばされる中、赤緒はヴォルクスに言われていた敗者ということに泣いていた。

「(私が・・・弱いから、敗者だから・・・これが当然の報いなの!?)」

そして両兵に言われた言葉、「人のために自分を犠牲にして勝手に死ね!」という言葉を思い出す。

「(こんなの、なんの犠牲でもない!こんなのイヤ!悔しい・・・もっと私に、)」

 

「(力があれば・・・)」

 

「!?」

その時別の場所にいたシバは何かに反応した。

 

 

     衛星軌道

「メルJ、途中で落っことそうなんて考えてないよね?」

「なるほどその手があったな。」

「何ィ!!」

「・・・はあ。」

「おい、まだ昇るのか?」

そんな二人にハーリーはため息をし、両兵は尋ねた。

「目標高度に達した、止まれよ泥棒!」

「ふん。」

そうして三機は目標高度で停止する。

「何もないぞ。」

「そりゃ敵人機の飛んでった方向に来ただけだからね、奴らも方向かえたりしてカモフラージュしてるよ。」

「では立ち往生ってことですか?」

「マキビさん、衛星の軌道ルートはパターン化されているんだ・・・メルJ、そのまま二時の方向に」

「天才・・・」

エルニィの言葉を遮り、メルJが目で答える。

その先には、

「バーゴイル。」

両兵が言った瞬間バーゴイルは背を向け動き出す。

だがすぐに止まりこちらを見ていた。

「誘っている、みたいですね。」

「そんなの罠に決まってるよ。」

「罠であろうがなかろうが他に手段はない!」

「うっ、確かに。」

「では行くぞ!」

シュナイガーは動き、バーゴイルも動き出した。

「・・・」

ハーリーはしばらく周りを見渡し、何もないのを確認し追って行った。

しばらく行くと、何かが見えてきた。

「何か見えるぞ・・・ステーションか?」

「こんなところにステーションなんてないよ、いや・・・それより肉眼で確認できる距離との計算が。」

そして三機のモニターにそれは映し出された。

「お、大きい・・・」

「予想はしてたが、まさかこれほどとはな・・・」

「・・・フンッ。」

「(これは攻撃衛星に似ている。でもこの大きさは・・・コロニーに近い。こんなものが見つからなかったなんて・・・

  キョムは相当なステルスを持ってるってことか。)」

ハーリーは二年前の戦争では確認していないが、大きさからしてその時期あたりからすでに開発されていたか、

存在していたという結論にいたった。しかし、

「(いや、いくらなんでもおかしい。まさかとは思うけど・・・両軍内部に協力者が?)」

「案内はここまでだ・・・一気に突入する!」

「ちょ、ちょっと、まだデータが!?」

加速しながらバーゴイルに近づいていく。 

「あいつ気が合うな、俺もメンドイと思ってた。」

「両兵まで。」

「スプリガンハンズ!」

シュナイガーの左ひじから突き出ている剣をバーゴイルに叩きつけ、入口らしきものから入っていく。

呆気にとられていたハーリーだが、すぐさま機体を向かわせ追いついた。 

「さあて、何が出るか楽しみだ。」

両兵は呟く。

 

     キョム本拠地 ???

「ん・・・」

赤緒は薄目を開ける。

「ここは?」

と、窓際に一人の女がいるのが見えた。

「まったく・・・よく敵陣の中でのんきに寝ていられるな。」

「あ、あの」

その時赤緒がまとっていたシーツが落ち、自分が裸なのに気付き、顔を真っ青にし最悪の想像をする。

「そんな私・・・あの男に・・・」

「あの男?ああハマドのことか、しかしあの男も災難だったな。」

「えっ?」

「安心しろ、お前はなにもされとらん。」

「・・・本当?」

赤緒は身体を震わせながら聞くが、女の顔を見て頷く。

「じゃあ、あなたが助けてくれたんですか?」

「ん?覚えておらんのか?お前自分からハマドの鼻に噛みついたんだぞ。」

「!?」

「びっくりしたぞ、ハマドの悲鳴が私のところまで聞こえた。まあその後ここに連れてきたのはわたしだから

 助けたことにはなるのか・・・」

「自分から・・・」

赤緒はその行動に驚いていた。

「あの絶望的な状況でもあきらめない、か。お前もしぶとい女だ。」

そこでその女はカラカラと笑う。

「しかしうちの男どもは不甲斐ない、もう一度鍛えなおす必要があるな!」

「・・・いえ、やめてください。」

赤緒は嫌そうな顔で言う。

「けど助けてくれたことには変わりありません・・・どうして?」

「それはな。」

女、シバは人差し指を向ける。

「お前が私と同じだからだ。」

「同じ?言ってることがわかりません。」

「正確には同じタイプの人間と言うべきか。」

「タイプ・・・そんな。私があなたと同じならどうして人を?」

「私は命令する側だ、人など殺さん。」

「ホント!?」

嬉しそうな赤緒の顔にシバは笑う。

「ハハハ、おもしろい奴。だからといって私が敵であることに変わりはなかろう。」

「うっ・・・」

「それにいずれわかることを話す気はないぞ、ゲームの楽しみは先にとっておきたいでな。」

そうして窓を開ける。

「どうだこっちへ来い。よい眺めだ。」

赤緒はシーツを身体に巻きつけ、窓枠に足を乗せる。

「!?」

 

 

 

内部に潜入した三機の前に広がっているのは、想像を超えたものだった。

「そんな・・・これじゃまるで・・・コロニーじゃないか!」

「この町、奴ら・・・やってくれる!!」

「・・・ステーションの中に町があるなんて。」

エルニィが驚愕し、メルJは怒りを含んだ声を出す。

ハーリーも驚いていた。

と、突如下から攻撃が飛びこんできた。

見ると古代人機、バーゴイルがあちこちから出現する。

「忘れてたよ、ここが敵の巣の中だって。」

全員の顔が真剣になった。

敵機が襲いかかってくるので、全機は散開した。

「たあああ!!」

エルニィのブロッケンが地上にいる古代人機に飛び蹴りをくらわし、その隙に腰裏から一本の棒を取り出す。

右手に持ち、振るうとそれは中心から別れ、如意棒のようになった。

その如意棒を突き出して古代人機を押し、その先端部にナイフをつけ槍にした。

そのまま迫る古代人機の触手をかわし、突き斬りつけていく。

見事な腕だった。

上空ではシュナイガーがバーゴイルのプレッシャーガンをかわしながら通り過ぎる。

「・・・遅すぎる。」

そう言った瞬間相対していた二機のバーゴイルは爆発した。

そしてウイングゼロにも三機のバーゴイルが向かってきていたが、

ハーリーはライフルを仕舞いビームサーベルを装備させる。

突如急加速をし、一機のバーゴイルを串刺しにする。

他の二機はすぐさま反応しプレッシャーガンを放つが、それらは撃破されたバーゴイルに当たり、二機は背後から両断される。

「話になりませんね。」

二年前の戦いに比べたら楽な相手だとハーリーは思った。

だがどうにも実戦から遠ざかっていたせいか、勘を取り戻せてはいなかった。

そして地上で戦っているブロッケンのコクピットで、両兵はエルニィに自分を降ろせと言っていた。

「目的は柊の救出だ、俺が行く。」

「そんな!こんなところ!?」

「いいから降ろせ!!」

「・・・でも。」

両兵は一旦目を閉じ、口を開く。

「必ず戻る。それでいいだろ。」

「・・・絶対だよ。」

ブロッケンは片膝をつき、両兵を手に乗せ地面に下ろした。

すぐさま両兵は走り出し、見える古代人機の量から急がないとと思っていた。

 

 

そのころシバと赤緒は建物内から急いで降りていた。

「お前明日死ぬとわかったらどうする?」

「えっ。」

「仮にだ。」

それに赤緒は戸惑う。

「すぐには出んか・・・しかし人はあがく、限られた時間の中で何かを見つけようとするだろう。

 きっとお前も・・・私もだ。」

シバは自分の身体を抱きしめながら続ける。

「私はそれが何なのか知りたい、人が持つ「一瞬の輝き」というのを見たくてたまらんのだ。」

「・・・」

「しかしこれも一種のゲーム、一人ではつまらん。だからお前を必要とする。助けた理由は・・・それかな。」

 

 

「くっそー、さすがは古代人機。しぶといなあ。」

ブロッケンの前にはまだ多くの古代人機がいる。

「両兵降りて正解だったよ・・・ん?」

と、エルニィはそばの塔に一人の子供を見つけた。

「子供!?どうして」

だがそこに古代人機が触手を伸ばしてきた。

ブロッケンは槍を回転させそれらを弾く。

そして額にあたる部分から何かが飛び出し、なんとサッカーボールに変わったのだ。

「ボールα〜シュート!!」

ボールをボレーで蹴り、古代人機の上に来た瞬間爆発した。

それを見先ほどの少年の方に視線を戻すが、

「!?」

背後から唸りとともにオートタービンが突きだされ、弾き飛ばされた。

「うわあああ!?」

派手な音とともに森林部へ突っ込んでいく。

「ふっ、たわいもない。」

バルクスが言い、O・ジャオーガはオートタービンを肩にかけ歩み寄っていく。

「うう・・・」

エルニィの意識を朦朧としていた。

だが突如O・ジャオーガの上空から弾丸が撃ち込まれる。

「何!?」

上には、シュナイガーの姿があった。

「貴様・・・八将の一人だな!」

「ほう、少しは骨のある奴が出てきたのか?」

バルクスは不敵に笑う。

「しかし仲間はあのザマ、多勢に無勢。さあどうする?」

「あんな奴ハナからアテにしていない・・・貴様は私の獲物だ!」

「その覚悟後悔するぞ、ゆけい!!」

バーゴイルがさらに増え、一斉にシュナイガーに向かって行った。

だが、O・ジャオーガの右に突如バーゴイルが落ちてきた。中心から切り裂かれて。

「!?」

「僕を忘れてもらっては困ります。」

背後を見ると、ウイングゼロもビームサーベルを構えていた。

ウインドウが繋がり、バルクスは驚く。

「貴様はあの時の・・・そうか、それが貴様の本気か。」

「ええ、今度は負けません。」

だがバルクスは何故か観察するようにハーリーを見、何かに気付いた。

「いや・・・その機体に容姿、わかったぞ、貴様が元ナデシコ、そしてネオ・ジオン所属のマキビ・ハリか。」

「!?」

今度はハーリーが驚く。

「奴らから聞いてはいたが、なるほど確かに脅威に値する存在だ。」

「奴ら?」

「ふっ、貴様が知る必要はない・・・ここで朽ちる果てる存在にはな!」

「そうはいきません、何故僕を知ってるのか洗いざらい吐いてもらいます。」

ハーリーは機体を空中へ浮かせる。

「だが貴様の相手は私ではない。」

そう言い、O・ジャオーガは左手を振るった。

そして・・・

「!?」

突如ミサイルがウイングゼロに飛んできた。

即座にマシンキャノンで撃ち落とし、撃ってきた元を索敵する。

「・・・あ、あれは。」

見つけたのは、

「何故あの機体がここに!?」

信じられない光景だった。

 

 

そのころ両兵は塔の渡りにさしかかっていた。

そしてその先に、

「柊・・・」

赤緒とシバが現れた。

「小河原さ・・・きゃ!」

シバは赤緒をどけかなりの跳躍力で両兵に刀を振り下ろす。

それを同じく刀で受け止めるが、シバは両兵に微笑む。

「会いたかったわ・・・両にいちゃん。」

「・・・青葉!?」

初めてシバの顔を見、両兵は驚いた声を出す。

 

 

シュナイガーは付き纏うバーゴイル達をリバウンドで弾き飛ばした。

「憶えているか壊滅させた町一つ一つを・・・ここはそうして出来た地獄の砦か!」

激高しバルクスに言うが、

「ここは・・・命を育む『神の箱舟』だ。」

その言葉にメルJの目つきが変わる。

そしてシュナイガーの全武装が向けられた。

「アルベリッヒレイン!」

凄まじい弾幕がO・ジャオーガを襲う。

「生かしてはおかん、銀翼の・・・」

 

「アンシーリーコート!!!」

 

 

倒れたブロッケンから降りたエルニィは、先ほど見た少年を探していた。

「男の子、確かにいたんだ。悲しそうな目をした子。」

と、

「お姉ちゃん。」

声を掛けられ、そこに。

「ひょっとして僕を探してるの?」

件の少年がいた。

 

 

突如凄まじい爆音が響く中も、ハーリーは意識を向ける暇はなかった。

それは目の前にいる三機の機動兵器に原因があった。

「くっ、どうして。」

素早い動きに翻弄され、

「どうして!」

振るわれる・・・錫杖。

「何故六道が!?」

そう、ハーリーは六機の六道と戦っているのだ。

この機体は火星の後継者が使っていたもので、壊滅した今はすでに存在しないはずなのだ。

「(僕は直接戦ったことはなかったけど・・・この動き、マドラスの時とは全然違う。)」

錫杖を構え突進してくる六道をシールドで弾く。

だがすぐさま次の六道が背後から迫る。

「ちい!」

今ハーリーはゼロシステムを使っていない、いや使えないのだ。

ゼロシステムの基盤を外してあるからである。

再調整には時間がかかるので無しで来たのだが、それを今後悔していた。

「(でも僕は負けない・・・負けるわけにはいかないんだ!)」

グラビティバスターライフルは威力も大きく、このような敵にも、場所にも不向きだった。

グラビティライフルを構え、ウイングゼロは立ち向かっていった。

 

    塔を繋ぐ橋

両兵とシバの剣がぶつかり合い、金属音が鳴り響く。

と、二人の剣が交差し互いの服の胸元を切り裂いた。

一旦二人は距離をとる。

「どう?私も強くなったでしょ、両にいちゃん。」

「確かにな・・・でも違う!」

「!」

「あいつは弱い。戦うことにビビっていつもメソメソ泣いてる弱虫だ。」

両兵はまっすぐシバを見ながら言う。

「だがそれがあいつの強さだ、泣きながら歯をくいしばって戦った。一号機をしりぞけるほどにな・・・いいか!」

 

「へらへら笑いながら戦ってんじゃねえバカヤロウ!青葉とお前は全然ちげえよ!!」

 

それを聞きながらシバは表情を変える。そして赤緒は聞きなれない名前に反応した。

「青葉・・・さん?」

と、シバが一気に距離を詰め剣を振るう。

両兵は舌打ちしながら受け止めたが、

「!?」

シバが剣をずらし両兵にくちづけをしたのだ。

「・・・お前。」

「私はシバ、あんな女といっしょにしないで・・・ねっ。」

若干頬を赤らめたシバが言い、アルファ―が付けられた右手が胸に当てられる。

「!?」

「小河原さん!」

気付いた時にはすでに遅く、衝撃波が両兵を襲い壁まで吹き飛ばされた。

「けどあなたが血族じゃないのが残念。」

「小河原さん。」

「いってえ・・・」

慌てて両兵に赤緒が近づき、シバに言う。

「もうやめて!人は殺さないって言ったのに!!」

だがシバは歩み寄ってくる。

と、

「!?」

赤緒達の背後の壁が崩れ、バーゴイルが倒れこんできた。

咄嗟に両兵は瓦礫から赤緒をかばうが、後頭部に破片が直撃し、二人は下に落ちて行った。

「・・・」

シバは一瞬下を見、すぐ目の前の戦いに目を向け、不敵に微笑む。

 

 

数分前

「生かしてはおかん、銀翼の・・・アンシーリーコート!!」

シュナイガーの背部から巨大な銀翼が飛び出し、猛スピードでO・ジャオーガに突っ込んでいく。

だが・・・O・ジャオーガは近くにあった壊れたバーゴイルを前に押し出したのだ。

「!?」

押し出されたバーゴイルは衝撃ではるか後方、両兵達のいる塔に吹き飛んで行った。

「その技・・・見切ったぞ!」

「何!?」

「アルベリッヒレイン、一見派手な技に見えるがあれは相手の動きを止める牽制にすぎん。

 それと同時に全火力を放出した反動を利用し一気に加速、決壊したダムの如く一点に絞ったエネルギーを敵に直撃させる。」

聞きながらメルJは舌打ちをする。

「よく考えられた技だが一発の負担もまた大きい!」

O・ジャオーガはシュナイガーを指さす。

「先ほどの戦闘と今ので火力がつきたのではないか!?」

「なめるな!」

その言葉にシュナイガーはスプリガンハンズを展開し駆ける。

「貴様など接近戦で十分!!」

「それは私が一番得意とする所だ!!」

オートタービンとスプリガンハンズがぶつかりあう。

 

 

「君は一体?」

エルニィは目の前の少年に話しかける。

「あの銀色の人機いい設計だね。トウジャをベースに空力を生かした無駄のない形・・・」

「えっ?」

「ただ武装が邪魔だな、あれじゃ重すぎる。」

「あ、あれは僕じゃないよメルJが勝手に改造したんだ!!」

それを聞き少年は納得の顔を向ける。

「やっぱり・・・お姉ちゃんには僕と同じものを感じたんだ。人に「天才」って呼ばれる血筋ってやつを・・・」

 

 

「くっ!」

振り下ろされる錫杖をビームサーベルで受ける。

さいわい機体の性能差もありパワーはこっちが上だったが、数の差では負けていた。

ハーリーは四方からくる戦法に苦戦している。

「(いつまでも付き合ってられない!)」

IFSが光り、ウイングゼロの回し蹴りが目の前の六道に直撃し吹き飛んで行った。

「一機!」

すぐに視線を左に向け、錫杖をシールドで受ける。

はじき返しながらマシンキャノンを撃ちまくった。

「二機!」

そしてブースターがうなり、急加速とともに六道の懐に飛びこむ。

右手のビームサーベルを突き出し、串刺しにする。

そのまま斬り捨て、腰裏に止めて置いたグラビティライフルを離れていた二機に撃ち放った。

「三、四、五!」

正確に中心を撃たれた二機は爆発し、その爆炎から最後の六道が現れる。

「これで・・・ラストー!!」

ウイングゼロの渾身の右が打ち下ろされ、六道は地面に叩きつけられ機能を停止した。

「はあ、はあ、はあ。」

若干息を荒くし、周りの戦況を確認する。

ハーリーはブロッケンが倒され、シュナイガーが追いこまれているのを確認した。

「くっ。」

だが、今度は古代人機がウイングゼロの周囲に集まりだしたのだ。

 

 

落下した二人は、運よく河に落ちたらしい。

両兵が赤緒を引きずりながら岸に着いていた。

「オラしっかりしろ。」

「は、はい・・・」

二人は橋の下に避難し、火を起こして身体を乾かしていた。

その中で両兵は赤緒のことを非難していた。

守るどころか守られてる、赤緒も分かっていた。

「・・・どうして過去の歴史で女が戦わないで来たか知ってるか?」

「・・・」

「弱いからだ。生まれた時から貧弱で月モノでもともとガキつくるための体じゃねえか。」

「・・・」

「こういう世界じゃいろんなハンデを背負ってる。それで戦うってことは相当覚悟がいることなんだぜ?」

「わ、私は・・・」

「いい機会だぜ、よく考えるこった・・・寝る!」

それっきり二人の間に言葉はなくなった。

 

シュナイガーとO・ジャオーガとの戦いは周囲の木々をなぎ倒しながら白熱していく。だが・・・

「ハッ、楽しませてくれる。」

「(さすがに・・・簡単にいく相手じゃないな。)」

と、急にO・ジャオーガはオートタービンを左手に持ち替え急接近してきた。

その左のオートタービンを受け止めたが、右手の攻撃でスプリガンハンズを弾き飛ばされてしまった。

「しまっ・・・最初から武器を!!」

そのままオートタービンが迫り、両腕でガードするが吹き飛ばされ、腕にも亀裂がはいる。

「教えてやろう、その機体は本来距離をとって戦うもの・・・接近戦には向いとらん!」

「くっ。」

 

 

「お姉ちゃんが僕と同じなら・・・聞いていいかな?」

「えっ?」

「人に天才とか、そういうの言われて恨まれたり妬まれたことない?もしそんな時どうする?」

「恨み妬みねえ・・・そういやそんなことあったかなあ。けどもう・・・忘れちゃった。」

軽く舌を出しながら言うエルニィに、少年は驚いていた。

「それに人がそうするのも当然じゃないかな、僕たちは人が出来ないことを簡単にしちゃうんだもん。

 でもだからってそれに負けちゃいけないよ、やっぱ自分の一番で人に喜んでもらいたいもんね。

 だから・・・」

そう言いエルニィは少年の手をとる。

「こんなところにいちゃだめだ、僕といっしょに行こう!」

「・・・そう、そういうのもあるね。」

と、突然少年の背後からゾールが現れ、少年を連れて行ってしまった。

「まだ名前も・・・聞いてなかったのに。」

 

 

赤緒は気がつけば知らない場所にいた。

そして目の前に泣いている子供たちがおり、後ろにも子供がいるのに気付く。

「あれは・・・あなたがやったの?答えて!」

「・・・だったら?」

そう言う子供に赤緒は頬を叩く。

「どうしてそんなことするの、人を傷つけて何が楽しいのよ!!」

「違うの・・・」

と、また後ろから、今度は女の子の声だった。

「両にいちゃん私がいじめられていたら・・・それで助けてくれたの・・・」

「えっ・・・それじゃ!?」

そこで赤緒は夢だと気付いた。

「(また眠って・・・でも両にいちゃんって、まさか。)」

シバが言っていたことに気付くが、何故か太ももに何かが乗っている感触がし、下をみると・・・両兵が眠っていた。

「・・・!?」

慌てて後ずさり両兵は地面に頭をぶつける。

「んだよいいじゃねえかケチくせえ、誰のためにこんなんなったと思ってんだ!枕くらいなりやがれ。」

「ご、ごめんなさい。」

赤緒は先ほどの夢を考えていた。あの子は幼い両兵なのか、何故自分の夢にと。

「それで、考えはまとまったか?」

「えっ?」

「だろうな・・・寝てやがったし。」

突然の言葉は、寝る前に言っていたことの答えを聞きたかったんだろう。

「・・・私、八将陣の人に言われたんです。

「戦う覚悟の無い者は人機に乗るな。敗者に出来ることは何もない。」って・・・だから・・・」

「けっ!」

両兵はそんな赤緒に侮蔑の目を向けた。

「情けねえそれでお前操主やめんのか・・・その程度の覚悟だったんだな!」

「でも・・・私じゃ。」

赤緒の目に涙が溜まっていく。

「・・・じゃ話変えるぞ。お前人機をどう思う?」

「?」

「ホレ、好きとか嫌いとかあるだろ。」

その質問に赤緒は少し考えている。

「・・・わかりません。使う人によってはいいことも悪いこと出来るから・・・」

「お前なあ。」

「けどモリビトだけは何か違う気がします。機械だけどなんだかそうじゃない人のぬくもりのような・・・

 そんな感じがしました。」

それを聞き両兵は昔を思い出すような顔し答えた。

「分かった様なこと言いやがって、けど間違ってはいないな。お前は前のモリビトの操主によく似てるぜ、

 臆病で・・・泣虫でな。」

「それって・・・青葉さんのこと?」

「まあな、ただ一つ違うのはあいつは人機が大好きだってことかな。人機を信じることができるから戦えたんだ。」

「私じゃ・・・やっぱり。」

赤緒は顔を伏せるが、

「モリビトはな、お前みたいなお人好しが大好きなんだ。今まで守れなかったことはない。

 自衛隊の奴らも全員無事だぜ。お前だって守ってもらった一人じゃねえのか?」

「!」

「モリビトとは俺も長い付き合いでな、だから俺も信じれる。モリビトならきっと答えを出してくれる。」

 

「操主のお前が諦めないかぎりな!」

 

その言葉に、赤緒は捕まった時のことを思い出した。

バルクスに手遅れと言われた時、すでに諦めていた・・・

マハドに自分の状況を理解してないと言われ、力の無い自分に・・・

「(けど人機なら、モリビトなら・・・私の力になってくれる)」

「・・・・・・私にまだ出来ることがあるならやってみたい。こんまま諦めるのはイヤ。」

 

「強くなって・・・私も人機を好きになりたい。青葉さんみたいに!」

 

両兵はそれを聞き、赤緒を見る。

「上等だ!!」

そうしてポケットからアルファ―を取り出し赤緒に渡す。

「それでモリビトの場所が分かるはずだ、やってみろ!」

「はい!」

赤緒はアルファ―に念を込めるが・・・

「あれ?反応が・・・ここから?」

「何!?」

 

 

連撃で吹き飛ばされたシュナイガーが建物にぶつかる。

「くあっ!?」

「手こずらせたな・・・だが!」

O・ジャオーガはオートタービンを振り上げる。

「これで終わりだ!!」

「くそっ・・・」

メルJは諦めた風に目を閉じる。

だが、シュナイガーが倒れこんだ建物からいきなり腕が突きだされ、オートタービンを受け止めた。

「何!?」

「モリビトだと!?」

そう、バルクスの言うように、建物から現れたのはモリビトだった。

「ふん、何かと思えば・・・負けると分かってまだ歯向かうのか!」

「・・・負けたっていい。」

「!?」

 

「負けても・・・諦めなければいい!!」

 

「それこそ敗者の言葉にふさわしいわ!!」

O・ジャオーガが突進していく。

モリビトも迎え撃つ構えをとった。

「貴様の攻撃などすでに見切っ・・・!?」

だがバルクスの余裕は突き出された左拳にかき消される。

O・ジャオーガは後方に吹き飛ぶ。

「な・・・何だと!?」

だが、バルクスの驚きと同じように赤緒も驚いていた。

「あ、あれ?身体が勝手に・・・」

「俺がやった、お前があんまりトロイんでな。」

「うっ。」

両兵の言葉に赤緒は反応する。

「がんばりゃこっちでも操作できるな・・・よし、動きは俺が導いてやる。お前はその動作一つ一つに目一杯力を込めろ!」

「は・・・はい!」

その間に、O・ジャオーガも立ちあがっていた。

「今のは油断した私の不覚・・・しかし二度はないと思え!!」

 

「ゆくぞ我が奥義・・・地竜陣(ちりゅうじん)!!!」

 

そうしてオートタービンを両手で持ち、地面を削りながら振りぬく。

その衝撃波と岩石がモリビトに襲いかかった。

「きゃああ!」

「ちい!」

赤緒は頭を振り前を見る。

「ど、どこ?見えない!」

と、目の前にオートタービンが映った。

慌てて左腕で受ける。

「フハハハハどうした!やはりさっきの一撃はマグレか?だから貴様は敗者なのだ!!」

振り下ろされる猛攻を両腕で必死にガードするが、赤緒には地上の時の恐怖心が生まれていた。

「あ、ああ・・・」

「びびるな!!」

だが両兵は赤緒に怒鳴る。

「恐れは直接死に繋がるぞ!」

「で、でも。」

「俺がいる、恐れは俺が全部受けてやる。お前は頭空っぽにして今できることをやればいい!」

「・・・」

 

「敗者の意地を見せろ!勝ってあいつに言ってやれ!!」

 

赤緒はそんな両兵の言葉に、今出せる気持ち全てとともに叫ぶ。

「うわあああああああ!!!」

モリビトがオートタービンを両手でつかみ、破壊したのだ。

「オートタービンを・・・こんなことが!?」

バルクスの驚きは振り払われた衝撃で更に増幅される。

「これがあの女の戦闘・・・私の時とはまるで別人だ。」

メルJは赤緒の動きに驚いている。

追撃の一撃をいれられ、バルクスは歯ぎしりをしていた。

「(攻撃の一つ一つに迷いがない・・・そんなことが可能なのか!?)」

「はあ、はあ。」

「(へっ、土壇場の根性もよく似てるぜ。)」

両兵は赤緒の根性に感心していた。

「・・・だが!負けん!!我が理想のために・・・負けるわけにはいかんのだ!!」

O・ジャオーガは脚部の収納部から剣を取り出した。

「ずるい、まだ武器があるなんて!」

と、

「モリビト二号!」

という声とともに、二つのブーメランの形をした剣が目の前に突き刺さった。

投げたのはブロッケンだった。

「えっ?あれは・・・」

「心配すんな、味方だ。」

「両兵そんな奴、やっつけちゃえ!!」

モリビトは剣を片手ずつで掴む。

「おう!」

だが、O・ジャオーガはまるでクラウチングスタートのような姿勢をしていた。

「(あの構えは・・・)」

両兵はそれが何かをしっているらしい。

「柊、今から俺の言うとおりにしろ!お前の超能力もどき・・・使うぞ!!」

「はい!」

そして、二機は構えをとり、空気が張り詰めていく。

先に動いたのは・・・

「ファントム!!」

O・ジャオーガだった。

大地を強く蹴りモリビトに向かう。

モリビトは右の剣を水平に投げつけるが、O・ジャオーガはスライディングによってかわし、剣をモリビトに振るう。

「もらった!」

しかしモリビトの脚部からブースターが出、左の剣を地面に刺しO・ジャオーガの攻撃を受け止め、

ブースターの力と合さり宙で逆さま状態になる。

「なにぃ!?」

そこに先ほどの剣が、本物のブーメランのように戻り右手に収まる。

そしてそれを振るい、O・ジャオーガに突き刺した。

「がっ!?」

その一撃でO・ジャオーガの体勢が崩れ、

「今だ!」

両兵は叫ぶ。

 

「ビート・・・ブレイク!!!」

 

モリビトの左手が、赤緒の目に映るO・ジャオーガの光に直撃した。

その瞬間、衝撃がO・ジャオーガを駆け抜け、モノアイから光が消えた。

動かないO・ジャオーガの中で、バルクスは茫然としていた。

ついに、八将の一人を撃破したのだった。

「敗者は・・・私か。モリビト・・・いや柊赤緒、トドメをさせ!」

「・・・どんな理由があったとしても人の命を奪う権利なんてない。」

「!」

 

「これは、勝者の言葉よ!!」

 

その、赤緒の力強い声にバルクスは目を見開く。

「・・・」

「柊、どうした?」

「何でもないです。さあ帰りましょう!」

赤緒を両兵は見、頷く。

と、モリビトの前にウイングゼロが降りてきた。

「!まだ敵が」

「違う、あれは味方だ。」

慌てる赤緒を両兵が止める。

「小河原さん、大丈夫ですか?」

「ああ、マキビも無事みたいだな。」

モニターに映るハーリーを見、赤緒は他の二機を見た。

「あの二機も味方なんですね。」

「ああ、自己紹介は後だな・・・さっさと逃げるぞ!」

 

そう言い、四機は出口の中に飛び込んでいく。

 

「立花さんさっきはありがとうございました。」

「いいって、今操主は一人でも多いほうがいいしね。生きててよかったよ。」

「ヴァネットさんもいい人だったんですね。」

「うるさい黙れ!」

「ご、ごめんなさい!」

「(助けにきて助けられたんじゃ世話ない・・・)」

そっぽをむきながらメルJは思っていた。

「(あれが人機の力か、MSやスーパーロボット、エステなんかとは違う感じがする。)」

「(・・・結局ここにも刀使いはいなかった。いやいたにはいたがあいつは・・・)」

そんな中ハーリーや両兵が考えていると、

「!?待った。」

エルニィが言い、全機は出口付近で止まる。

その先には・・・

「今度は俺と遊ぼうぜェ。」

両肩から鎌をぶら下げている漆黒の機体がいた。

 

    
      地上

「それではお二人とも、用意はいいですね?・・・ナナツーライト、マイルド!」

「起動!!」

その言葉と共に、二機の機体に火が入る。

 

 

     柊神社

「・・・来た。」

空を見上げていた南の目に、閃光が映っていた。

 

     上空

「ああ!?」

バーゴイル・シザーの攻撃にモリビトが吹き飛ばされる。

「ホラホラどうしたよォ、ずいぶん勢いがなくなったじゃねえか!」

それを見ながらバーゴイル・シザーの操主、カリスはサディスティックな笑みを浮かべ追撃に移る。

「モリビトは・・・うまく飛べない!?」

「アホ!バーニアで滑空程度が関の山だこいつは!」

なんとかを体勢立て直そうとするモリビト。

「メルJ!」

「やっている!さっきから両腕がほとんど反応せん!!」

「こっちだって相当ダメージもらってるし、武器は戦闘で全部使っちゃったし!」

シュナイガーとブロッケンもろくに動けないでいた。

「てことはまともに動けるのはマキビだけかよ!何やってんだマキビ!!」

と、両兵の叫びはしっかりとハーリーに届いていたが・・・

「ならこっちの状況を見ろー!!」

そう、ハーリーが怒った声を出すのも当然と言える。五機のバーゴイルに付き纏われているからである。

ハーリーは他の機体に向かわせないよう必死に食い止めているのだ。

こいつらもウイングゼロの足止めをしているように見える。

「ひ、卑怯者!」

赤緒がカリスに向けて言うが、

「そらほめてんのか?あの白い翼の奴は要注意だって聞いてんでなあ・・・銀色除きゃ他は飛行タイプがいない。

 俺はお前らが戦闘で力を消耗するのを待ってたんだ。」

 

「これこそ卑怯という名の頭脳戦だ!!」

 

モリビトはバーゴイル・シザーの攻撃をさばききれずにいた。

「うっ!?このォ!」

パンチをするが、かわされてしまう。

機動力に違いがありすぎるのだ。

「空中戦で・・・俺のバーゴイルにかなうわけはずねえだろうが!」

 

    地上 自衛隊施設

「上空に機影4・・・いえ10です!」

「10だと!?4つではないのか?」

「一機はモリビトです!」

「(柊・・・赤緒!)」

通信を聞いた自衛隊の隊長は空を見る。

 

    河川

ウイングゼロ以外の三機は、勢いをなくせず川に墜落した。

辺りに水しぶきが舞う。

「ハハハハッ、これって弱い者イジメになるのかなあ?」

「くそっ動けシュナイガー!」

「だめだ、僕のブロッケンも・・・こんなの!」

「ムダムダいい加減あきらめろよ、後で全員かわいがってやるからよ!」

とだが、カリスの言葉を聞き、モリビトは立ち上がった。

「決めたんだあきらめないって・・・絶対。」

「絶対!絶対!!」

 

「諦めないんだからー!!!」

 

そしてモリビトのバーニアが火を吹く。

「こ・・・この直情バカ!」

両兵が慌てた声で言う。

「いいぜェ、だったらお前らからやってやらあ!?」

だが突如バーゴイル・シザーに攻撃が当たり、ひるんだ隙にモリビトのパンチがヒットした。

「うおお!?」

攻撃が飛んできたその先には・・・

「あれは!?」

二機の、スマートなフォルムの人機がいた。

「何やってるの?モリビト譲ったんだからしっかりしてよ!」

「その声・・・ルイちゃん!じゃあそっちは?」

モリビトはルイの機体の後ろに目を向けた。

「はい、さつきです!赤緒さん無事でよかった。」

「うん・・・ごめんね心配かけて。」

さつきが安堵の笑みを浮かべるが、

「へっ、誰かと思えばこの間の女じゃねえか。どうだよ体の調子は?」

「・・・おかげさまで」

「あなたに夢中よ!」

ルイは髪留めをつけながら、カリスに不敵な笑みを返す。

「だったらもっと楽しもうぜェー!!!」

バーゴイル・シザーが迫るとき、さつきの乗るナナツー・ライトが前にでる。

そして背部が発光し、両腕を前に突き出した。

「Rフィールド・プレッシャー!!」

背部の発光体からプラズマが両手に移り、フィールドが展開されたのだ。

「なにい!?」

「(あれは・・・ディストーションフィールドじゃない!?)」

ハーリーはその光景に驚いていた。

「リバウンドのフィールド化!?ウリマンの開発していた装備じゃないか。」

エルニィはフィールドの正体にすぐに気づいていた。

バーゴイル・シザーは吹き飛ばされたが、水上で姿勢を制御する。だが・・・

その首筋に、刀が当てられた。

「!?」

「けどもうあきちゃった・・・バイバイ!」

ルイの声にカリスは驚愕している。

そして・・・両手の刀によってバーゴイル・シザーは全身を分断され、水の中に崩れ落ちた。

南は、それを自衛隊の面々とともに見て、ほほ笑んだ。

 

 

赤緒はライトとマイルドに通信をした。

「ルイちゃん、さつきちゃん。」

「まだ・・・お礼言ってなかったわね・・・ありがとう。けど今度はもっと早く助けてよね。」

ルイは若干照れくさそうに言う。

「うん。」

「さつき、あんたもね。」

「!・・・はい。」

と、女の会話を他所に、男二人も通信をしていた。

「さてと・・・マキビ、大丈夫か?」

「大丈夫です。そちらは?」

「問題なしだ、悪かったな・・・五機も任せちまってよ。」

「いいえ、構いませんよこれくらい。」

「ふ・・・あと俺に敬語はいらねえぜ、男どうし歳も変わらねえんだ、名字でなく名前でな。

 まったく関係のねえ奴を救出行くのに、危険を冒してついてきてくれた・・・いい奴だよ、ハーリー!」

「ふふ、僕もそっちで呼ばれるほうがい、いや慣れてるよ。よろしく、両兵!」

互いの顔を見ながら笑い合っていた。

だが、カリスは壊れたシザーから這い出て、呟いた。

「お前ら、俺がどうしてここを戦いの場所に選んだかわかってねえな。」

と、突然傍観していたブロッケン、シュナイガーに触手のようなものがからみつく。

「うわ!?」

「なっ!?」

エルニィとメルJが驚きの声を上げる中、水中から古代人機が二機飛び出してきた。

「言わなかったか?俺は弱ってる奴から狩るんだよ!」

「ヴァネットさん!」

「立花さん!」

赤緒とさつきが呼びかけるが、まともに動く力もなくなってるようだ。

「やっぱりな、そっちの二機はシャンデリアの戦闘で貧血起こしてんのさ。それじゃ出力も上がんねえだろ!」

「脱出しなさい!」

ルイが叫ぶが、

「おっと、させるかよ。」

からまった触手からさらに細いものが飛び出し、頭部にからみついていく。

「・・・げ、コクピットに!?」

二機のコクピットに侵入し、エルニィやメルJに攻撃してきたが、スーツの力に弾かれた。

「大丈夫、こっちはRスーツがあるからね。」

「らしいな、けどシャンデリアに帰ったらいいもの見つけてさ。」

カリスが言い終わる前に、触手から水のようなものが二人にかけられる。

すると、

「と、溶けた!?」

「何!?うお!」

二人のRスーツが溶け始めたのを見て、赤緒は自分に使われたものだと判断した。

ルイとハーリーは二機の救出に向かおうとするが、

「おっと動いていいのか?中の二人がどうなっても知らねえぞ??」

「くっ。」

「何てやつだ。」

両手を下げる。

「ひどい、あなたみたいな人がいるなんて!」

「信じられねえか?俺は女をいたぶるのが大好きなんだ、そのためならどんな汚ねえ手だって使ってやる。

 これが俺の生きる性分ってやつだ!!」

赤緒はその言葉に絶句し、両兵はカリスに悪態をつく。

「・・・どいつもこいつも狂ってやがる。」

だが、

 

『カリス、伏せたほうがいいぞ』

 

突如謎の衝撃が古代人機を襲い、ブロッケンとシュナイガーは解放された。

「た、助かった〜」

赤緒はその攻撃が来た方向を見る。

上空にいたのは、濃緑色に染まった大型の機体だった。

「お、大きい。」

「何だありゃ?」

「(あれも人機なのか?でもあれは・・・スーパーロボットの系列も組み込んでる!?)」

赤緒と両兵が呟き、ハーリーは密かにデータの収集を開始していた。

「赤緒、喜べ。父上から私も遊んでいいと許しが出たぞ。」

「その声・・・シバさん!?」

「正解。」

赤緒とシバの声に驚愕する。

「あいつか・・・」

両兵も誰かわかったようだ。

「シバテメェ何の真似だ!」

「うるさい少し黙ってろ。」

カリスを黙らせる。

赤緒は先ほどのシバの言葉に疑問を持っていた。

「遊ぶって・・・何を?」

「何でもいいぞ、かけっこでも缶蹴りでもいいな。」

「貴様からかいに来たのか!」

シバの言葉にメルJは怒ったようだ。

「まあ怒るな、ゲームはちゃんと用意してある。いわゆる「かくれんぼ」というやつだ。」

「かくれんぼ?」

さつきが訳がわからないという声を出す。

「ルールは簡単だ、この東京に我々八将陣のメンバーが潜んでいる。アンヘルはそれをすべて見つけ倒せばいい。

 我々が負ける時、「キョム」がこの国から手を引く時だ。もちろん飛び入りも大歓迎するぞ。」

そう言いウイングゼロを見る。

「なあ、マキビ・ハリよ。」

「!?(また僕の名を・・・)」

そして再びモリビトを見る。

「どうだ、うまくいけば被害を少なくできるぞ。期限は・・・そうだな、一年以内でどうだ?」

「・・・ちょっといいかも。」

「お前・・・」

エルニィの言葉にメルJがあきれた声を出す。

「けっ、舐められたもんだな。」

「・・・」

赤緒は若干顔を伏せ黙っている。

「ざけんな、奴らをやれとかやるなとか勝手なこと言いやがって!」

カリスが叫ぶが、

「気が変わったのだ、お前も八将なのだから好きにすればよかろう。」

それを聞きモリビト達を見る。

「そうかい!じゃあ好きにさせてもらうぜ!」

手を振るうと先ほどの古代人機がブロッケンとシュナイガーに襲いかかるが、それをモリビトとウイングゼロは防いだ。

「赤緒、マキビさん!」

助けられたエルニィが二人に言う。

そして赤緒は全員に聞こえるようにシバに尋ねた。

「それで・・・あなた達が勝ったらどうなるの?」

「もちろんこの国全てがロストライフ化するだろうな。」

「そんなことさせない!あなた達が一つでも誰かの命を奪うというなら私が全部止めてやる!!」

 

「私は八将陣のやることすべてを認めないから!!!」

「僕も同じです!あなたがやろうとしていることはただの自己満足だ!」

 

赤緒とハーリーはシバの機体を睨みながら言う。

「よく言ったぜお前ら!元々勝ち目のない戦いなんだ、それくらいのこと言わねえとやってらんねえぜ!!」

二人の言葉に両兵も答える。

「ってことで俺らは俺らでやらせてもらう、そっちはゲームでも何でも勝手にしてやがれ!」

全員が、それに頷いた。

「いいだろう、それだけのことを言う力・・・見せてもらう!」

人機のトレースシステムがシバの動きをダイレクトに表現する。

急加速で接近し、両手のマニピュレーターでモリビト、ウイングゼロを掴んで過ぎ去る。

水しぶきを上げながら水上を駆け抜けていく。

「な、何が一年以内よ!人の一生をゲームなんかで決めないで!!」

「人は限られた時間の中でこそより美しく輝ける!」

「くっ、あなたは命をなんだと思ってるんですか!」

「二年前の戦争を戦い抜いたお前が言うのか、マキビ・ハリよ!人の死を・・・限界まで戦う命を多く見てきたお前が!!」

シバの言葉に、赤緒とハーリーは反応する。

「それ自分で決めることよ!あなた達がやってることはただ人をオモチャにして楽しんでるだけ。あのカリスと同じよ!!」

「あの戦争で死んだ人達は、世界が変わると信じ戦っていたんだ!貴様の言葉は、死んだ人達や僕の仲間への冒涜だ!!」

「私はあなたなんかに絶対負けない!!」

「言うだけならアホでも出来る、お前たちが口だけでないことを証明してみせろ!!」

 

「戦いは・・・遊びでやってんじゃないんだ――!!!」

「負けない!負けたくない!!負けられないのよォ!!!」

 

ハーリーと赤緒が叫んだとき、三機の背後に天から何かが降りそれはモリビトに向かってきた。

「あれは!?」

両兵が驚愕の声を上げる中、

「邪魔だああああ!!」

IFSが強く輝き、ウイングゼロは右手にビームサーベルを掴み、自機を掴んでいる腕を斬りおとし後退する。

「うわああああ!!」

赤緒が両腕をクロスし大きく広げ、モリビトがその動きを再現しマニピュレーターを弾いた。

そして降ってきたそれは盾のような形に変形しモリビトの右腕に装着される。

「おおおおおお!!!」

ウイングゼロがツイングラビティバスターライフルを、水面下から上空のシバ機に向かって撃ち放った。

「たああああ!!!」

同時にモリビトも、右腕に装着された部分から光のブレードが伸びシバ機に向かう。

上下から襲い来る攻撃を前に、シバは笑いながら機体を動かした。

とてつもない衝撃が大気を振動させ、グラビティブラストは上空へ、ブレードは市街地にまで及んだ。

「これはまさか・・・」

両兵がつぶやくと、

「うわっ小河原さんなんですかこれ!?」

「おい!」

今頃になって赤緒は気づいたらしい。

「あれはエクステンドの力・・・そして。」

シバは呟きちらっとウイングゼロのほうを見る。

「ふっ、よかろう好きにするがいい。ただこれだけは覚えておけ、このゲームに勝利できん者が人を救うなど出来んことを。」

それだけ言い、シバ機は上空に飛んで行き見えなくなる。

そしてモリビトの右腕の物も役目を終えたといわんばかりに飛んで行ってしまった。

「(モリビト、あなたが呼んだの?)」

赤緒の疑問にモリビトは答えなかった。

「(・・・何故僕がこの機体に乗っていることを、キョムは知っているんだ?)」

ハーリーも、若干目を細めながら考えていた。

そしてグラビティバスターライフルを翼に仕舞いながら、一つの決断を下す。

先ほどの・・・自分の状態に気付かずに。

 

 

ことが終わり、南が自衛隊といっしょに河原へ行くと、そこには疲れ果て眠っている操主の面々がいた。

ハーリーもそこにいる。

「みんなお疲れ様・・・それにあなたたちもね。」

そして、戦い傷だらけになった機体たちを見ながら、南は微笑んだ。

 

 

 

 

次回予告

月、地球で戦闘が起こっている中、宇宙の各コロニーでも謎の襲撃事件が起こっていた。
それは噂となり、コロニー住民は見えない恐怖に襲われていた。
警備部隊を無差別に襲う敵・・・それは何を予兆しているのか?
その調査に向かうレウルーラに迫る影。
コロニー襲撃犯の正体とは・・・

第二次スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜

第四話「敵は・・・幽霊ロボット!?」

 

ユウイチ「さあ、かくれんぼは終わりだぜ!」

 

 

作者とキャラによる座談会(作者の言い訳)

犬夜「さあ、始まるざます」

??「時よ止まれ。」

 

ドカッ メキッ グシャッ ドスドスッ

ただいま作者に対しキャラクターが粛清を行っている最中です、しばらくお待ちください。

 

??「そして時は動き出す。」

ピチューン

無残な姿の作者が散った・・・本日はこれで終わ

犬夜「待て待てまだ終わってない!」

??「むっ、確かに依頼通り止めをさしたつもりですが・・・」

犬夜「コンティニューすればいいだけさ!っていうかいきなり何をする!!」

??「前回から約半年も更新しなかったあなたが言いますか。」

その言葉に犬夜はひるむ。

犬夜「だ、だってPCご臨終という悪夢で全てのデータが吹っ飛んだんだぞ!投稿直前だったのに・・・

   書きだめしていた話も、ストーリー構成や機体の資料も消えちまって・・・ナデシコSSも・・・」

泣きながら作者は言う。

??「むう、確かに気の毒ですが。」

犬夜「おまけにお気に入りも消えちまって、新型PCはVistaだしよ〜半分は俺が出したのに。届いたの七月下旬で」

??「待ちなさい。」

スチャッと犬夜にナイフを突き付ける。

??「七月下旬?そのころにはあったというのに何をしていたのですか?」

作者は慌てて口を押さえたが、時すでに遅し。

??「言い訳を聞きましょう。」

犬夜「いや、さすがに全部消えてもう諦めが頭をよぎっていたんだが・・・」

??「ふむ。」

犬夜「WEB拍手に応援のメッセージが何回か入ってたからもう一度頑張ろうと資料集めなどを・・・」

??「そういうことですか。」

首筋からナイフを離す。

犬夜「本当はスパロボZが出る前にあの機体を出したかった。」

本当に残念そうな顔で言う。

??「あの機体・・・ああ、なるほど。」

新・設定資料を見ながら頷く。

犬夜「結局二番煎じ扱いになりそうだ・・・俺Zが出る前から決めたんだぜ。DVD全部持ってるのに・・・」

??「まあ、今回は運がなかったということですね。ところで何故私の名前が表示されないんですか?」

犬夜「もち新キャラだからね、まだまだ明かさないよ。」

??「では楽屋で私は待つとしましょう。」

犬夜「ああ、じゃあ閉めは任せ俺は東方でも」

??「・・・続きを書くと思っていれば、なるほど、遅れた原因はそのPCゲームにも関係あるのですか。」

急に雰囲気が変わり、先ほどの威圧感が出始めていた。

犬夜「い、いやただの気分転換ってやつで(汗)」

??「その割にかなり手慣れていますね作者!覚悟はいいですか?」

今度はナイフでなくハンドガンを構える。

犬夜「くっ、下手に出てれば・・・このPADちょ」

 

その瞬間無数のナイフと銃弾が作者に浴びせられた。

 

犬夜「イ゛ェアアアアアアッ!!!」

ピピピピピチューン・・・・・・

 

??「私のは天然です!まったく失礼な・・・しかも今のナイフ私のじゃないですし、どこからか物凄い殺気が来ましたが・・・

   最後の「ちょ」は何でしょう?まあいいです。みなさん、ここまで読んでいただきありがとうございます。また本編で!」

 

 

 

 

犬夜「今回本当に申し訳なく思っています、一度本当に諦め掛けていましたが、待ってくれている人のWEB拍手で

   やる気を取り戻すことができました。応援してくださった方々メッセージをくれた方、本当にありがとうございます!

   これからもよろしくお願いします。」



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