11.(コンペイトウ沖海戦−その2)

 ** disconnection **

 第1任務群旗艦「バーミンガム」のCICと同期する戦況表示画面は片隅にエラーを吐いたまま凍り付いている。
 コンペイトウ、作戦司令室。
 彼等は”事態”の把握に苦慮していた。旗艦については見ての通りで、のみならず次席指揮官が座乗する「マンチェスター」とも連絡が取れない。
 敵艦隊との交戦まで最短でもまだ3日の猶予はあるはずだ。
 眼と鼻の先、要塞沖合の前線で何が起きているのか。

 ええそうです。完全に先手を打たれました。でもこれなら勝てると思いましたよ、作戦指導の通り敵の火力は劣弱でしたから。:元砲術士官の証言
 敵大火力による砲撃、先制攻撃による損害はしかし前後への縦射によるものではなく、その規模に比しては少なかった。直撃により撃沈破されたもの、数十隻(最も信頼出来る資料によれば32)副次的な戦闘不能被害を加算しても損耗は全戦力の10%に満たない。軽微とすら言える。
 だがアクシズの攻撃、先制奇襲はこれで終わらなかった。
 ガトーが示した座標を基準照準指標として全力射撃を開始したのだ。

 しばらくして画面が切り替わった。コンペイトウからのセンシングにより把握されている艦隊の現在位置座標の一次情報がそのまま表示される。
 数百を数える定常加速を示す微弱な赤外反応の列に、無限遠から伸びた幅数kmの規模に及ぶ熱線が交叉しているのが確認され室内はざわめく。「バーミンガム」「マンチェスター」共に音信途絶である理由についての最悪の回答がそこに示されている。
 更に、赤外反応の列に微細な熱線が瞬き、今リアルタイムに交錯している。
「交戦中、だと」
 無神論者が悪魔と出会い思わず上げるような呻き声が漏れた。不正確だ。これは交戦ではない。連邦艦隊は一方的な射撃に曝されている。
 そして今、艦列前端に位置する赤外反応の一つが強度を増し、次の瞬間ランダム放散に変じた。

 敵がその規模と現在位置を自ら暴露したのだ。この時点で逆説的には連邦軍の勝利が確定していた。先の言葉にあるようにそしてこれまで何度も繰り返してきたように。額面戦力上では常に連邦が圧倒的優位にあったのであるから。
 連邦艦隊がこれを期に反撃に転じることが可能であったのであれば。
 だが、歴史に「もし」はない。
 『大規模ナ砲撃ラシキモノ』を受け、更に敵艦隊から一方的な射撃を浴びながら艦隊は何事もないかの如く緩加速による前進を続けている。
 何故だ、何故反撃しない、何故何の発令もないのだ。残された将兵の間で不満が高まり不安が広がり、それは焦燥へ、そして恐怖へと転じていった。
 バーミンガムもマンチェスターも、既に沈んでいるからだ。
 この艦隊の指揮を執るものは、誰もいない。
 我、指揮を執る。或いはここで一人の勇将が将旗を掲げ。
 いや、もういいだろう、言葉遊びは止めにしよう。敵の先制奇襲砲撃、間断無く加えられる猛射。度重なる打撃に下がり続け叩かれ続けた連邦軍の士気は今、艦隊の先陣を切る教導艦が誰の目にも見える形で喪われたことにより遂に打ち砕かれた。それが、この戦場での唯一の現実だった。




  アムロは好きなので御指摘は盲点でした。
 でも軟禁解けて前線に出るにはちょと尺が足らんかな。
 まだティタもエゥもないし。
 あと83はやっぱりOTのハナシなので今回はアムロ無しの方向で一つよろしくです。
 …終盤でゲスト出演してもらいますかね。
 …でもそれなんてGジェ/スパ(ry





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