イリヤの空、UFOの夏
あるいはちょっとしたトラブル

作者:出之



10.

 航宙の感覚では1月ちょいだが、そうか、地上では約2年の時間が流れていたのか、それも1日32時間の星の。
 現代ではとうぜんの流れというか、子作りは人工子宮の体外受胎だ。だが佳南は古式に拘った、自分の腹を痛めて産みたい、と。
 随分説得もしたがそれでもいつものように、さすがに危ぶみながらも最終的に江嶋は佳南の意思を尊重するしかなかったのだったが、良かった、無事出産したらしい。てかいつ止まったんだ。いつの間に。まあいいか(いいのか)母子これ健在で。
 江嶋の目に佳南は変わらず可愛く愛らしいが、否微細な丸みを帯びてより美しく輝いて見えたがそれはそれとして別に、強い母の表情を時折、垣間見せるようになっていた。そうか、うんうん。
「あしたはふつうに退勤出来るの?」
 4人で食卓を囲みながら。もう食事が出来るのか。ベイファス式の強健教育の成果なのか。江嶋は内心驚き感心しつつ。
「わからん。バイドの胸先三寸だこればかりはな。今回もなー……」
「まあお世話になってるからしょーがないけどねー」
「お世話さまー。まあなー」
 一気にみょーに所帯じみた会話になった。
 お世話になってる。真に確かに。何しろ命の恩人で今は家族ぐるみで面倒見て貰ってるもんな、労務提供してるけどさ。
 しかし帰ればおれも二児の父親か。
 兄は輝くと書いて”テル”。妹は明るい、で”アカリ”。
 スーパーポジティブなネーミングだが親心というやつで一応、そんなふうに決めてあったと思う。佳南はそのまま申請したようだ。まあカンジは我々地球人、ニホンジンだけのローカル・ルールだが。

 地球人たちが無心に家族団欒を過ごすその傍らで江嶋の声望は密かに、破格に高まっていた。
 スタマツェ地方でまた大規模反乱準備が進行してたって、鎮撫に成功してたんじゃないのかいつの間に?!またズィーグかいやトルルカ経由らしい、バックはそりゃズの字だがな。未然に防いだって?どこの誰が?エズマってあの頭領のおもちゃがか??しかも部下一人「足耳」1艦でってマジかよおい!!。
 バイドが田舎で拾ってきたお気に入りのおもちゃ。それが江嶋への評価だった。
 それが一晩で、「頭領の隠し牙」に変わった。蛮族恐るべしのやっかみもまだ含まれてはいたものの。
 頃や佳し。
 翌朝出勤した江嶋を待っていたのは転属通知だった。
「情報第五課?」
 短い間でしたがお世話になりました、いやこちらこそ。
 その足で人事に行くと。
 情報五?ああ新設部署ですね。
 新設だぁ。ますますわけわかめ。
 わかめのまま仕方なし案内通りに移動すると。
 先の職場の2倍くらいの敷地のがらんとした部屋に大きめのデスクが二つ。それと。
「来たな。お前は課長、課員は1頭だ」
 またバイドベインが謎の笑みを浮かべて突っ立ているがそれはともかく。
「これは何の冗談だ」
 江嶋は固い声を出す。
 宜しく御願いします、ぺこりと頭を下げたのは。
「佳南」
「審査はした。優秀だぞお前の嫁さん、おれが欲しいくらいだ。ま、これ以上航行時差が付いても困るだろうし、いいんじゃないか」
 なんか、うまく表現できないが物凄くハメられた気分全開。
 目の前のバイドを無視して江嶋は佳南に食って掛かる。
「子供は!」
「預けてあるわ」
「今が一番大事な時期なんじゃないのか?!」
 だが佳南は強い意志を宿らせた瞳で敢然と受け止め、口を開く。
「ねえあなた。あの子達、二人きりでも立派に生きて行けるように育ててあげなきゃ。今この瞬間からでも。愛情はもうたっぷり注いだから。あの子達に今必要なのは」
 穏やかな口調だったが脳天を強打された衝撃を江嶋は味わった。
 それでか。この地での最強最上の教育を与える為にか。
 バイドに相談したのか。確かにおれは反対しただろうな。
 ぱんぱんとバイドが手を鳴らす。
「さて、家族会議がすんだら仕事の話をしたいんだが宜しいかなご両人」
 ああその通りだ。
 が、
 業務内容を聞いた江嶋は腰が抜けたと思った。
 要約するとバイドベインと同格の権限代行を任された副社長。
 それも、単に社長を補佐するという役柄ではなく社長と別の視点に立ってベイファスを、全社を見渡せ、と。そして然るべく必要な働きをせよ、と。
 全幅の信用と信頼が無ければ出来ない”蛮行”だが。
 勝ち得たというのか。いつの間に。いやそもそんなこと許されるのか。総ての前任を飛び越えたパラシュート人事などが。
「おれの一存だ、問題ない。人事も前向きに承認した」
 げははとバイドは高笑い。収めて。
「お前には欲がない。いい意味でな」
 バイドは江嶋に向け脳内成績表を読み上げはじめた。
「しかし能力がある。そして忠義。それもただの茶坊主じゃない、”使える”比類なき忠義をだ」
 忠義、ねえ。証言台で叩き潰されてからこっち、自分たちの最上幸福最大利益を常に追求して来てはいたが。
「ああそれでいいんだ。それは私利を貪ることじゃない、そうだろ」
 ナンセンスだ。4人で食えればそれ以上は要らない。
「権勢を笠におれの目を盗んで専横を振るう、なんてのも微塵もないわな」
 だから、それに何の意味がある。アホな質問は止めてくれ。おれは悪代官か。
「大変結構。じゃ今日から頼むぞ」
 ちょっと待て。
「具体的にその、何をすればいいんだ?!」
 バイドはそのとき初めて真顔で。おいおい。
「おれと同じ権限を与えるんだぞ。そんなの少し考えりゃ判るだろ?」
 むー。そーくるかー。
 じゃ、宜しくなー。尾を左右に悠然と振りながらバイド、退場。
 宜しくって。つまりまたOJTか。
 佳南と二人、思わず顔を見合わせ力なく笑いあう。
「あーじゃー、取り敢えずデスクのセットアップから行くかー。垢はあるの?」
「はい、バイドベイン氏と同格の情報関与権限を持つ認証鍵が、課長と私、2件発行済みで既に使用可能な状態にあります」
 有能な、というより怜悧な秘書の態度で佳南が応答する。その様を見て江嶋は認識を改めた。そうだ、一時ではあったが彼の直属上官だった彼女だ。バイドの言葉にも嘘は無さそうだ。
「宜しい伊射野君。では我々の職務を果たすとしようか」
 応じて江嶋はつまらないことに気付く。そうか、おれら夫婦別姓だったな。こうなるとこれは便利だ。
 ……
 ………
 …………
 か、佳南!ちょっとタンマ!!。
 悲鳴を上げながら江嶋は蒼褪める。まずい、これじゃ主夫業行きだぞ。
 そうはならなかった。
 江嶋を立てるとかそういうことで無しに、それが彼女の本質でもあるらしかった。必要な情報はてきぱきと整える、請われれば短期的な見解や意見も口にはする。しかし決断は総て江嶋に任せる。自然と司令官と参謀の役割分担が出来上がっていた。
「えー昨日のアレまだ未決なのー?」
「えーあー。ごめん」
 参謀に尻を叩かれひーこら這いずるコマンダーではあるが。
 語学は日本語と英語とベイファス語と、あと星連共通語。
 すっかり教育ママになった佳南が組んだカリキュラムに異存はない江嶋だったが、前々からの疑念が再発した。
 日本語。
 何故だ、何故ベイファスに日本語が存在する。
 データベースも不要なくらい自動翻訳が高度に発達しているというのか。いや。
 再び江嶋の表面意識に浮き上がったこの懐疑は収まるどころか膨らみ続け、ある日の休息時間中、遂に堪え切れず彼は与えられた権限を始めて私用で行使した。
 あっけないほどあっさりとそれは見つかった。ベイファスと、辺境未開部族”ニホン”との交信記録。
 否、ベイファスと、ではなくベイファスが放った情報収集、というより更に攻撃的な性格の、未知の脅威を見つけ出し事前に叩くことを目的とするその早期警戒網を構築する探査機の1機が、日本が送り出した探査機と接触したのだ。火星を見るひとみ、だか日本人の願いを載せたのぞみ、だかそんなんだったと思う。何しろ産まれる前のことだししかも失敗だし、記憶は怪しい。公式には失敗扱いで予算を打ち切られたそうした宇宙ゴミの継続監視の委託もDFは引き受けていた。ああ”ノゾミ”とある。この火星に辿り着けなかった失敗探査機を通じてDFは地球外知性とコンタクトを果たした、のか。
 つまり。と江嶋は背筋が寒くなる。DFはベイファスを知っていた。乙号だってそうだ、何をどうしてあんなハイパーテクノロジーが信州の山奥に実在出来るというんだ。そうなると、今回の事態を相当の精度で把握していた可能性がある。
 おれが今ここでこうしていることを含めて。
 相庭二佐の無表情な顔が脳裏に蘇り、それが薄く、笑う。江嶋は激しく頭を振りそれを追い出す。二佐。俺たちはどこまであんたの掌で踊らされているんだ。

 まずはともかく社長と同じ視座を確保すべく悪戦苦闘してる最中だった。
「すまんな、もう一度行ってくれるか」
 呼び出したバイドベインは珍しく不機嫌を隠さない。
 実空間での対面だ。
「スタマツェか。なんか泥沼化してるようだが」
「ああ、その通りだ」
 投げ出すように言う。
「で。行って何をすれば宜しいので」
「増援部隊の指揮、そして現地での継続指揮だ。お前に任せる」
 今度こそ江嶋は絶句した。
「……正気か。実戦経験皆無だぞ」
「知っている」
 バイドベインも向き直る。
「戦争屋ではもう収まらん、根切りにするしか出来ん。硬軟使い分けられる甘ちゃんで丁度いいんだ、今必要なのはそういうやつなんだ、お前のような、な」
 まずい、このままだといつものように押し切られる。
「程度問題って気もするが。そも既に傭兵で火消し出来る段階じゃないだろ、正規軍は」
「地方軍はもう出てる、知ってると思うが」
 ぴしゃりとバイドベインは抑える。
「地方軍じゃなおさらだ。ここは中央の特殊」
「中央は動けん」
「何だ。戦争準備でもしてるのか」
 バイドベインは僅かに、眼を開いた。そして素早く手を動かす。
<なんでもいい、口を動かせ>
 手元の電化紙にいきなり書きなぐった。
 えーあー。
 江嶋は白みかける頭と言語中枢を切り離し必死で言葉を続けた。
<よし。これは最高機密だ。洩らしたら殺す>
 いりません。
<図との秘密交渉が今協議中だ。大筋はもう固まった。***を分割占領する>
 達筆すぎて一番重要な箇所を読み落とす、はともかく。
 江嶋の中で一瞬、総てが止まった。
 仇敵じゃないのか。いやそれこそ愚問か
 結局江嶋が判読出来ないままバイドは上書き、イメージ入力処理されている先の文章はそのまま消去される。
<しかし決裂の可能性もまだある。だとそのまま図と戦るかもしれん>
 呼吸が浅くなる。
 銀河大戦勃発かよ、勘弁してくれもう。
<中央は動かんし動けん、以上理解したか>
 作法を忘れ思わず二度、三度頷く。
<白紙委任だ。遣り方は任す。始末を付けて戻れ。なるべく早くだ>
 バイドベインは顔を上げ、低い声で発した。
「判ったな。よし行け」

 バイドベインが自分を一見、要職に就け使い倒す意味を今なら江嶋は正しく認識出来ていた。
 いつでも使い捨てに出来るから。それだけだ。
 だから必死に働く。なんとか結果を残す。そしたらまた使われる。
 面クリ型のキャンペーンゲーム、いやフルコミの営業そのままだ。江嶋は一人苦笑。
「……なにが可笑しいの」
 佳南の少し尖った声に。
「あ、ごめん。思い出し笑い」
 素直に詫びる。確かに笑う場面ではない。
 航宙はオートナビに任せ二人で現地の状況を読み込んでいる最中だ。
 もちろん江嶋は黙って独り出撃するつもりだったが時既に遅し、業務命令は佳南にも届いていた。
 ぜったい置いてくゼッタイ付いてくえーい勝手にしろくそ。
 結局拒否できるわけが無いのを知りつつ、つい無駄な抵抗を重ねてしまう自分が少し可愛いく、かなり惨め。
 その後の経緯を追ううちに江嶋は頭痛がしてきた。なんだよこれ。
 中央軍からの作戦指示を受けたスタマツェを管区に持つセルヴ州は軍を動員、直ちにこれを差し向けた。セルヴ軍は抵抗皆無の内に各星軌道を制圧。江嶋が上げたレポに基づき幹部を実名で読み上げた上で生命財産の保障を掲げた寛大なる降伏勧告を通達、これを受けて革命指導部は機、在らずとの見解で一致、投降条件協議の交渉の場についた。ここまでは極めてGJな流れ。
 問題はその後だった。
 事前交渉が行われるウラでセルヴ軍は革命指導部拠点を襲撃、居合わせた全頭の拘束に加えその内、表で実業家の顔を持つ者、資産家等を3頭選びその場で処刑したばかりか彼らの資産を”保護”の名目で接収する。革命指導部残余はこの協定違反を強く非難する声明を発しそのまま潜伏、だが実働部隊には報復禁止を厳命しなんとか抑え込むことに成功していた。しかしながら末端まで統御仕切れるものではない。細胞化が進められていた民兵組織が怒りに任せて徹底抗戦を呼号し蜂起、民衆が続々とこれに続き穏健派と強硬派、それにセルヴ軍を交えた三つ巴の抗争があっという間に炎上した。
 あほか。
 一言言い捨て投げ出せるならそうしたい江嶋だが、事態解決の指揮命令権者として飛ばされていく以上逃げも隠れもできない。
 情報を漁るほどに悪い材料しか増えてこない。
 どうすべぇよ。
 適正を無視して無理遣いを続けてきたツケが回ったな。バイドの旦那、今回は流石にしくじりなんじゃねぇのこれ。
 他人事のように評する江嶋だった。
「スタマツェ派遣軍参謀本部を預かりますツージン少長と申します、宜しく願います」
 如何にもキレそうな若いベイファスが出迎える。
「中央軍から委託されて来た、エジマだ。宜しく頼む」
 軽く答礼するとツージンは怪訝な顔を見せる。
「中央からの援軍と伺っているのですが、その」
 オレがそうだとモーデルごっこをしたいところだがぐっと我慢し。
「援軍はない。貴官も承知と思うが現今のズィーグの動静に鑑み即応態勢を動かせん。現有戦力で事態の解決に尽力すべしとの厳命だ」
 因みに乗り付けた艦はまた「足耳」。機動力での選定でもあるがつまり気楽なのだ、バイドが自分を遣うように。
 持ち付けないモノを手にすると大抵破れを招く。バイドの承認もあり、両用部隊を含め戦隊ぐらいの戦力投入であれば許可されているが江嶋は結局、見送った。手元にあれば使いたくなる、その誘惑に打ち勝つ自信はない、つまりは小心者ということかと自嘲。
「現刻を以って全軍の指揮権を預かる。貴官らには苦労を掛けた。司令は仮眠中だな、後に改めてご挨拶申し上げよう。少長殿、現在までの経緯と最新情勢について御教示願えれば有難いのだが」
 命じつつ、江嶋はいやーな予感を覚えていた。
 そして見事に的中した。
 おまえか、おまえのおまえがこのくそ。
 しね。
 臨機に敵の虚を突き、襲撃を成功させた判断の的確さと決断の素早さ、司令を説き伏せた交渉能力を滔々と解説する。
 そうか、おまえはその一存でベイファスの名で約した生命財産保障の協定を、威信と信義をドブに捨てたわけかい。
 更に幹部処刑に及び、江嶋はせいぜいマヌケ面で敢えて聞く。
「後学の為に確認したいが、その根拠は」
 ツージンは白けた、あからさまな侮蔑さえその眼に浮かべ、応える。
「敵の策源を断つは兵理の初等かと小官は心得ますが」
 感心しつつ、江嶋は腹の底で虚ろに笑う。
 敵、敵、敵。
 その初手から間違いなんだよ少長殿。
 元来敵対関係にあるものを如何に融和し丸めこみ同化させるか。これが軍政の要諦だ。
 我も臣民、彼も臣民、敵だと。どこに居るんだそれは。
 策源の破壊か。大いに結構。
 だが、一握りのブルジョワが動かす資産と、この星全土の生産力と、どちらが大きいか判別出来んほどの愚物には見えんのだが貴官はどうなんだ。その結果を予測出来なかったのか。
 否。
 そもそもこれは、敵を掃滅する軍事作戦、ではなく。
 住民の不満が醸成した事案を解消する行政業務だったのだよ、軍事力を利用した。
 士官学校では教えられなかったか。残念だが教本にもないな。なればそれこそ、自ら状況を踏まえ、臨機に判断し決断すべき作戦目的だったのだ。
 この初手を見誤ったのが貴官の不幸だ。いや幸運だったのかな、ツージン少長殿。
 総てに劣る下等種を一方的に狩る極上の遊戯は存分に堪能されたかな。
 だが、誠に申し訳ないが、遊びの時間は終わりだ。
 臣民としての仕事をして貰う。
「宜しい。概略は把握出来たと思う。」
 腸が焼け爛れそうな情動を表に出さぬよう、出来ればこの場でこの表現自粛野郎をどうにかしてしまうしてしまいたい衝動を抑える為に、江嶋は言葉を使った。
 この上に敵要衝に軌道爆撃を敢行した、だと。
 司令が寝込むのも無理はない。だが地方官僚上がりの据え物にこの”秀才”参謀相手で何が出来るわけもないなくそ。中央進出への箔付けが欲しかったか。余計なことを。
 軌道爆撃。それが必要なら誰が両用部隊など投入するものか。
 無制限攻撃でとっくに更地にしてるわあほお。
 そうしちまうか。根源的解決。江嶋はよろめく。それも一つの手段だ。
 まてまてまて。
 もちつけ、おれ。
 江嶋は言葉を続けた。
「貴官が今日まで最善を尽くしてきた事を今、私も知った」
 平然としてツージンは舌肯しつつ当然の判断としての、引き続き権限移譲されるべき瞬間を待つ。彼は正しい、今もそれを確信しており実際、事実でもあった。唯一戦略的に、政治的に致命的な迄の欠落が、そしてそれが欠落であるが故に自覚がない事を別にすれば。しかもまたそれは元来彼に求められるべき素養ではなく、最高指揮官の判断にこそ委ねられるべき性質の要素であるからだ。ここでもまた不幸な偶然の連鎖が不幸な現実を拡大生産している。
 次に江嶋の口から出た音声は、ツージンの栄光に満ちた頭生に在り得ない衝撃と、僅かな瑕疵を与えた。
「だが大変申し訳ないが、私は満足出来ない」
 何を言い出したんだこの尾無は。中央から来た茶坊主は。
 ツージンをして全く理解も想像も出来ない事態が起ころうとしていた。



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