機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY
Op.Bagration
−Rewrite−
作者:出之



 第11話:予定は未定


 そこには“楽園”が存在した。
 アトランティック、パシフィック、そしてインディアン。地球圏三大拠点に集う宙の艨艟。
 それは間違いなく、人類史上最強の戦力であり同時に政治力、つまり政府の強権を支える権勢基盤の実体であった。
 それは喪われた。
 現在、再建の目処も無く地球軌道は文字通りの真空地帯と化していた。嘗て横溢していたその力は井戸の底、南米と、遠くルナツーに引き裂かれたままに放置されている。 殊に、先にも述べた様にルナツーが地球圏最大戦力として台頭し同時に強い政治力をも獲得した現状が、地球軌道の再整備を強く阻害してもいた。南米、ルナツー、グラナダの各勢力、何れにとってもそれは好ましく、この件については三者が協調姿勢にあった。尚かつ南米による二者との協調路線は取りも直さず前線、ややもすればその急進性により正規の軍令からの逸脱を企図しかねない艦隊派の牙城たるコンペイトウへと向けられたあからさまな矯正圧力にして牽制ですらあった。

 そうした各様の政治的思惑に翻弄される形でその艦、くたびれた一隻のサラミス級はぽつりとそこに浮いていた。

 アフリカは赤道直上、静止軌道高度3万6000。

 艦はプレ・ビンソンの老朽でありしかも近代改修は未了、つまりMSは甲板に露天繋止の形式で搭載、運用されている。
 RGM−79S“ジム・コマンド”、RGC−80“ジム・キャノン”各4機という搭載機の編成も、配置の重要性に鑑みると劣弱と呼ぶべきか、間に合わせ感が強い。
 所属は無論ルナツーであり、そして当然にして実際は、こんな粗末な戦力では無い新鋭艦を送り出せる余力が当地にはあった。しかし前述通りである三者の意向、地球軌道の政治的中立の維持を期待するとする暗黙の合意を汲む事への、ルナツーから同意の表明として発せられるシグナルとしての、兵理に拠らないこうした歪な戦力運用であり、それが現場へのしわ寄せとなっていた。
 実際に艦を預けられている立場からすれば堪ったものでは無い。配下の信望を損ねない程度にお偉いさんの考える事は良く判らん、などとぼやき煙に巻いてみせながら他方、巧みにその疑念を逸らすべく方策を案じていると一体俺は何を敵として戦っているのかと自身懐疑的にもなる。こんな内輪のゲームに講じていられる程今の我々にはまだ余裕があるのか、という現状認識の再認と共に。
 足元、地上では現在、確定された敵拠点、キンバライドに対し攻囲が敷かれその殲滅に向け最大限の火力が投じられ締め付けられている。
 そこにガトーと、略取された02もまた封じ込めに成功しているとも聞いている。

 つまり、と彼は思う。今回の件はこれで手打ちなのか。
 DFはその規模に比して過大とも評しえるプレゼンスを獲得した。地上戦力の代償は大きいがこれも、逆の見方をすれば戦力の整理によりロジの引き締めに成功したとも言える。地上の正面戦力をほぼ喪失する以上の政治的成果がそこに残されたと。
 派手に砲火を交えはしたが、結局政略目的のパフォーマンスでしか無かったのか。
 そうとも。冷静に考えれば今次DFの作戦行動に成算は無い。もう終わった事だ、地上での掃討終了で一連の騒動は終結する、その筈だ。
 推定に矛盾は無い。しかしそれが自己欺瞞であり希望的観測でしかない事は、彼も自覚していた。
 



(つうわけでまだだ、まだ終わらんよ!(笑 ヒマを見てぼちぼち進めますので。 リライトに着手している以上何とか完結させませんとねえ。)



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.