辺りに充満する殺気。

フリアグネは初めて『恐怖』というものを味わっていた。

―――何だ、あのミステスはッ!

確かにあの一撃はミステス――坂井悠二をとらえた筈だった。

しかしこの状況は何だ!?

ミステスは容姿を変え、其処に立っているではないか!

銀の髪に獣を思わせる金の瞳。

―――この私が恐怖している!?

愛しいマリアンヌの敵をとって、終わりの筈だった。

なのにこの状況は一体何なのだろう。

彼の友人達が唖然としている事から、彼等もこの事を知らなかった事がうかがえる。

いや、そんな事は関係無い。

奴が何者であろうとマリアンヌの敵を討つだけだ!


灼眼のシャナ
〜闇と焔の二重奏(デュエット)〜

          きた
第六話  妖精来る 前編
                                                                                      著・神威


「フリアグネェェェェェェッ!!」

久しぶりに怒りを感じた。

悠二を殺しかけたフリアグネに。

そして何よりもこうなる事を予測出来ながら、無理やり体の主導権を奪わなかった自分自身に。

叫びながら『木蓮式歩法奥伝・瞬動』を発動。

一気にトップスピードに入り、フリアグネの目の前に飛び出す。
 せんこうばくふ
「穿孔爆赴ッ!」

顎に掌底で一撃を加え、極限まで練り上げた氣を『足』に集中。

回し蹴りを腹に打ち込むと同時に氣を開放。

ズドォンッ!!

爆発的なエネルギーの解放によりフリアグネは吹き飛ぶ。

次いで追う様に瞬動を使って更に接近し、今度は両手で掌底波を叩き込む。

踏み込みと同時に放つ事によって威力が増した掌底波を喰らったフリアグネは、更に加速しながら吹き飛ぶ。

「ヌゥッ!」

「グッ!」

その代償はフランベルジュによる斬撃。

吹き飛ぶ寸前に一撃入れられたらしい。

流石は紅世の徒。

「疾ッ!」
 かぜ
疾風の如く走り出す。

フリアグネは仮にも紅世の徒の一人だ。

あの程度では死にはしないだろう。

「我が憤怒を糧に、燃え盛れ! フランベルジュ!!」

轟ッ!

存在の力を通す事によって真価を発揮する宝具・フランベルジュ。

通された存在の力によって刀身が炎を纏う。

恐らく切れ味も上がっている筈だ。

「―――其は我が憤怒を糧に」

「―――其は我が憎悪を糧に」

「―――其は我が慟哭を糧に」

更に、フリアグネの詠唱(言霊)にあわせてフランベルジュの刀身が変化していく。

「―――其は我が愛を糧に」

纏う炎の温度が上がり、量が増える。

「―――我が前に真の姿を見せよ」

刀身が曖昧になっていく。
        マリアンヌ
「断絶せよ、『最愛の我が君』――――ッ!!」

細身の剣だった其れは、斬る・絶つ事を重視した『刀』へと変貌を遂げた。

纏う炎の色は、淡い朱色に輝く。

其れは今はもう居ないであろう彼の燐子『マリアンヌ』の気配に似ている様な気がした。

否、きっとあれは『マリアンヌ』そのものだ。

あそこまで主への敬愛の意を感じさせる物など、そうそう無いだろう。

「フリアグネ、お前の望みは何だ!?」

だからこそ、俺は気になった。

死んでも尚、主の傍に居ようとしたマリアンヌと死んでも尚マリアンヌを傍に置こうとしたフリアグネが、何故このような事をしたのか。

あの二人には主従関係と言う物では無く、別の絆があった気がする。

「私の望み――――?」

「そう、お前の望みだ」

訝しげに此方を窺うフリアグネ。

「―――其れは私『達』の愛の成就」

刀の切っ先を此方に向けたままフリアグネは語りだす。

「マリアンヌと私は、お互いを愛していた」

「だから私は、私達はお互いの愛の為にマリアンヌを『ヒト』にしようと誓った」

「――――其れと今回の事件、何が関係ある?」

俺は聞く。

いや、うすうす感づいていた。

恐らく彼等の目的はかの、『都喰らい』

トーチに特殊な仕掛けを施し、その仕掛けが発動するとトーチは元の存在の力に分解される。

フリアグネはこの自在法を使って彼の言う『マリアンヌをヒト』にするつもりだったのだろう。

恐らくマリアンヌの方にも何らかの自在法が組み込まれていた筈だ。

「都喰らいを起こし、マリアンヌに組み込んだ『転生の自在式』を発動する為に必要な存在の力を集める事。其れが今回の目的だった」

――――しかしもう、マリアンヌは居ない。

いや、正確にはもうヒトとして転生させる事が出来なくなった。

「幾ら存在の力を供給しても、マリアンヌの傷は癒えなかった」

なるほど、あの時マリアンヌにも一撃が加えられていたのか。

それなら説明がつく。

―――草薙の御剣の能力『存在の力の吸収』

恐らくその効力によって供給される存在の力を吸収していたのだろう。

「だから私は苦渋の決断を下した」

「未完成の転生の自在式を使用して、マリアンヌを別の物に定着させるという、苦渋の決断を」

そしてマリアンヌをフランベルジュへと定着させて、彼女を刀に生まれ変わらせた。

「そう、か――――」

だがしかし、他に方法があったのでは無いだろうか?

「だが、お前は幾つか間違いを犯した」

「何?」

此方を睨むフリアグネ。

「一つ、存在の力を集める為に使う必要の無い人間を使った事。此れは他の事で代用出来た筈だ」

例えば人間でなくても『自然』から少しずつ存在の力を貰ったり、他の紅世の徒から奪う事も出来た筈だ。

そこに存在する以上存在の力は働いている。

時間はかかるが、自然から少しずつ力を貰うのが一番簡単で安全な方法だ。

「一つ、関係の無い一般人――悠二の友人達――を巻き込んだ事」

「そして最大の過ち――――――お前は悠二を傷つけた

弟の様に感じていた。

無条件で慕ってくれるのが嬉しくて、何処かラピスを思い出だした。

「来い、草薙の御剣」

草薙の御剣を召還。
 
「だから、俺はお前を討つッ!!」
                                                                                         続く
























後書き

大変長らくお待たせしました。

闇と焔第六話をお送りしましたが、いかがでしたか?

今回は少し長くなりそうなので前後編(下手すると前中後編)に分けました。

次回は早めにあげますのでご勘弁を。
                                                                            十一月二十日・執筆完了



感想

……

ん? 一体どうしたんだ…?

私、出番ありませんでした…

ああ、そう言えばそうだね。

私の登場の回なのに、登場する伏線すら見えてきません…(汗)

前回大いに期待しただけに寂しい物がありますね…

でもま、この話の内に出ることは確かなんだし、ゆっくり待てばいいんじゃ?

アキトさんと私のラブは多いほうがいいんです!!


いや、神威さんはルリ×アキト派だし、大丈夫だよきっと。

いえ、疑っている訳ではありませ ん。

でも、最近はシャナのアニメ化で神威さんも
流されてないか心配していますが…

はははは…(そういうのを疑ってるっていうんじゃ…)

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神 威さんへの感 想はこちらの方に。

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