第十六章【トラウマとマインクラフト】


軍議が気になって仕方がなかった一刀は好奇心に負け、地下からそれを聞こうと行動を起こした。

(外れだったら大変だからな)

距離的にこの辺りだろうかと予想を付け、一ブロック分だけ天井を掘って確認をすることにした。
外れなら当然元に戻し、先に進んでは天井に穴を掘って確認していく。幕舎へは確実に近づいていた。
こういう時は地下に居ても地上を写す地図が便利なのだが、レッドストーンが貴重なため、複数は作れていない。

(ちょうどこの辺りかな?)

穴を空けると、ちょうど一人の女性の真下に辿り着いたらしい。
運良く両足の間に穴を開けることが出来たため、彼女は落ちずに済んだ。

「全く……まさか麗羽のところに陛下が来て、その陛下に麗羽が連合の盟主を任せられるとは……」

「あら白蓮さん。そもそも私がこうして皆さんを呼び集めたのですから、盟主を任せられるのは当然ですわ」

「これだものなぁ……」

袁紹の真名を呼び、その袁紹とも親しげに話すこの女性。
一刀は何故だか分からないが、影が薄いなと感じた。

「まあ良いじゃない公孫賛。こうして麗羽が天子の勅命を受けたのは本当だってハッキリしたのだから」

どうやら自分の上に居る女性は公孫賛というらしい。
確か三国志演義でも特に目立った活躍はしたようなしてないような――横○光○版はしたか。
袁紹が呼んでいたのは恐らく彼女の真名なのだろう。あと下着は白だった。

「うむ。正直ここに居る誰もが誇張もしくは騙っていると思っていたからな」

「ちょっと華琳さんに孫堅さん! 私と、私を頼って来られた陛下に失礼ですわよ!!」

一刀が耳を澄ましてみると、かなりの大人数がこの場に居るらしかった。ザワザワと声が聞こえる。
華琳という名はともかく、孫堅は有名である。他にどんな武将がこの場に集まっているのだろうか。
だがこれがいけなかった。一刀が無意識に頭を地上に近づけていたために公孫賛と目が合った。

「…………」

(あっ……固まってる。目を擦って、もう一度こちらを見た。)

「…………えっ?」

(ヤバイ……!)

公孫賛が驚いてその場から飛び上がると同時に一刀は穴を塞いで隠れた。

「ちょっと白蓮さん。陛下もこの場に居られるというのに何なのですか?」

「し、下にっ! 私の立ってた所のちょうど真下に穴が開いてて、そこに何か居た!」

「落ち着いて白蓮ちゃん。穴どころか何もないよ?」

「えっ……?」

公孫賛はマジマジと自分が先程居たところを見つめるが、友人――劉備の言う通り何も無い。
周囲の冷たい視線が刺さる中、公孫賛は念のために土を叩いてみる。特に何も変化はなかった。

(危ない危ない。バレたら大目玉だ)

だがその真下では一刀が冷や汗を流しながら溜め息を吐いていた。
万が一崩れた時のために手には土ブロックを持っている。

「お、おかしいな。私は幻覚を見たのか……?」

「七乃、あ奴は一体何をしておるのじゃ?」

「シッ、駄目ですよお嬢様。公孫賛さんは影が薄いことを気にして、目立とうして失敗したんですから」

「バッ……違ぇよ! そんな訳あ――」

「はあ……まだ戦いは始まってないというのにこんな調子で大丈夫なの?」

劉宏及び諸侯の痛烈な一言に対し、公孫賛はただ頭を下げるしかなかった。
劉備の励ましの言葉も、恥を掻いてしまった身としてはとても辛かった。

(ここはもう駄目だな。場所を移動しよう)

一刀が別の場所に移動しようとした時、すぐ目の前に光り輝く刀身が音と共に現れた。
硬直する一刀を尻目に、地上から声が聞こえてきた。

「大殿、どうかされました?」

「いや、何やら妙な気配を感じたのでな。こうして南海覇王を地面に刺してみたが――」

孫堅が刀身を引き抜き、確認するとそこには土しか付いていなかった。

「ふむ。仕留めたと思ったが、どうやら違ったようだ」

「堅殿……あまり御家の家宝を無下に扱うものではないぞ。刀身が傷付いたらどうするのじゃ」

「小言を言うな祭。そもそもこの程度で傷が付くようなら家宝とは言わん」

「そんな無茶苦茶な……」

「まあともかく良かったな公孫賛。これで先程のは完全にお前の気のせいだと分かったぞ」

「もうその話を蒸し返すのはやめろーッ!!」

刀身が目の前から消えたのを機に一刀は全力でその場から逃げ出していた。
好奇心は猫をも殺すとはまさにこの事。もう少しズレていたら顔面をスライスされていた。
涙は流せないが、代わりにインベントリのアイテムを地下に放出していたかもしれない。
そうして命からがら幕舎に戻って来れた一刀は、先程の恐怖に身を震わせるのだった。

(孫堅怖い……ッ!! 何なんだあの勘の良さは……!?)

そして軍議が終わった後、最中に起きた一騒動がカクの仕業だと気付いた田豊が叱りに来たが――

(相当怖い目に遭ったようね。これで懲りたならいいけど……)

幕舎の隅でブルブル震える一刀を見て叱るに及ばずと思い、落ち着くまで撫でてあげるのだった。


――――――――――――


「――という訳で水関、虎牢関と落としていき、最後に洛陽を落とす。ここまでは良い?」

(大丈夫です!)

田豊の丁寧な説明に調子を取り戻した一刀は頷いていた。
彼女が前もって言っていた通り、一刀に軍議の内容を教えてくれているのだ。
更にこの場に顔良と文醜も同席し、明日の行動を練っていた。

「最初の水関攻めは孫堅さん、公孫賛さん、劉備さんが先鋒でしたよね」

「守り手はあの華雄と張遼だからね。まあ妥当なところでしょう」

(華雄さんは会ったことないけど、張遼さんかぁ。強そうだったな)

「あたいと斗詩の出番はねえのかよぉ。訓練の成果を発揮したいぜ」

「それはもう少し我慢して。水関を突破した先にある虎牢関、恐らくそこを守るのはあの呂布よ」

虎牢関は洛陽を守る最後の砦にして、攻めるのが難しい堅牢な要塞である。
そこを一騎当千の兵、呂布が守るのだ。田豊は前半の消耗は出来るだけ避けたかった。

「でもさぁ、姫が盟主な訳だし、家臣のあたい達も何かと動いておいた方が良くないか?」

「気持ちは分からなくもないけど……」

「お手伝い出来れば良いんですけどね。華雄さんと張遼さんが出て来た瞬間、強襲するとか……」

強襲――その一言に田豊が何か考え始め、そしてすぐさま一刀を見た。

確かにその水関は強固だ。無闇に攻めたところでなかなか落ちないだろう。
ならば外から攻めず、中から攻めてはどうだろうか。カクの術を使って――
田豊が微笑を浮かべた。

「ありがとう斗詩。貴女のおかげで良い考えが思い浮かんだわ」

「え、え? 私何かしましたっけ?」

戸惑う顔良を置いて、田豊は一刀を抱き上げた。

「カク、早速貴方にやってもらいたいことがあるの」

(な、何でしょうか!)

緊張する一刀を見つめ、田豊は笑顔を浮かべながら言った。

「貴方が上手くやってくれればあの水関を一日で落とせるわ」

「ほ、本当かよ!」

「ええ、本当よ。猪々子、今から麗羽様に伝えて。策が整い次第我々も加わって華麗に水関を落としてみせると」

「おう! 任せとけ!」

田豊の言伝を伝えに文醜が大急ぎで幕舎から出て行った。
彼女だけでは言葉足らずな所もあるかもしれないと、顔良も後を追った。

「いい、カク。貴方にやってもらいたい事はここから水関の内側まで続く穴を掘ってほしいの」

幕舎を少し開き、彼女が指を指す方向にはそびえたつ堅牢な要塞水関があった。

(結構距離があるなぁ。まあでもそんな時間はかからないだろうけど)

「華雄と張遼が出撃したのと同時に穴に潜ませておいた斗詩と猪々子が率いる部隊を内側に突入させるわ」

(なるほど。水関を内側から攻めて占拠、それでそこから出て挟み撃ちをするのか)

「頷いてるってことは理解出来てるのね。兵の損害を最小限に抑え、水関を落とすにはこれしかないわ」

コクンと一刀がもう一度頷くと、田豊は満足そうに彼の頭を撫でた。

「でも出来れば二人は討ち取らずに捕虜にしたいところね。あわよくば説得して味方に引き入れたいわ」

(それは確かに。董卓さんも悲しむだろうからなぁ)

田豊との打ち合わせを終えた一刀は、早速水関へ向けての穴を掘り出した。
文醜と顔良が率いる部隊を潜ませるのだから、大規模な物にしなくてはならないだろう。
昼間に受けたトラウマをもう忘れた一刀は一心不乱に地下道を作り始めるのだった。

――その最中、新しい鉱石であるラピスラズリを見つけた事を記しておく。



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