機動戦艦ナデシコ 逆行のミナト

第九話 奇跡の交渉『愛撫か?』 -その陸-

 

看板娘の出来た雪谷食堂は以前にも増して客が増えていた。
増えた客とは勿論、ルリ・ラピス・ミナト目当ての男性客と、戦闘に怯えなくなったアキト目当ての女性客である(笑)。
……ミナトがルリに頼んでネットに流れる隠し撮り映像などを削除させているので今のところストーカーなどが爆発的に増える心配は無いがそれでも厄介ではある。
またもう一人のマシンチャイルドであるキラも母親に連れられて雪谷食堂に来るようになった。人に慣れるためとアキトに会うためらしい。
このためにネルガルの方もマキビ夫妻に社宅を用意してハーリーも近くの学校に転入してもらっていた。
アキトも手が空いた時はラピスと一緒に色々とかまってやっていた(ハーリーは学校があるので来ていない)。

ラピスは同じ目の色をしたルリに懐いていた。
ルリも妹が出来たのが嬉しいのか、色々と面倒を見てやっていた。その世話焼きぶりは夜の風に怯えるラピスにかつての己の決戦兵器『N型装甲(猫スーツパジャマ)』をあげてしまうほどだった……。
そうして一週間が過ぎた頃……。
この頃のラピスはまだ風呂を怖がっていた。
その為ミナトかルリが一緒に入っていたが、ある一つの契機が訪れる事でその均衡は崩れ始めた……。

それはラピスが慣れないながらも食堂を手伝っていた時の事。
足をもつれさせたラピスが転んで料理を被ってしまったのだった。
「キャア!」
慌ててラピスに駆け寄るミナト。
「大丈夫、ラピス!?」
「ウ、ウン。ダイジョウブ……」
そう言うとひょっこりと起き上がるラピス。
どうやら被っただけで火傷などはしていないようだ。
ラピスの事を心配した客たちもほっと胸をなでおろす。
「あらあら。汚れちゃったわね……。アキト君、ラピスをお風呂に入れて上げてちょうだい。私はこっちを掃除するから」
「お、俺がっすか!?」
ラピスを心配して厨房から出てきていたアキトにミナトがお願いする。
「そうよ〜、お願いね〜!」
「ちょ、ちょっとミナトさん!?」
普通、こういう時は女性であるミナトやルリが付き添うべきであると思うのだが……ラピスとアキトの仲を近づけるためにミナトがアクシデントを利用した策略である事は言うまでも無い。ラピスの人見知りを直すのも目的の一つではあるが。
「ミナトさん、私が……」
ルリがラピスを風呂に入れるのに立候補するが……、
「ダメよ〜。男性のお客さん方ががっかりするでしょ〜。とりあえずアキト君はいなくても問題ないし」
何気に酷いミナトの言葉に店内の男性客が全員頷く。
「……風呂に連れて行ってきます……」
アキトがラピスを連れて奥へ引っ込んでいく背中は煤けていたのだった……。

「ほらラピス手を上げて」
「ン」
風呂嫌いのラピスに任せてしまうとろくに洗わないで出てきてしまうので仕方なくアキトも一緒に風呂場にいた。
勿論二人とも裸……ではない(笑)。裸はラピスだけである。
もっとも、前から洗うのは流石に拙いので後ろから背中と腕、そして髪を中心に洗っていた。
こんな事をするのは初めてなアキトは必要以上に慎重に洗っていたが、それが風呂嫌いなラピスにとっては心地よかったらしく、きちんと言う事を聞いて洗わせてくれていた。

「コレでおしまい。目をつぶって」
「ン」
ラピスの体が目をつぶるために強張ったのを確認したアキトは、ゆっくりと桶のお湯をかけていく。
ラピスを洗い終わったあとはすぐに戻らなければならないため、すばやく身体を拭いて着替えさせなければならないのだが……。
「ってラピスの着替えは!?」
気づけ、真っ先に。
普段はミナトたちに任せているため、何処にラピスの服があるか判らないアキトはオロオロしてしまう。
「クシュン!」
そうこうしているうちにラピスがくしゃみをしてしまう。いくら室内とはいえ十月も半ばを過ぎれば濡れた身体には冷たくなる。
「と、とりあえずコレを着て!」
自分の着ていたシャツを脱ぎ、ラピスに着せるアキト。
当然だがラピスには大きすぎ、袖は余りまくりの上、下着レスのラピスの下半身までしっかり隠せてしまった。いわゆる『美幼女の裸ワイシャツ』状態である。
何処のエロマンガだ! と突っ込みたいほどに似合っているが、流石にラピスはアキトのストライクゾーンからは外れているのでアキトの理性がオーバーフローする事は無かった。
「そこで待ってて! ミナトさんに服の場所を聞いてくるから!」
そう言って風呂場から出て行くアキト。
少しして……、その格好のまま、トテトテとアキトの後を追うラピスが騒動を巻き起こすのであった……。

「ミナトさん!」
「あら、アキト君。ラピスのお風呂は終わった?」
泡を食ってやってきたアキトにのんびり返すミナト。
「それは終わりましたけど、ラピスの服って何処なんですか!?」
その言葉を聞いて、ミナトは『あちゃ〜』という顔になる。
「あ〜……、それを忘れてたわね……。ルリルリ、取ってきてあげて」
「はい」
「アキト……」
ミナトに言われてルリが服を取りに行こうとした矢先、裸ワイシャツ状態のラピスが食堂の方まで来てしまった。
「ら、ラピス!?」
そのアキトの声に振り向いてしまった男性客の多数が大量の鼻血を噴き出し、あたり一面が血の海になる。
このロリコンどもめ……。

結局その日の営業は中止となり、ラピスはミナトにきつく注意を受け、アキトはルリにひざ詰め説教されていた。
……翌日からはさらに男性客が増えていたのは余談である。

 

「あらラピス、今日はそこに座るの?」
「ウン」
『裸ワイシャツ』事件の翌日の朝食の時、ラピスの座った位置。
それはアキトの隣であった。
「ラピス、そこは……」
「ココガイイ」
ルリは自分の指定席、と言おうとしたがラピスは頑として譲らなかった。
可愛い妹の始めての我が侭、と思いその日はルリが譲る事にした。
しかし、それからが本当の……合戦の始まりであった。

この日以降、ラピスは何かにつけアキトと一緒に居たがるようになる。
食事はもとより、風呂や寝る時も一緒に居たがった。
流石にトイレだけはアキトの説得によりついてこなくなったが、それでも四六時中一緒に居ることには変わりは無い。
結果、日に日にルリの感情に黒いものが混じっていくのだった……。

 

一週間が経った頃、アキトは精神的に衰弱していた。
理由は左右を固める美少女と美幼女の二人である。
ラピスがアキトにべったりになって以来、日に日に機嫌が悪くなっていくルリがついに業を煮やし、自分もアキトにべったりになったのだった。
結果、アキトにプライベートと言う物はトイレ以外無くなったと言えた。
食事の時に左右を固められるのはまだマシで、寝る時は二人ともアキトの布団に潜り込もうとするため、『五月蝿くてかなわねぇからアキトは子供部屋で寝ろ』とサイゾウからお達しが下り、ミナトとサイゾウ、アキト・ルリ・ラピスがそれぞれの部屋で寝るようになってしまった。
仕事中は包丁を持っているから近寄らないように、と厳命しているとはいえ注文を受けると二人で争うようにアキトに伝えにきたり、風呂に入れば二人で争うように背中を流しに来たりする。
すでにアキトの精神はボロボロになっていた。どのくらいボロボロかというと、あと一押しで犯罪者になりそうなほどである(笑)。
昨日に至ってはルリが裸で布団に潜りこんで来たのを『煩悩退散! 煩悩退散!』と心で唱えながら寝たほどである。

「アキト君、大丈夫〜?」
「はっはっは。ミナトさん……。勿論大丈夫ですよ。ほーらこんなに元気です」
そう言ったアキトの服装は、ジーンズは後ろ前で、シャツのボタンは掛け違えていた。
エプロンにいたっては前後逆である。
すでにかなりヤバいらしい事になっているようなので、ミナトはルリとラピスを呼んで注意をする。
「ルリルリ、ラピス。そろそろアキト君を解放してあげなさい。このままだとアキト君倒れちゃうわよ?」
「「でも……」」
口を尖らす二人にミナトは言葉を続ける。
「貴女たちがアキト君と一緒に居たい、って言うのはよく判るわ。でもそれはアキト君のプライベートを拘束していい、っていうものでもないの。そんな事ばっかりしてたらアキト君逃げちゃうわよ」
「そんな!?」
「やだ! アキトがいなくなるのやだ!」
ミナトの言葉に驚愕の表情を浮かべる二人だが、実際今のアキトではいなくなる前に倒れるのがオチである。
「だったら、せめて交代でアキト君を独占しなさい。例えば、今日はルリルリ、明日はラピス、あさってはアキト君を一人にしてあげる、っていう風にね。どこかで休む時間がないと人間壊れちゃうからね」
「はい……」
「うん……」
ミナトの提案にしぶしぶ頷くルリとラピス。
「じゃあとりあえず、今日はどっちが独占するかジャンケンででも決めて頂戴」
「はい!」
「うん!」
そして始まったジャンケンは十五分におよび、勝者ルリが本日の独占と相成ったのである。

とりあえず精神崩壊の危機から脱したアキトであったが、それはある種の先延ばしに過ぎず、いずれ決定的な何かをしてしまう事になるのだが……それが誰に対し、ナニを行うのかはその時まで秘密である。

 

そんなこんなで、さらに半月が経った頃……。
ルリとラピスとキラは学校に行っても問題なしと判断され、他のマシンチャイルドの子供━━━ハーリー━━━が通っている学校に通う事になった。

初登校の朝、ランドセルを背負ったラピスとセーラー服のルリ、そして二人の付き添いのスーツ姿のミナトが雪谷食堂の前にいた。
「じゃあ……、行ってきます」
「行ってきます……」
「じゃ、行ってきま〜す! 今日はお店手伝えなくてゴメンなさいね」
ルリとラピスを連れたミナトがすまなそうに言うのを苦笑して返すサイゾウ。
「なに、元々一人でやってきたんだ。一日ぐらい手伝われなくても大丈夫だよ。嬢ちゃんたちも頑張って勉強してきな」
そう言うサイゾウのそばに、アキトの姿はなかった。
「はい……」
「うん……」
アキトの見送りがなかったためか、ちょっと元気の無い二人であった。

三人が登校したあと、サイゾウは部屋の奥に向かって声をかけた。
「で、アキト。お前は何してる?」
「な、何って……」
うろたえるアキト。
その服装はいつもと違い……、何故か『天空ケン』の戦闘服姿だった。
勿論ヤマダからの餞別である(笑)。
「や、やっぱりちょっと心配なんで馴染めるかどうか見ておこうかと……」
その行動は『保護者』として間違ってはいないが、その格好は『社会人』として大いに間違っているような気がする(笑)。
「いくらなんでもその格好は目立つだろうが、このタコ! もちっと目立たねぇ服装にしてこい……。こう…普段と違う色合いにするだけで結構気づかないものだぞ。お前は黄色とかオレンジとかが多いから黒にでもするとかよ」
「は、はい」
そう言って部屋に引っ込むアキト。

「じゃ、行ってきます」
着替えてきたアキトの姿を見て、最早何も言えなくなったサイゾウ。
沈黙を了承と取ったか、アキトはルリたちの後を追った。

それから数分して……。
「あの馬鹿……。今度ミナト嬢ちゃんに服のセンスを鍛えてもらわなきゃダメだな……」
アキトが先ほど着替えた服装……。それは、顔の半分を覆うかというようなバイザーに全身ぴっちりのタイツのような真っ黒いスーツに黒いマント。
要するに黒い王子様の格好である(大笑)。
確かにすぐに誰かの判別はつきづらいかもしれないが、それ以上に怪しすぎる格好である。
ちなみに何でそんなものを持っていたかと言うと、地球に来てからのバイト先に『ヒーローショーの戦闘員』というものがあり、その時の服を破いてしまったため買い取らされたからであった。

 

「ハルカ・ルリです。よろしくお願いします」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっ!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
ルリの自己紹介にいきなり絶叫が上がるルリのクラス。
勿論声を上げているのは野郎ばかりである。
「すっげぇ可愛い娘じゃん!」
「これで味気ない学校生活に花が!」
「ちょっと胸が薄いけどそれがまたイイ!」
などと騒いでいる男子生徒の他にも、
(イイねぇ……ああいうすました顔の女をヒイヒイ言わせるのも面白れぇ……)
など不埒な事を考えている者もいたが、それを実行に移すことは出来なかった。
何故なら……オモイカネがこの学校のセキュリティをハッキングしており、そのような相談をしていた生徒を次々とネルガルのSSに連絡し、かつ、その家族にも累が及ぶようにしていたのである。
そのため、そういう生徒は次々に退学となった挙句、親が会社からクビを言い渡されるという事態になり、その後行方不明になる、と言う事が相次いだため、ルリの周囲にはまともな人間ばかりが集まるようになっていった。
なぜオモイカネがルリの学校の事をハッキング出来ていたかというと、ルリによって鍛えられた能力とミナトの指示によるものであった。
作戦行動中でもナデシコはネルガルのメインフレームと繋がっており、これを経由することで学校のセキュリティに忍び込み、その情報をネルガルに流してSSを動かすことでルリたちの安全を確保するのがミナトの目的だったのだ。
ゆえにルリはゆったりとした学校生活を送れるようになったのだった。
ただし、毎日のように下駄箱やら机やらにラブレターが溢れるほどに入るようになるのはその数日後である。
……この時代でもあったのね、ラブレター……。

 

「ラピス・ラズリ・ハルカ……。よろしく」
「マキビ・キラです。よろしく」
ラピスとキラは同じクラスへの転入となった。
ちなみにハーリーとも同じクラスである。
何かあった時のフォローのためだが、どれだけ役に立つかはまだ未知数である。
「ラピス君は中等部二年生のハルカ・ルリ君の妹さんだ。キラ君は名前で判ったかもしれないがそこのマキビ・ハリ君の妹さんだ。みんな仲良くするように」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「は〜い!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
教師の言葉に元気に返事をする生徒たち。
この辺は流石に小学校低学年の反応であった。
「じゃあ二人はそこの奥の席に座ってください。向かって右がハルカ君、左がマキビ君だ」
「「はい」」
そう言って席に向かう二人。二人の学校生活は幕を開けたのだった。

「ねぇねぇ! ラピスちゃんは前は何処の学校にいたの?」
「キラちゃんの好きな食べ物って何?」
休み時間になると転入生恒例の質問攻めに遭う二人。
しかし、こんな風に詰め寄られたことの無い二人は軽いパニックを起こしそうになる。
それに気づいたハーリーが皆を止める。
「あ、あのね! みんな、ちょっと聞いて!!」
「「「「「「何、マキビ君?」」」」」」
クラス全員(ラピス・キラも含む)の視線を受けて一瞬たじろぐハーリーだが、勇気を振り絞って事前に打ち合わせていた話をする。
「う、うん。あのね、キラとラピスちゃんってこの間までずっと病院にいて学校に来たこと無いんだって」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ええ〜〜〜!?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
ハーリーの言葉に全員が一斉に『本当なの!?』と二人に顔を向ける。
「う、うん」
「そう……」
もし聞かれたらそう答えるように言われていたためその通りに答える二人。
ハーリー自身、一歩間違えれば自分がそうなっていたかもしれないことをよく聞かされていたので二人を守ろうと必死であった。
「そっか〜。じゃあ、私たちが初めてのクラスメートだね!」
「そうだね! 判んない事があったら何でも聞いてね!」
ハーリーの言葉は皆の中で真実として受け入れられ、ラピスたちは学校での最初の一歩を踏み出した。
「あれ? でも何でマキビ君がラピスちゃんのことまで知ってるの?」
「そうだね。 なんで〜?」
その事に気づいた子がハーリーに尋ねる。
「え、えっと……。キラを引き取る時にラピスちゃんにも会ってるんだよ! 二人は同じ所にいたから!」
間違いではないが……、意外とディスインフォメーションが上手いのかもしれない(笑)。
「ふ〜ん、そうなんだ〜」
「そうそう!(それにルリさんからもよろしくって言われたし……)」
やっぱりルリに惚れたらしいハーリーだった……。アキトからも頼まれているのだが、そっちのほうは忘れているようだ。

「確か……ハーリー君と言ったか……。今度、お礼をしなきゃいけないな……」
アキトは学校そばの草むらから学校の中を盗み聞きしていた。
その道具はウリバタケ謹製室内盗聴器「聞き耳君XX(ダブルエックス)」である(笑)。
━━━━元々はウリバタケ率いる整備班の一部が女性クルーの部屋の覗きに使うつもりだったものをミナトが押収したものであった(笑)。
形状的には二十世紀末に開発されたレーザータイプ盗聴器とほぼ同じであるが、その能力はウリバタケの改造により圧倒的に上げられていた。
その能力をフルに使うことで窓の無い室内……というか戦艦の個室でも盗聴できるため、ミナト率いる女性陣によってフルボッコにされた上で押収されたそれをナデシコから降りる時に持ってきたのだった━━━━
ルリ以上に人とのふれあいを知らないラピスがうまくやっていけるか……。不安になったアキトは、一応ルリと同じネルガルのマシンチャイルドであり、皮肉にもルリがいたため学校に通えていたハーリーに学校でのフォローを頼んだが……、どうやら上手くいっているらしい。

ほっと胸をなでおろすアキト。
そのアキトに後ろから声がかかる。
「あ〜、キミキミ。そこで何をしてるのかね?」
「へ?」
振り向くとそこには、おそらく学校の雇っている警備員であろう、二人の屈強そうな男がいた。
「いや俺は……」
言い訳しようにもその怪しいスタイルでは説得力が無かった。
「とりあえず向こうの警備室で話を聞こうか?」
「いや、だから!」
両肩を警備員につかまれ、連行されるアキトであった……。

 

リリリリーン! リリリリーン!

古めかしい黒電話(っていうか古すぎだ)の音が雪谷食堂に鳴り響いた。
アキトが出かけてしまったため一人で仕込みをしているサイゾウは火を止めて電話に近づく。
「はい、雪谷食堂……。はい、私がユキタニ・サイゾウですが……。はい……はい……、ああ、確かにそいつはウチの従業員だよ。なんでも妹たちが今日からそちらの学校に行くとかで心配だっつって出て行ったんだが……。ああ、今日から中等部に入ったハルカ・ルリって言う娘と初等部に入ったラピス・ラズリ・ハルカって言う娘がそいつの妹だよ……。まあ、血は繋がってないがよ。ああ、そうだ。その娘達に聞いてみてくれ。じゃ、そういうことで」
そう言って電話を切るサイゾウ。
火を着け直しながらぼやくサイゾウ。
「あの馬鹿たれが……。今日の分のバイト料は無しだな……」
とりあえず、今までのように一人で店を開けるサイゾウだった……。

 

アキトの件についてはまだ校舎内にいたミナトとルリに話が行き、警備室に出向いたミナトとルリが見たものは黒い王子の格好をしたアキトだった。
「何をしているんですか、アキトさん?」
「いやその……、ルリちゃんたちが学校になじめているか心配で……」
「それでそんな変な格好して覗きをしていた、と?」
さすがに黒い王子様の格好は問題だろう。どう見ても変質者だ。
ミナトは『未来の記憶』で知っていたが、改めて見るとかなり問題な格好である。未来のアキトはなんでこの格好で出歩けたのだろう? と、不思議に思うミナトであった。
一方、ミナトとルリの視線が痛いらしく、どうにかして逃れようとするアキトだが、狭い警備員室の中である以上逃げられるわけは無く……、ルリに平謝りに謝ってどうにか解放してもらった。
その後、すぐに店に戻るようにミナトに命令されたアキトは全力疾走で雪谷食堂まで帰り……、佐世保市内に『疾走する黒マント』という都市伝説を残したのだが、どうでもいいので詳細は割愛する。

ちなみに、クラスメイトの『好きな人いる?』と言う質問に、ラピスは『アキト』、キラは『アキトお兄ちゃん』と答え、ルリは『アキトさん』と答えたためクラスメイトの中に『アキトって誰?』という疑問が発生し……、雪谷食堂にくる女性客がさらに増えたのは余談である。
さらに余談だが、この答えを聞いたハーリーと中等部の男子生徒はアキトに対し敵意を燃やしていた(笑)。

 

あとがき

ども、喜竹です。
大方の読者の予想を予想をぶっちぎり、ここで黒い王子様出しちゃいました(^_^;)。
捻くれ作者の本領発揮です。

増えた女性客はラピスのクラスメイトの母親やお姉さん方です。
相変わらずのフェロモン野郎ですねー(-_-#)。
許しがたし!
これからアキトの周りはハーレム化していくのか!?
それはルリちゃん次第です。(オイ!?)

Web拍手も感謝です。執筆の励みになっています。
十月十三日には『逆行のミナト』で561件、短編集でも1062件もの拍手が一時間以内に来ていました。
計算すると約二秒に一回は拍手があった勘定になります。
かなり驚きました。
またWeb拍手内で今後の希望なども寄せられていますが、今後の展開もありますので全てのご希望に添える事は出来ないと思いますがご容赦の程を。
一応、手駒は多いほうがいいので増やす予定ですが。

また、現在ナデシコの新しいシリーズを作成中。
その内発表しますのでお待ちください。

追伸。
GNアームズType−Dゲットぉぉぉっ!
いやー、たまたま行った店に置いてあって速攻ゲットしました。
他の店には無かったのでかなりラッキーだったですね。
やっとあの名ゼリフ『悪いが今は狙い撃てないんでね……。圧倒させてもらうぜ!』と『コイツを殺らなきゃ……、仇をとらなきゃ、俺は前に進めねぇ……。世界とも向き合えねぇ……。だからさ……、狙い撃つぜぇぇぇっ!』が再現できます。
でもまだスローネツヴァイを買ってなかったか。買わないとあのシーンは再現できないな。
これでもう思い残すことは……多々有りますんで死ぬ気はありませんが(笑)。





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