『神様は中学生』

第六話

作者 くま

 

 

 

 

 

ヒンさんのヒンは、貧乏神の貧。

という訳で、

3番目の使徒の来襲を待たずして、人類は滅亡の危機に瀕していた。

セカンドインパクト以降、二度目となる世界恐慌が始まったからだった。

それはセカンドインパクト直後に起こったものよりも酷い有様で、

人類がセカンドインパクトから十年以上かけて築き上げたライフラインを、

僅か半月にも満たない時間でずたずたにしてしまった。

当然、その影響は第三東京都市においても例外ではなく、

此処が作られた目的である使徒迎撃機能も、今では殆ど失われてしまった。

というか、此処が世界恐慌の発端なのだから、それは当たり前なんだろう。

正確には、第三東京を管理するネルフという組織を発端に、世界恐慌は始まった。

その原因は、タマの中にいる貧乏神であるヒンさん。

そもそもヒンという名前自体が偽名であり、正確には貧乏神さんな訳で、通称は貧ちゃんなのだそうだ。

なんのひねりも無いヒンという偽名は、タマが考えたものらしい。

まあ、タマはネコだしねぇ…。

そのヒンさんこと貧乏神さんなんだけど、実はネルフに所属している事になっている。

リツコさんの作ってくれたIDカードが、その動かぬ証拠だ。

結果的に、ネルフは知らない内に貧乏神を進んで迎え入れた事になっていた。

最初の内こそ、ゆりえ先輩の神通力で、貧乏神さんの力を抑える事が出来ていたけれど、

その神通力も徐々に効果が薄れ、今では殆ど意味を成さないものになっているそうだ。

そして無自覚の内に力を発揮してしまう貧乏神さんにより、

天文学的な数値の借金を抱えて、ネルフは倒産する事になった。

厳密な意味ではネルフは会社とかでは無いので倒産ではないけど。

たまたま、目にした貧乏神さんことヒンさんの力は凄いものだった。

僕の落とした500円玉をヒンさんが拾ったら、何故だか1円玉に替わっていた。

なんというか、どういう原理とかどんな理屈っていうレベルじゃないんだと僕は実感した。

とにかく借金のし過ぎで、ネルフの関係組織である人類補完委員会共々、

その活動の停止を言い渡された、と言うのが実際のところらしい。

まあ、僕も聞いただけの話なので、ホントのホントは良く解らないけど。

そして、その程度があまりにも酷いという事で、

臨時召集された国連議会において、とある特別決議が全会一致で裁決されていた。

その結果、使徒迎撃に関る組織の責任ある立場の人に対し、

強制連行及びその私財の没収という厳しい処分が行われることになった。

そして、僕も所属するネルフにおいてもそれは例外ではなく、

司令、副司令を含め、上から順に幾つかの首が飛んだ。

他の組織(というか人類補完委員会?)と同じように、その責任者の私財にまで調査の手は入ったそうだ。

父さんの息子と言う事で、僕のところにも国連から派遣された担当官が来たのは記憶に新しい。

しばらくして、国連から派遣された憲兵さん達に父さん達は連れて行かれ、

それ以降において、僕は幹部の人たちの誰とも会った事が無かった。

死刑、なんて事にはならないんだろうけど、もう二度と会えないかもしれないと僕は考えていた。

それらの処分の影響は、ネルフの末端の一員である僕に及んでいた。

住んでいたマンションを追い出され、今の僕は夜露をしのぐ場所にすら困る状態になっていた。

そんな訳で、僕は今、マンションの近所にある公園に設置されたコンクリート製の遊具の中で寝泊りしていた。

公園に水道は設置されていて水に不自由する事はないし、

凍えるほど寒い日も無いので、割りとのんびりとしたその日暮らしを送っている。

ネルフが活動停止をしている以上、ネルフが僕に何かを強要する訳でもないし…。

そして僕は今日も公園のベンチ座って、休憩がてら空を見上げて過ごしていた。

 

「すんませんです」

 

僕と同じベンチに座って、そんな風に頭を下げてくるのは貧乏神ことヒンさん。

当初、責任を感じてこの町から出ようとしたヒンさんだったけど、僕はそれを引き止めた。

もちろん、貧乏が好きだと言うわけじゃなくて、

タマとヒンさんが元いたゆりえ先輩のトコに帰る時の事を考えたからだった。

こうして単純にこの第三東京から出て行こうとするのは、多分ヒンさんに世界を渡る力が無いからだろう。

あのゆりえ先輩だって、特別にこの世界へと渡って来たみたいな事を言ってたし。

それなら、ゆりえ先輩とかが迎えに来た時にそなえて、此処に居た方が良いと説得したのだ。

ヒンさんがこの第三東京を出てふらふらしてたら、迎えにきた人?も探さなけりゃいけなくなるしね。

 

「気にしなくても良いですよ。

 こんな暮らしも在りかな、って今では思ってますし」

 

それは別に慰めでもなんでもなくて本心から出た言葉だった。

僕の所属していたネルフが事実上解散している今、

僕は僕で生きていかなけりゃならないのは確かなことでもある。

手に職、足に職と大きな声で言えるほどではないけれど、

幸い僕には幼い頃から習わせてもらっていた事もあり、それなりにチェロが弾けた。

だから、今の僕は流しのチェリストとして日々の糧を得ている。

ある意味、恐慌の中心地たる第三東京において、流しのチェリストが日銭を稼げる可能性は殆ど無い。

ただし、それは一般の人を相手にした場合に話だった。

人でない方々を相手にすればそれなりに得るものはあり、普通に食べていく分には困る事はなかった。

もちろん現金収入がある訳じゃなく、自生している野菜や果物等をお代として置いていってくれるのだ。

出来損ないとは言えど、チェロを弾く神様は日本では珍しい、と言うのがそれなりに人気の出てる一因らしい。

ただ、集まるものの内に割と生の食材が多いのが難点だけど。

そうしてチェロで生計を立てる日が来るなんて僕は想像外の展開で、

それでもひねもすチェロを弾いて暮らす生活は、どうやら僕の性に合っている様に思えていた。

こうしてチェロの練習の休憩がてらに、空を見上げるのもお気に入りの一つだ。

 

(シンジが良いって言うんだし、貧ちゃんは悪くないのよ)


「い、いや、ですが、流石にそういう訳にも…」

 

大きくあくびをしながらのタマの言葉に、ヒンさんは慌ててフォロー?を入れる。

 

(というか、シンジもゆりえちゃんと同じに神サマなんでしょ?

 だったらシンジが何とかすれば良いんじゃないの?)

 

とさらに続けられたタマの言葉はある意味クリティカルだった。

まあ、確かにタマの言うとおりに、僕には神通力なんて使えないし、

ヒンさんの力をまるで抑えることが出来ないでいる。

というか、結構ダメな僕だからこそ、こうして繰り返している訳なんだけどね。

ネコのタマに指摘されるまでも無く…。

何となく何かがこぼれないように見上げる空は、何時もと同じに青かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザッ。

とその時、僕の直ぐ傍で靴が砂をはむ音が聞こえた。

音の方へと視線を向けると、僕のすぐ傍に一人の少女が立っていた。

蒼銀の髪に赤い瞳の少女。

言うまでもなく、綾波レイ(ただし4人目)だった。

綾波は珍しくというか、前回も含めて初めて見る格好をしていた。

僕にとっては見慣れている第一中学の制服では在るのだけれど、

その手しているのが、通学用のカバンではなく大きなスーツケースだった。

何となく事情を察したものの、僕は本人に直接確かめてみる事にした。

 

「珍しいね、綾波がスーツケースなんて持ってるなんて。何処かへ旅行にでも行くの?」

 

あえてすっとぼけて訊ねる僕。

もちろん今のネルフには、チルドレンを旅行させる余裕がないのを承知の上での質問だ。

 

「―――アパート、追い出されたの。

 ネルフでは家賃が払えないからって」

 

僕の問い掛けに続けて返ってきた綾波の答え。

僕はやっぱり冗談は通じないかと思いながら、そっか、とだけ答えなかった。

というか、綾波のアパートってあのアパートな訳で。

ネルフの懐事情は何となく察していたけれど、そこまでとは…。

むしろ、あそこが賃貸だった事に、感心を覚える僕だったけど。

そんな事を考えていると、綾波が僕の隣に音も無く座る。

何も肩がくっつくほど密着する必要はないだろうに、と僕は思っていた。

というか僕には綾波に対する接触禁止令が出されてるんだけど、その辺を解ってるのかな?

まあ、その禁止令をだしたネルフはこんな状態だけれどさ。

軽くため息を吐きながらだけれど、

僕は久しぶりに感じる他人の体温というものに、少しだけ安心していた。

まあ、身近なところだとタマが居てくれたけど、ネコじゃあねぇ?

 

「どうして?」


「へ?」

 

脈絡の全く無い突然の綾波の問い掛けに、僕は随分と間の抜けた返事を返してしまう。

何事か顔を綾波の方に向けると、綾波の赤い瞳が責めるようにじっと僕を見返してきた。

というか、綾波、顔近いよ。

 

「どうして私を無に還さないの?

 赤木博士が言っていたわ、貴方に触れると私は消えてしまう。

 だから、貴方と私の接触を禁じたのだと」

 

ああ、そうですか、つまり全部解ってやってたんですね、綾波さん。

正直、僕には無に還りたいという綾波の気持ちが理解できないのですよ。

まあ、僕の心だって自分自身で完全に把握しているわけではないし、

ましてや他人のことなんて、解るわけないんだけどね。

そんな当たり前の事に思い至りつつも、じっと僕を見つめるだけの綾波の視線に負けてしまう。

そうして綾波を無視することが出来なくなった僕は、やむなく口を開く事にした。

 

「あのさ、綾波。

 綾波は、2つほど勘違いをしてるよ。

 まずひとつ、僕に綾波が触れても、必ずしも綾波が消えてしまう訳じゃないんだよ。

 ある特別な方法を取らなければ、綾波が消えてしまうことは無いんだよ」

 

大げさに言った特別な方法とは、僕の手と額に浮かぶ印を押し付けるってことなんだけど、

それを綾波いうつもりは僕にはないし、それを実行するつもりもなかった。

 

「そしてもう1つは、綾波が消えても無に還るわけじゃないんだ。

 原理は僕にも良く解らないけど、本部にいる普通の人には見えない綾波と合わさるだけだよ。

 僕の知ってる2人目と3人目の綾波はそうだったし、君もきっとそうなるんだと思うよ。

 綾波に関る何かがあそこには在ったりするのかも、って僕は考えてる。

 あの水槽以外の何かがね…、綾波は何か心当たりが無い?」

 

告げられた言葉に一瞬硬直し、そしてあからさまに落胆する綾波。

足元に視線を落とすとそのまま、黙り込んでしまう。

まあ、綾波は元から口数が少ない方ではあるんだけどね。

 

「でさ、どうして禁止されている僕との接触をしてまで、無に還りたいと思ったの?」

 

きっと答えてくれないだろう、と思いながらも僕は俯いたままの綾波に訊ねてみた。

けれどその予想は外れ、綾波はゆっくりとだけど僕の問い掛けに答えてきた。

 

「私には何も無くなってしまったから…。

 司令は私に何も告げずに、私を置いて居なくなってしまった。

 そしてエヴァに乗るために生まれてきた私には、乗るべきエヴァがないもの。

 生きる目的と方法、その両方を私は失くしてしまった…」

 

膝の上においた手を握り、淡々とけどどこか哀しげに語る綾波。

確かにネルフの司令である父さんは此処から去っていった、というか連行されて行ってしまった。

当然、その際に綾波に何か言っていくような余裕があったとは思えない。

もちろん、僕にだって一言も無かった。

それをなんとも僕が思わないのを、悲しいことになるにのかどうかの判断を、僕は保留する事にした。

それとエヴァの事だけど、予算なんてものがマイナス計上されているネルフに、

新たなエヴァの起動実験を行う事なんて出来る訳が無かった。

起動実験とはいえ、タダでできるものではないし、

今の状況下においては零号機を動かさないのも妥当な判断なのだろう。

ここ最近の僕と初号機とのシンクロテストですら、

ままならない状態であるからして、当然といえば当然かもしれない。

まあ、そんな状態という事は、第三東京の使徒迎撃能力が、

ずんぶんと疑わしいものになっていると、重ね重ね僕には思えて仕方が無い。

そんな事を考えていて、遅まきながら次の使徒の事を僕は思い出していた。

前と同じ順番で同じ使徒が来るという前提ではあるけれど、

次に来るのはあの強力な光線?を放ってきた青くて正八面体っぽい使徒だったはず。

同時に前回の時の戦いで物凄く痛い思いをしたのを思い出し、また今回もそうなるのかと少し凹んだ。

でも、前回は日本中のエネルギーを集めた銃で打ち抜いて勝ったような…。

あれ?

それってつまり…。

今の傾くどころか地中に埋まってる状態のネルフじゃ、前回と同じ作戦は取れないって事?

というか、零号機も起動してないんじゃ、あの時の作戦で言う盾が居ない…。

使徒との二度目の戦いも3回目にして最大のピンチを迎えたと言えるかも知れない。

取り乱してもおかしく無いような状態なのに、

それでも僕の心は平坦で、困ったなーとは思ってもそれによって焦ったりする気持ちは全然無かった。

だから僕は隣に座る綾波に、何も勘ぐられないように曖昧な笑みを作って見せる事だってできた。

もちろん、訳の解って無い綾波は、首を傾げて応えてくるだけだったけど。

まあ、ここは一つ臨機応変に行こう。

つまるところ、出たトコ任せでゴーなわけで。

そう決心した僕だけれど、

ある意味それって、ネルフの対使徒戦における対応と同じだってことに、すぐ気がついた。

その決心が良かったのか悪かったのか、その後、事態はすぐに動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファースト、及びサードチルドレンを確保しました。

 ポイントD−17の南西に位置する公園です。

 引き続き両名の護衛に入ります」

 

ベンチに座っていた僕とタマと綾波を自動小銃で武装した一団が取り囲む。

その中でもリーダーっぽい人が、無線機に向けてそう告げて、

残りの人達は僕らを中心に公園中に散開していった。

その人たちが身を包んでいる都市迷彩が施された服の背中には、大きくUNの文字が書かれている。

その銃口が僕に向けられない事には安心したけれど、当然、僕には訳が解って居なかった。

いや、解ろうとしなかったというのが正しいのかもしれない。

だって、チルドレンを確保しなければいけない事態なんて、たった一つしかないのだから。

 

「あの、使徒が出たんですか?」

 

さきほどどこかに通信を入れていたリーダーっぽい人にそう訊ねてみる。

けれど、その人は何も答えず、

少しの異常も見逃さないように、周囲へと鋭い視線を送っているだけだった。

聞こえなかったのかな?そう思った僕は今度はもっと大きな声で訊いてみることにした。

 

「あの「すまない、私には君の問い掛けに答える権限がないのだ」

 

背中を向けたまま僕の先を制すかたちで返事をする男の人。

けどそれは、僕の言葉を肯定したのと同じなわけで。

僕はやっぱり使徒が来ているのだと事実を確認した。

そうなると、僕は初号機と一緒に使徒と戦うことになるのだけれど、綾波はどうするのかな?

そんな疑問を思い浮かべながら隣に座る綾波へと視線を向ける。

そこには膝の上で拳を握り締め、先ほどと同じように地に視線を落としている綾波の姿があった。

 

「私には何も出来ない」

 

どうかしたの?と訊ねる僕に綾波はそんな答えを返してくる。

確かに零号機が動ける状態に無い以上、綾波が乗るエヴァは無い。

僕が初号機に乗る以上、エヴァのない綾波の出番は、

それこそ僕に何らかの異常が起きて初号機に乗れなくなった時くらいだろう。

そういえば、綾波の零号機って、前回の時にライフルを構える初号機の盾になってくれたんだっけ。

今回はそういう訳にも行かないし、前回と比べれば割と大変かもしれない。

けど、それでも今の初号機なら、なんとかしてくれるって僕は思ってるけどね。

何せ操縦者がへっぽこの僕で無いというのが、一番大きく信頼を置いている点なのだ。

・・・あ、自分で考えてて、なんだか何かがこぼれそうになってきた。

とりあえず上を向いて、僕は青空を眺める事にする。

そこにはやはり先ほど見上げたのと同じ青空が広がっていた。

前回…か。

空を見上げていて前回の使徒との戦いの事を思い出した。

正確には使徒を倒した後の事だ。

肉が焼ける痛みに顔をしかめつつ、

僕はエントリープラグのハッチを手動で開き、

加熱したLCLを排出して中の綾波の様子を確認する。

そして、その場ではじめて見た綾波の笑顔は、印象深く僕の記憶にも留まっている。

そして今回出会った4人の綾波達の明るい笑顔を、僕は一度も見たことが無い事に気がついた。

今回は前回とは全然ちがう使徒戦になるのだろうし、前回のような笑顔は見れないのかもしれない。

けど、それは随分と勿体無い気がしてきた。

だから僕は、綾波にこう提案した。

 

「ねえ、綾波。綾波に一つ頼みたい事が在るんだけど良いかな?」

 

そう問いかけた僕に綾波は無言ではあるけれど、

俯いていた顔を上げて視線で僕に何を?と問い返してくる。

 

「次の使徒との戦いが終わった後に、帰ってきた僕を、おかえりって出迎えて欲しいんだ。

 そんなに難しい事じゃないけれど、頼めるかな?」

 

更に訊ね返す僕に綾波はじっと見つめ返すという行動を取り、

やがて考えが纏まったのかコクンと小さく頷いた。

 

「ありがとう、綾波。

 あ、それと、お帰りって言うのは笑顔付きで頼むよ。

 って、そう言えば綾波が笑ってる所って見たこと無いけど、綾波は笑えるの?」

 

言質は取ったとばかりにたたみかける僕。

けっこう失礼な事を言っている気もするけど、多分、相手が綾波だから大丈夫…のはず。

前回の経験なんだけど、綾波ってそういう部分に疎い所があるし。

そして結構ひどい事を言われた筈の綾波はなにやら真剣な表情で考え始めた。

そして結論を導き出したのか、ゆっくりと口を開く。

 

「……解らない。

 あの水槽の中で笑っていたという情報はあるし、知識では知っているけれど、

 この私は未だ自発的に笑った事が無いから」

 

綾波が4人目になってからはまだ間もない事だし、

ネルフがこんな状態ではそれも仕方が無いとも僕には思えた。

けど聞き様によっては結構悲惨にも聞こえる内容を、こうもサラッと言っちゃうのは如何なんだろう?

まあ、聞いた僕が悪いのかも知れないけれど…。

ともかく、やった事がないなら練習あるのみ。

という事で、綾波には実際に笑顔を作ってもらう事にした。

一番の問題は僕のうっすーい笑顔がお手本というところだろう。

こういうのは、感情の起伏が激しくてオーバーなリアクションを取るアスカの方が、

お手本としてかなり向いているんだけど…。

でもまあ、無いものねだりをしても、仕方が無いのは確かな事で…。

 

「3、2、1、ハイ!」

 

で、実際に合図と供に綾波に笑顔を作ってもらった。

…はずなんけど、綾波の表情はピクリとも動かない。

どうしたの?と聞くと、コレまで使っていない筋肉を動かすには慣れが必要、との答え。

なるほどと感心する反面、ある意味馴れ合いすぎている僕の薄っぺらい笑みでは、

お手本として不足である事を実感した。

コホンと一つ咳払いをし、先ずは僕が笑顔の練習。

あえて大仰に唇を吊り上げて、白い歯を見せて笑みを作る。

顔が引きつりそうになったけど、これなら綾波も解りやすかった様子で、

コクコクとしきりに頷いている。

まあ、何を理解したのかは知らないけど…。

そして、改めて綾波の練習の為に、もう一度合図を送ってみた。

 

「3、2、1、ハイ!」

 

合図と供に綾波の見せた表情に、僕は思わず引いてしまう。

綾波の見せた笑顔が、ウケケケ、とかいう笑い声が似合いそうな笑顔だったからだ。

前回の時のあの笑みはある意味奇跡だったのかも。

そんな事を思いながら、僕はしばらく綾波の笑顔の練習に付き合うことにする。

奇跡は起こすものだって、誰かに言われた様な気もするしね。

幾度と無く、僕の掛け声で笑顔を作る綾波。

ついでにその場にいたUNの男の人にも、綾波の練習のお手本になってもらったりした。

ただ、その前途は、限りなく多難だった…。

 

 

 

続く


あとがき

ぼちぼちの更新となりました、くまです。

そんな訳で、詳細な描写もなく幾人かが退場しちゃいました。

チェリストシンジの誕生と言い、きっと何処にでもあるようなテンプレな展開…でもないか。

そしてスーパーなシンジ君は今回綾波フラグを立てました。

綾波が次の綾波に移ると、リセットされる非常に不安定なフラグですが…。

ともあれ、自分の話を読んでいただいた方に感謝を。

そしてよろしければ、次の話も読んでやっていただければ幸いに思います。

あと、感想を頂けると嬉しかったりします。

それではまた。

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