妖精、その心は今・・・













いつも背中を見ていた・・・・・





あの背中に追いつきたくて、いつも背伸びをしていた・・・・・





あの人はいつも優しい笑顔を見せてくれた・・・・・





その笑顔が大好きだった・・・・・ちがう・・好きになった・・・





いつからだろうか、自分の中の気持ちが変わっていったのは・・・・・





その気持ちに気づいたとき、あの人の隣には彼女がいた・・・・・





私は彼女のことも大好きだった・・でも・・・・





いつしか彼女のことがうらやましくなった・・・・・





でも私はあの人の義妹・・・あの人の目にはそれ以上に映っていない・・・・・





だから私は気持ちを伝えない・・いや、伝えられない・・・・・この関係が壊れてし まいそうだったから・・・・・





あの人は結婚した・・・最上級の笑顔で、どこか照れくさそうに言った。


「ルリちゃん、俺・・・ユリカと結婚するよ」





さまざまな紆余曲折を経てあの人は結婚した。旧ナデシコクルーはそれぞれ言い方は 違えど祝福した。





披露宴で私は遠くからあの人を眺めていた。すると、あの人に近づく影に気づいた。

「アキト!あのころのお前はフラフラと情けなかったが、今は違う。いっちょまえの 男になったな・・・」

ウリバタケさんがあの人の背中を叩きながらそう言った。

「セイヤさん・・・情けなかったってひどくないですか?」

あの人は鼻の頭を指でかきながら返した。

「まあそういうなよ。成長したってことさ。」

ウリバタケさんはそういうときびすを返し人ごみの中へ消えていった。

「・・・・ありがとうございます。」

あの人はその背中に向かってそうつぶやいた。





「テンカワくん・・・やはり君にはかなわなかったようだね。」

「当たり前じゃない!あなた入り込めるとでも思ってたの!?」

髪の長いキザな男・・・・アカツキ・ナガレがそういって近づいてくると、その後ろ をついてきたエリナ・キンジョウ・ウォンがたしなめるように言った。

「アカツキ、エリナさん・・・今日は来てくれてありがとう。」

「当たり前じゃないか。親友の結婚式だよ、来ないほうがどうかしてるさ。」

アカツキさんが髪をかき上げながらそう言うと、エリナさんが顔をしかめながらつぶ やく。

「この極楽トンボ、また仕事サボってるのよ・・・まあ今日は大目に見ますけど。そ れよりアキトくん、おめでとう。」

後半は100人中100人見惚れてしまいそうな笑顔だった。

「エリナさん、しっかりとこいつの手綱とってくださいね。人の女房ひっかけようと してた奴なんですから。」

あの人は少しあきれたように言う。しかし表情は穏やかだった。

「まかせなさい!さ、行くわよ極楽トンボ。」

「痛い、痛いよエリナ君。どうせなら手を引っ張ってくれないと・・・・。」

エリナさんに耳を引っ張られ、大粒の汗を流しながらアカツキさんは帰っていった。

あの人はその姿に苦笑しつつも見送った。





「アキトさん・・・・」

「メグミちゃん・・・・その・・・今日は来てくれてありがとう。」

最近、芸能活動も軌道にのったメグミさんが話しかけた。

「あ〜あ・・・やっぱりとられちゃったな・・。そんな気はしてたんですけどね。」

メグミさんはいたずらっぽく微笑みながらそう言った。

「メグミちゃん、ごめん。俺は・・・」

「ストップ!それ以上は言わないでください。決心が鈍りそうだから・・・。」

「・・・・・」

「アキトさん・・・おめでとうございます。」

そう言って微笑むと、振り返りみんなのもとへとかけていった。目にはうっすらと涙 を浮かべて・・・。

「メグミちゃん・・・・ありがとう・・・。」

あの人はどこか吹っ切れた表情でそう言った。





「テンカワさん、おめでとうございます。」

「テンカワ・・・その・・なんだ・・・よくやった。」

ちょび髭を生やした男・・・プロスさんとどこか浮いているいかつい男・・ゴートさ んが近づく。

「プロスさん、ありがとうございます。ゴートさん、それ祝いの言葉ですか?」

「むぅ」

あの人がからかうように言うと、ゴートさんは恥ずかしかったのか目をそらせながら うなった。

「なにはともわれ、落ち着くところに落ち着いたかんじですね。では私どもはこの辺 で。なにやらリョーコさんたちが騒いでいらっしゃったものですから、はい。ゴート 君行きますよ。」

そう言ってゴートさんを促すと、二人は足早に去ったいった。





「テンカワー!!どこだ!おい、テンカワー!!」

「ちょっとー、リョーコってばここは披露宴なんだよ!?」

「大きい円・・・広い円・・・披露宴・・・ククッ・・

なにやら大きな声がしたかと思うと、彼女らはあの人の前に姿を現した。

「あ!!こんなとこにいやがったのか!!てめぇ一発殴らせろ!!」

「ちょっと落ちつきなよー。あ、アキト君おめでとー。」

「あいつ目が飛び出してるよ・・・・おー目が出とぅ・・・・おめ でとう・・・・ククッ・・・

リョーコさんが殴りかかろうとするのを必死で止めながらヒカルさんがそういうと、 イズミさんの寒いギャグが炸裂し、場が凍りついた。

「リョーコちゃん、ヒカルちゃん、それに・・・イズミさんも・・。今日は来てくれ てありがとう。」

そういってあの人が微笑むと、リョーコさんは顔を真っ赤にして動きを止める。

「テンカワ・・・その・・・あの・・・えぇーい湿っぽくなるのはいやだからな!今 日は祝いに来てやったぜ!!文句あるか!?」

「リョーコってばね、今日楽しみにしてたんだよ。久しぶりにアキト君に・・ム ガッ!?」

「ヒ、ヒカルッ!?お前それは言うなって言っただろうが!!」

「あれぇ〜!?そうだったっけぇ〜?」

そう言ってヒカルさんが目を細めて言うと、からかいモードのイズミさんも参戦して きた。あの人は苦笑しながら懐かしそうに見つめている。しばらくそうしていると二 人ははかったように同時に逃げ出した。

「くそっ!!お前ら覚えてろよ!!じゃあなテンカワ!!お前らまちやがれぇ!!」

そう言いながらリョーコさんは、二人を追いかけるようにして走っていった。







「アキト君、おめでと。艦長幸せにしてあげなさいよ。」

髪の長い大人の女性、どこか母のように優しく微笑を浮かべたミナトさんがあの人に 言う。

「もちろんですよ、ミナトさん。そう決心したから結婚しようと思ったんですか ら。」

あの人が人ごみのどこかにいるユリカさんのほうを見つめながらしっかりと答えた。

「そう・・・なら、私が言うことはないわね。でも、ルリルリは・・・・。」

ミナトさんが後半、表情に影を落としてあの人に聞こえないようにつぶやく。

「え?なんですか?ミナトさん。」

やはり聞こえていなかったようで、あの人が聞き返したが、

「ううん・・・。なんでもないのよ。じゃあ艦長とルリルリにもよろしくね。」

そういうと、ばつの悪そうな顔をしながら、あの人の前から立ち去った。





その後も、旧ナデシコクルーが入れ替わり立ち替わり来てはあの人を祝福していっ た。

でも私は・・・・・





その夜、ぼろアパートにはあの人と私二人だけ。ユリカさんはミスマルおじさんや親 族たちといるらしい。

そろそろ寝ようかというころ、あの人が私に言った。

「ルリちゃん、今日一日表情がすぐれないけどなにかあったのかい?」

「そうですか?別になにも・・・」

そこから先は言葉が出てこなかった。

「ルリちゃん・・・・泣いてるの!?」

私の目からは涙が溢れていました。あの人は目の前でオロオロしだします。

「どうしたの!?俺、なにかルリちゃんの気に触ること言った!?」

私の涙はとまりません。次々とせきをきったように、ひざの上で握り締めた私の手の 上に落ちます。

「ルリちゃん誰かにひどいことされたのかい!?くそっ!!誰だ!?ルリちゃん、俺 に言って!!今すぐぶっとばしてやる!」

あの人は何を勘違いしたのか一人暴走をはじめました。私はそれに気づき、

「違います・・アキトさん、違いますよ。」

泣いているせいか嗚咽のまじったような声で反論しました。

「違わないよ!!ルリちゃんがそこまで泣くなんてことなかったじゃないか!!話し て、俺じゃ頼りにならないかもしれないけど。俺、ルリちゃんのためだったら何だっ てできる!」

そういうと、あの人は私を両腕でしっかりと抱きしめる。まったく・・・こういうこ とにだけ敏感なんだから・・・。

私は、その暖かさに包まれながら、口を開きました。

「アキトさん、私は・・・・・あなたのことが・・・・」

好きです。その言葉を言いたかった・・・・。でも、いえるわけがなかった。あの人 は優しい人だから。あの人を困らせてしまうから・・・。

「ルリちゃん?」

「いえ・・・なんでもありません。アキトさん、結婚おめでとうございます。」

私の涙は止まっていました。私は、やっとお祝いの言葉をいえました。あの人は両腕 に少し力を込めながら、

「ルリちゃん・・・・ありがとう・・ありがとう。」

私はいつしか、その心地よい腕の中で眠っていました・・・・・・。









そして・・・・・・・・・。





「ふう・・。少し眠っていたようですね。」

私は部屋を見回してそう一人ごちる。私の手の中にはあのときの写真があった。

「あのころの夢を見るなんて、写真をもっていたからでしょうかね。」

そう言ってひとのびすると、コミニュケのウィンドウが開き、まだ幼さを残した一人 の少年が顔を出す。

「艦長、艦内のチェック終わりました。いつでも発信できますよ。」

「ハーリー君、わかりました。ブリッジに向かいますね。」

そういって微笑むと、ハーリー君は顔を赤らめながら、

「わかりました。お待ちしてますね。」

と言うと、あわててコミニュケを閉じる。私は部屋を出てブリッジに向かう。





アキトさん、私16歳になりました。あなたはどこかで私のことを見ていてくれてます か?

あの時伝えられなかった言葉は、今も私の胸の中にあります。

今ならあなたの隣に立つことができるでしょうか?いえ・・・それももうかなわぬ願 いでしたね。

でも、どこかで見ていてくれるなら、もう一度会えたなら伝えたい・・・・。

ホシノ・ルリはあなたのことが好きです。と・・・・・。





私がブリッジに入ると、先ほどの少年が声をかけてきました。

「艦長、早かったですね。」

「艦長、こいつってば艦長がいなくてさっきまで泣きそうだったんですよ。」

金髪に赤いメッシュを入れた軽そうな青年・・タカスギ・サブロウタさんが、ハー リー君をからかうように言います。

「な、何言ってるんですか!?サブロウタさん!!」

私はその様子を見ながら自分のシートに腰を下ろしました。

「ハーリー君、発進準備は?」

「いつでもいけますよ!艦長。」

私の言葉に元気よく答えると自分の仕事にもどりました。

《いつでもいけますよ、ルリ》

私の目の前のスクリーンいっぱいにそう表示されます。

「オモイカネまで・・・ありがとう。それでは機動戦艦ナデシコB、発進。目的地は ターミナルコロニー・アマテラス。」

「「《了解!!》」」

FIN

あとがき


はじめまして。紅と申します。
今回初めてssを書きました。こんな駄文にお付き合いしてくれた方ありがとうございます。
このssは劇場版のbeforeのつもりで書きました。うまく表現できてなかったかもしれませんが・・・。
紅はナデシコを知ったのが最近・・・というか今年だったりします。
ですから、ものすごくナデシコ歴は浅いのですが生意気にもssに挑戦してしまいました。
いきなりですが紅はルリちゃんがナデシコの中で一番好きです。
このssもルリちゃんメインでいったのですが、うまく伝わったでしょうか?
というか、シルフェニアのルリ様には満足いただいたでしょうか?そこらへんが一番気になっていたりします。
では、読んでいただいてありがとうございます。またお会いできればと思います。



感想
なんといいますか、行間設定や文字のフォント、色の付き方までいじってくるとは…凄い方ですね紅さんは…
単に貴方が何も知らないだけとも言 います。タグ関係はほぼ全滅ですからね。
ははは…
あは はじゃありません! 全くこの無能は…
今度は無能っすか…(汗) それはそれとして、感想のほうに行かないと。
そうですね、ブランクオブ・サード イヤーズから、劇場版の間といった所のようです。内容は私のアキトさんへの思いですね。
そうだね、間にアキトとユリカ嬢の結婚式を挟んでいる所なんかにくい演出だね♪
え え、そうですね…憎い憎いです! 全結婚式場に火をかけてやりたいぐらいに!!
うわ…(汗) いや、でもね、ルリちゃん結婚は切ない君の心理をだね…
うふ ふ、言いましたねその言葉を。私のブレーキを壊すその一言を!!
わっ、ごめんなさい! ルリ様…た…すけ…

夜空の星と なって輝きなさい! レ インボーブリッド・バースト!!

どばごー んー!

ギャヒーーーーーーーーーーーン!!??
ふう、火星周回軌道に引っかかりま したか…


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