「ご注文はお決まりでしょうか?」

「そうだなぁ…。んじゃあラーメン定食。」

お客のオーダーを聞きルリは厨房へ声をかける。

「ありがとうございます。オーダー、ラーメン定食一つ。」

すると厨房からはサイゾウではなくアキトが顔を出した。

「違うよルリちゃん、一つじゃなくて一丁って言ってくれないとね。」

「(えっ!?アキトさん?どうしてアキトさんが…。)あっ…。わかりました。… ラーメン定食…一丁!」

「よくできたねルリちゃん。よしこれはご褒美だよ。」

そう言ってアキトはルリに顔を近づけていく。

「(えっ!?アキトさん、なにするんですか…!?うそっ…。あっ…まだ心の準備が…)」

ボフッ…

目を閉じた瞬間にルリは顔に衝撃を受け、意識が暗転した…。




機動戦艦ナデシコ


〜For Dearest Sister〜


第三話
「早すぎる回合!?」






「・・・ちゃん!・・・リちゃん!・・・・。」

「う・・・ん・・・。」

「ルリちゃん!!」

「・・・!?はい!!」

ルリは自分を呼ぶ声にビックリして飛び上がる。と、そこには申し訳なさそうな顔の アキトがいた。

「よかった・・・。大丈夫?布団を片付けようとしたら枕が落ちちゃってさ・・ ・。」

ルリは自分の周りを見渡して・・・・、といっても寝ぼけているのだろうか、フラフ ラとしている。やがて自分の枕元にアキトの枕を見つけ納得した表情になる。

「・・・・ああ。これですね。どうぞ。」

「ありがと、ルリちゃん。それより大丈夫?」

「大丈夫ですよ。・・・(さっきのは・・夢!?)」

ルリは先ほどの夢の内容をおもいだそうとした。すると・・・

ボッ・・・

そんな音がしたような気がした。ルリは顔をゆでだこのように真っ赤にした。

「・・・?どうしたのルリちゃん?・・もしかして風邪?」

アキトは怪訝そうな顔で聞いてくる。

「いえ・・・ちがいます・・・。」

「そう?・・ま、ルリちゃんがそう言うのなら・・・。」

ルリは顔を赤くしたままうつむいて言った。それでもアキトは納得したような顔はし なかったが、しぶしぶと言った。

「それより!今日はネルガルに一緒に行ってくれるんでしたよね?(汗)」

「ん・・?あ、ああ。行くよ。」

ルリは話を変えようと今日の予定についての話題をふった。アキトはなんのうたがい もなく話に乗る。

「それじゃあ、用意していこっか。サイゾウさん休みくれちゃったし。」

そう、本日はアキトもルリも仕事が休みなのである。はなしをつけに行くというアキ トの意志を汲んでくれたのかもしれない。とはいうものの、二日目にして休みをくれ るとはサイゾウもとことん憎めない人物であるといった感じだ。

「わかりました。それでは準備ができたら下に行くので、下で待っていてもらえます か?」

「わかった。いそがなくていいからね。」

アキトはそう言うと部屋を出て下へと向かった。ルリはそれを見送った後準備にか かった。



〜ネルガル本社ビル〜


「うわぁ・・・。大きい会社だねぇ。父さんも母さんもこんな会社の研究員だなんて 実はすごかったんだな・・・。」

「そうみたいですね。さ、行きましょうか。」

そう言ってルリは先に歩き出した。アキトもそれに遅れないようについていく。

「ルリちゃんを地球に呼んだのって誰なの?」

アキトがこれから会うであろう人物についてたずねた。

「・・・・会長です。」

「・・・・・は?(会長って会社の中で一番偉い人だよな?何で会長がルリちゃんを ・・?)」

アキトが悶々としていると、ルリは受付の女性と話をつけていた。

「それでは、奥のエレベーターにお乗りくださいませ。」

「ありがとうございます。・・・アキトさん、行きますよ。」

そう言ってルリはアキトにエレベーターに乗るように促す。アキトはそれに習いエレ ベーターへと歩みを進める。

「なんか緊張してきちゃったよ・・・。」

「そうですか?あまり構えないほうがいいと思いますが。」

ルリは最上階のボタンを押しながら言った。

「・・・努力します・・・(汗)」




〜ネルガル会長室〜


「マシンチャイルドが、会長に会見を求めてもうすぐ来るそうです。」

「そう?僕なにかしたっけなぁ?」

秘書らしき女性がそう言うと、男はとぼけた感じで答える。

「あなたまさか・・・・。」

女性はなにか思いつき顔を青くする。

「ちょっと待ってよエリナ君!いくらなんでも彼女に手は出してないって!!」

男が女性・・・エリナの思考を読んだのか、あわてて否定する。

「どうだか・・・。ま、もうすぐわかることだしここではもう聞きません。」

「そうしてくれると助かるよ・・・・(汗)」

コンコン・・・

そんなやり取りをしているところへ来客を知らせるノックがあった。

「お、噂をすればなんとやらだね・・・。どうぞ。」

「「失礼します。」」

そう言って入ってきたのは銀色の髪を持つ少女・・・ルリと、少し茶色がかった髪の 男・・・アキトだった。

「よくきたね・・・?君は?」

男はアキトを指差しながら言った。アキトはいきなり指をさされ驚いた顔をするが、 すぐに何のことかわかり口を開く。

「失礼しました。テンカワ・アキトっていいます。火星ではルリちゃんの義兄でし た。」

「火星・・・テンカワ・・・!?まさか!!」

アキトの言葉を聞いた男とエリナは驚愕の表情を浮かべる。

「君はテンカワ夫妻、テンカワ・マサト、アキコさんの息子さんかい!?」

「えっ・・そうですけど?どうして父さんと母さんのことを?」

アキトは男の言葉を聞き怪訝な表情をうかべる。

「そうか、君は知らないことだったね。君のご両親は優秀な研究員でね、何回かあっ たこともあるよ。それより自己紹介がまだだったね、僕はアカツキ・ナガレ、よろし く。こっちは僕の秘書のエリナ君だ。」

そう言ってアカツキはエリナに目配せする。エリナもそれに気づき一歩前に出る。

「エリナ・キンジョウ・ウォンです。以後よろしくお願いしますね。」

「こちらこそよろしくお願いします。アカツキさん、エリナさん。」

エリナがおじぎするのを見てアキトもそれに習っておじぎする。ルリもつられておじ ぎする。

「さて、お互い自己紹介も終わったことだし本題に入ろうか。今日はどういった用件 かな?」

「今日はルリちゃんのことでお願いがあってきました。単刀直入に言います。ルリ ちゃんを引き取らせてください。」

「それはまた突然だね。理由を聞こうか。」

アカツキはアキトの言葉を聞き真剣な表情になる。余談だがこの男が真剣な顔をする ことはあまりない(笑)

「理由なんてたいそうなことじゃないかもしれないですが、ルリちゃんの親であった 俺の両親はまだ火星にいます。だから義兄である俺が引き取るのは筋が通ってると思 います。」

「そうはいうけどね、彼女はうちの会社にとって大事な存在なんだ。おいそれと手放 すわけにはいかないんだよ。」

アキトは懸命に弁明するが、アカツキはそれをやれやれといった表情で受ける。ルリ はその様子を心配そうに見つめている。

「これはルリちゃんの意思でもあるんです。どうかおねがいします!」

「いいことテンカワ君、彼女はこの世界でたった一人のマシンチャイルド。君や彼女 の一存でそんな勝手なことは許されないのよ。」

アキトの必死の言葉を聞きそれまで傍観をきめていたエリナが口を挟む。ルリはエリ ナの言葉を聞き身をこわばらせる。

「知ってます・・・。この綺麗な髪も目もそれの副産物だってことも。そして・・・ それのせいで小さいころ他の子供たちからいじめられたってことも・・・。だから! だから、俺が守ってあげたいんです!!」

「うっ・・・。」

「アキトさん・・・。」

アキトの剣幕にエリナはたじろぐ。

「まあまあ、テンカワ君もエリナ君も落ち着きなよ。ルリ君が怖がってるじゃない か。・・・ん?それは?」

アカツキはアキトとエリナの仲裁に入り何かを見つけたようにつぶやく。

「テンカワ君、その右手のものは?」

アキトはそう言われ自分の右手を確認するように見る。

「これですか?IFSですね。地球じゃあまり普及してないって聞きますけど、そう 驚くほどのことじゃないですよ。火星では普通ですから。」

それを聞きアカツキは何かを考える表情になる。

「アカツキさん・・・?」

怪訝に思ったアキトがアカツキに言葉をかける。

「ん・・?あ、ああ。すまない考え事をしていてね・・・。それよりテンカワ君、君 の言うとおりにしてあげられるかもしれない。」

「「ほんとですか!?」」

アキトとルリは嬉々とした表情でアカツキに聞く。

「ああ、ただし君に頼みがある。」

交換条件というところだろうか、アカツキがアキトににやりと微笑む。そう、某特務 機関総司令のように(笑)それにその場の全員がたじろぐ。当然のリアクションだと いえるだろう。

「なんですか・・・?」

アキトが恐る恐る聞いてみる。

「テンカワ君、君ここで働いてみる気ない?」

「えっ・・・!?」

アキトが予想だにしなかった内容に驚愕の表情を浮かべる。

「でも俺働くところ決まっちゃってるんですけど・・・・(汗)」

「ん?じゃあ空き時間だけでもかまわないからさ。協力してくれるならルリ君は君に 任せてもいいよ♪」

アカツキは笑顔でアキトの核心を突く。アキトは少し考えた後口を開く。

「わかりました。で、俺なにをすればいいんですか?」

「アキトさん・・・いいんですか?」

アキトの言葉にルリが聞き返す。

「俺が何かすることでルリちゃんが自由になるなら何だってするさ。」

「アキトさん・・・。」

「あの・・・僕を無視しないでくれるかな?(汗)」

アキトとルリが見詰め合っているとアカツキが口を挟む。 

「すみません(汗)・・で、何をすればいいんですか?」

アキトが再びアカツキに聞く。

「うん。あるプロジェクトのテストパイロットになってほしいんだ♪」

「会長!!」

アカツキの軽い言い方にエリナがものすごい剣幕で迫る。それをアカツキは受け流 す。

「まあまあ、落ち着いて。何はともあれ彼はIFS所持者だ。そして、つけたのは昨 日今日じゃないんだよ。そこら辺の軍人よりはよっぽどイメージの伝達ができるはず さ。」

「そ、それは・・・・。」

アカツキの制止にエリナの勢いもとまる。

アカツキの言うようにIFSの鍵はイメージの正確な伝達である。たとえ正規の軍人 につければ強いロボットになるわけではない。その軍人がいかに自分の技をイメージ し伝えるかにかかってくる。それは特訓の仕様がない。要は慣れである。火星での生 活においてアキトはIFSを日常のものレベルで使いこなせる。しかし何もアキトに 限ったことではない。アキトも言ったように火星ではそれが普通なのだ。アカツキは アキトのそこに目をつけたといっても過言ではない。アキトの能力は関係なく・・ ・。

「はい、うちの秘書もおとなしくなったことだし、早速格納庫でも見てくるといい よ。エリナ君、プロス君を呼んでくれるかい?」

「わかりました。」

エリナがアカツキの言葉を受けどこかへと連絡した。

バッ

その瞬間、アキトは何かに気づいたのか腰のブラスターを抜き振り向きざまに背後に 現れた人物の左手を背中にねじりあげ自分はその背後に回り首筋にブラスターを当て る。そしてそれまでのアキトとは明らかに違う低い声で言った。

「どなたか知りませんが、俺の背後に気配を消してこないでください・・・・。」

アキトの行動にその場の全員がついていけなかった。むろん背後に現れた人物も・・ ・。何とかいち早く立ち直ったその人物が口を開く。その他はまだ頭がついてきてい ないようだが・・・。

「先ほどお呼び出しを受けましたプロスペクターです。とりあえずその銃をおろして 頂けるおうれしいのですが、はい。」

ちょび髭に赤いジャケットを羽織ったプロスペクターの言葉にアキトはブラスターを おろす。そこでアカツキが正気に戻る。

「あ・・・・ああ、よくきてくれたねプロス君。彼はこのたびテストパイロットに なってくれたテンカワ君だ。」

プロスペクター。ネルガルにおける彼の役割は主に交渉人である。彼独特のペースと ポーカーフェイスにより自分の思うとおりに話を進めることが彼の特技である。それ により幾度となくネルガルは助けられてきた・・・いや、正確にはアカツキがであ る。アカツキが会長就任直後にすでに持ち上がっていた「テンカワ夫妻暗殺計画」を 秘密裏にもみ消したのも彼である。そのためにアカツキの会長就任を早めたのもまた 彼である。当時まだ少年であったアカツキを裏で支援し無理やり会長へと持ち上げ た。そこまでくると表の顔だけではどうにもいかない。そう、彼は裏の顔も持ってい るのである、ネルガルシークレットサービス・・略してSS、彼はその組織のトップ なのである。もちろん計画をもみ消すときにもそれは発揮された。・・であるからし て彼は相当の体術、銃術を持ち合わせている。しかしそれを知るのはごく一部の限ら れた人物だけであった。それをよく知るアカツキがアキトが彼を圧倒する姿を見て何 も思わないわけがなかったのである。

「すみません!!プロスペクターさん、知らずにとはいえとんでもないことを・・ ・。」

アキトの声がいつもの調子に戻る。ルリも覚醒し胸をなでおろす。

「いえいえ、構いません。それと私のことはプロスで構いませんので、はい。それで は格納庫のほうに案内します。」

プロスは笑顔でそう言うと部屋を出て行った。アキトとルリもおじぎをしてそれに続 く。部屋にはアカツキとエリナだけになった。

「・・・・・まさかプロス君がやり込められるとはね・・・。」

「か、彼には油断していた部分もあると思います・・・。」

エリナは声を震わせながらそういった。

「彼はネルガルにとって吉と出るか凶と出るか・・・・。」

アカツキは誰に言うでもなくつぶやいた。しかしそれに答えられるものはいなかっ た。



〜ネルガル地下格納庫〜


「・・・大きいですね。私こんなところがあるなんて知りませんでした。」

格納庫に着くとルリがそんなことをつぶやいた。

「まあ、普通の社員は知らないでしょうなぁ。なにせ極秘プロジェクトなものでし て、はい。」

「そんなもんなんですかね・・・。で、俺はあれに乗ればいいんですか?」

アキトが格納庫に鎮座しているものを指差しながら言った。

「そうです。スキャパレリプロジェクトの要のひとつ、エステバリスType P。ご察し のとおりテンカワさんにはあれに乗ってもらうことになります。ええと・・・もう一 人テストパイロットがいたんですが・・・。あ、あちらにいらしましたね。ヤマダさ んちょっときていただけませんか。」

プロスの声を聞きものすごい勢いで黒い髪の男が走ってきた。

「ガイ!ダイゴウジ・ガイだ!!」

しかしプロスは涼しい顔で受け流していた。さすがといったところだろうか・・・。

「ヤマダ「ガイ!」さん、こちらが新しいパイロットさんです。いろいろと教えてあ げてください。」

そういってアキトに話を向ける。アキトは一礼して口を開いた。

「テンカワ・アキトです。よろしくお願いします。」

「おう!俺の名前はガイ。ダイゴウジ・ガイだ。ガイって呼んでくれ。よろしくなア キト!」

そう言ってヤマ「ガイ!」・・・ガイはアキトに手を差し伸べる。アキトはそれを しっかりと握り答える。

「うん!よろしくなガイ!」

これがアキトとヤマダことダイゴウジ・ガイとの回合であった。




続く








あとがき

紅「どうも紅です!」
ルリ「アシスタントのホシノ・ルリです。このような駄文にお付き合いいただきまこ とにありがとうございます。」
紅「それ、前回もいってなかった?」
ルリ「当たり前じゃないですか!皆さんの貴重な時間を割いて読んでくださってるん ですよ!こんな価値のないものに!恥を知りなさい!恥を!!」
紅「そこまで言うことないじゃないか・・・・(泣)」
ルリ「あなたのバカさ加減には驚きを通り越してあきれますね。まあいいでしょう。 駄作家にしては自分で決めた期日は守っているようですね。」
紅「え?知ってたの?自分で決めたものぐらいは守らないとね。」
ルリ「いつまで続くことやら・・・。まったく!あれほどゲームにはまるなと言って おいたのに!」
紅「だからゲームじゃなくてレポートだって・・。」
ルリ「そのレポートに使う時間と同じぐらいゲームをしてるのはどこの誰ですか?弟 さんから送られてきたのを嬉々としてやっているのはだこのだれですか!!」
紅「うっ・・・。そんなことよりあとがきだよここ。(汗)」
ルリ「仕方ありません。でも態度を改めないと次はありませんよ?」
紅「はい・・・。」
ルリ「ところでアキトさん強すぎないですか?」
紅「その辺の突っ込みは少し怖いね。設定は考えてるんだけど・・・。」
ルリ「まあいいでしょう。きちんと次も書くんですよ!返事は!!」
紅「善処します・・・。」
ルリ「もう一度・・・(怒)」
紅「ひっ・・・。了承・・・。」
ルリ「ということで次回もよろしくお願いしますね♪」
紅「また・・・。もうあきらめたよ・・・(泣)」


感想
今回はアカツキ出現、全体的に周辺のキャラが優しくなっているね…
そういえば、アカツキの会長就任って、実は結構最近なんだよね。
は あ、またつまらない事ですね…そういったネタは作品の中で発表すればそれなりに反響もえられるのに…(汗)
いや、アカツキの兄が死ぬまではアカツキの兄が会長候補だった訳だからね。
因みに社長派っていうのは、アカツキの父親、つまり前会長支持派の事だっていう話を聞いてる。
TVでも暗殺の命令を下したのはアカツキの父親って言う事になっていたし。
本当 にどうでもいい小話ですね。いいですか今回はアキトさんが私を引き取ってくれる回です。
結婚の前段階として一度同棲生活をする為に名目 上親権保持者になってくださるんです。
ははは…(汗) いやそこまで言い切ってしまうと展開が辛いんじゃないかな…
今までとは違いますよ! 紅さんはそこまで書ける人なんですから♪
はぁ、紅さん大変だ(汗)

押して頂けると作者の励みになりますm(__)m

紅 さんへの感想はこちらの方に。

掲示板でも 大歓迎です♪





次の頁に進む           前 の頁に戻る

戻 る

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.