*注意:このSSは緋弾のアリア本編より一年ほど前の遠山キンジ入学当時を想定した内容になっています。
     キンジの兄がまだ失踪しておらず、キンジもまだ武偵を諦める前という設定を元に書いています。
     キンジの兄の失踪がいつなのか今一わからないんですが。
     少なくとも入学したと言う事はその当時はまだ失踪していなかったと考えられます。
     矛盾点が多いかもしれず、今後の作品にて設定の否定などが起こりうる可能性もあります。
     その点を御理解の上、読んでもいいという方だけ読んでください。







緋弾のアリアSS
思い異なる出会い






今年の春、東京武偵高校に入学したばかりの俺は、学園の方針である武偵のカリキュラムとしての依頼を引き受けた。

幾つ目かは分からないが、0.1単位とかの簡単な仕事を引き受けるつもりだったのに難しいのを引き受けさせられた。

理由は簡単、入学時のランクがSランクだったからだ。

実力でSだったなら俺も最初から困りはしない、しかし、俺の場合今の実力が本当なのだ、ランクにすればEランクがいいところ。

そんな俺に何を期待するんだか……。

更に、チームで引き受けたはいいが、暴れる相手先を前に他の奴らはさっさと逃げてしまった。

まったく、俺の能力なんて大したことないのに、あいつら勘違いして俺に殿なんて任せやがって……。

しかもどこをどう迷ったのか、女の子が裏通りを駆けている所に遭遇してしまった。

全くついてない、たまたま入学式の時にやっちまったばっかりに……。


”ヒステリア・サヴァン・シンドローム”俺の一族は特殊な力を持っている。

もっとも、これは病気じみたもので、あまりほめられたものではない。

しかし、それは突然発動した、理由は分かっている、目の前の少女が転んでパンツを丸出しにしたからだ。

我ながら情けない話ではある……。

今は危機が迫っているというのに、いや、ある意味では頼もしいのではあるけれども。



「君、もう大丈夫だ。俺の後ろに隠れておいで」

「えっ、ちょっ!?」



見知らぬ女の子をお姫様だっこで抱えあげ、俺の背後に移す。

そして、懐から取り出した改造ベレッタを三点バースト。

目の前に迫るトラックのタイヤを撃ち抜く。

普通ならば暴走トラック相手に落ち着いて射撃なんてできないんだが、今の俺はヒステリアモード。

この程度なら造作もない。

トラックは横滑りし、倒れて道路脇の壁にぶつかりようやく止まった。

しかし、それだけで終わりではない。

その中からは、4人の銃器を所持した黒服が出てくる。

俺は立ち上がり、女の子を庇いながら戦いを開始した。

目の前に来た拳銃の男に向けてナイフを手首のスナップだけで放つ。

持っていた指を切られた男の銃は暴発し、男は悶絶した。

それを見て一人が距離を取りながら銃を構えて撃つ。

俺は、その男の視線、銃口の向き、筋肉の動き、等から動きを予測、ベレッタを2発撃つ。

一発はその男の放った銃弾をまるでビリヤードの弾のように弾き、もう一発は男の腕に深い傷をつける。

残りは二人……しかし、そのうち一人が俺の背後に回って少女に手を出そうとしていた。

俺は思わず振り向くが、最後の一人が俺を狙っている……まずい!

しかし、次の瞬間、連続した狙撃音が鳴り、バタバタと黒服は昏倒していった、おそらく麻酔弾の類だろう。

だが近くに狙撃銃を構えた人間はいない、恐らく武偵なのだろうとは思うが……。

昏倒した相手も特に血が出ていると言う事もない、よほどピンポイントでないとこうはいかない、凄まじい腕だ。

俺は射線をなんとなく把握し、1kmほど離れた対角線上のビルを見上げる。

キラリと光る反射光、恐らくスコープのものだ。

いつの間にか狙撃科(スナイプ) の応援が来ていたらしい。

ありがたい事だが事前に連絡くらい欲しかった。

俺はその事を確認して、振り向くと、震える少女の額に軽くキッスをして大人しくしてもらった。



「それじゃ、今度からこんな危ない場所に来るんじゃないよ。君が傷ついたら俺も悲しい」

「はっ……はい……」



少女がぽーっとしている間に俺は走り去る、ヒステリアモードが切れたからだ。

あんな恥ずかしいマネをまたしてしまうとは……。

これのせいで中学では散々だったってのに。

そう、おれの血筋は遠山金四郎から続く特殊な血筋、初代は桜吹雪を他人に見せつける事で興奮を覚えヒステリアスモードになっていたらしい。

このヒステリアスモードというのは興奮することで集中力、知覚力、機転などの能力が跳ね上がるという優れものなのだが欠点も多い。

自発的に興奮する状況を作り出すのは案外難しいし、その上人にもよるらしいが性格まで変わってしまう。

俺は……性的興奮を覚えることでヒステリアモードになるため余計に厄介だ。

なった俺は、恥ずかしい事を平気で実行し女の子にアプローチする。

元に戻った時は悶絶するほど恥ずかしい事も多々ある、その上女の子を助ける事を至上命題としているらしく、

状況判断が出来こそすれ、基本的に女の子の言う事は聞く。

中学の時はそれがばれて、女子連中の使いッパシリにされていた。

そりゃ、何か起こるたびに並はずれた能力を持った奴が助けてくれるなら利用しようとするのは当然だろう。

おかげで本来の俺は少し女性不信気味だ。


だからここでは秘密にしようと思ってはいるのだが……なぜか俺の遭遇する事件はそういう機会が多いらしく、時々ああして発動させられてしまう。

兄貴のように自発的に出来る人がうらやましいよ……。

まあ、兄貴のような凄い武偵にはなりたいけれど、兄貴みたいにはなりたくない気もするが……。


ともあれ、俺はその後大急ぎで帰って単位をもらい、置き去りにした奴らに文句をくれてやった。

そういえば、応援に来てくれた狙撃科(スナイプ)結局礼も云えなかったが、誰だったんだろうな……。

















少女は無表情に、その場に大型の狙撃銃、旧ソビエト連邦のドラグノフ狙撃銃を設置してスコープを合わせる。

1kmほど離れたビルの上、いや、ビルの高さも合わせると1.2km近いかもしれない。

スコープに映るのは少年、ベレッタでトラックのタイヤを撃ち抜き、中から出てきた4人の黒服の相手を始めている。

ここは少年の位置がよくわかる場所だが、それでも射角の問題で全てをターゲットには収められそうになかった。

しかし、彼女にとって待つ事は苦痛ではない、いや、感情そのものが欠落したような彼女にとってはあらゆる事は苦痛ではないのかもしれない。

ほんの数十秒、少年が敵2人を倒したことで黒服の配置に変化が出る、射角はとれた、後は発射するだけ。



「私は一発の銃弾、銃弾は人の心を持たない。故に、何も考えない。ただ、目的に向かって飛ぶだけ」



彼女はそれまで考えていた事を全て心の外に追いやった。

そして、肌で感じる風の向き、視界に映る着弾点の風の動き、そしてその流れ、湿度や気温も感覚的に理解する。

全てを包括した彼女は細かな修正を本能的に行い、ただ引き金を引く。

ターゲットは2つ、銃弾も2つ、どちらもターゲットの腕の静脈に撃ちこまれたはずだ。

市街戦を想定したドラグノフ本来の有効射程は800m、最大射程は1200mとされるが、

改造と丹念な整備で彼女のものは2km以上の射程を誇る。

その上、彼女の命中精度は2kmまでほぼ100%という驚異的な数字を叩き出していた。

Sランクの称号をもつ数人の一人である彼女もまた、異常ともいえる能力を持つ者であったのだ。

少女は仕事を終えた後、もう少しだけ少年を観察していた。

すると、少年は少女に視線を送り少しだけ頭を下げた。

スコープの反射光を見つけたのかもしれないが、ここは逆光になる。

普通なら見つけられない程度のはずだ、それを見つける彼の能力は確かに普通ではないのだろう。

少女はイヤホンをつけ直すと、風の音を聞く。

録音された風の音、それに何の意味があるのかは彼女本人以外にはわからない、ただ、彼女は口にした。



「みつけた……」



そのつぶやきはビルの屋上に吹く風にまぎれ、誰にも聞かれる事はなかった。

しかし、無表情なその姿は、それでも意思を放っている事が感じられた……。
















次の日、俺は教室でいつもの面子とだべっていた。

いつもの面子というのは武藤 剛気(むとう ごうき)と不知火 亮(しらぬい りょう)の2人。

武藤は二枚目を気取る三枚目で、モテてたくて仕方ないが、ガッツいた性格が災いしてか全くもてない。

逆に、不知火は礼儀正しく折り目よく、また見た目も線の細い二枚目なのでモテる、しかし本人は恋愛に興味なしと言った感じだった。

先日組んでいたのもこの2人だったんだが……。




「あっさり俺だけ置いて行きやがって」

「だって、あの場合はしかたねぇだろ? 依頼人の保護が最優先だってーの!」

「僕も残ってもよかったんだけど……」

「ばっかやろ、あんな依頼人の相手を俺一人にやらせる気かよ!?」

「僕そのための要員だったんだ……」



まあ確かに、先日の依頼人はいかにも悪徳政治家という感じで、その上文句の多い人物だった。

あれこれ言われて怒りがわいた事も一度や二度じゃない。

だからって、置いて行かれた事を帳消しにするつもりはないが。



「わーったよ、今日の昼飯おごるから許してくれって」

「安いな俺の命……」

「武藤君は、遠山君があの程度でどうにかなるなんて思ってないよ。もちろん僕もね」

「う”」



そういうまっすぐな目で見られると強く出られないな……。

不知火が女にもてるのはそういう性格のおかげが大きいんだろう。

まあ実際俺も、あの程度でどうにかなるとは考えていなかったのも事実だ。

もっとも、ヒステリアスモードのお世話にならなければならないだろうと感じていた時点で普通じゃ無理だったわけだが。




「そういや最近、ふいに視線を感じる事がある……。単なる自意識過剰なんだろうと思うんだが……」

「自分で認めてちゃ世話ねえなぁ」

「否定はできないんだが、どうにもこう……な!?」



俺は背後に向けて視線を飛ばす。

俺は教室の廊下側をみていたので、背後は教室の外、外にあるのは別の校舎だけだが、そう言えば今は授業とかで使ってないんだな……。

ん?



「わりぃ、ちょっと用事を思い出した」

「えっ?」

「あっ、ああ……」



二人がきょとんとしているうちに俺は走り出す。

今見たのは反射光、恐らくはスコープの。

誰かが本当に俺を見ていた……。

理由は何だ?

ただ、あれはどうも不思議な感じではある、俺のほうを向いていれば太陽の方向は南中に近いんだから反射はしない。


まさかわざと?


そんな事をする意味が……、そんな事を考えているうちに別校舎の屋上まで上り詰めた。

そこにはしかし、もう何も残っていなかった……。

いや……。



「なんだこれ? カロリーメイトの袋か?」



ここで何かを食べていたらしい。

ここに人がいた事だけは証明されたわけだ……。

なら、視線の正体はここから?

よくわからないな……。



「どっちにせよ不気味な話だな……」



恐らくは狙撃科の誰かなんだろうが、俺なんかを見てどうするつもりだったんだ?

いや、視線が俺に向いていたとは限らないが……。

やはりヒステリアモードでもないと、そうそういい考えは浮かばないか。

帰ろうとすると、屋上に上がってくる少女と接触しそうになった。

俺は思わず立ち止まる、少女の綺麗さもさる事ながら、あまりの無感情ぶりにだ。

俺とぶつかりそうになったというのに、眉一つ動かさない。

少女は俺を見るともなしに見て、棒読み口調でぼそりと告げた。



「どいてください」

「あっ、ああ……」



俺が体を横に向けて端に寄ると、少女はそのまま通り過ぎる。

まるで俺の事など視界に入っていないかのように……。

あの姿、見た事があるな……ああ、そういえば……。

狙撃科に入ったSランクの麒麟児、レキ。

知ってはいたが……、ロボットレキと呼ばれているのは嘘じゃないってわけか。


しかし、まさか……そんなこともないだろう。

俺も入学当初はSランクだったとはいえ、今や見る影もないEランク武偵だからな。

彼女が俺を気にかける理由がない、そもそも俺をいましがた無視したんだ恐らくは別人だと思うが……。

だとすれば一体誰なんだ?

俺の中で疑問が膨らんでいくのが分かった……。



















風が凪いでいる……普段は何がしか吹いているものだがこの場には風は吹き込まない。

彼女にとって、それはある意味不安材料であったかもしれない。

風の命ずるままに生きてきた彼女にとって、風のない場所というのはつまり自分の生きる指針を見失う場であるという事。



「何者ですか?」



その場に残る違和感、ここは彼女がよく来る場所でもあるため、風のなさと匂いに違和感を感じる。

狙撃手というものは五感全てをセンサーとして使っているのだ、彼女にごまかしはきかない。

ここには確かに誰かがいたはず。

今しがた出会った遠山キンジ以外の誰か……。



「察しがいいのね?」



屋上の入口、その裏側は基本的に殆ど隙間などない、人が立つ場所などは存在しない筈なのだ。

しかし、その女はそこから現れた、へばりついていたのかそれとも、下の階にいたのか。

どちらにしろ普通ではないのは事実だろう。

もっとも武偵には変人が多いのも事実だ、全てを否定もできない。



「貴方のせいで私は遠山キンジに誤解を受けたかもしれません」

「そう? 覗いていたのは事実でしょう?」

「否定はしません、ですが気付かれるような事はしていません」

「ふふっ、あなたみたいなのでも恋をするのね」

「恋……よくわかりません、私は彼との間に子を残す必要があるだけ」

「……最近の子は進んでるのね……でもそれなら、なぜ今すぐそうしようとしないの?」

「まだ、確信には至っていません。彼の本気を見ていない」

「本気……なるほどね。でもそれは貴方では不可能かもしれないわね」

「女性に対しては甘くなってしまう、それが彼の欠点です。

 ですが……。私は違います」



そう言ってドラグノフを構える彼女に、その女は感心する。

いつの間にか位置が入れ替わっている、出入り口の近くに陣取っているのは彼女で、女のほうはいつの間にか遠く離れていた。

つまり、話しながら互いの位置を少しづつずらしていっていたのだ。

元々口下手だろう彼女が長話につきあったのも恐らくはそのため。

しかし、彼女がとくに優位に立ったわけではない。

狙撃銃を撃つには女は近すぎる、10mそこそこでは発射された弾丸の威力で女は挽肉になってしまいかねない。

また、もしも何らかの方法で回避なり防御なりされれば一気に形勢逆転してしまう距離でもある。

だが、彼女は躊躇しなかった、機械的に指先に力を込め精確に相手の肩を打ち抜くように狙いをつけたまま発砲する。

命を奪うほどではないが下手をすれば肩から上が吹っ飛んでなくなるレベルだった。

しかし、女もさるもの、肩へ向けての発砲をあえて無視して突っ込んでくる。

着弾時ギィィンという音とともに女はかなりのけぞる、しかしそれだけだった。

よく見れば服すら貫通していないのが分かる、どうやら特殊な防弾ジャケットの類を着込んでいるようだった。

それでも普通ライフル弾が命中すれば骨くらいは折れるものだが、そういう様子もない。

彼女はそれを見て躊躇いもなく射線を肩から額に変更して発砲しようとする。

しかし、そのほんの一瞬の間に距離を詰められていた。



「この程度もこなせないんじゃ、いつ死んでもおかしくないわよ」



そしてそのまま、女は彼女の肩に飛び乗り出入り口に飛び込んで行った。

彼女は振り向きざま発砲しようとしたが既に女は視界から外れており、無駄弾になっても仕方がないので諦めることにした。

射程距離の問題を考えれば校舎から出るのを待ってもいいのだが、

現在の任務では女を無理やり仕留めるよりも事を荒立てないほうが優先だと判断し引き下がる事にした。


















ここ数日、俺への視線はだんだんと頻繁に感じられるようになった。

というよりも、露骨になったと言った方がいいかもしれない、ヒステリアモードじゃない俺は一般人に毛が生えた程度の能力しかない。

この武偵学高校では俺のような存在は逆に珍しい、皆何がしかの特殊能力を買われて入学したものばかりだからだ。

俺の場合は血筋とヒステリアモードの誤解があるため、その辺は仕方ないのだが。

まあ、ともあれその程度の俺が感じられる気配というのは全くの素人か、隠す気がないのかのどちらかだ。

そして、能力が低下したとか、俺を見ている人間が変わったと考えるよりは、出てくるつもりになったと考える方が自然だ。

だから俺は校舎裏で立ち止まり、声を上げた。



「そろそろ出てきたらどうだ? もう隠す気もないんだろ?」



もし誰か別の人に聞かれていたらこっぱずかしい台詞、しかし、その言葉を受けてか出てきたのは……。

無表情で無言で、まるで感情の感じられないその同級生の名は。



「……」



レキ……。

何故……スナイパーなら確実に俺に気付かれることなく監視できるはず。

しかし、彼女が俺の事を見張っていたというなら、あの気配は彼女のものだというのだろうか。

どうもしっくりこない。

だが、それ以外に考える事が出来なかった。



「お前は、狙撃科のレキ……何故俺を監視したんだ?」

「貴方は狙われている」

「狙われて……?」

「そう、今は一人だけ。けどいずれ世界中から狙われる事になる」

「はっ? 世界中が? 俺を?」



何を勘違いしているんだ彼女は?

そりゃ世界的な武偵である兄貴の弟だし、それを目指しちゃいるが。

制御する事の出来ないヒステリアモードという爆弾以外は平均以下の能力しかない、武偵としては落ちこぼれの俺だぞ?

それに、ロボットレキという渾名がつくくらい無表情、無感情だと噂の彼女がわざわざ俺を?

一体どういう事なんだ……俺は思わずレキに対しての視線を厳しいものとする。



「今は理解できないかもしれない……」



彼女はもしや電波系?

そんな事を考え始めた頃、突然、レキは俺に飛びかかって引き倒した。

俺は何っ、と思う間もなく倒される。

その上を銃弾が掠めて行った……まさか……?



「あらあら、素早い反応ね。狙撃手にしとくのは惜しいわ」

「あらゆる環境での狙撃を可能とするのが狙撃手の理想」



レキは俺を抱えたまま振り返り相手を見る。

相手は笑顔の似合う20歳手前といった感じのおおらかそうな女性。

しかし、その手元には不釣り合いなワルサーが握られていた。



「おい、あんた……何故俺を狙う? そしてなぜ今襲ってきた?」

「うふふ、そんな事は今のあなたにとって重要じゃないんじゃなくて?」



女性はワルサーを引き絞ると、そのまま連続して発砲してくる。

俺とレキは転がって回避を試みるが、流石に映画なんかと同じわけにもいかず体に銃弾が掠める。

レキもまた負傷したようだった、だがそのせいで更に密着が深く……深く?

レキの体型はスレンダーなものでさほど大きな膨らみはないが、それでもこれくらい密着していると感触がわかる。

そして、極度な緊張下にあるっていうのに、俺はドキドキしはじめていた。

ヒステリアモードに変わっていくのがわかる……。



「レキ……ありがとう。俺を庇ってくれたんだね。怪我もしている……。

 ごめんよ……手当はすぐにできないけど、そこで待っていてくれるかい?」

「……了解しました」

「そして、お嬢さん。物騒なものなんてしまってくれないかい? 連れの怪我を治療してあげたいんだ」

「あらあら、お嬢さんなんて呼んでくれるなんてありがとうね。

 でも、私も任務ですもの、貴方を逃すわけにはいかないの。

 それに、レキの腕を傷つけられたのは行幸ね、今なら彼女の狙撃を気にしなくても済む」

「……」

「詳しいんだね。もしかして、潜入でもしてたのかい? それとも俺の監視をしていたのは……」

「ビンゴ! 私よ。最初は気付かれないようにやっていたんだけど、貴方鈍いんだもの。

 おおよその情報がでそろったのでわざと見つかるようにしてみました♪」

「そう、その結果がこれと言う訳かい?」

「ええ、貴方を始末すればこの先世界が混乱する事はないというのが上の話らしいわね。

 私に言える事はこれだけ、できれば大人しく死んでくれる?」

「いくらレディの頼みと言えど、それを聞くわけにはいかないな」



まったく、今日は厄日かよ……ただでさえ女性は苦手だってのに、女性に命を狙われるだって?

しかし、目の前の女性、明らかに戦いなれている。

見た目のお嬢様ぜんとした格好とは裏腹に、動きに隙がない。

だが、ヒステリアモードの俺にとって女性を傷つけるというのは出来ればしたくない行為だ。



「それじゃあ、さようなら」



女性は頬笑みのまま、ワルサーの引き金を絞る。

対する俺はキンジモデルともいえる改造ベレッタを抜き撃ちで撃つ。

わずかに遅れたが、どうにか間に合ったらしく女性の銃弾はそれて空中に跳ね上がって言った。



「面白い芸ね、ならばこういうのはどうかしら?」



女性は俺に向けて接近しつつスカートをまくりあげ、太股に縛りつけていたらしいPDW型のサブマシンガンを抜き放つ。

形式は恐らくFNP90、弾込めに熟練を要するが、小型で50発の弾丸を繰り出す化物だ。

不味いっ!

あんなものを撃たれたら、フルオートでも迎撃するのは無理だ。

俺が細切れのミンチにされてしまう。

俺は、相手に撃たせないように迎撃の銃弾を撃ちつつ接近する事にした。



「近接すれば撃たれないと思いまして?」



だが、その言葉が聞こえると同時、相手はFNP90は毎秒15発の弾丸を吐き出す。

幾ら反射迎撃が出来るとは言え、一秒に2発も出来れば凄まじい成果と言える事を3秒と少しで50発もできるわけがない。

俺は咄嗟に体を沈め回避を図る、もちろん銃弾を完全に回避等出来るわけがない。

肩や背中には裂傷がかなりの数できたはずだ、しかし、致命傷はもらっていない。



「いい判断ですわ、でも、ここまで♪」



そう、その時すでに彼女のサブマシンガンを持つのとは別の手にワルサーが握られており、その銃口は俺の額をポイントしていた。

既にかなり力がかかっている、後ほんの少し力を入れれば俺は死ぬだろう。

ヒステリアモードの反射神経をもってしても、1m以内で構えられた銃口を回避する術はない。

油断させるか、虚をつけばまだ不可能ではないが……。



「さ、死んでください♪」



引き金は至極あっさりと引き絞られた。

だが、鳴った銃声は一つではなかった。

俺の前では、不思議そうな顔と共に、女性の顔が不信に曇る。

そう、女性は腕からワルサーを弾き飛ばされていたのだ。

そしてその腕からは血を流している。



「くっ……まっ、まだ……」



逆側のサブマシンガンを構えようとしたところ、彼女はまたしても銃弾に撃たれその後、サブマシンガンが粉砕された。

そう、その狙撃をしているのは……俺の背後でいるはずのレキだった。

肩に傷を負っているはずなのに、それを感じさせない正確な射撃、

距離こそ確かに近いが俺が戦闘していたのだからぴたりと決める事等難しいはずなのに。

しかし、これで一気に形勢は傾き、彼女を取り押さえる事に成功した。




…………。


その後、銃弾の音を聞きつけてきた教師に事情を説明し、彼女の処置を決めてもらう事になった。

実際、背後関係の割り出し、動機などを徹底的に吐かせるとの事だが、恐らく無駄に終わるんじゃないだろうか。

それよりも、問題は俺もレキもボロボロだったので、

すぐさま緊急入院かと思われたが、やたら優秀な保険医のお陰ですぐに回復した。

次にあった時にはレキにはお礼を言っておいた方がいいなと思っている。

そしてまた数日後、丁度レキが登校してくる時に出くわした俺は声をかけてみる事にした。



「おはよう。昨日はありがとうな、レキ」

「いえ、礼を言われるようなことではありません」

「しかし……」

「キンジはいずれウルスとなる人……。私が助けるのは当然です」

「えっ……何か言ったか?」

「いえ、何も」



確実に何か不穏な事を言われた気がしたが、恩人に対してそれを言うのも気が引けてうなずいておくにとどめた。

一年後、レキが言った事の意味が初めて分かる事になるのだが、聞きそびれた俺には関係の無い事だった……。













あとがき

近衛刀さんのサイトの6周年に送ったものをこちらでも公開していいという許可を頂いて掲載させてもらいました。

内容はうっすーいですが、とりあえずアニメ化するらしいという情報をもとにラノベからちょこっと設定を取り出した作りになっております。

今後も皆さま、シルフェニアをよろしくお願いしますねw



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