*注意:この作品はペルソナ4のネタバレを含みます。
     ペルソナ4をこれからする予定のある方は戻る事をお勧めします。
     また、ゲーム版ペルソナ4の主人公は名前が決まっていなかったため、
     漫画版の主人公の名前である”瀬多総司(せたそうじ)”を採用しています。
     またキャラ崩壊は元が無口過ぎるので、付け足した結果ですのでご容赦ください。
     パラメーターMAXでコミュもオールMAXですが恋人はいません。
     それから、RPGパートにおける強さ等は今回関係ないため考えていません。
     また、ゲームにおいて多かったお前、おい、等の名前を出さない表現は名前を呼ぶ表現で代用しているものもあります。
     尚、このSSのタイミングはボス戦後、真ボス戦前であるため、ペルソナ4のゲーム的には飛ばされている時期です。
     それらを踏まえたうえで構わない方だけお読みください。




PERSONA4SS 
ペルソナとか関係ない話
 






突然だが、俺は今ピンチに陥っている。

といっても、シャドウとかペルソナとかは関係ない。

なによりアメノサギリを撃退した事により、事件の原因は取り除かれたんだ。

もう、俺達が向こうの世界に行く必要は……今のところない。

向こうの世界の住人であったクマもすっかりこの町になじんだし、今さら行く理由は存在していない。

だが、今俺は容赦なくどうしようもなく、混乱していた。

とりあえず落ち着こう、俺はまず自分の現状を再確認する事から始める事にした。


俺の名前は瀬多総司、17歳にして既に総白髪という特異な容貌を持ってはいるが、普通の高校生だ。

両親が海外出張してしまったので一年間ここ稲羽市にいる伯父さんの所に預けられた。

しかし、この町についてから連続殺人事件が発生し、

こちらに来てすぐに出来た友人の知り合いが巻き込まれていた事から首を突っ込む事に。

その後は独自の推理を進めて色々おかしな事はあったもののそれらは一応の解決を見た。

まだ稲羽市そのものは事件の混乱からすぐに回復とはいかないだろうし、犯人達の裁判もまだ残っている。

しかし、それは俺達が解決するべき事じゃない。

事実上、事件は俺達の手をはなれたと言ってよかった。


俺達と言ったのはつまり、巻き込まれた人達を助けて行くうちに仲間が増えていったからだ。

もっとも、最初から俺と陽介とクマはいたわけだが。

最終的なメンバーは、


デパート「ジュネス八十稲羽店」店長の息子、花村陽介(はなむら ようすけ)。

元気いっぱいの格闘娘、里中千枝(さとなか ちえ)

老舗高級旅館である天城屋旅館の一人娘、天城雪子(あまぎ ゆきこ)

強面の染物屋の息子、巽完二(たつみ かんじ)

丸久豆腐店の孫娘にして元アイドル、久慈川りせ(くじかわ りせ)

自我を持つシャドウ、クマ

探偵一家の5代目で少年探偵ならぬ少女探偵、白鐘直斗(しろがね なおと)


とまあ……かなり個性の強い面々が集まることとなった。

事件を通して絆も深まったため、事件を解決し年明けとなった今も皆で集まる事は多い。

俺自身後わずかな時間しか稲羽市でいられない事は辛い。

折角知り合えた仲間との絆、いくら遠くにいても絆は消えないとはいえ、やはりさびしい。

そう言う部分も手伝ってだろう、皆何かあるたびに集まって色々な場所にいったり、イベントをしたりした。


そして、2月になり、節分をこなした後。

やはり次は……と言う事になり、俺達男はもらえるだろうかという事で盛り上がり始めた頃。

その事件は起こった……。

といっても、シャドウやペルソナ、殺人事件といった物騒なものではない。

しかし、今の俺にとってはかなり……精神的に辛い事件だ。


事の起こりは……。















「総司いるかー?」

「ん、陽介か? ちょっと待ってくれ」



俺が学年末試験のための勉強をしていると、表の方から声が聞こえた。

俺は一階でテレビを見ていた菜々子に声をかけてから表に出る事にする。

表にはいつものごとく陽気な陽介とクマの姿がある。

クマも華奢な金髪少年の姿が見事に板についている、もう稲羽市ではかなりの有名人だといっていい。



「センセ、こんにちわクマ!」

「よう、クマは今日も元気だな」

「そりゃもちろん、今日もクマは元気クマよー!!」

「あっ、くまさんだー♪」

「菜々子ちゃんもこんにちわクマー♪」

「こんにちわくまー♪」



クマは確かに悪気はないんだが最近菜々子が語尾を真似するので学校とかで言わないか少し心配だ。

もっとも、最近はジュネスのマスコットとしてクマも有名になったので分かってくれる人もいるだろうが。

そういう面は置いておくとしてもクマと陽介のコンビは雰囲気を明るくするのに一役買っている。

俺も、いつの間にか口元を緩めていた。



「それで、今日はどんな用だ?」

「用がなくちゃきちゃいけねぇのか?」

「学年末の試験期間にはいったばかりだからな」

「ぶっ、お前今学年TOPだろうが! 今さらそんな詰め込まなくても大丈夫だろ?」

「ふっ、最後まで学年TOPだったら転校しても忘れようがないだろ?」

「案外俗な事考えてんなお前……」

「決まってるだろ? ここ一年そう言う事ばっかり考えていたぞ俺は」

「……それは逆にすげぇ」



実際どんな人とも永遠に一緒にはいられない。

なにより稲羽市にいられる時間は短い、俺は一年間何事にも手を抜かなかったと自負している。

それは、出会いを大事にしたいと言う思いがあったからだ。

どうせなら駄目な俺より、頼りになる俺を印象に残したい、そう考えて過ごしていた。

それに、どんな場合でも全力でぶつかっていくことが大事だと言う事も学んだ。

それを教えてくれたのは陽介なんだが……まあ、つけ上がりそうだから黙っていよう。



「しかしまあ、残り時間……もう2カ月切っちまったな」

「ああ……色々あったな」

「いろいろあったクマねー」

「みんなどうしたの?」

「辛い事もあったけど楽しい一年だったなってね」

「あ……」



菜々子の表情が曇る、失敗した……。

感傷に浸るつもりはなかったんだが、この娘は俺がいなくなるとまた一人の時間が増えてしまう。

それは出来る限り何とかしたいと考えている事だ。

クマが毎日遊びに行くとか言ってるが、流石に深夜までいる訳にもいかないし、何より俺が許さん!

可愛い妹(正確には従妹)に変な虫が付く事を許すほど寛大ではないのだ、俺は。

だが、そんな事を言っても仕方ないし、彼女に元気になってもらう方法を模索する。



「ってまあな、とりあえずそう言う意味でも時間がない事だし、遠出とかしてみねぇ?」

「遠出?」

「最近、近くに出来た遊園地があったじゃん」

「なんとかワンダーランドだっけ?」

「あー、てんぷるわんだーらんどのチケットだぁ!」

「菜々子ちゃんも行くクマ?」

「行くー!」

「という訳だ、当然お前も来るだろ?」

「負けたよ」



互いに笑いをかみ殺しつつ会話をする。

菜々子が行くなら俺は付いていかない訳にはいかない。

理由は聞くまでもない、伯父さんから菜々子を頼まれているからだし、俺自身心配だからだ。

まあそれ以前に試験勉強は既にあらかた終わっているという事もあり、

内職でもしようかと考えていたところだから丁度いいともいえる。


出発前に、駅で待ち合わせする事になった。

いや実際チケットは陽介の父親が貰ったものらしく、4人用が2枚あったので、ついでにという感じだった。

試験期間なので全員来るとは思えなかったのだが、電話してみると特捜メンバー勢ぞろいになってしまった。

ただ、そうなると俺、陽介、クマ、菜々子、千枝、雪子、完二、りせ、直斗の9名になってしまうため、

一人分は追加で支払う必要が出てくる。



「じゃあ一人分は折半ってことでいいな?」

「えー、花村先輩の奢りじゃないんですかぁ?」

「う”、流石アイドル……」

「こりゃ花村払うしかないっしょ♪」

「てめ、里中! 人事だと思いやがって……」

「だって人事だもーん、ねー♪」

「ねー♪」

「天城まで……」

「あの……僕が自分の分払いましょうか?」

「かーっ、白鐘は素直でいい子だねぇ」

「何ですか、花村先輩、アタシが素直じゃないっていうんですか!?」

「いやまあ、そっちもある意味素直だけどな……」



陽介ははぁとため息をつく、結局残り一人分も支払うつもりのようだ。

後で俺も半分渡しておこう、なんだかんだで陽介にはいつも気を使わせているしな。

そんな事を考えていると、りせが俺の腕を取って駅に向かって歩き出した。



「遊園地なんて久しぶりです♪ 先輩と2人だけならもっと良かったんですけど♪」

「ちょっ、いつの間に……」

「これは危ないわね千枝、急ぎましょう」

「えっ、雪子!?」

「そっ、それじゃ行こうか……直斗」

「はい、行きましょう」



混乱してきた俺を尻目に、完二がカチコチになりながら直斗を先導しようとするが、

直斗は半ば無視して完二を追い抜いて行ってしまう。

これはこれで先が思いやられる光景ではあった。


一方俺は右にりせ、左に雪子の腕を組むというやばげなシチュに陥っていた。

結局誰とも恋人にならなかったのが逆に響いているようだ……。

千枝も何やらもの言いたげに見ている……。


遠目に見ている陽介がなにやらニヤニヤしているのが気になる。

もしかして、最初から計画通りという事なのか!?

というか、陽介……この状況見たら突っ込みくらい入れろよ……。

クマは菜々子と一緒に電車に乗り込んでいた、完全に無視だなこりゃ。



「しかし、陽介は自爆してるクマねー、全員センセとくっつけるつもり?」

「それはクマもだろ? 前は全員取って行ったくせによ」

「あれを見たらとても割って入っていけないクマよ」

「それはそうだよな……、まあでも、思い出にはなるだろ」

「そうクマね、センセがここにいられる時間はもう長くないクマし……」

「まあ、だからこそあの3人も焦ってるんだろうけどな」

「あー、なるほどクマねー」



何やら悟った会話をしてらっしゃる陽介さん……このままじゃ俺達電車に乗れないんですけどっ!?

遊園地で思いで作るんじゃないのか!?


そんなこんなですったもんだあったものの、どうにか時間に遅れることなく遊園地についた。

名前はテンプルワンダーランド、直訳すると不思議のコメカミの国となる。

多分テンプルナイト(修道騎士団・聖堂騎士団)等から取ったつもりなのだろうが綴りが違う。

その場合はTempliqueであり、templeと表記されている以上、コメカミか眼鏡のつるとなる。

それを言っても仕方ない事なのであえて言わないが心の中で突っ込みまくっていた。



「チケット無料券8人分と別売りで1人分」

「はい、ではこちらがチケットとなっております。ごゆっくりお楽しみください♪」



そう言う感じで遊園地内に入って行った。

そういえばジュネスにも小型の遊園地のようなものがあり、子供を暫く遊ばせておけるようになっている。

今回の遊園地行き、名目上はジュネスの経営戦略としての遊園地のあり方を模索するための現地視察らしい。

だから俺達は偵察要員でもあるらしいので、後で感想とかを言わないといけないようだった。

まあ、手間のかかる事でもないし問題はないんだが。



「先輩! 何から乗ります? やっぱりジェットコースターは外せませんよね♪」

「総司君、最初はやっぱりコーヒーカップとかいいと思わない?」

「雪子……いつの間にそんな積極キャラに……」



あーまあ、雪子のムド料理が食べられる料理になるまで頑張ったからな俺……。

信頼してくれてるとするなら多分それだろう……。

因みに口には出さない、そんな事を言うとりせや千枝のムド料理も食べなくてはいけないくなる。

流石に胃が死ぬって……(汗


こうしてガヤガヤやりつつ、数か所回った頃、そろそろ昼食の時間なので適当に見繕って店に入ろうとした。

しかし、それを阻む声が……。



「ちょっと待って、私、お弁当作ったの」

「なっ、お前!?」

「雪子!?」

「先輩……大丈夫なんですか?」

「おっ、俺はだっ、大丈夫だけど、直斗に食べさせるのは……」

「天城先輩、少し味見をさせてもらえませんか?」

「えっ、うんいいわよ。大丈夫、最近は自分で味見しながら作ってるから前みたいな事はないよ」

「……そのようですね、十分に食べられる料理のようです」



そうして、雪子が皆の前にバスケットの中身を披露する、サンドイッチだ。

基本の簡単な料理だが、野菜、卵焼きだけじゃなく、ちょっとした惣菜や、肉類、それにスープも付けてくれていた。

流石に9人分としては少ないので、店で買い足したものの、好評を得ていた。

一度は絶望していただけに、皆見る目が変わった事だろう、レパートリーは流石にまだ少ないんだが……。

それでも、今までが今までだけに涙を流すものまでいた。



「それもこれも、総司君のお陰だよ」

「いや、俺は何もしてないけどな」

「って、先輩!? まさかずっと天城先輩の弁当食べてたんじゃ!?」

「あー、まあそうなるかな……」

「ちょ、それひどい! 差別です! 私もお弁当毎日作ってきますから必ず食べてくださいね!」

「あ……う、うん……ソウダネ……」

「なんで目をそらすんですか!?」



いや……だからもう2月だし、最後までムド料理を食べ続けるのは流石に……。

楽しい思い出とか欲しいじゃん?(汗



「ねぇ、それならさ、あたしのも食べてくれるよね?」



今度は千枝が少しほほを染めながら言って来る。

正直うれしい思いはある、2人とも可愛いのは間違いないし。

しかし、ムド料理……勘弁してほしい所だ。

だが、覚悟を決めたほうがいいのだろう、そうだな、うじうじしているなんて俺らしくない。

よし、と返事をしようとしたその時、



「貴方達には私から教えてあげるから、先ず食べられるものが作れるようになってから食べてもらいなさい」

「だって、天城先輩はまともになる前から食べてもらってたんですよね?」

「うん……でも正直、食べるたびにおなか痛そうにしたり、顔をしかめたり、倒れちゃったり。

 作ってる方としてもなんだか申し訳なくなるよ?」

「う”」

「まあしゃあないっか……そう言うのも早いもの勝ちだよね、

 じゃあさ、リーダーは美味しい料理が作れるようになったら食べてくれる?」

「そりゃもちろん」

「そんじゃ雪子先生これからお願いします」

「ほほほ、お任せなさい」

「ぶーぶー、私は総司先輩がよかったなー」

「りせ、よく考えなさい。総司君に教えてもらっても総司君の料理のコピーしかできないわよ」

「え?」

「誰に食べてもらうつもりか考えて」

「あっ!?」



それっきり、りせはぶつぶつ言いながらも了承したようだった。

ふう、これでひと安心だな、雪子に感謝。


昼食を取ってからも何か所か回ったが、イベントのチラシを配っているのに気付いて足を止めた。

全員で集まってそれを確認する。



「ミステンプルワンダーランドコンテスト?」

「ミスコンかぁ、嫌な思い出が……」

「クマは楽しかったクマよ!」

「お兄ちゃん、ミスコンって。このまえやってたの?」

「そう言えば菜々子ちゃんも見に来てたんだっけ……」

「ぼっ、ボクはもう出ませんからね!」

「ああ……」

「私は、総司先輩が出て欲しいなら、出てもいいですけどぉ」



菜々子は興味あるようだったが、女性陣には不評そうだ。

直斗が嫌がっているのを前に、完二がため息をついているのが分かりやすい。

りせは自信があるからだろう、出ても構わないような口ぶりだが……。

賞品のほうはなんなんだろう?



「ええっと、何々……なっ!?」

「どうしたんですか総司先輩?」

「この賞品……」

「ハワイ旅行! 総司先輩一緒に行きましょう♪」

「いや……菜々子と伯父さんに行ってもらいたいな。ほら、菜々子スイカ割りしたがってたからさ」

「あっ!」

「スイカ割りできるの?」

「上手く行けばだけどね」

「じゃあ、私がんばっちゃいますよ♪」



チケットはペア、2人しかいけない、菜々子と伯父さんに行ってもらう事になれば当然りせだって行けないのに。

やっぱりいい子だなと思う、ちょっと積極的すぎる所はあるが。



「いいの?」

「ええ、代わりに菜々子ちゃん達が出かけてる間泊めてくださいね♪」

「あははは……」



そう言って、りせは軽いステップで受け付けへと向かった。

しかし、1分後……消沈した表情で戻ってきた。

一体何があったんだろう?



「総司先輩……ごめんなさい……」

「どうかしたのか?」

「あの……」



視線を彷徨わせるりせ、俺はとりあえずりせに気にしないように言ってから受付のほうに視線を向けた。

そこにいたのは、りせの元マネージャーで今は”かなみん”というアイドルのマネージャーをしている井上さん。

どゆやらミスコンと同時に”かなみん”関係のイベントがあるようだった。

映画のほうもあるだろうに、精力的に活動しているようだな。

りせは来年度から芸能界に戻るつもりでいる、しかし、やはり今は会いたくないだろう。

何より元マネージャーである井上さんを一度は完全に拒絶しているのだ。

例え芸能界に戻るとしても井上さんと会うのはかなりつらい事だろう。



「りせ、無理言ってすまなかったな」

「ううん……自分から言い出したのにごめんね……」

「ええっと……どういう事なのかな?」

「彼女も色々事情があるんだよ」

「2人だけの秘密ってことか? 仲のいいこって」

「そりゃ、総司先輩は運命の人ですもん♪」

「結構強気ね」



千枝と雪子の視線が痛い。

ちょっと険悪な空気が流れている様な……。

不味いな、何とかしないと。

そう思っていたんだが、次の完二の言葉で皆動きが止まった。



「締め切りまであと10分らしいっすけどもういいんすか?」

「えっ!?」

「不味いなそれは、菜々子ちゃんのためにも出場はしたい。

 天城、里中、白鐘、お前らは無理なのか?」

「私はちょっと……」

「あたしも自信ないし……」

「ボクはそういうのは出ません」

「やっぱりか……となると、もう無理かな?」

「えっ、スイカ割りできないの?」

「ああ……スイカだけなら何とかなるかもしれないけど……」

「ちょっと待つクマ!」


その時、自信満々に俺達の前に立ったのはクマだった。

男にしては華奢なその胸を精いっぱいそらし、アピールをしている。

聞かなくても何を言うかは予想できた。



「クマが女装して出るクマー!」

「いやそりゃ無理だろ!」

「いろいろマズイって」

「てめ、クマ頭沸いてるんんかゴラァ!」



俺達男性陣はそれを止める、そりゃバレたらやばいし。

それに、クマは結構有名人だ、熊田さんとしてクマのキグルミで活動していると言う意味でも。

御町内の変な人としても、女装の時の姿もデジカメ等で残っている可能性が高い。

男だとバレた時、失格で済めばいいのだが、場合によってはいろいろマズイ事になるかもしれない……。



「いえ、悪くないかもしれないわ」

「でもな、クマだったらバレる可能性高いぞ、あの女装コンの時の姿はネットでばらまかれたみてーだし」

「そう、クマちゃんだとまずいわ、でも、クマちゃん以外なら?」

「この中にクマ以外に女装に耐えられる奴なんていねーよ」

「そうかしら、皆はどう思う?」

「そうねー、リーダーなら何とかなるんじゃない?」

「うんうん、総司先輩前の時は色ものでしたけど、次は私も化粧とか手伝いますよ♪」

「そうね、私も前はちょっとスケ番とか面白くて本格的な事しなかったし」

「ボクも、先輩なら……」

「え”っ」



それはちょっと無いんじゃないのか!?

俺だって女装コンに出てたんだから、バレる可能性があるし……。

というか、女装が普通に趣味だと思われかねない……。



「いや、俺も前に参加してたんだからバレると思うんだが?」

「いいえ! 私が完璧にしてみせます!」

「そうね、リーダーならきっとクール系の美女になるわよ!」

「先輩をきっと優勝させて見せます!」

「ボクも及ばずながら手助けさせてください」

「でもほら、水着審査とかあったら駄目だろ?」

「さっき確認したよ! そう言うのはないから!」

「でもしゃべったらバレるだろ?」

「それも大丈夫です。ボク、探偵の7つ道具としてチョーカー型ボイスチェンジャー持ってますから」

「ええー!?」



いや、七つ道具って……て言うかボイスチェンジャーを使う探偵はコ○ンだけだろう(汗

なんだろう?

おかしなスイッチが入ってしまったみたいだ。

というか、皆の目が怖い……。



「いや、あのな……それでも肩幅の違いとか、のど仏とか筋肉の付き方とか……」

「諦めろよ総司、女性陣がその気になったら止められねぇだろ?」

「うぅ……しかし……」

「ねー菜々子ちゃん、お兄ちゃんが綺麗になるの見たいよね?」

「うん!」



それがトドメだった……。

後は完全になし崩し的に俺は近くの化粧室(ミスコンのためだろうか、臨時のものが幾つか配置されていた)

に連れ込まれ、どこから取り出したのか、ドレス等も既に用意されていたようだ。

陽介、完二、クマの三人は代わりに登録申請する役と間違って誰かが入ってこないようにする見張りとして外待ちだ。

別に中に入っていても問題はないとは思うが、まあ、女子のかしましさに充てられるのも嫌だろう(汗

俺自身、その時は冷汗を垂らしていたわけだしな。



「総司先輩、お肌のきめ細かいですねー、化粧ののりが良いです♪」

「そう、それは前私も思った」

「じゃあ、これなんかどうかな?」

「里中先輩GJです! 確かに総司先輩ちょっと色白ですし赤系は生えますね!」

「ならまとめは……こう言う感じでどうかしら?」

「あの、天城先輩のもいいですが、こういうのはどうでしょう?」

「おー、流石白鐘! 長年男の娘してただけはある!」

「いや……男の娘はした事ないです……」



会話に入り込めない……というか、見る見るうちに俺の顔は見た事もない配色に染め上げられていった。

その後も、やれすね毛をそれだの(男性としては元々薄いほうだが、お気に召さなかったらしい)

このオイルを塗れだの、つけまつげ云々に、アイシャドウはどうこう、肩幅を小さく見せる服だの。

更に、筋肉を隠すためと長い手袋とニーソまで履かされ。のど仏を隠す意味と声を誤魔化す意味でチョーカーを。

とまあ前回とは比べ物にならない細かい作業をこなす羽目になった。

つけ爪にイヤリングまでつける羽目になるとは……。

ウィッグは前回と同じように俺の地毛に合わせた白髪だったが、ツヤも質も大いに違った。

流石にハイヒールは遠慮したらパンプスを履かされた、殆ど変わらない…(汗



「できた……わずか20分でこの出来……完璧ね」

「4人がかりでしたもんねー、でも先輩凄い綺麗♪」

「うん……後で、その格好でデートしてほしいね」」

「あっ、じゃあ2番!」

「ずるい! アタシも!」

「あの……ボクもいいでしょうか? いえ、今後の参考のためですが!」



いや、一体何の参考にするつもりなんだ直斗よ……。

ともあれ、上手くいったっていう事なんだろうか?

女性陣の言い回し……なんか怖いんだが……。

ふっ、これも俺のミリキだな!

って……むなしい……。



「でも、花村先輩達、本人いないのに申請大丈夫だったんでしょうか?」

「流石に失敗してたら途中で報告に来るでしょ」

「それもそうですね♪」



実際どうやったかは知らないが、確かに俺は登録されていたようで。

あっという間に、控室に通された。

待合室は、出場者とサポート要員を一名だけ連れてきてもいい事になっている。

りせは井上さんの関係で来る事は出来ないし、直斗はこういう場そのものが苦手だ。

ということで、雪子と千枝がじゃんけんして千枝に決定した。

雪子はかなり悔しがっていたが、正直そこまで気合い入れられても困る……。



「しかし……前はネタだったのに、こんな本格的なミスコンに……バレたら笑い話じゃ済まない……」

「もう、司ちゃんらしくないわね。いつもリーダーやってたんだからしゃきっとしなさいよ」

「いや、それとこれとは違うだろ……」

「ほら、言葉使い!」

「あ……ごめん」

「大丈夫よ、バレやしないわ。言葉使いや動き方で減点になる可能性はあるけどね」

「そこまではちょっと……」

「ええ、今できる範囲でやりましょ」

「う”」



そうして、控室で歩き方と会話の仕方についてみっちり講義された。

幸い登録したのが遅かったせいもあり、俺の出番は後のほうだったので半時間くらいは費やす事が出来た。



「さあ、司ちゃん、私に教えられる事は全て教えたわ。後は度胸と愛嬌よ!」

「ああ、やれるだけやってみる」



正直まあフリフリのドレスは下がスースーして嫌であはあるが、まだミニを穿かされるよりはマシか……。

色々な意味でピンチではあるが、今さら後に引く事も出来ない。

勇気を持って対処するしかないな。

青系のドレスに、血色を良く見せる赤めの化粧、アイラインや白い手袋やもろもろ装備も完璧。

ボイスチェンジャーだってチョーカーに仕込んである、堂々としていれば、気付かれない……はず(汗

と言う事で、呼び出されるのを待った。



『では、ナンバー32番! 稲羽市からお越しの瀬戸・司(せと・つかさ)ちゃんです!』



言われて舞台に上がる俺。

女装コンの時より更に人が多い……。

まあ参加人数が違うから当然と言えば当然なんだが。

司会者の人が近づいてきて、俺に話しかける。



『おー、これはクールな美少女の登場だ!

 大人な雰囲気とクールな瞳、でも少しあどけない感じもうける大人になりきれていない感じが素晴らしい!』

『『『『『『『おおおおーーーー!!!』』』』』』』

『観客も大興奮のようです! さて、司ちゃん、コンテストに参加したきっかけは?』

『出てみないかって言われて……』

『お友達の推薦ですね、たしか、飛び込みで男の方が申し込んだようですが、恋人ですか?』

『いいえ、そう言う人は特に……』

『おおっと! 司ちゃんは今フリーってことですね? おじさんが立候補しちゃおっかな?』

『『『『『『『ぶーぶー!!』』』』』』』

『一瞬で会場がブーイングの嵐、こんなに会場の人達の心をつかむとは!

 ではでは、アピールタイムに行ってみましょう!

 曲はまた渋いチョイス、Pursuing My True Selfです!』



そう、半ばやけくそ気味に俺が選んだのは歌手こそ日本人だが、英語オンリーの曲、

それもアップテンポのロックに属する曲だった。

理由としては女性の曲ではあるが、元々よく歌っていた事、日本語ではないので男女の区別がつきにくいだろうと言う事。

それらの理由から無理やり選んだ曲だった。

まあ、先ほども言った通り歌いなれた曲ではあったのですらすらと歌えたが、

ボイスチェンジャーにマイクが接触しないようにだけは気をつけた。

あまり近づけすぎるとハウリングを起こしてばれてしまうかもしれないからだ。

しかしまー、普通歌ったら会いの手か、ざわめきくらいはあるはずなのだがシンとしている。

これはマズッたかもしれないな……。

そう考え歌い終えたその時。



『『『『『『ワーワー!!!』』』』』』

『これは凄い反響だ!! 審査員の判断次第ではありますが、高得点を期待できそうです!

 さあ、審査員の皆さん特典を!!

 10点、10点、9点、10点、10点!

 これは過去最高の49点だー!!!』

『『『『『『わーわー!!!』』』』』』



俺が……最高得点!?



『審査員の金岸さん、一体どういう理由で10点を?』

『コケティッシュな魅力っていうの、女性なんだけど、男性的な魅力も見え隠れするっていうのかな。

 でも余計に女性らしさを意識させるっていうか……』

『金岸さんありがとうございました! 9点の港さんは?』

『素晴らしいと思ったんですけど、曲のチョイスが、彼女にはもっと落ちついたもののほうが合っている気がして。』

『なるほど、確かにもっともですね。ですけどあの曲も素晴らしかったですよ!』

『はっ、はあどうも……』



何と言うか、ほとんど手放しの絶賛だった。

これなら賞品をもらう事が出来るかもしれないという思いと、男としての尊厳が複雑な気分にさせる。

これは、勇気と言っていいのだろうか?(汗

ともあれ審査は終了し、31番までの人の横に並ぶ。

しかし、俺で最後かと思っていたら、もう一人ラストに控えていた人物がいた。

それは”かなみん”というりせの後輩アイドルだった。

その後の進行は言うまでもない、”かなみん”は50点をたたき出し優勝をかっさらっていった。

現役アイドルが地方のミスコンに出るというのはどうかと思わなくもないが、巡業の一環だったのだろう。

実際、見に来ていた人達もアイドルが参加するのを見に来ていた所が大きかったようだ。

少し残念にも思えたが、特別賞をもらう事ができたのでよしとする。



「ひっどーい、あれ井上さんの策略ですよきっと」

「まあ、アイドルを売るために色々するのは仕方ないんじゃないかな」

「あたしの時はライブ巡業でしたけどね、あの子はどちらかっていうと歌はそれほど得意じゃないみたいだから」

「そうなのか……」

「でも、審査員の目節穴じゃない?」

「そうですよねー、総司先輩のほうが絶対綺麗なのに!!」

「うんうん、アイドルっていう肩書きに負けたっていう感じね」

「あれで審査員というのだから底が知れますね」

「お兄ちゃん綺麗だったよー♪」

「ああ……」



とりあえず特別賞のスイカ一年分をもらったので、皆で分けて持って帰る事にした。

この時期にスイカは貴重ではあるが……無駄な金かけてるなと思ってしまった。

それから暫く、女性陣から女装してデートしてくれとせがまれて困った。

恋人という訳でもないんだが、皆女装を進めようとしてくるのでビクビクものだ。

それから、井上さんがりせの所に司ちゃんを探してやってきたらしいと聞いたが……。

勘弁してくれ……。












ハル夏アキ冬さんと話をしていて女装を取り扱ったSSは極端に少ないねと言われたのでやってみました。

ペルソナ4はハルさんのリクなのですが、ハルさんからは綺麗な女装でと注文がありました。

実際の所、番長はスケ番の女装を既にしているので、女装はネタという感じが定着しているんですがねw

ペルソナ3の主人公である女性と比べても華奢なくらいのキタローと違い、

番長は体が十分男のものですから女装すると筋肉とか悪目立ちすると思うんですよ。

だもんで、サポート要員を増やしてがんばってみましたw

あんまり女装している時間はながくなかったですがね(汗

この辺が限界かなーと思いました。



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