「……あくどいやり方ですわね、ですが、有効な方法だと思いますわ」

 『では、時間もないことですし。さっそくはじめちゃいます?』

 「そうですわね」



こうして、フタバアオイ奪還作戦は始まった。



しかし、その結末は俺達の予想だにしないものとなる……。



そして、俺の運命を決める戦いの第一歩ともなったのだ……。







機動戦艦ナデシコ

〜光と闇に祝福を〜



第十八話「『南』よりきたる者」その3



コロニーフタバ・アオイの第三層。

ご層構造の中央にある、政治区画の中でも一際高い百階建てのビルの一番上。

そこに、現在司令室として使われている部屋があった。

そこでは、刻々と変わる複数のディスプレイを確認しながら、ふと黒尽くめの男は言った。


「フクベ・ジン提督、貴方は我らの行動をどう思う?」


老人は黒尽くめの男から見れば真後ろにいる。

部屋には入ってきたが、集中している様子の男に老人は声をかけなかった。

しかし、黒尽くめの男は気がついていたのだろう、老人は少し眉をあげた。


「元だよ、ジョー君。今は一介の年金生活者にすぎん」

「ふむ」


老人は何か言葉を返すのかと思ったが、黒尽くめの男は一言言ったきりまた画面に目を戻す。

無視されたのかとも思ったが、老人にはどちらでも良いことである。


「このテロのことかね?」

「そうだ」

「ふむ、確かに色々思う所はある」


そう言い、今度は老人が口をつぐんだ。

それに対し、黒尽くめの男もまた特に問いただすことはしない。

だが、しばらくして老人はため息をつきながら続きを話しはじめる。


「このような事をするには時期尚早であるとか、火星の民も敵に回しかねないとか。

 殲滅戦になれば結局全滅するしかないであるとか。

 色々問題点はあるが、一番気になるのはお主が何者であるかということだ」

「ほう」

「お主が何者であるかで答えは変わる」


そう言って、老人は黒尽くめの男を睨みつけた。

それに対し、しばらくは無関心であった黒尽くめの男はしかし、肩をすくめて老人に向き直る。


「俺は海燕ジョーだよ。それ以外の何者でもない」

「いいや、別人だ」


老人は黒尽くめの男の声にかぶせるように言う。

それは、確信を持っての答えであり、黒尽くめの男には意外な響きを持つ言葉だった。


「何故そう言える?」

「海燕ジョーを名乗る男は、他者を動かしはするが、それ以上に己が動く男だ。

 今まで見てきた限りでは、他人を使って自分が動かないなどという事はなかった」

「数回合っただけの男をよく覚えているな」

「それだけ鮮烈だったということだよ。

 だが、貴様はレジスタンスを組織しながらお前はこんな所で待ちの一手。

 地球連合政府からの返答等決まっているだろうに」

「……」


黒尽くめの男は老人の言葉に黙り込む。

確かに、主力の艦隊が月奪還に動いた時に蜂起するという、タイミングを図ったものであったものの、その後は待ちの一手であった。

第五艦隊の方も大きな動きはない、実際フタバアオイの防衛としてはギリギリと言ってもいい。

そもそも、指揮系統が混乱している現在、第七艦隊との睨み合いで手一杯と言うところだろう。


フタバアオイを占拠しているジョーの配下5000人は大きく分けて4通りいる。

直接の配下と思しき100人ほどの一団。

戦力としても大きく、司令塔の役割も果たす。

ただ、若い容姿のものが多いため、他の部下との軋轢ができている。

クリムゾンと木連からの出向(表向きの記録は抹消されている)実質的な計画実行者とも言える。

その数500人程、それぞれエキスパートな人材が多く、各分野でのリーダー的役割を果たしている。

傭兵やテロリスト崩れ、その数役1000、戦闘指導及び戦闘班の小隊、分隊長的な役割を果たす。

残り3400人は現状に満足できなくなった火星人。

質は一般人に毛が生えた程度、エキスパートな人材はごく一部だが、数が多いため主戦力である。


「ならば、そろそろ次の手をうつとしよう」


そう言って黒尽くめの男は立ち上がり、画面を操作する。

そうして、地球全土に届く放送を始めた。

そう、地球全土に放送を送り始めたのだ。


「地球の諸君、降伏勧告を行ってより24時間の時間がたった。

 我らの主張は世界中のメディアで放送されたものと思う、ニューヨークの花火は気に入ってくれたかな?

 あれから、地球連合政府の会議を開いて決議をする話の進展がなくてね、連合宇宙軍 第七艦隊が到着、防衛艦隊と睨み合いを始めている。

 どうにも過小評価されているようだ、核攻撃だけが我らの武器ではないことを証明せねばならないな」



第七艦隊が到着した時点で、現状まともに話し合いの余地がないのはわかる。

ただ、まだまだ地球連合政府はボソンジャンプの危険性を理解していないようだ。

一度使ったら次使うまでに時間がかかるとでも思っているのだろう。

黒尽くめの男は、口元を歪める。


「これから、10分ごとにミサイル攻撃を行う。そちらが交渉のテーブルにつく気がないなら相応の対応をするだけだ。

 さて、最初は……香港に花火をあげるとしよう、その次はレニングラードあたりにするか、ハワイもいいな、シンガポールもだ。

 その次はマドリード、ブエノスアイデスにも落としてやろう、いつになったら泣きついてくるか楽しみだな」



無差別爆撃、それも大都市ばかりに落とす。

10分毎に落とすのは、幾らでも連発できると示すためであるし、反応が強い方法としてはこれ以上ないだろう。

ただし、テロリストとしての色が強くなるのは否定できない事実だ。

できればこうなる前に交渉を始めてくれれば助かったのだからなと、黒尽くめの男は心の中でつぶやく。


「聞いていたな? 指示通りやれ」

「はは!」


部屋の外に控えていた直属の部下に伝えると、黒尽くめの男は座り直す。

老人はそんな彼を見て、しかし反応を示すことはなかった。

怒りはあるようだが、どうして良いのかわからないのかもしれない。


どちらも、この現状が続くのは困る事は同じである、考える結果は違ったとしても……。
 











俺が会議の後仮眠を取って起きた頃、既に作戦は始まっていた。

実際問題として、俺は戦力としては考えられていないらしく、一応は対海燕ジョーの切り札として待っていてくれと言われた。

コーラルとメイド隊の皆さんにも止められる始末で、実際やり辛い。

現状、火星の人々おおよそ40万人を乗せた輸送船団とエウクロシア、ナデシコ連合は合流し、コロニーフタバアオイへと向かっている最中だ。

エウクロシアもナデシコも強力な船ではあるが、いかんせん数が2隻だけではきついとはきつい。

一応エウクロシアにはエスカロニアもドッキングしているので、3隻だが焼け石に水だ。

後はカグヤちゃんがどの程度まで仕込みをしているかということだな。


と、考えながらブリッジに入ると、驚いているラピスという珍しいものが見れた。

最初は俺を見てかと思ったが、どうも違うらしい艦長席のカグヤちゃんも思ったらしく、


「どうしました?」

「偽物から世界に声明が送られてきてる」

「メインスクリーンに投影してください」

「うん」


画面に写ったのは、やはり俺の25歳の肉体。

バイザーをしてピッチリスーツ着てマントをしている。

まあ流石に同じものではないが、それでも神経を逆なでする姿であるのは事実だ。


「地球の諸君、降伏勧告を行ってより24時間の時間がたった。

 我らの主張は世界中のメディアで放送されたものと思う、ニューヨークの花火は気に入ってくれたかな?

 あれから、地球連合政府の会議を開いて決議をする話の進展がなくてね、連合宇宙軍 第七艦隊が到着、防衛艦隊と睨み合いを始めている。

 どうにも過小評価されているようだ、核攻撃だけが我らの武器ではないことを証明せねばならないな」


「これから、10分ごとにミサイル攻撃を行う。そちらが交渉のテーブルにつく気がないなら相応の対応をするだけだ。

 さて、最初は……香港に花火をあげるとしよう、その次はレニングラードあたりにするか、ハワイもいいな、シンガポールもだ。

 その次はマドリード、ブエノスアイデスにも落としてやろう、いつになったら泣きついてくるか楽しみだな」



ちっ、焦れたか……たしかに48時間は指定する時間としては長いと思っていた。

だが、10分ごととは……力を示すためとはいえ無茶苦茶だ。

せめて30分……いや、これで死傷者を出さないようにするには、ボソンジャンプによる特攻くらいしかない。

だが、それを許してくれる皆ではない、既に俺の回りにはルリやコーラル、メイド達が集まっている。

流石にパイロットのメイド達はいないが、それでも何が言いたいのかはよくわかる。


「まだ動かないでくださいね。人質交換の話を出すにはちょうどいいタイミングでもありますし」

「ああ……頼む」


そう言って、ユリカに連絡を入れミスマル中将から話を通してもらうように言伝を伝えた。

直接動ければ良いのだが、今の俺は動く事はできても戦闘となると怪しいのが本当のところだ。

纏の使用を重ねたせいで、回復が遅れているのも事実、つまり、次纏を使ってそれが切れた時完全に無防備になってしまう。

彼女らはそれを恐れているのだろう。

俺の無茶は俺にとっては一番楽な方法だから、他人の命がかかっていない事ほど楽なことはない。

だからこうして、彼女らは自分の命で上乗せしてくるのだろう。


「第五艦隊の警戒域まで後5分で接触します」

「火星の後継者への通信開きなさい。行政府に直接できればいいけど、とりあえず第五艦隊につながればいいわ」

「通信回線開きます」


正面モニターに出たのは、いかにも苦労人と言った感じの男だった。

しかし、その服装は火星の後継者のくすんだ赤の制服。

だが、だからこそこの人質交換は受けないわけにはいかないはずだ。


「はじめまして、私はアスカインダスタリー代表取締役カグヤ・オニキリマルと申します」

「アスカインダストリーの社長?」

「はい、今回は元火星の住人たちを40万人ほど人質交換のために連れてまいりました」

「よっ40万……」

「つきましては、海燕ジョー様にお取り次ぎ願えますか?」

「……わかった」


自分には判断出来ないと思ったのだろう、案外あっさりと取次の許可をもらった。

ただこの苦労人そうな艦長が出ている事を考えると、ローゼンクロイツ中将だったか、彼は実権を奪われたのだろう。

あの男には、いくつか言いたいこともあったが、まあ言っても無駄だろうから同じことだ。

しばらく考えているうちにメインモニターの先が変わる、どうやらお出ましのようだ。


「貴様らは……、人質交換だと?」

「はい、そちらの人質コロニーフタバアオイ関係者15万名とこちらの元火星の人達40万人、交換することは出来ませんか?」


カグヤちゃんが切り出した人質交換の条件提示は明らかに問題だった。

それは当然本人もわかっているだろう、こちらはもともと40万人を送り出すつもりではあるが、

向こうが値を吊り上げてくる事を予想して半分か同数の15万人程度を口には出すべきなのだ。

だが、カグヤちゃんは最初から手札を切った。

理由は分かっている、一つには交渉をするのが無駄である可能性が高いということ。

恐らく条件交渉をしている間にも、爆弾がボソンジャンプし続けるだろう。

自分が原因の戦いで死人が出る……あってほしくない事だ。

それともう一つ、こちらの優位を取るためには最初から譲歩しているほうが良い。


「ふむ、どうして俺がそんなことをしなければならない?」

「貴方は火星の代表だというのでしょう? それとも火星の民を見捨てたと喧伝してほしいと?」

「なるほど、たしかにその通りだ。我らは火星の民を保護しなくてはならん。だが、知らなければどうということはない」

「知らない、ね。それは無理です。私達が何の保険もなしに会話していると思っているなら……」

「なるほど、この会話は地球に筒抜けか。駆け引きと言うものを知っているようだ。

 取引に応じよう、こちらで人質にしている人間の9割9分、それと火星の民40万人を交換ということでいいか?」

「なるほど、当然残り1分は」

「ああ、相応に人質の価値のある人間だ」


15万名の1分つまり100分の1、150名。

大学にいる、権力者の子や孫達の数の半数くらいだろうか?

より価値の高い者を選抜するだろうから、実質、人質の数は減ってないと言っても過言ではないだろう。

その上、150人程度なら監視も楽になる。

だが、火星の民40万人を受け入れれば混乱は必至、今の状況より悪くなるだろう。

つまり、表面上は海燕ジョーの勝ちだが、実質こちらの優勢勝ちに持っていける内容だ。


「それと、あの男はいるか?」

「あの男……誰のことです?」


カグヤちゃんはとぼけてみせたが、間違いないあの男俺の居場所を把握してるな。

今回俺は、画面の中に写り込まないよう、端に立っていたのだが。

作戦に関しても俺は関与してない、何が奴に感づかせるのかはわからん。

メイドガイだったか、奴はそもそもブリッジにいない、ルリも俺の横にいて画面から外れている。

そういう意味で見つかることがない以上、感なのだろう、このタイミングでここにいるなら俺と関係がある。

増して、俺はアスカインダストリーと関係が深いと、そう考えた可能性が高い。


「奴に言っておけ、お前は必ず消す。この世界に居場所はないとな」

「奴というのが誰かはわかりませんが、そのようなこと伝えるつもりはありません。

 貴方こそ、この世界に居場所があると思っているのですか?」

「フッ、藪蛇だったようだ。輸送艦の警護は元第五艦隊が行う、15万人のフタバアオイにいる民間人との交換は宇宙港で行うとしよう。

 準備に1時間ほど時間をもらう。では、うまくいく事を祈っているよ」

「……ッ!」


カグヤちゃんが何か言おうと口を開きかけたタイミングでジョーを名乗るあいつから画面が切り替わる。

例の苦労人風の艦長と話をして、護衛の件は了承を受けた。

通信を切り、カグヤちゃんは俺を見て言葉を紡ぐ。


「虎穴に入らずんば虎児を得ずともうします。アキトさんもこれでいいですね?」

「ああ、頼む。奴はなんとかしなくちゃいけない、そう思う」


周囲にいるメンバーはそれに対し頷きを交わす。

俺は苦笑しつつも、皆を見つめ返した。


「アキトの体を勝手に使うなんて許せない。あの格好はアキトだけのものだから」

「いや、別にそれは……」

「ッ!」

「うう……」


なんだか睨まれた。

まあ、ラピスにとって、俺の姿はアレだったのはわからなくもないが……。

特別思い入れがあるわけじゃないんだがな(汗)


ともあれ、エウクロシアとナデシコ、そして100隻に及ぶ大型輸送船は第五艦隊に曳航される形でコロニーフタバアオイへと戻って行った……。











木星圏、ガニメデ行政府。

現在、神楽月へと移動した、ガニメデの行政機関である。

ガニメデ、カリスト、エウロパ及び各衛星の代表の合議制によって成り立っている木連だが、現状は合議とは名ばかりである。

正義の名の下、草壁の方針に従わない者は粛清、リンチ等のよろしくない未来が待っている。

それを防ぐため反草壁連合も組まれていたが、組んだ上で議員数で負けている始末。

草壁の独裁といっていいのが木連の現状である。


「我らは火星を取り戻し、月を奪還するに至った!

 しかし、愚かなる地球の連中は反攻作戦を企てている!

 今、我らのするべきことは何か!?」


草壁は相変わらずマイクを使って分かりやすく皆に訴えかける。

こう言われれば、撃滅を叫ぶしかない、そうでなければ非国民そういう雰囲気を作り出していた。

イベント会場と化している議場は国民の熱気と議員の冷や汗だけが全てだった。

もちろん草壁は簡略化した言葉だけで済ませるつもりはない。

ある程度の具体性も含めて言葉にする。



「月面は無人兵器ばかりではなく、優人部隊も参加し治安を維持しているがいかんせん多勢に無勢。

 このような事態に陥ったのは私の不徳のいたす所である」


草壁が言葉を紡ぐとしんと傍聴に来ている人間たちは静まり帰り聞く姿勢を見せる。

それはまるで、一つの生き物のような整然としたものだった。

草壁が求める世界とはまさにこの延長線にあるものである。


「先ず、より多数の虫型を送り込み支援を行い、時間を稼ぐ事とする。

 また、増援により敵が混乱した時を見計らって秋山源八郎率いる優人部隊による制圧を行う。

 数に於いては今だ悪の地球に勝てるものではない!

 しかし、我らには勇気が! 正義が! そして優人部隊がいる!!

 我らの勝利は約束されたものである!!

 さあ、叫ぼう! レーッツ! ゲキガイン!!」

「「「「レーッツ!! ゲキガイン!!! レーッツ!! ゲキガイン!!

 悪の地球に死を!! 正義は我らの手に!!!」」」」



つまりは、善悪二元論。

我らが正義である以上、相手は悪であり、我らの勝利に疑いはないというもの。

これらは、二次世界大戦当時の日本のプロパガンダに非常に近く、また同時代のアメリカのプロパガンダにも非常に近い。

それらは、軍事力の肥大した国に起こりやすい、自己陶酔型の正義を元にした国家運営である。



「だが、苦しいだけの勝利等、何ほどのことがあろうか!!」


場の空気を引き裂き、その声は議場全てに響き渡った。

それは、凛として、熱病に浮かされた皆の心を強制的に現実に引き戻す。

やってきたのは、黒髪を肩まで伸ばし、後ろを縛った知的でありながら勇猛であることが判る英雄の如き男。

草壁はその男が現れた瞬間こそ、呆然とした顔をしたが、次の瞬間には敵意のこもった目で見て答えを返す。


「勝ってこそ英霊も浮かばれる! 敗戦主義者等利敵行為! 敵が何をしに来た!?」

「敗戦主義等と、自らを追い詰める言葉を吐く、貴方には敵と味方しかいないらしい」

「敵と味方意外何がいるというのだ! 我らは捨てられた民! ならば我ら意外は全て敵!!」

「ならばこいつらはどうなんだ?」


そうして引き出されてきたのは、クリムゾンからの出向社員達。

引き出してきたのは、ネオスの第三段階と言われていた3人の娘達である。

その中には、雪谷進一の姿もあった。


「彼らがここにいるヤマサキ博士の部下として働いていた事、その命令が草壁閣下、貴方から下った事は確認している」

「まぁ、そろそろ潮時かもねぇ」


技術将官であるヤマサキは諦めたように皮肉な微笑みを草壁に向けている。

実際の所、彼にとっては上司が誰であろうと関係ない。

今は鎖に繋がれたとしても、彼の技術を欲する存在は山ほどいるのだから。


「貴様ー!! まさかこの私を、告発するつもりか!?」

「その通りだ、だが地球の勢力と内通していたことではない。

 そちらはまだ、政治のセンスの一つとして貴方の度量を伺えるものだ」

「ならば、何だというのだ!?」

「貴方の子飼いの暗殺者達だよ。あれに殺された政治家は数知れない。

 政治家として有能な者も多かった、彼らを殺し成り上がった貴方に、木連代表の地位を預けておく訳にはいかない!」


そう言い、今度は猿ぐつわを噛ませた北進衆を引っ立ててくる。

北進その人は流石に捕まえることができなかったのか、この場にはいない。

しかし、その凶相から暗殺者であることは明らかだ。


「何を言う、そのようなもの達等知らん!」

「そういう言い逃れをされる事は分かっていた。だから、こういうものをね」


神崎がパチンと指を鳴らすと、数時間前の映像が出てきた。

そこでは、北進達と草壁が部屋で会話をしている所が映っていた。

内容は、草壁が窮地に追い込まれる可能性があるため暫く身を隠すようというものだ。

移しているテレビがどこにあるのかはわからない、しかし、たしかにくっきりと映っていた。


「これは、この船の機能の一つ偏光レンズカメラというらしい。

 実際、私もこのように、いろいろな角度から写す事ができる」

「嘘だ! 捏造だ! このような動画どうとでも作る事ができる!」

「だがこの男達の武器には血痕が色々付着していてね。

 調べると、彼らを見たことがあるという政治家及びその秘書達が多いんだよ。

 それも、貴方の政敵だったものたちばかりにね」

「うっ、ぐぅ!! この反逆者が!! 捕らえろ!!」

「残念だが私達がここに入れた時点で貴方は終わりなのだよ。草壁元中将閣下」

「元……?」


驚きの目をする草壁の前に、神崎は一枚の紙を押し付けた。

そこに書かれていたのは、国家反逆罪の通告文だった。

クリムゾンとの内通、政敵の暗殺等色々な罪状が書かれており、その罪は死刑にしても余りあるため、宇宙投棄の刑となっている。


「はっ、図ったな……神崎ッ!!!」

「連れて行け」

「「「ハッ」」」

「神崎ッ!! 貴様も同じ末路だ!! 覚えておけ!! 必ず!!!」



今まで盛り上がっていた木連の国民達は、あまりのことに唖然とするばかり。

草壁の裏の顔等、誰も知らなかったのだ、当然である。

しかし、目の前には凛と佇む姿。


「諸君! 草壁元中将があれだけの事をされていたことは、悲しむべきことだ。

 しかしそれは、それだけ追い込まれていたという事にほかならない!!

 我らはそれを素直に受け止め、この先を生きていく必要がある!

 まだ、我らは止まれない!! 我らが安心して住める世界のために!!」


「安心して住める世界?」

「でも復讐は?」

「俺たちが正義なんだろ?」

「でも、死人も沢山出てるって聞くよ……」

「どうする?」

「俺は、俺は信じるぜ。草壁中将が犯罪を犯していたのかはわからねぇけど」

「そうだな」

「ああ!!」

「新しき指導者、神崎准将!!」

「神崎准将!!」

「レッツ・ゲキガイン!!」

「「「「レッツゲキガイン!!」」」」


神崎は、この国民性に危機感を覚えはしたが、今はこうするしか無いと割り切ることにした。

いつの間にか、クリムゾンからの出向社員達がここからいなくなっていることに気づいているのは神埼と警護の3人だけだった……。




あとがき


以前この作品を上げてから8年半……ようやく続きを書く気力が戻ってきました。

ただ、月一が限界だと思われます、あまりハイペースは期待しないでください。

この作品、シルフェニア最初の作品として完結させたいというのが本音です。

これから、後半に向けていろいろなフラグを回収せねばならず、実際長い間が空いたせいでフラグの取りこぼしが出るかもしれません。

読者の方ももう覚えていないでしょうし、実際自己満足以上のものではありません。

気が向いたら、ちょっと見てくだされば幸いくらいの感覚でw



今まで感想を下さった方々ありがとうございます!

一つ一つの返信は今回は難しいようですが、次回からは拍手も掲示板もあれば返していくつもりです。

まあ、ゼロである予感はひしひしとしていますが(汗)



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