それは、、遠く遠く離れたところ。




それは、遠い遠い未来の話。




移民惑星エアル……そう呼ばれる星がある。




移民時代から何百年も経ち、何度もの大戦を経て乱立する国家はどうにか安定している。




だが、未だ不安の種も多く、治安も良いとはいえない。



科学技術も大戦中に失われたものが多く不安定でいびつになっていた。



そんな中でも、生活は続く。




いびつな技術たちはいびつに進化をとげ、排他的な何かを生み出す。




ナノマシン……そう呼ばれる技術がごく一部の場所に残されていた。



ガルデローベ……。



この物語は、ナノマシン技術を残すこの学園からはじまる。







光あふるる場所
In a far star of the future




第一話 「学園に現れた男」




「時空震観測、粒子に変動あり!」

「すぐに震源を確定しろ! 一体何が起こったというのだ……」

「それが、この波形からすると、ガルデローベ敷地内に何かが出現する前兆のように見えるわ!」

「詳しい場所の特定は出来ないのか!?」

「グラウンド近辺としか言えないわね……」

「……なつき、うちならいつでもいけるさかい、現場の封鎖を」

「頼む! ……シズル、無理はするなよ! ヨウコはそのまま時空震を調査、変動があったら教えてくれ」

「わかったわ」

「うちはいつも冷静やさかい大丈夫。なつきこそもうちょっと落ち着き。じゃ、行くさかい」

「ああ! 学園内に通達! グラウンド周辺にいる生徒はすぐにその場を離れること!

 どんな事態になるか分からん! 急がせろ!」


惑星エアルでも、最大級の機密を持つ学園、ガルデローベ。

そこは今正に異常事態の真っ最中であった。

時空震……実際の所彼らにも何の事だかわかっているとはいえない。

失われず残っているからといって、全ての知識が残るわけではないのだ。

だが、ガルデローベのグラウンドには明らかに異常と見える黒い穴が開いていた。


「これが……時空震の正体……ブラックホールなんて事はないように見えるんやけど……」

『重力異常は感知しているが、ブラックホールなら学園は消滅している。何か別の物だろうな』

「やろうね。でも、危険があるかないかはわかりまへんえ。調査たのみます」

『ああ、ヨウコの方でも全力で調べているようだ』

「しかし、やじうま……なんとかなりまへんの?」

『いや……グラウンド周辺からは退避しているはずだが……』

「学園のそこかしこから隠れてみとります。もし危ない物やったら大変な事になりますえ?」

『分かった、戒厳令に強化しておこう』

「それが妥当やとおもいますわ」


グラウンドに一人立ち、耳元につけるタイプの通信機を使って話をしているのは亜麻色の長い髪をした妙齢の女性。

清楚可憐が似合いそうなその女性がなぜそんな所に立っているのか普通なら疑問に思うだろう、しかし……。


その服装は少し変わっていた。

全身を黒いピッタリとしたインナーで覆い、その上から紫色の光沢のある布地で出来た特殊な衣装で覆っている。

マントをなびかせて立つその姿は戦士に見えるが、それでも女性的な部分は損なわれていない。


だが、変わっているのは当然。

この服装こそ、ガルデローベの秘密そのものと言ってよかった。

<ローブ>そう呼ばれるこの服装は、実は着る物ではない。

高次物質化能力と呼ばれる特殊な能力をナノマシンの制御で行い、作り出されたものである。

そのため物理攻撃などの衝撃は殆ど無効化してしまう。

<ローブ>を纏った者を傷つけるには、高次物質化能力をなんらかの方法で手に入れる必要があった。

つまり、彼女の服は常識では考えられない防御性能を持っているということになる。

それだけではない、<ローブ>を纏っている間はナノマシンの活性化により

筋力、動体視力などが増幅され、通常の数倍から数十倍もの身体能力を手にいれることが出来るのだ。

他にもいくつか特殊能力が得られるが、それはまたの機会として、兎に角、とんでもない戦闘力を秘めているという事である。


そんな彼女ではあったが、目の前で起こっている事についてはよく分からないことが多すぎ、正直緊張していた。

シズル・ヴィオーラ。

きょうえんのむらさきすいしょう

<嬌嫣の紫水晶>の名で知られ、世界でも有数の強さを誇る彼女が……である。


「帰ってきたばっかりやのに、ほんま騒がしい所やねここは」


額に汗をかきながらもつぶやくシズル。

目の前の怪現象は大きくなっている。

その暗黒の穴は直径2m前後まで膨らんでいた。


「何か来る!?」


そう、暗黒の穴からは何かが出現しようとしていた。

粒子のような光をまとい、穴から何かが出てくる。

いや、出現というより、その場で何かが組みあがっていくようにも見える。


「……なつき、この穴から出てくる人、友好的やとおもいます?」

『……人なのか?』

「さあ、足は二本ありますし、手も二本ついているように見受けるんやけど?」

『ちょっと待て、カメラの方向を変えて……なるほど、確かにな……』


そう、出現する何かは人の形をしていた。

足元から姿を現し始めていたので、完全に出現しているとは言いがたいが、それでも二本の手足は確認できた。

ただ、全身が黒で覆われているのが不安をさそう。

全身タイツというか、シズルと同じようなインナーである。

ただ、どう見ても男だが……。


「なつき、どう思わはります?」

『どう、と言われてもな。五柱になったお陰で、男にはとんと縁がないぞ』

「あんまり自慢できる事やおまへんけどな。とはいえ、男である事は間違いなさそうどすな」

                        (乙Hime)
シズルは少しだけ気を抜いた、少なくともオトメである事はなさそうだ。
注*表記上”乙Hime”より”オトメ”のほうが分かりやすいので今後は”オトメ”と 表記します。
だからと言って、彼が友好的でなく、彼女達に害を及ぼす可能性もないとはいえないが。

そう考えているうちにも、男の出現は終わったらしい。

男の格好はお世辞にもまともとは言い難い、黒いマントに、黒いインナー、目元にはサンバイザーを下ろしたかのような大きなバイザーをしている。

変質者と言われても文句は言えないような姿である。


「……!」


男は、出現と同時に周囲を見渡し、そして警戒する。

しかし、シズルにとってみればそれは遅い反応でもあった。

男は確かに相当のてだれのようだが、強化されている様子はない。

シズルは男の注意が自分に向いている事は分かっていたが、あえて見返すだけにとどめておいた。


「くそっ! ……北辰め!」


男のつぶやきをシズルは耳に留めた。

言葉が通じないという事はなさそうだ、少し言い回しが違うようには感じたがそれだけのようである。

だが、北辰とは何を指すのか、人名のようだが彼にとってどんな意味があるのか。


「ちょっとそこの人」

「……」

「突然出てきた割には失礼なお人やな。返事くらいかまいませんやろ?」

「……そうだな」


男は少しだけ気配を探るようなしぐさをした後、落ち着いたようにシズルに向き直る。

とりあえずいきなり暴れだす様子は無い。

シズルは当面友好的な態度で臨むことにした。


「それで、突然現れたように見えたけど、どういうからくりなんどす?」

「……答える義務は無いな」

「ふふ、そういえばそうどすな。でも、うちらのいるところにいきなり現れたんやから気になるのは当然ですやろ?」

「……」


シズルは相手が少し当惑していることが分かる、この場所自体望んで現れたわけでもないようだ。

となれば、おのずと見えてくるものがある。

それはトラブルである、どういう経緯か知らないが、この男は跳ぼうと思っていたところから遠く離れたガルデローベにたどり着いたと見るべきだ。

だが、この男は簡単に口を割らないだろう。


「お互い自己紹介もしておりまへんでしたやろ。先ずは名乗らせていただきますわ」


男は警戒心を解いてはいないが、シズルは構わず話しかける。

男がたとえ何かをしでかしても、すぐに捕らえる自信がそうさせたともいえる。

だが、不安がないわけではない、この男の出現方法はシズルにとっても未知の領域だった。


「うちはシズル・ヴィオーラいうもんです。

 このガルデローベのオトメで、五柱いうもんをやってます。

 簡単に言うと、ここの教師兼警備員やろか?

 それと、揉め事の解決も引き受けてるんです。

 で、あんさんはどういう理由でここに?」

「……俺は、別にここに用があったわけじゃない、すぐに失礼させてもらおう」

「名前も名乗らんと行く気ですか? うちも名乗ったんやさかい、名乗りぐらいして行ってもばちはあたりませんえ」

「……アキト。テンカワ・アキトだ」


そう言って男、アキトはガルデローベの敷地から出て行こうとしていた。

シズルは一つ確信した、この男はオトメを知らない。

この世界でオトメを知らない人間は殆どいない、どんな田舎でも話を聞いたことぐらいはあるはずだ。

しかし、この男は興味も示さなかった。

少なくとも、聞けば少しは動揺なりするはずのその言葉に興味すら示さなかったのだ。


「なつき、どう思わはります?」

『彼は、この星の住人ではないのかもしれないな。特殊な移動方法の実験か何かをしていた他の移民惑星の出身者とかではないのか?』

「その可能性もありますな、それで、そんな人をヴィント市に放って大丈夫ですやろか?」

『そうだな、出きれば確保しておきたい所だが……』

「ならうちに任せてくれへんか?」

『何か考えがあるのか?』

「いややわ〜うちはなつきの為やったら何でもしますえ」

『……健闘を祈る』










シズルの会話相手、ナツキ・クルーガー。

学園長という立場から考えると若すぎるように見える、まだ二十代前半にすぎない。

黒髪をストレートに下ろした少しきつい目の女性は、しかし、少しだけ目元を引きつらせていた。

シズル・ヴィオーラは非常に有能ではあったが、少しばかり趣味が偏っていた。

彼女はそんなシズルの事も嫌いではないが、禁断の世界に行く勇気はない。

いつもその手の話が出るたびに、硬直してしまうのだった。


「シズルもあれさえなければな……」


ため息とともに、そんな言葉を吐きつつ、ナツキは科学主任のヨウコ・ヘレネの方に視線を戻す。

もっとも、ヨウコ・ヘレネは天才肌の女性で、色々と兼任してもらっている。

ナノマシン技術の解析、オトメの体調管理、カウンセリングまでこなす彼女は科学主任というより保健の先生というイメージが強いかもしれない。

少し赤みがかった茶髪をソバージュにして、真っ赤な口紅を引いている。

オトメではないためか、化粧の類は自由にしているようだ。

そんな彼女は気楽に言う。


「まぁいいじゃない、今の所被害があるわけじゃないんでしょう?」

「うっ、まぁな」

「ふふ、ま、貴女達オトメは男性のそれを貰っちゃうとオトメじゃいられなくなるわけだし、息抜きには悪くないと思うけど?」

「人事だと思って!」

「でも、マリア女史みたいになるのも……」

「それまでには、私も引退して結婚する! っていうか変な想像させるな!」

「何が変な想像ですか?」

「「うわ!?」」


二人がわいわいがやがやしているうちに、背後から声をかける者がいた、見た目60すぎだろうか?

頭は完全に白髪になっていて特に染める様子もない、顔も相応のしわがよっている。

それでも、背筋はしゃんとのばし、歩く歩調もきびきびしている。

厳格そうな表情をした女性である。


「戒厳令はもう撤回してもよろしいでしょうか?」

「ああ、一応用心に越した事はないが、原因は学園を出たと思われる。戒厳令を撤回しよう」

「分かりました、では、学園の授業を再開させます」

「頼む」


スタスタと歩き去っていく姿を見ながら、ナツキは冷や汗をかいていた。

マリア・グレイスハート。50年前の大戦で活躍したオトメである。

彼女は生真面目で、良く働く人である。

ただし、彼女はそれを他人にも求める傾向があり、厳格な性格ともあいまって、非常に人当たりがきつい。

ナツキやシズルなども彼女には頭が上がらない、なにせ彼女らが学生時分にもここで教師をしていたのだから。


「はぁ、やっぱり緊張するな」

「さあ、それじゃ私ももう一度解析をはじめるから、学園長も自分の仕事に戻って」

「それもそうだな。では結果が出たら報告してくれ」

「わかったわ」



ガルデローベは学園でありながらこういった特殊な事態に対処することに長けている。

それは、この学園がオトメ……、そう呼ばれる特殊な存在を養成する学校であるからだ。

立場上はどの周辺各国からも中立であり、オトメ候補の受け入れはするものの、どこの勢力にも直接は加担しない。

また、オトメは昔の核兵器ににて、持っているだけで他国への威圧となり、戦争では主力でもある。

彼女らを擁する国家は慎重を強いられる事ともなり、平和の担い手でもあった。


即ち、彼女らは世界のバランスを保つ存在でもあるのだ。







そんなオトメを育てる学園、ガルデローベがある街、ヴィント市。

この都市は、ヴィントブルーム王国の首都でもある。

ヴィントブルーム王家の家名が国家となり都市名ともなっているという分かりやすい土地だ。

ここは植民時代の科学技術を多く残し、人口も多い。

ヴィントブルーム王国は国土こそ狭いものの、この都市の規模は惑星エアルでも有数のものがあった。

小さくとも豊かな国、それがヴィントブルーム王国の評価である。

その一翼を担うのがこのヴィント市であり、

国事には参加しないとはいえ観光の名所としてガルデローベもヴィント市の知名度を上げていた。



そういった事情の場所に、一人の変質者のような黒ずくめがたたずんでいた……。






















俺にわかっている事は多くない。

ルリちゃんが火星の後継者を無力化した時、北辰とは決着をつけたはずだった。

しかし、実際は違った、奴はその時に姿を消し、遺体は見つからなかった。


草壁も山崎も捕まったが、奴だけは逃げのびたらしかった。


やがて火星の後継者の残党が反乱をたくらんだ事もあったが北辰は現れなかった。

そう、奴は密かに俺との再戦を待ち望んでいたらしい。


俺がネルガルとの契約を切ったそのときを見計らい、奴は俺と再戦した。

俺も必死だったが、奴も無事ではすまなかった。

お互い後が無いという時、奴の機体のジャンプユニットが暴走した。


それに巻き込まれる形で俺も飛ばされたらしい。



そこまでは理解できる……しかし、現在いる場所と言われれば、さっぱりだ。


ブラックサレナの方も別の場所に飛ばされたのか、あの場には無かった。

ラピスとのリンクはネルガルとの契約を破棄した時点で切っているので、巻き込んでいないだけマシか。


一番の問題はここが地球圏なのか、時代はいつか、といった全くどうしようもないものだった。

一見ヨーロッパの街並みに見えなくも無いが、街を歩いていると違和感が付きまとう、

未来都市とでも言えばいいのか、重力制御はされていないようだが、リニアの列車が普通に街を走っているし、ホログラフも俺が知るものより立体的だ。

本来新技術というのは一般に普及するのが遅れる傾向にある、それを考えればかなり未来かもしれない。

とはいえ、それだけでは判断できない。


しかし、それ以外にも俺自身の問題もある。

バイザーは一ヶ月くらいは持つはずだが、この格好では目立ちすぎるだろう。

かといってスーツの感覚補助が無い状態では俺は歩くことも出来ない。

マントはある意味良心でもあるんだが……どっちにしろ不審者だよな……。


この状態では迂闊に街行く人に聞くわけにも行かない、どうすればいいのか。


とりあえず、あまり目立たないようにダウンタウンへと向かう。

現状では、俺に出来ることは状況把握と、生活基盤の確保くらいか。

そういう意味ではむしろお上品な表通りよりも仕事もある。

どこでもそういうことは同じなはず、そう考えながら裏路地へと入り込んでいった。


「ん?」


一瞬先ほどの女の気配がした、気のせいかも知れないが、用心が必要か?

あの女、おかしな気配を持っていた。

表面的な強さは俺と比べてもそれほどではないように見えたが、

妙に場慣れしている雰囲気があった、それに切り札を持っているもの特有の余裕らしきものも。


「どちらにしろ、俺のやる事は変わらないがな」


裏路地を抜けると、川沿いの狭い通路に出た。

何か騒がしい声と同時に争っているような気配もする。


「……!」


俺はとっさに、バックステップで一歩下がった。

俺が一瞬前いた空間に足が突き出されている。


「!?」


蹴っているのは少女のようだ、蹴りを避けられた事で動揺しているのが分かる。

かなりの速度で蹴ってきていた、確かに当たれば男だろうと気絶させられそうな勢いだ。


「あなたが人さらいのボス?」

「……」


俺は言われて目を見開く、もっともバイザー越しでは分からないだろうが。

どうやら、そこらで転がっている男たちの同類に見られているらしい。


釣り目の気の強そうな少女だ、服装は赤っぽいエプロンドレスで黒髪を左右の耳の後ろで縛っている。

ルリちゃんと同じようツインテールらしい、あまった髪は小さな三つ編二つにまとめ後ろにたらしている。

もっとも、ツインテールを縛るには短いのかその先が広がってしまっているが。

兎に角、少女は俺をねめつけている、背後にいる二人の少女をかばっているのだろう。


「だっ、誰じゃその男は!? 怪しすぎるぞ! もしや! 本当の誘拐犯か!?」

「うん、ゆうかいはいけない事だってばっちゃも言ってた!」


背後の二人もなにやら騒いでいる。

どうも俺が犯人というのは決定事項らしい。


俺が少し心の中で悲哀にい浸っていると、それを隙と見たのか目の前の少女が攻撃を再開した。

まず俺に向かって間合いを詰めると、両手をそろえてすくい上げる様な掌底を打ち込んでくる。

俺は、掌底に手を合わせながら後ろへ飛ぶ。

衝撃を拡散させるために行ったのだが思いのほか後ろまで飛んだ。

それだけ威力が激しいのだろう。


「ちょこまかと!」


次は間合いを詰めながらハイキックを繰り出してきた、俺は前かがみになりながら一歩前進。

そのまま足をつかむと、もう一方の足をかけて転ばす。

そして、倒れた少女の腕を背後に回して捻りあげる。


「ぐ!?」

「すまんな、別にうらみは無いが。現状を把握するために聞いておきたいことがある」

「ああ! 二ナちゃんがつかまっちゃった!?」

「うむ! 誘拐犯があの娘に気をとられているうちに逃げるぞ!」

「そんな、二ナちゃんにはまだお礼もしてないのに!!」


両方とも背の低い子供だが、紫がかった白い髪の少女はかなり薄情そうだ。

対して、茶髪を結い上げた二つの三つ編みを後ろにたらした少女はえらく義理堅そうだ。

俺はどうしたものかと少し考えたが、手っ取り早いのは俺が縛り上げている少女に聞くことのようだ。

一番現状把握が出来そうに見える。


「まず、最初に言っておく。俺は誘拐犯ではない」

「誘拐犯ではないとすると、暗殺者か? どっちにしろわらわは逃げる!」

「あーちょっと待ってよ、二ナちゃんを助けないと!」

「何が言いたいの?」


二人が騒ぐ中、どうやら目の前の少女だけは状況を理解したらしい。

俺は話を続ける。


「別に、お前が襲い掛かってきたから捕らえただけだ。お前たちが関わって来ないなら俺はこのままここを去る。

 悪い条件ではないと思うがな?」

「……」


二ナと呼ばれていたその少女は俺の提案を聞いていぶかしんだが、やがて首を縦に振ってうなずく。

俺が手を離した瞬間、飛び離れた。

俺はそのままきびすを返しこの場を離れようとしたが、突然呼び止められた。


「まて! そなた、そこの女を簡単に倒していたな」

「……?」

「その少女はオトメじゃぞ、そう簡単に一般人がかなうわけはない。おぬし普通の人間ではないな?」


えらい言われようだな、俺はまだ人間を辞めたつもりは無いのだが。

だが、オトメというのはさっきの女からも聞いた、確かシズルだったか、確かにあれは人間離れした何かを持っているように感じた。

しかし、目の前の少女はそのようなことも無い。

武道には長けているようだが人外の迫力は無い。

だから生徒なのかもしれないが。


「まぁどちらでも良い、わらわの護衛をしてみんか?」

「……?」


俺は一瞬疑問符で頭が一杯になる。

こういっては何だが俺は不審者そのものといっていい、そんな状況で俺を雇うといえる豪胆さはかなりのものである。

俺が応えに窮していると、背後がいきなり爆発した。


俺は吹き飛ばされながら体制を変え着地する。

ちょうどその雇うと言った少女の前で立ち上がり背後を振り向く。

そこには巨大で不恰好なロボットが出現していた。


「ああああ、あれは何じゃ!?」

「スレイブ……」

「何でもいいけど! 逃げないと!!」

「うっ、うむ!」


俺を含めて4人の一行は巨大ロボットに追いかけられて逃げ出した。

かなり危機的状況にあるはずだが、俺はなぜかあまり心配していなかった。

状況についていけなくて心が麻痺しているだけかもしれない。

しかし、どこかで楽観している自分に気づいた……。














あとがき


ナデシコ×舞乙Himeを実験的に始めてみました。

やってみるとアリカが話を引っ張っていってくれそうな予感がします。

明るいキャラって大事だ(汗)


さてさて、続きを書くかどうかは反応次第(爆)

まぁ実際のところ、他のSSの続きに戻るのか思案どころといったところです。

でもお話はある程度練ってあるんですけどね。


このお話は、アキトに割合手放しの強さとモテっぷりを披露させることになるかもしれないです。

まぁ戦闘が中心のお話ですし、色々バカスカやるという感じかな?




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