あたしは夢を見つけた。



ばっちゃが言ってた、夢を見つけたら迷ったら駄目だって。



前を見てひたすら進んでいかなくちゃ駄目だって。



迷いは諦めにつながるから。



でも、諦めなければきっとなんとかなるってばっちゃは言ってた。



ばっちゃの言う事はいつも正しい。



だって、いつも自分で実践して見せてたんだもん。



あたしにも出来るかな、ばっちゃみたいに生きる事。



光あふるる場所
In a far star of the future



第四話 「即位」



「俺の名はテンカワ・アキト。君の知らない別の星から来た異端者だ」


目の前の黒ずくめの人があたしにおじぎをしながら挨拶をする。

あたしは、どこかこの世の物ではないような違和感を感じてしまう。

大きな目を覆う何かを取り外し私を見る瞳は綺麗だなと感じた。


「ええっと、私はユメミヤ・アリカです」

「いや、それはさっき聞いたから」

「あ!?」


あたしは急に恥ずかしくなる、でもこの人、目の覆いをつけている時とつけていない時で違いすぎ。

また目の覆いを付け直すのを見て私はもったいないな〜と感じた。

あっいや、そんな場合じゃなかった。


「それで、審議会はどこですか!?」

「俺も今行こうと思っていた所だ、ついてくるといい。……サレナ?」

「任務完了しました。継続し道案内へと戻ります」

「頼む」


アキトさんとサレナさんて凄い。

まともに言葉を交わしていなくてもお互いの事がわかってるんだ……。

あっ、ここだとサレナお姉さまかな?

あたしはそんな事をつらつらと考えながら二人についていった。












「中途入学!?」

「前例がない!」

「何を考えている!」


議事堂は先ほどの学園長であるナツキ・クルーガーの発言により、アリカの処遇について非難の声が上がる。

ナツキが推す理由を知っているものは殆どいない、それも当然だろう。

しかし、ナツキが推す理由を知っていると思われる一人である、セルゲイ・ウォンは一同の声が静まるのを待ち、浪々と語り始める。


「例年、どれだけの娘が入学を望み、そして涙を呑むか、それは学園長こそ良くご存知のはずだ。

 生徒の入学は貴女の一存で決めることでは……」

「私が保証しよう。アリカという娘には、良きオトメたる資質がある、そこの二ナと同様に」


ナツキは、セルゲイの言葉を遮りつつ、セルゲイの養女である二ナを引き合いに出すことで言葉を封じたのだ。

その言葉にセルゲイは一瞬苦虫を噛み潰したような顔となり、二ナは養父の表情を見てお荷物となった事に情けなさを覚える。


「よって私は二ナについても処分を見送るつもりだ。此度の件はマシロ姫をお守りする為であったようだしな」

「ほう」


ナツキは更にそう続けた。一瞬ナツキとセルゲイの目線が交錯する。

セルゲイは言葉の意味をほぼ正確に受け取っていた。

つまりは、二ナを処分しない代わりにアリカの入学を認めろという事である。

セルゲイはアリカの状況を考え、その辺りが妥当かと表情を緩める。


「認めぬぞ!! その二ナとか言う娘も! アリカとかいう無礼 者も!

 オトメになる資格などない!!」



議事堂の扉をバーンという音をさせながら開け、その娘、マシロ・ブラン・ド・ヴィントブルームは声を張り上げる。

彼女こそはアキト達を巻き込んで逃げ回った騒動の元凶でもある、本人に自覚はないが。

小さな姿は小学生程度にしか見えず、元気の良さも折り紙つきだ。

少し紫がかった白髪が印象的ではあるものの、弱々しさは見当たらない。
















「ところで、その格好のまま議事堂に行くつもりだったのか?」

「え?」


アキトに言われてアリカは自分の姿を確認する、シーツはボロボロ、所々穴が開き肌が露出している。

痴女と言われても仕方ない格好ではある。

アキトも全身タイツなのであまり人のことは言えないが、マントがあるうちは変態というより悪の幹部といった感じだ。


「でも、服はまだ乾いてないってヨウコさんが言ってたし」

「そうか……」


実質的には、アキトもこの世界でお金があるわけでもない、文無しである以上服を買ってやることも出来ない。

さてどうしたものかとアキトとアリカが首を捻っていると。

サレナが振り向いて問う。


「どうかなされましたか?」

「そうだな。少し時間をくれ。近くに服が調達できる場所がないか聞いてみる」

「……では一つだけお願いがあります」

「ん?」

「話す前にバイザーを上げておいてください。会話を進める上で役に立つでしょう」

「……? まあいい、分かった」


アキトは先ほどサレナが暴れて以来大人しくなっている生徒達の一人に声をかける。

栗毛というには少し赤い髪の毛をセミロングにし、眼鏡をかけた少女だった。

サレナに言われた通り、話しかける前にバイザーを上げておくと逃げ出すことも無く前にいるようだ。

もっとも、そのことによってアキトはその生徒をぼんやりとしか認識できなくなるが。


「ひとつ聞きたいんだが」

「はぁ……あっ、はい!!」

「そこの娘に服を調達してやりたいんだ、今すぐ入用なので服は何でもいい。何とかならないかな?」


アキトはぼんやりとした視線で少女を見る。

元々男性が余り訪れる事のないガルデローベである、アキトのギャップはかなりインパクトが強かったようだ。

バイザーの下に隠された素顔は少し女顔に近いような童顔であるため、怖いという感情が麻痺してしまったのだ。


「えっと、あの、更衣室に……」

「じゃあ、あの娘を連れて行って着替えさせてやってくれ」

「はい! あの……私、イリーナ・ウッズっていいます! お名前は?」

「テンカワ・アキトだ。よろしくな」

「はい!」


イリーナという少女はアリカを引っつかむと、そそくさと走っていった。


「あれでよかったのか?」

「はい、効果覿面です。しかし、効きすぎてなければいいのですが……」

「何がどう効くというんだ?」

「昔格納庫でイネス女史が話していたことを記憶しています。

 マスターはバイザーを外すとギャップの強さで女性をひき付ける能力があると」

「……イネスさん(汗)」


アキトは頭痛がしたかのように額を押さえるが、実際効いたのであるから嘘とも言い切れない所が逆に泣けてきた。





















「マシロ姫といえど審議の結果は……」

「いや、マシロ姫のおっしゃる通りですな」

「確かに、オトメの持つ力、果たす役割を考えれば、答えは自ずと出ましょう」

「そもそもウォン少佐、貴方は当事者の義父の筈、利害があるものは発言を慎むのが筋でではありませんか?」

「クッ……」


お互い意見を交わしていたはずの学園長ナツキ、そしてセルゲイも同様に押さえ込まれる。

確かに、この場において彼らがけん引役をしていたことは事実であり、

他の国の大使はそれを良く思っていない、マシロの発言は丁度抜群のタイミングであったといえよう、

しかし、そのバランスは同じく入り口からの闖入者により破られた。


「随分しみったれた会議をしているな、どこの世界でも上層部というのは変わらん」

「な!?」

「何者じゃ!!」


その言葉を聞いて、黒ずくめの男、アキトは唇の端を吊り上げて獰猛な笑みを作る。

それだけで、修羅場をくぐっていない審議会の面々は凍りついたように動けなくなった。

セルゲイや五柱の面々は動けなくなるようなことは無かったが、それでも気温が数度下がったように感じた。


「ここで俺の事を話していると聞いたが、眼中にないらしいな。ならばこの娘の言葉だけでも聞いてやれ」


すると、学園の制服に身を包んだ少女がアキトの背後から出てきた。

少女は少し緊張したような面持ちで、それでも議事堂にいる人々から目を離すことなく、声を出す。


「お願いです! 私を学園に入れてください!」

「現在そのことで審議中だ。大人しく部屋に戻って……」


ナツキがアリカに対し頭痛を覚えたかのように顔をしかめながら、アリカを退出させようとするが、アリカはその場で動くつもりは無いようだ。

入れてもらえないならこの場で飢え死にするような覚悟でもあるのか、単なる勢いか……。

しかし、実際のところ、つまみ出される可能性すら存在していた。


「ははははははは!

 なーんか面白いね〜。審議会の手順狂いっぱなしじゃない」


そして最後の闖入者は、場を支配するに十分な地位を持つ存在であった。


「ナギ!?」

「殿下、お着きになるのは明日のはずでは?」

「一日も早く会いたくってね、愛しのマシロちゃんに」


闖入者に対する反応が如実に現れたのは、マシロとセルゲイだった。

それもそのはず、闖入者の正体はナギ・ダイ・アルタイ。

アルタイ公国の大公にして軍部の統帥権を持つ元帥でもある。

                  いいなずけ

そして、マシロの許婚でもあった。

国家間の許婚の場合年齢に開きがあることも少なくないが、ナギも十台前半にしか過ぎず、身長もそう変わらない。

そして、姿もいわゆるアルビノ(白子)と呼ばれる体質であるためか、銀髪、赤目で肌は病的なまでに白い。

見た目はお似合いではあった。


「わ……わらわはお前などに会いたくない!」


お似合いではあるものの、マシロはどうやら彼が苦手のようである。


「つれないなー、相変わらず」


ナギは大げさに悲しんで見せるが、一瞬後は興味を失ったかのごとく、アキトに視線を向ける。


「そっちの、テンカワ・アキトって言ったっけね。君アルタイに来る気ないかい? 結構歓迎するよ?」

「折角だが、治療がここでしか出来ないらしい」

「それは残念。確かにガルデローベは科学遺産が多く残っているからね。

 でも治療が終わったらアルタイにも来て見てよ。君みたいな人にはきっと肌に会うと思うよ」

「そうだな、考えておく」

「ちょっと待て! お前は私に雇われたんだぞ! 他の者に仕える事など許さん!」


アキトに対する勧誘が怪しい方向に進んできたと見るや、マシロは割り込みをかける。

もっとも、正式な契約を交わしたわけでもない。

アキトもいつでも反故に出来るのだが、どうしても微笑ましく見てしまうのか未だに契約については異論を出していない。


「だそうだ」

「ありゃりゃ、チャンスだと思ったのに」

「大公殿下、今は審議中ですので……」

「話は大体聞いてるよ。この娘があのオトメ志望の子でしょ?」


そう言って、ナギはアリカを見回す。

そして、一つうなずくと、


「いいじゃん、入れてあげれば」

「へっ?」

「それは、如何なアルタイ大公殿下とはいえ勝手に決めていい事ではありませぬぞ!」

「それに、あわせて言えば殿下の国の候補生二ナ・ウォンの進退もかかっているのです!

 いわば殿下は当事者。

 発言は謹んで頂きたく存じます!」


ナギのとっぴな発言に息を呑まれたものの、審議会の面々も面子がある。

ナギだけに発言させておくわけには行かないし、

今回の場合は二ナの進退もかかっているため、ナギがあまり強く出ることが出来ないだろうという目算もあった。

議場は喧騒に包まれるかと思われたその時、


「ふぅ……ねぇ、君さあ。オトメになるためなら何でも出来る?」

「うん!」


アリカは全力で首を縦に振る。

それを確認してから、ナギは議事堂にいる全員に向けて発言した。


「ならこういうのはどう?

 マシロちゃんの即位式典の余興として、この娘と二ナちゃんとで舞闘をするんだ。

 で、勝ったほうが学園に残る、負けた方は去る。

 いいアイディアじゃない?」

「大公殿下! それは!?」


ナギは面白そうな顔をして、更によく分からない条件を出してきた。

自分の国の戦力となるべきものを賭けてどこの馬の骨とも分からないオトメ候補を押すというのだ、

他国の外交官達は混乱してしまった。

審議会の主導を担うために利益を捨ててきたのかとさえ思われている。

それを聞いた、アリカと二ナの反応も変わっていた。


「ぶ・と・う・?」

「やらせてください!」


アリカは良く分からない風情だったが、二ナの心には火がついたらしい。

養父の前で散々言われた事に起因しているのは明らかであった。


「私に、その娘と戦わせてください!」


アキトはまだ人間関係を把握していないものの、ナギが完全に流れを握っていることだけはわかった。

しかし、ナギには説得しなければいけない人間がいる。

即位式を迎えるマシロ本人だ。


「ねぇマシロちゃん、二ナちゃんもこう言っている事だし」

「誰がそなたの言う事など聞くか!」


ナギは完全にそっぽを向いてしまったマシロを見て、ちょっと考え直す。


「やっぱり今の無しね。よくよく考えてみたらさ。万が一二ナちゃんが負けたら僕が困るじゃない。

 何せ将来僕のオトメになるかも知れない娘なんだから。

 ゴメン、ゴメン。忘れてよ」


ちょっとわざとらしい位に利害関係を説くナギ。

マシロはそれを聞いて考え込むような仕草をする。


「よし、やるがよいそなた達」

「え?」

「即位式で見事わらわの為に舞って見せよ」

「えぇ!? そんなー?」


ナギはあたふたしているが、心の中では舌を出していた。

簡単な引っ掛けに良く乗ってくれたもんだと。















ガルデローベの学園長室。

俺は学園長のナツキ・クルーガーに呼ばれて、部屋に通されていた。

ここにいるのは、ナツキ・クルーガーとシズル・ヴィオーラそして俺とサレナの四人だ。

ナツキは学園長専用のデスクの前に座りながら、応接の机の前で座る俺たちを睨んでいる。

本気というわけでもないのだろうが、困った顔で俺を見られてもどうしようもない。


「まったく、お陰で事態がややこしくなった」

「そう言われてもな……。

 俺としては自分の処遇を俺の見ていない居場所で決められる訳にも行かなかったしな」

「ふふふ、テンカワはんの言う事ももっともやけど、来たばかりではこちらの流儀もわからしまへんやろ?

 あまり心配せんでも、うちらは敵やないよ。

 ナツキも少し落ち着き、眉間にしわがよってますえ。

 この状況はさして悪いもんやないやろ?

 アルタイの動きは気になりますけどな。

 あ、テンカワはんも一杯どうですか?」


甲斐甲斐しくナツキ・クルーガーの世話をしているシズルは微笑を浮かべている。

そういう事をするのが好きなのか、ナツキ・クルーガーの世話だからかは知らないが。

俺は進められたお茶を辞することにした、いくつか理由はあったが、味が分からないのは辛い。


「味覚が無いのでな、遠慮しておこう」

「そうどしたな。まぁ数日中にはテンカワはんのナノマシン制御ジェムが出来ると思うさかい、辛抱しとくれやす」

「制御ジェムか……俺のナノマシンにも効果があるのか?」

「さぁ100%とは言えませんけど。ヨウコは天才やさかい。きっと何とかしてしまうと思いますわ」


よほど、あの保険医兼科学主任を信頼しているらしい。

俺としてもそうするしかないのだが。

と、会話がひと段落着いたところでナツキ・クルーガーから俺に質問を投げかけてきた。


「まぁそちらの方はいいとしてだ。サレナだったか。彼女について聞きたいのだが」

「それは、本人から聞いたらどうだ?」

「教えてくれはりまへんでしたからなー。マスターが起きたら聞いてくれの一点張りやったし」

「ふむ、サレナ。詳しく話せるか?」

「マスターはどこまでの許可をくださいますか?」

「いや、その体については俺も全く分からないからな。AIについてはサレナのものなのだろうが……」

「体を形成しているマシンについての情報が秘匿されています。マスター権限を使用されますか?」

「細かい事はいい。お前の体はこの世界の物なんだな?」

「YES」

「なにやら事情が複雑そうやねー」

「サレナは元々人が乗り込んで戦う為のロボットだったからな。アンドロイドになったのだとすればこの世界の技術という事になる」

「つまりは、知らないうちにその姿となっていたと言いたい訳か?」

「まぁな」


ナツキ・クルーガーは俺に疑うような眼差しを向けている。

それも当然だろうが、俺自身理解できていないことが多い。

サレナの体の事は詳しく聞けば答えてくれるかもしれないが、その場合俺よりもこの二人に先に理解されてしまうだろう。

それでは、俺のアドバンテージは殆ど無くなる。

まだ信用できると決まったわけじゃないからな。


「それから、テンカワ・アキト。貴方の住む部屋の事だが」

「ああ」

「ナノマシンの事もある、しばらくはヨウコの研究室の方にいてくれ」

「なるほどな」

「しかし、出来るだけ学生との接触は避けるように」

「?」

「ここは女子校だからな……」

「もしも、間違いがあったりしたらチョッキンの上で出て行ってもらいますえ」

「……チョッキンか(汗)」

「はい、男性で無くなってもらいます」

「それはまた穏やかじゃないな」

「問題ありません。マスターを傷つける場合この二人も排除します」

「さすがやね。確かにうちと互角くらいにやりあえそうやけど……オトメは一人やおまへんえ?」

「脅しはいい。別に手を出すつもりも無いからな」

「そうですか、それなら安心」


本当に安心したのか分からないようなのほほんとした笑みを浮かべてシズルが応じる。

この女、やはりくわせものだな。



















式典当日の早朝。

今日は女王マシロのお披露目を兼ねた、女王就任の式典である。

マシロは女王の礼装を纏うべく、数人の女官達を侍らせて着替えを行っていた。

そこに、衛兵長のサコミズ・カージナルが入室して膝を折る。


「マシロ姫におわしましては……」

「前置きはいい! どうしたのじゃ?」

「はい、警備の概要ですが……

 まずヴィント市内に26の検問を設けて入出チェックを行い。

 城の周辺には400人、城内には540人の衛兵を配置しています。

 検問各所には装甲車を10台、戦車を3台配置。

 ガルデローベの方から出向してもらっているオトメの数は20人。

 パールの生徒を中心として、警備兼案内に勤めてもらっております」

「ふむ、ナギや……各国の代表に笑われぬよう盛大にいたせ!」

「はっ……」


マシロは盛大に行うために色々と指示を出していた。

実際問題として、確かにヴィントブルームは裕福な国である。

しかし、小国には違いが無い。

そんな国で他国の要人を多数集めパレードを行い、大々的に行おうというのだ、予算はぎりぎりである。


「それから……例の舞闘の件なのですが……。

 スケジュールと会場設営予算が辛いので、出来れば考え直してくれないかと内務大臣から……」

「今更やめるようなみっともない真似が出来るか!!」


舞闘に関しては会場をその場に設営する為に突貫で工事を行っていた。

しかし、各国の代表を前に適当な作りで許されるわけも無い、ドーム球場を一つ作り出すくらいの予算を数日で使い潰す事になる。

当然、予算は完全にオーバーという形であった。

















式典はつつがなく進み、マシロ姫の入場を迎える。

少女にしか過ぎないマシロではあったが、礼装はその姿を白く包み、ある種の神々しさをかもし出していた。

それは、結婚式の礼装に似ていた。

女王に就任するということは、国と結婚するという意味もあるからだ。

白いヴェールと白いマント、黄金の装飾具をつけ、アラビア風の衣装を覆っている。

そして、彼女が進む壇上には司祭と思しき一団が控えている。


「それにしても、とんだ茶番だね。この即位式は。

 マシロちゃんが本当の姫かどうかもちゃんと分かってないのに」


神官達のいる一階の壇上を見やすいように二階に配された客室、

その一つにいるナギは皮肉げに口元を歪めてマシロを眺めている。

その発言を聞きとがめたセルゲイは、声をひそめてナギに忠告する。


「殿下ここでその事は……」

「みんな忘れたふりしてるのかねー。14年前のあの事件の事……」


ナギにはマシロを見下す雰囲気がある、ナギは年齢的にそれを知らなくてもおかしくは無いのだが、

その雰囲気から、列席している各国の代表よりも詳しく知っているようにも見える。


マシロは諸侯や各国代表の居並ぶ中、赤いビロードの絨毯をゆったりと歩き、司祭の前まで来ると頭を下げ膝をついた。

司祭は一度聖印をきってから、言葉をつむぐ。


「汝、マシロ・ブラン・ド・ヴィントブルームよ。

 汝は国の為、個人としての幸福を捨て民に尽くす覚悟はあるか?」

「はい」

「自らの体を蝕むとも、国事を優先する覚悟はあるか?」

「はい」

「国難を招きいれた折は死をもってしても国を守る用意はあるか?」

「はい」

「なれば、汝にこの冠を授けよう」


この言葉は、中継され国民全ての見るところでもある。

しかし、まだマシロは言葉の通りに実行するなどということは全く考えていない。

お題目はお題目として、儀礼をこなしているに過ぎなかった。

まだ民を思うには幼すぎるのだ。


しかし、場内は割れんばかりの拍手と歓声に包まれる。

それは、確かに王の誕生の瞬間ではあった。
















「たったの一日でよう回復しはりましたな」

「はい! 別に体調とか問題ありませんよ?」

「ふふ、それはナノマシンと相性がよろしかったんやろ。一週間くらい寝込む娘もおるよってに」

「そうなんですか!?」


舞闘会場の控え室、シズルとアリカが向かい合って話をしている。

もっとも急造の会場であるため、控え室は石畳がむき出しになっているが。


「よろしおすか? うちのジェムでアンタのローブ制御しますえ」

「お願いします!」


その言葉が交わされると、シズルはアリカを抱きしめる。

そして、耳元でそっとささやく。


「あ!?」

「大丈夫や、いきますえ。マテリアライズ」


その言葉が終わると同時に、アリカはナノマシンの光に包まれ赤いコーラルのローブに包まれる。

それは、アリカが目にしていた二ナのローブと同じものだった。

















会場には万に届くほどの人が集っている。

その中央には、一段低くなったサッカー場ほどの舞台がしつらえられていた。

舞台に二人の少女が静々と進み出る。

二人は20mほど離れた位置で止まり、向かい合った。

お互い、気合は十分に見える。

すると、舞台の一部が轟音とともに上昇していく。

直径2mはあろうかという石柱が数十本伸びていった。

それぞれ柱の上に乗ったままである。


「それでは、わらわの即位を記念し、オトメ候補生による舞闘を行う!」



一段高い客席から中央に向かい、マシロはよく通る声で開始の宣言を告げた。


二人はその合図とともに、柱を蹴って、飛び出した。


「はぁ!!」

「行くよー!!」



しかし……


この舞闘の開始が波乱の幕開けとなるとは誰も考えていなかった。














後書き


はうあ、どうにか終わった(汗)

今回はまとめるのが難しかった気がする。

まぁなんというか、舞台を整える話で、笑いを取ろうとしたのが間違いかな……。

でも、個人的にはそこそこの出来になったのではと思います。

次回はようやくアリカと二ナの舞闘なんだけど……。

実はオマケっぽい気もします。

まだまだ端折った部分も多いので、パールもコーラルも殆ど出ていないという始末。

次回でも少し出せるといいな(汗)



沢山のWEB拍手大変うれしいです♪

出来うる限りお返事させていただきます。


11月2日


21:25 ゆっくりでも良いので持続して連載して欲しいです、次が楽しみなので 
どうもありがとうございます♪ 今後とも続けていけるようがんばります!

21:40 アキトの話し方がどっかの悪人みたいになってますねwそれもまた良しw
21:41 次回を楽しみにしてるんで、出来る限り早く更新を!! 
ははは、とりあえず週一には間に合ったかな? 次もがんばります! 
アキトの悪人口調はデフォにしてます。 気を許した人には地が出ますが(爆)

22:17 ガルデローベの科学力は世界一ぃぃぃぃぃ!!…ってか? 面白いっす、頑張ってください。
ありがとうございます♪ 科学力は確かに高いですよね、ガルデローベは。でもどれくらい扱えているのやら(汗)
 
22:39 やった、更新してる!めっさ嬉しいです!! 
喜んでいただけてうれしいです! 今後ともよろしくお願いします!

23:03 アキト復活なるか! 次回の更新が楽しみですw  
23:05 アキトVS乙女たち…くくくく 
ははは、復活はもう少し先かな? 早ければ次回に少し兆候を出せるかも?
アキトVSオトメ……今は勝ち目無いですな(爆) サレナがいれば逆転w

23:24 さぁ、ヨーコ先生も出てきてナノマシンが安定しちゃうんでしょうか!?どうなるアキト!!
その辺はゆったりと行こうかと、アキトが突然直るのもちっとあれですし、少し引っ張りますー。

11月3日


0:41 痴女と痴漢が出会うとき、乙女はさらに混乱す(違) 
ははは、確かにその通りですな(爆) でも、地味目に終わらせてしまいました(汗) 話が進まなくなりますから!(笑)

0:42 サレナも「アルテミス・黄金の剣」を振るうんですか? 
んー、今のところ予定は無いです。それよりも凄い事になってもらう予定ですので!(爆)

6:15 次はもうちょっと長いほうが言いと思います笑!!!!!!!!!!! 
6:15 次はもうちょっと長いほうが言いと思います笑!!!!!!!!!!! 
あははは(汗) 申し訳ない。今回はちょっと長いですよ(汗)

9:41 ふむ…次の話が重要かな…?ドキドキワクワク 
動き始めていますが、まだ準備段階な所は否めません(汗)
次回は闘いメインに持っていけそうですが。

13:27 変質者は、きっと増えるものなのだ♪
その通り!(爆) いやはや、こういうのはなると楽しいもので(汗)
 
17:57 続きが楽しみです。頑張って下さい。 
ありがとーです! 次回もがんばります♪

18:00 今回も楽しめましたぞー!!次回が楽しみだ!!!
そう言っていただけるとうれしいです♪ 次回もがんばりますよってに応援したってください!(爆)

11月4日


6:06 他のよりこっちをやったほうが言いと思います笑 
はははは(汗) まぁ実際そうなってます。(爆)

20:15 ヒロインは誰になるんですかねえ♪ ヒロインだらけですし
そうですねー、今のところ予定とか決めてないんですが、サレナが少しだけ有利かな?

11月5日


4:13 次はもうちょっと長いほうが言いと思います笑!!!!!!!!!!! 
んーっと、11月3日6:15の人と同じ人かな? がんばります。

23:33 原作知らないけど、おもしろかった!! 
そう言っていただけると、説明的な文章を入れている甲斐があります! ありがとうございます♪





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