それは、些細な事に思えた。



でも、異変は唐突だった。



音が鳴り響いたその時、全てのものが合図したかのように動き始める。



まるで今までずれていた歯車が突然かみ合ったかの如く。



それが生み出したうねりは、全てに響き渡り、



今まで想像もしえなかった何かが生まれ出でようとしている。



戦争、そう呼ばれる忌み子の胎動……。



それとも、産声なのだろうか……。



世界はただその音を聞き、あるものは好機を悟り、あるものは自分達の不明を恥じる。



そう、もう止まる事は出来ないのだと。




光あふるる場所
In a far star of the future



第二十話 「戦乱の兆し」



アルタイ大使館へと向かう途中、アルタイ公国大公ナギ・ダイ・アルタイは天を突く光の柱を目撃した。

脳天を貫くような音と共に現れたそれを見つつ、しかし、落ち着いた態度で傍らのセルゲイ・ウォン少佐を見る。

14歳にしては背の低いナギと、体格の良いセルゲイが並んで立つと親子に見えなくも無い。

とはいえ、顔を見ればそんな年齢で無い事はわかるが。


「そうか、やっぱりね。ヴィントにあるんじゃないかと思っていたけどさ」

「あれは……」

「これで決まりって事、まさか反対はしないよね?」

「陛下の御心のままに」

「うんうん、ボクらは運命共同体だからね。これからも頼むよセルゲイ」


どこか、苦しむように眉根を寄せつつもセルゲイはナギに頭を垂れる。

それを見てナギは満足そうにうなづいた。


「しかし、先ほどの二人組、一体何者なのですか?」

「ああ、彼ね……知り合いのつてで呼び寄せてもらったのさ、エサもあったしね」

「エサ……?」

「分からない?」

「……そういう事ですか」


セルゲイは一瞬驚愕するように目を見開いた。

彼らの人間関係などどうやって把握したというのか。

独自の情報網を持っているとは思っていたが、彼らの素性すらきちんと判明しているわけではないのだ。

人間関係を把握するというなら、彼らに近しい場所に人を配する必要がある。

一体どういう組織なのか……。

そうは思いつつも、表情には出さず歩き出したナギについていく。

今まではがむしゃらに頑張ってきたセルゲイであったが、今は迷いがある事を自覚していた……。















同時刻、ガルデローベでも光の柱は目撃された。

生徒達はただ見上げるだけであったが、学園長室ではナツキ・クルーガーがシズルの淹れた紅茶を取り落としていた。


「これは……あ、すまない……」

「ええんよ、でもここの所のシュバルツの攻撃はマシロ女王を狙ったというだけではなかったようどすな」

「確かに、それにこういうことになると14年前の襲撃も関係がある可能性があるな」

「そうどすなー、となると王族の確保かアレの確保、各国もシュバルツやアズワドも一気に動き出す可能性が出てきますな」


どこかのんきなシズル・ヴィオーラの声に眉根をよせつつ。

しかし、シズルがそれでも真剣な事は知っているから、ナツキは何も言わず話を続ける。


「……ここは一応治外法権という事になっているが、ヴィントはガルデローベのある地だ。出きれば戦場にしたくはないな……」

「それに、治外法権なんて理屈侵略してくる人達に通用しまへんやろ」

「そうだな……」


シズルはざっと自分達の置かれている状況を考える。

どうにも絶望的な状況であった。

そのため五柱の残り二人を呼び戻しているのだが、一人はまだ時間がかかる。

もう一人は、任務を今言い渡した所だ。

兎に角、どの勢力が最初に動くのか、今はそれを静観するしかないだろう。


「シズル……我らはこれからどうなるのだろう?」

「こらこら、校長やったらどっしりと構えとかんとあかんよ。紅茶、入れなおすさかい。落ち着いて、な?」

「ああ……そうだな、すまない」

「ええんよ、うちはナツキの為やったら何でもするし、その事に迷いも無い。

 やから、ナツキがガルデローベを守りたいんなら、ウチが全身全霊を持って守るさかい」

「頼りにしている」


シズルの言葉に落ち着きを取り戻したナツキはもう一度真剣な目を窓の外に向ける。

シズルはそれを見ながら微笑みを浮かべた。














俺は目の前にいるそいつが近づいてくるのに合わせ構えを取る。

奴が馬鹿な事をしてくれたお陰で、少しだけ落ち着いていられるのはありがたい。

前回は割と上手く行ったが、がむしゃらにやって倒せるほど甘い相手ではないという事は100も承知だ。

警戒する俺に、北辰はニタリというような表情で笑うと、俺に向かって拳を突き出す。

拳が届くには距離があったが、寒気を感じた俺はとっさに飛びずさるが、頬を何かが掠めていった。


「ほう、我が暗器を避けるとは……しかし、これで終わりではない」

「!?」


良く見れば、俺の頬を裂いて通り過ぎて行ったのはワイヤーのようだった。

北辰は手首の返しでワイヤーを操ると俺の首に巻きつけようとする。

とっさに腕を突き出し、首に巻きつけられる事は避けたが、腕にワイヤーが巻きつく。


「復讐者の誓いを果たしてふ抜けたか!?」

「何を!?」


北辰は片腕で俺を引いた。

一瞬信じられなかったが、俺はその動きだけで宙に投げ出される。

いや、そうしなければ手首から先がなくなっていただろう。


「くそ!」


ドシュ! ドシュゥ!! ドシュ!


とっさに取り出した銃で北辰の腕を撃つ。

護衛に任官した時に渡されたリボルバータイプの銃だ。威力はさほど高くないが命中精度はいい。

3mと離れていないため、全弾腕に命中したが右腕は殆どが機械化しているのか、引く勢いは衰えない。


「くそ!」

「その程度とは……死ぬか?」


北辰はいつの間にか左手に錫杖を持っている。

先端が槍状になったそれを飛んで来る俺に向けて構えた。

俺はとっさに体の向きを変えて槍に足を向ける。


「負けるかぁ!!」


足の裏から錫丈が突き刺さるが、頓着せず、その足を支点に半回転しつつ発砲。

下半身を狙ったその弾丸は空しく地面に着弾する。

しかし、北辰は体を一歩下がらせている。

俺はそのタイミングに合わせ右腕をワイヤーから解放、更に一歩下がった。


「足を犠牲にして腕を庇ったか、その代償高くつく事になろう」

「ふん、貴様を相手に五体満足などと考えていない。だがいい加減貴様との闘いには飽きた」

「何を言う、鬼となる事も出来ず、人にも戻れぬ貴様などに我を破る事適わぬ」


そういいつつも北辰は舌なめずりをする、獲物を前にした蛇という表現が似つかわしいその顔で。

俺は、もう一度構えを取ろうとしたが、足の傷が意外に効いているらしく、ふらつきが収まらない。

出血の多さも問題らしい。

だが、この程度でやられるわけにはいくまい。

<纏>を発動すべく呼吸を整える。

                     まとい
「くく、やはり貴様が次に使うのは<纏>か、だがあまりやらぬ方が良いぞ?」

「何を!? ぐは!」


足の傷から血が噴水のように流れ出る。

もしや……。


「動脈を切ったゆえ<纏>の様な肉体を活性化させる技は仕えぬわ!」

「ぐぬぬ……」


まだ足だったのが幸いしたのだろう、少し貧血になる感じがするだけだ、これが心臓に近い位置なら死んでいた。

もっとも、それならば普通は気付く。

つまり、そういう作戦だったのだろう……。

この状況では攻める事はおぼつかない、北辰に対してそれでは勝つのは難しいだろう。

しかし、ここで終わる事など出来ない……ならば……。
















黒髪と銀色のドレスのサレナと赤毛で赤いゴシックドレスの夜天光、二人は人間では視認出来ないほどの速度で攻防を続けている。

両者の速度はほぼ拮抗していた、それでも僅かに夜天光のほうが早い。


「お姉さん、なかなか早いねー」

「……!」


サレナが全力で追っていると、夜天光は急制動してサレナをやり過ごす。

空中で制動をかけたのだから下に落ちているのだが、全く気にも留めていない。

サレナは少し弧を描くようにUターンし、右腕にガトリング砲を出現させる。

それを見た夜天光はクナイを手の間に持ち4本纏めて投げつける。

ガトリングは発射される前にクナイに発射口を直撃され爆発する。

しかし、サレナはガトリングを切り離し夜天光に向かって加速、肘から出現させた光のブレードで攻撃を仕掛ける。

対して夜天光は錫丈を出現させ、打ち合った。


「錫丈で高周波ブレードを受けるとは……」

「高次物質の単結晶だもん、そうそう打ち負けないよ」


二人は一秒の間に10回近い攻撃を繰り出している。

互いに、受け、いなし、舞を舞っているようでもあったが、

戦場となっている城の中庭は数十メートルにわたって衝撃波や地鳴りなどが起こるほどであり、誰も近つける状態ではなかった。


「力は失っていないようですね」

「やーの姿を見て心配してくれたの?」

「……」

「でも、敵同士だもんね……ほっくんのために、お姉ちゃんを潰すよ」

「元より、マスターの敵である貴女を破壊する事は最優先事項です」


その言葉が終わるか終わらないかという状況で二人はさらに加速した。

しかし、やはり速度では夜天光に分があるらしく、数回錫丈による攻撃をかすらせているサレナは動きが徐々に鈍くなっていく。


「それいっくよー!」

「!!?」


夜天光が掛け声をかけた時、瞬間的に夜天光は溶ける様に消えた。

しかし、次の瞬間には8人の夜天光に囲まれていた。


「立体映像……」

「「「「「「「「ううん、ちょっと違うの」」」」」」」」


夜天光が疑問を口に出すものの、八方からの声に驚きを隠せない。

実質、分身の術ならサレナには効かないのだ、

なにせ人間の認識とは速度認識が違うため秒間に視界に入るコマ数も5000以上であるし、

赤外線や超音波を併用して相手の居所を探る事も出来る。

しかし、それでも夜天光は8人に増えていた。


「「「「「「「「やーは高次物質の塊だもん、高次物質を沢山出現させれば体も増えるよ」」」」」」」」

「!?」


そういうと同時に8人の夜天光はサレナに向かって同時に駆け出す。

しかし、サレナは動揺するでもなく相手を観察している。

それでも、8人の夜天光による攻撃を捌ききる事は出来ず、殆どリンチのように防戦一方になっている。


「なるほど……」

「「「「「「「「何か分かった? でももう終わりだよ」」」」」」」」


その言葉と共に8人の夜天光はサレナに向かって飛び出す。

それぞれに錫丈を構えており、皆構えすら違う、しかしテンポは驚くほどよく似ている。

その事に気付いたサレナは一瞬くるりと体を回転した、ミスリルドレスのスカートがひらりと舞い上がる。

その時サレナの肩の後ろから銀光が走った……。

そして、それが終わった瞬間8人の夜天光は全て地に伏せていた。


「「「「「「「「な……なぜ?」」」」」」」」」

「8体になったのは失敗ですね、いつもそうであるのなら兎も角、脳の処理が追いついていかなかったのでしょう。

 維持するためのエネルギー供給の問題もあります。8倍もずっと供給するのは無理でしょう。

 それに、私にも切り札がありますから」


そして、近づいていこうとするサレナの前で8人の夜天光は消え、次の瞬間一人に戻った夜天光が肩で息をしながら立っている。


「でも、ほっくんのためにがんばらなきゃ」

「マスターの敵は排除します」


そしてまた二人は対峙する……。





















「ならば……」


俺は呼吸を整え、静かに構えを取る。普段ならできるものではないが、最初に北辰に笑わせてもらったのが効いているのかもしれない。

月臣に教わってはいたが、あまり上手く行った事の無いその技をゆったりと焦りを払いながら集中する。

だが、北辰は俺が構えを終える前に飛び掛ってきた、

それに対し俺は奴の錫丈をつかむと、支点と力点を動かし投げ捨てる。

北辰はくるりと半回転しながら着地するが、俺も次の瞬間にはまた同じ構えにもどった。


「なっ?」

「結界とでもいえばいいかな、今の俺にはそうそう攻撃は効かない」

「そういえば、お主は五体不満足であったな、耳と皮膚感覚で身に着けたか、制空圏を」


俺は構えて動かず周囲の空気を伺う。

北辰が少しでも動けばその風の流れ、匂い、心臓の音、筋肉のきしむ音などが聞こえる。

心を空にする事は出来そうに無いが、とりあえず北辰一人なら捌けるはずだ。

この技は目以外の感覚を総動員する事により目で追いきれない攻撃を捌くという技である。


「だが、その程度の技、安易に使った事を悔いるが良い」


北辰は錫丈を投げつけながら、ワイヤーを更に射出ワイヤーで錫丈を絡めとリその軌道をずらしてきた。

俺はそっとその錫丈に触れてその軌道を更に変更する。

しかし、北辰はそれを読んでいたかのように、錫丈を引き戻す。

変わりに飛礫(つぶて)が3発俺に直進してくる。

大きくかがんでそれを避けたその時、ゾクッとした感覚が背後を襲う。

転がるようにして避けると、そこには錫杖が突き刺さっていた。

北辰は錫丈を引き戻したのではなく投げ上げたのだ、それも飛礫を放つ事により俺の集中をそちらに向けさせてから。


「やはりな、まだ使いこなせてはおらぬ。全てを裁いてこその制空圏、その程度で使おう等と片腹痛いわ」


北辰は俺に向かって勢い良く走ってくる。

ワイヤーで錫丈を引き戻しながら……。

だが、俺もこのまま終わるつもりは無い最後の賭けに出るべく、構えを……。


ボオォォォォーーン!!


まるで体中に響き渡るような音が突然発せられた、そして、背後から何か巨大な力が立ち上ったのが感じられる。

北辰も一瞬何の事か分からず意識を乱していた、0.1秒に満たぬその隙は、致命的であったのかもしれない。


「ぬぉ!?」


気配が来たと思った時には既に北辰は蹴り飛ばされていた。

蹴り飛ばしたその瞬間、それはにじみ出るように出現する。

ロングだがくせっ毛の金髪、マリンブルーを思わせる瞳、白い肌、普通はそういうところに目が行くものだが、俺は違和感が爆発しそうだった。

17.18だろうと思われるその娘はナノマシンの光を発する以上マイスターオトメなのだろうと見当はついたが、

その色が黒一色で、しかも、マントと目元だけを隠すようなパーティ用の仮面とでもいうのかをつけている所を見て……。

以前の俺もこんなもんなんだろうなと思った……(汗)


「テンカワ・アキトさんですね? お初にお目にかかります。五柱のサラ・ギャラガーといえばわかりますか?」

「俺の新しい監視役か?」

「まぁ、私としては貴方の護衛の任と聞いていたのですけど」

「早速仕事をしてくれたようで嬉しいよ」

「お褒めに預かり恐悦至極っと?」


サラは追撃をかけようとしたようだが、もうそこには北辰はいなかった。

流石に、北辰も不利を悟ったのだろう、夜天光を名乗る少女も姿を消したらしく、サレナが元のメイド服になって戻ってくる。


「すみません、速度で適わず逃しました」

「いや、別に良い。それよりあのスレイブ……いや、本当にスレイブか?」

「恐らく、能力を増幅しているのではないかと」

「それは一体どういう事だ?」


サレナは俺が質問している事を理解しているようだが、サラ・ギャラガーの方に視線を走らせると俺に伺うように視線を返す。

なるほど、確かにガルデローベに知られるのも厄介ではある、だが推論は彼女でも出来るだろう。


「確実な情報なら……いや、今はそれよりさっきの光だな、マシロ女王とアリカが行った方向だ、無事だといいが……」

「マスター少々失礼します」

「ん?」


サレナは突然俺の前でひざまずく。

そして、靴を脱がせてしまった。


「出血が尋常ではありません、動脈を傷つけられたものと思われます。

 幸い血管を打ち抜いているだけで骨は断たれていないようですが、動かない方が良いと判断します」

「うんうん、そうよねー。じゃマシロちゃん達は私が見に行っとくから動かないでね?」

「わかった、サレナ、止血を頼む」

「はい」


相変わらず俺のスーツを髣髴とさせる格好で去っていくサラを見送ってため息をつく。

自分でも自覚しているつもりだったが、ああいう格好を他人にやられるとなんというかいたたまれないものがあるな(汗)

サレナはメイド服のポケットから消毒液と包帯を取り出し、消毒液を噴きつけた。


「グッ」

「マスター、痛みますか?」

「……まあな」

「足の裏は神経が集中しています。ジェムのお陰とはいえ痛覚もあるのですから、無茶はお控えください」

「これでも、控えているつもりなんだがな……どうにも周りが放って置いてくれないらしい」

「そういう事は、女性に近付かない様にしてから言ってください」

「……?」

「マスターは女性関係でトラブルに巻き込まれる事が多すぎます」

「……そうか?」

「この世界に来てからマスターは北辰以外で男性とトラブルを起こした事はありますか?」

「……そういえば、無い気がするな……」


言われて見て気付いたが、しかし、それも仕方ないだろう。

国家機密クラスの場所とはいえ、女子高に厄介になっているのだ、むしろ男が極端に少ないのは当然だ。

関わる人の9割が女性ならトラブルの9割に女性が関係するのは当然である。


「マスターに関わる女性はトラブルを呼び込みやすいようですね」

「それはちょっと言いすぎだろう」

「マスターの安全を考えるとそういう結論になるのですが……」


珍しくサレナが拗ねたような表情をしている。

感情が豊かになってきているのは良いのだが、そう言われてもどうしようもない気がするのだが……。

その後、サレナは、俺を抱えてガルデローベの医務室まで連れて行った。

それも結構な数に見られた気がする……(汗)



















「なっなんじゃ今の!?」


指一本オルガンの鍵盤を弾いただけで、鼓膜が破れるかというほどの大きな音が響き渡った地下室で、

両手で耳をふさぎながらマシロとアリカは嫌な汗をかいていた。

一体何が起こったのか、悪いものではないのか、なぜこんなものが王宮の地下にあるのかなど気になることは山ほどある。


「うっわー、どうすんのよこれー!?」


そういわれてアリカを見るマシロ、アリカの手の上にはコーラルジェムの砕けた破片がある。

先ほどの音に耐えられなかったらしい、超音波のようなものだろうかとマシロは不思議に思う。

そんな時、オルガンの上に何かの影が浮かび上がってくる。


足りぬ……


「うぇあ!?」

「何よアンタ!?」


……足りぬ、まだ足りぬぞ……


「足りないって何が!?」


このハウモニウムの力を手に入れんとするなら……歌と、紡ぎ手と、護り人を揃え よ……


その言葉だけ残すとオルガンの上の影は薄れて消えていく……。


「ちょっと待ってよ!」


アリカが叫んで手を伸ばすが、マシロに予備とめられる。


「逃げるぞ! 閉じ込められる!」

「えっ、マシロちゃん!?」


ゴゴゴという音と共に徐々に部屋全体が動き始めている。

どうやらオルガンの仕掛けが元に戻ろうとしているようだった。

マシロとアリカは必死で逃げ始める。

アリカはまだ何か気になるようだったが、マシロはむしろこれは触れてはいけないものだったのではないかと考えていた。




















「アズワドの報告からもほぼ間違いないものと思われます」

「そうか……」


そこは、カルデア王宮の謁見室、下座にいる金髪をアップにした女性はひざをついて頭を垂れつつ、ヴィント市の光の柱について報告する。

フィア・グロスの言葉に重々しく頷いたのは頭髪を剃りこんだ威厳のある男、アルゴス14世である。

アルゴスは少し自分の顎をいじりながら考えていた。

アズワドの報告に間違いが無いのならあれは最終兵器として伝わるハルモニウムのはず。

もしもあれが使われた場合、カルデアの軍を全て使いオトメを全員つぎ込んでも負ける可能性が高い。

元よりカルデアのオトメはそう多くない、静観を決め込むべきだろうかとも考えたが、今回に限れば切り札があった。


アルゴスは隣にしつらえた一回り小さな玉座を見る。

そこにいるのは確かに女王と呼ばれても問題のない凛とした美しい少女が座っている。

これが実は少年だと誰が気付くだろうか?

アルゴスはそれを見て小さくうなづくと、ずらりと並んでいる家臣達を前に言葉をつむいだ。


「ヴィント・ブルーム王家には禍根が存在する。14年前赤子だった女王は王宮の川から逃がされたという事だ。

 そして、その女王を見つけて帰ったのが当時の内務大臣とされておる。

 しかし、その後、内務大臣が自らの権力を強めるために自らの血筋の子を王女としたというのが事実であると判明した。

 その証拠は、我々がシュバルツの手から奪還したこの少女、いや女王を見れば一目瞭然であろう。

 そして何より、蒼天の青玉を持つことこそその証!」


そう、その胸にはアリカが持つのと同じ蒼天の青玉が確かに存在していた。

王家がシュバルツに襲われた時、

当時のマイスターオトメだったレナ・セイヤーズが王女を逃がす時、証となるよう赤子に持たせたといわれるその玉が。


「聞けばヴィント・ブルームの現女王は悪政を敷き、雇用も満足に行わずに重税を課しているという。

 内政干渉になる可能性もあるためカルデアは何も言わないで来たが、このたび真実の女王を迎えた以上、

 偽の女王を追い落とし、ここにおられる真なる女王に冠を返すため、我らカルデアの民よ、今こそ立ち上がる時ぞ!」


家臣一同の前でアルゴスは己の方針を語った。

何れ民にも同じことを語る事になるだろう、だが、軍事作戦を展開する直前にする予定だ。

もう時間が無い、ハルモニウムを手にするのが誰かで、戦いの趨勢はほぼ決まるといっていい。

世界大戦すら起こりうるこの情勢である、真っ先に手に入れて他国への睨みにしたいという考えは確かにアルゴスの中にあった。

そう、この僅か一週間後にはカルデアの軍勢がヴィントへと向けて繰り出されたのであった。













あとがき


なんか今アリカを活躍させにくい状況みたいで申し訳ない(汗)

むしろナデシコ勢大活躍?

いやまぁ一応主人公はアキトですんでその辺はご容赦を。

ほっくん&やーちゃん出始めてから出ずっぱりになってるなー。

まぁそれはそれで楽しいから良いんですが(爆)

やーは意味を求められると困るキャラでもあります。

萌え増員要員という感じですねー(汗)

えーっと何にしろ、皆さんに感想を頂いたお陰で自分やる気が盛り返しておりますw

とはいえ、リアルが忙しくなっており流石に週一とかは無理ですが(爆)

でも、かなり頑張らせてもらってますw

とはいえ、内容には自信ないんですが(汗)

兎に角、がんばります!



WEB拍手のお返事です。
毎度感想には力を頂いております!



7月12日


22:29 更新お疲れ様です 今回のお話で物語りは急展開に・・・・・ アキトは因縁の対決 アリカマシロは全ての 
22:31 発端である物を見つけてしまい 男マシロは女王に成り代わろうとして 
22:32 しまう・・・・ 物語は戦乱へとたどって行く・・ 今回もとても面白かったです 次回の更新を楽しみにして
感想ありがとうです! はい、お話を一気に進めていく事としました。
ゆったり進めてキャラを整えることも考えたのですが、どうにも一本一本の質を維持できないようですので(汗)
話をどんどん展開させていこうと思います、まだまだ先は長いですしね(汗)

23:10 北辰いいですね(^^ 
はっはっは、ネタキャラになりつつある北辰って……結構ヤヴァイかな?w


7月13日


0:13 北辰相手にノリが軽くなったアキトというのもいいものですね〜 
ですねー、こういうアキトがお気に入りだと言う人は、茄須さんのサイト志染へいってWEB漫画を見るときっと楽しいですよ♪

1:46 北辰の設定に幼女趣味がw 
いやー疑惑なんですが確定なのかな?w

4:25 更新お疲れ様です。 次回あたりようやく「蒼天」の契約がなされるんですね。 
4:26 そして、平行してアキト・サレナvs北辰・やーちゃんの死合い・・・楽しみです。 
4:28 んでもって、「お前……やっぱり幼女趣味だったか……」はメッチャ笑いました。 
4:28 ではでは、次回も楽しみに待ってます。
うぬぬー、蒼天の契約はまだだったりしますー、実はネタを引っ張りすぎて問題になっている点がありまして。
SSの最後でおかしな事があったりしたと思いますが、その辺なんですよw
バトルは中途半端に終わってしまったかな? でも、決着を今つけるのは面白くないですしね。
最後の方で何のしがらみも無い状態で思いっきりやって欲しいかなという部分はありますw
 
8:12 ほっくんイヂリw 
ははは、なんと言いますか、ほっくんはいじりやすいキャラだったりして(殺されるかもだけどw)


7月17日


0:55 まさかアキトと北辰のやりとりで笑える時がくるとは思いませんでした。 
0:55 北辰もやーの弁護で手一杯のようで面白いです。 
やーは北辰を困らせる目的のキャラみたくなってきましたね(汗)
でも北辰を一人だけ書くよりきっと楽しいと思いましてw
気に入っていただけたようで何よりです!


7月18日


1:39 とても面白いです☆ 他の作品も読みたくなりました♪
はいなー、夏のうちにサモン3を一本出したい所ですねw
とはいえ、今はこれを頑張りますのでよろしくお願いします!


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