注意:序盤ある作品と被ってますが、そっちも自作ですのでお許しくださいorz
お話はちゃんとオリジナルですw




「よくぞここまで…人の執念見せてもらった」


北辰は俺に向かってニヤリと笑う。

挑発だと分かっていても俺は怒りに打ち震え、プロテクターのヘルメットをコックピットに叩きつけ気勢を上げる。


「勝負だ!」


ブラックサレナの両腕を落とし、木蓮式柔の弧月の型(抜き打ちの構え)をとる。


「抜き打ちか、笑止」


北辰は言葉とは裏腹に応戦の構えをみせる。

二体のロボットは申し合わせたように同じタイミングでお互いに向けて滑りだした。

互いが攻撃の間合いに入った瞬間、夜天光の拳がブラックサレナの胸部に喰い込む……。

しかし、サレナパーツが衝撃を吸収しコックピットまでは届かなかった。

そして、カウンターの拳が夜天光のコックピットに突き刺さる……。




コフッ ……見事だ…………」




コックピットの装甲に押し潰され、吐血しながら最後の言葉を吐く北辰。


    ドシャ!!……


その言葉とほぼ同時にブラックサレナの装甲が剥がれ落ち、ボロボロのカスタムエステが顕わになる。

そのカメラアイを通って流れ出る潤滑油がまるで涙のようだった。

そう…もう流すことなど無いはずの……。





カスタムエステはもう動けそうに無いので、ボソンジャンプでユーチャリスのハンガーデッキに跳ぶ。

サレナの技術からネルガルを割り出されるのは困るが……。

ブラックサレナという名の追加装甲は、重要部分に爆破処理用の爆弾が仕掛けて有るから大丈夫だろう。


救い出されたユリカに未練が無いと言えば嘘になる。

……だが……今の俺がユリカに会うわけには行かない。

血塗られた俺……。

そう、連続コロニー襲撃犯テンカワアキトには……。




……帰って来ますよ……

帰って来なかったら、追っかけるまでです

だってあの人は……

あの人は大切な人だから……




ユーチャリスで月へと向かう俺に、ルリちゃんがそう呟いたのが聞こえた気がした……。





機動戦艦ナデシコ求 めたる崩壊@







火星の後継者紛争も一旦終わりを告げ、残党狩りなどは必要になるだろうが、

一応の決着はついた、北辰があれで死んだのか今だ不信は残るが……。

しかし、探したとしても見つかるものでもない。


俺は一度補給が必要になると感じていた、それにラピスの事もある。

ユーチャリスは火星軌道から離れ月へと向かうためボソンジャンプの体制に入っていた。



『マスター体調は問題ありませんか?』

「ああ、個人ジャンプの新システムのことか」

『テスト運用なしでの使用でしたので……』



ユーチャリスAIのヤタガラス(オモイカネが知恵の神であるならば道案内と太陽の神となる)に心配されているのは、

ボソンジャンプのタイムラグを無くすためのサポートシステムだ、

本来、ジャンプそのものは質量によって突入や出現時間が違う、しかし、システムの把握が出来ていなかった頃はなんでも数秒の時間がかかっていた。

ネルガルがその事を研究した結果、俺のマントにはタイムラグを抑えるシステムが内蔵されている。

現状俺一人なら、突入出現時間を合わせても0.001秒程度に抑えることが出来ているはずだ。

つまりは、実戦で使えるレベルであると言う事。

しかし、まだテスト段階であることを考えて、今回は脱出時だけしか使っていない。



「大丈夫だ、特に問題ない」

『ならばいいのですが……』

「……」

「んっ? ああ、すまなかったな」

「(ふるふる)」



ラピスがいつの間にか俺の近くに来ていたらしい、俺自身感覚が鈍っていると言う事もあるが、

北辰との決着を付けた事でどこか気が緩んでもいるのだろう。

俺はラピスを伴い仮眠室へと向かう事にする。

この船には居住区と呼べるほどの物は無く、人がいられるのはハンガーデッキとコックピットと仮眠室くらいのものだ。

本来必要な仕事の殆どはバッタなどの虫型がしてくれる。

人員もラピス一人で運行可能であるため、どうしてもその文だけ居住区が狭くなる計算だ。

もっとも、この船自体が高度なステルス艦でもあるため、それらの機材と、多数のバッタの格納庫、

そして4連グラビティブラストなどを内蔵するだけでもふつうならゴテゴテしいフォルムになるはずだが、居住区を削った結果細長いフォルムに落ち着いた。

無茶な構造ではあるが、隠密に動くには適している。



「では3時間ほど休む、その後にボソンジャンプで月まで飛ぶからステルスを貼って半速航行で火星圏離脱を頼む」

『了解しました』



ラピスとのリンクは俺にとって大いに利益をもたらしたが、ラピスは自我の形成を遅らせる結果となった。

最近は俺とは別の個体である事を認識してはいるようなのだが、自分は俺の自我を受けて動く存在であると誤解している風でもある。

自己の判断で出来ない事は俺に委ねるという図式が出来上がっており、俺が自分の上位にある思考器官だと認識しているらしい。

俺も誤解を解こうとはしたが、常識が通用しないため、諦めざるをえなかった。



「さて、とりあえず食事だな」



俺がそう言うと、ラピスは冷蔵庫に保管してあった、固形食(カロリーメイトのようなもの)のパックを俺に差し出し、自分も一本取り出す。

代わりにペットボトル入りの水を一つ手渡し俺自身も一飲みながらラピスを眺める。

どう考えても俺と同じ食事をさせていて良いわけがない、年齢的にもまだ成長期なのだ、しかし、俺と同じものしか食べず、

また、俺が普通の食事を一緒に取ろうとしても敏感に感じ取って否定する。

健気なのだが、そういう所まで……と思わなくはない。



「ラピスはもっと旨いものを食べたいとは思わないのか?」

「……いい、私はアキトの代替器官、常にアキトのする事が私の行動原理」

「……俺がお前の幸せを望んでもか?」

「私の幸せというのもは分からない、けれどアキトと共にあることで私は私でいられる」



ラピスに譲るつもりは無いようだ。

ラピスの言葉は人としてではなくもっと根本的なところで危うい存在である事を物語っている。

しかし、俺はまだどこかで彼女は普通の娘として生きていけるようになるのだという希望を捨て切れていなかった。

そのためには俺とのリンクの解除などが必要になるだろうが、今のアカツキなら問題ないはずだと。



「どちらにしても、俺の人としての最後の仕事になるな……」



ラピスをアカツキ達に委ねた後は、復讐鬼に戻り残党狩りをして最後の一人まで刈りつくすつもりだった。

残り少ない命である事は知っていた、だからこそ使い道は己の望む形で……。

それだけが今の俺の生きる支え。

その事をどっかでラピスも感じているのかもしれない、だからこそ自分に気を使うなと……。



「あまり深く考えても仕方ないな」



俺は食事を済ませた後、風呂を沸かす事に決めて一歩歩き出そうとしたその時。

ユーチャリスに激震が走った。



「どうした!?」

『外部からの攻撃です! 』

「何っ? 火星の後継者の艦隊がまだ残っていたのか!?」

『いえ、違います。どういう手段を使ったのかは不明ですが、DFをすり抜け敵が侵入してきた模様。

 敵は2m以下のサイズが4体。恐らく人型と思われます。

 ただし、本艦の装甲を貫く武装を持つ事から戦闘力はエステバリス並と想定されます。

 現在バッタを迎撃に向かわせていますが、時間稼ぎ程度にしかならないとお考え下さい』

「な!?」



2m以下……人間並みの大きさで機動兵器と互角以上に渡り合うだと!?

だいたいバッタには弱いながらもディストーションフィールドが装備されているんだぞ!?

初期の頃のならばまだしも今のバッタはバズーカ程度なら傷も付かないはずだ。

とはいえ、俺としてもこのまま終わるつもりはない、ラピスを連れてハンガーデッキへと急ぐ。

そこには予備のエステバリスが置かれている、艦内で戦うには不利だが、宇宙に出れば……。



「そこまでにしておいてくれるかな?」

「な!?」



ハンガーデッキに続くドアの前に見たことのある男が立っていた。

なんの特徴も無いような黒髪の中年、目を細めていると糸のように見える。

まさか……。



「貴様! なぜここにいる!!?」

「それはつれないね、折角迎えに来たというのに」



俺は背後にラピスを庇い、木連式の構えを取った。

山崎の目的もどうやってここに来たのかもわからない。

しかし、この男自身はさして強いわけでもない。

何とか切り抜ければエステまでたどり着けるはずだ。



「はっはー、僕がラピス君に何かすると思っているんだね? 大丈夫、そんな失敗作には興味ないから」

「失敗作!?」

「そうさ、君も成功とは言えないが、君のお陰で随分ナノマシンについて分かったよ。もう少しで届きそうなんでね」

「何をだ?」

「戦闘機人のカスタム調整にはナノマシンが丁度良いんだ、それにベルカ……あ、ここでは古代火星人だっけ。

 兎に角、火星のナノマシンは古代火星人のプログラムを読み込んで君たち火星の住人を遺伝子操作した形跡がある。

 それを使えば、面白いものが作れるかもしれないからねぇ」



俺は改めて山崎を見つめる。

言っている事が分からない、いや、ある程度は予測がつくが……。

そもそも、なぜ今頃になって……火星の後継者が倒れた今になって出てくる?


「ああ、そうか、君にはわからないんだったねぇ、私は……」


俺は会話に没頭し始めた山崎めがけて、木連式の中伝<纏>を使い自己暗示で体のリミッターを解除し加速。

山崎を一撃で殺すべく拳を突き出した。

しかし、次の瞬間にはその拳は山崎の背後から現れた何者かに受け止められる。



「な!?」

「話は最後まで聞くものだよ、せっかちなんだから。悪の幹部が言う言葉は最後まで聞くものだよ?」


俺の拳をつかんでいるのは青いライダースーツのような戦闘服を着込んだ、二十歳前後の女性。

紫色の髪を短く刈り込み、女性にしては大柄な体を山崎を守るために縦のように立ちはだかっている。


「彼女が戦闘機人の一人、名前はトーレだ。木連式の戦闘術を2年そこそこで憶えた君には敬意を表するけど。

 戦闘機人はただの人がどうこうできるほど甘くないよ」

「ドクターお下がりください。危険です」

「駆け引きの経験はまだまだだけどね、まぁ僕ももう隠す必要もないし、いいか」



そう言うと同時に、何の特徴もない山崎の顔がホログラムのように光の粒子になる。

そして、その下から現れたのは深い紫色の髪を肩までたらし、狐のように狡猾そうな目をした青年。

白衣を着てその下に背広を着ているその姿が同じだけに違和感があふれる。


「私の本名はジェイル・スカリエッティ、木連ではあの姿のほうが何かと動きやすかったけどもう関係ないからね」

『用意できました』



俺はその言葉を聞くと同時にラピスを伴いボソンジャンプ。

俺は自分で動くと見せかけヤタガラスにエステの起動を行わせていたのだ。

そして、隔壁をぶちやぶってエステを発進させる。



「どうにかまいたか?」

「(ふるふる)」



宇宙に出ると、そこには小さな熱源反応があった。

熱源反応は、小さいながらも収束し、何かの砲撃体制に入っている事をうかがわせる。

ディストーションフィールドのことを考えれば無視しても良いはずだが、俺はとっさに回避行動を取った。

しかし、意外なほどに素早く照準を合わせてくる。

それは発射されるその瞬間までエステから照準を外さなかった。

俺もラピッドライフルで牽制しながら離れていたが、砲撃は機体を貫き、アサルトピットに傷を付けた。



「くそ、ディストーションフィールドを貫くだと!? ならば!」



俺は敵の砲撃が一撃に時間がかかるタイプと予測しディストーションアタックをしかける。

例えそれにディストーションフィーールドが無効化されるとしてもこの質量と加速を受け止められはしないだろう。

しかし、その寸前、もう一つの小さな人影が逆に向かってくる事を察知した。



「くそ、物理法則はどこにいった!?」



近付いてきたのは先ほどの女性、彼女は腕と足首から光の刃を発現している。

そして、先ず腕の刃でディストーションフィールドに穴を空けると、回し蹴り風にエステの首から上をもっていった。

エステのメインカメラをやられた俺は、一瞬両手で握りつぶすかと考えたが、どうもあの服はただの服ではないようだ。

下手をすると腕が持っていかれる。

まさかここまでとは……。


俺一人なら火星や地球までボソンジャンプで逃げる方法もあるが、ラピスを抱えてとなれば、その後の行動に制約を受ける。

それに追跡能力の高さは先ほどの襲撃で明らかだ。

ならば、ラピスの事だけでも何とかしなければ……。

俺はイメージを集中する。



「ラピス頼みがある」

「ナニ?」

「アカツキに山崎の裏を取るように言っておいてくれ」

「?」

「頼んだぞ」

「……ウン」



その言葉が終わらないうちに、俺はラピスを月の秘密ドックまで飛ばす。

ジャンプサポートなどめったにやらないが、それなりにうまくいったようだ。

後は……。



「どこまでやれるか、試してみるか」

『さすが、やはり君は興味深い』

「な!?」

『ああ、この通信ですか。オモイカネ級AIヤタガラス。かなり梃子摺りましたが、うちにもその手のプロがいますからね』



そう言うと、山崎……いや、スカリエッティは自分の背後にいる女性を指差す。

先ほどのトーレとかいう短髪の女性と良く似ているが、ウェーブのかかった薄い紫のロングヘアをしている。

基本的にはそれ以外の相違点は胸の大きさ……っとあまり言うべきではないな。



『まぁウーノの事はこの際置いておいて、君、今やった事の自覚はありますか?』

「?」

『あれはね、ジャンプサポートなんかじゃない、強制ジャンプですよ』

「!? そんな……」

『まだ自在に出来ないみたいですが、私が欲しいのはその能力とベルカへの道筋。

 戦うのは勝っ手ですが、私の部下はこの3人だけじゃないですよ?』

「……」



確かに、山崎……いや、スカリエッティがただ乗り込んでくるとは考えにくい。

だが、まさか全ての場所に人員を送り込むほど人数もいまい。

となれば、考えられるのは……。



『そう、今ナデシコCの近くに3人ほど潜んでいます。

 今もし、彼女らがナデシコC……いや、ホシノ・ルリを殺害すれば火星の後継者は最蜂起しますよ?』

「クッ……分かった」

『そうそう、簡単な事ですよね。大丈夫、悪いようにはしません、君に死なれて困るのは私も同じですからね』

「……」



俺は無言で両手をあげる。

すると、トーレと呼ばれていた女性がエステに取り付き、行動を示唆した。

仕方なく、アサルトピットを一瞬開放し、内部に滑りこんだ時を見計らって閉じる。



「おかしな動きをすれば命はない」



トーレは俺に腕の光の刃を押し付けユーチャリスに帰るように示唆する。

だが、もし今のそれが本当ならマントを武装解除しない限り俺は触れた存在をどこへでも飛ばせる事になる。

彼女はその事が分かっていないのだろうか?

どちらにしろ、現時点では俺に逆らうすべはないが。



「どちらにしろ俺は実験で切り刻まれる事になるんだ、今死んでもさして関係ないがな」

「……勝手に死ぬ事は許さない、ドクターの役に立ってから死ぬんだな」

「ふん、別にお前達におべっかを使う意味もない、殺したければ殺せば良い」

「……お前は生きる意味を持っていないのか?」

「持っていた、だが、山崎……いや、スカリエッティだったか、あいつに全て無駄にされた。

 そうだな、今の俺がしたいことはあいつを殺すことくらいだ」



その時の俺の目は相当に暗い目だったはずだ、もっとも、バイザーをいているため分からないはずだった。

しかし、それでも何か伝わったらしい、トーレは表情を厳しくすると、俺に刃を突きつけなおす。



「大人しくしていろ」

「だから好きにすれば良いと言っている」

「……」



すごんでみても効果がないと知るとトーレは戸惑うように一瞬動きを止めた。

この手の表情は見た事がある、自分で考える事をしない人間は自分の知る以外のパターンに出くわすと戸惑いから思考停止をおこす。

トーレあまりまともな教育を受けていないと言う事だろう。

あの男の下では当然の事だが。


もっとも、今逆らうわけにも行かない。

俺は大人しくユーチャリスのハンガーデッキに戻る。



「おかえりなさいと言うべきでしょうかね?」



睨みつける俺に向かってスカリエッティは懐かしそうに語りかける。



「俺のことなら散々研究したはずだ、俺の肉体はお陰でボロボロになったが」

「そうでもないですよ、以前はナノマシンの研究ばかりに目をとられていたからね。でも、君の能力はそれだけじゃない、

 遺伝子そのものをベルカ(古代火星)のナノマシン技術によって書き換えられている。

 つまり、君はベルカ人に酷似した遺伝子構造を持つと言う事になる」

「ベルカ人?」

「知らないでしょうが、複数の次元をわたる能力を持った超古代文明、古代火星の遺跡はベルカ人の残した遺跡の一部に過ぎません」

「次元?」

「異次元、信じませんか? 時間をわたった事のある君が、異次元の存在は否定するんですか?」

「過去に行っても結果は変わらなかった」

「それは違います。過去に行く事によって未来が変われば、その人間は元々その未来だったと信じると言うだけの事」

「だが事実、過去に行って行った原因を取り除いた事はない」

「そういう未来に君がたどり着いたと言うだけの事。世界の修正力を上回る行動をすれば未来は変わる」

「修正力……」

「まぁ、君との語らいは楽しいですが、研究の為に眠ってください」

「なっ!?」



俺は背後からの痛撃を感じへたり込んだところに、首筋から何かを打ち込まれ、意識を失った……。





















一方、月面の秘密ドックまで飛ばされたラピスはアカツキへの報告もそこそこに、

山崎及びジェイル・スカリエッティ、トーレなどについてIFSの能力を駆使して調べていた。

しかし、スカリエッティやトーレの事だけならまだしも山崎についてすら詳しい事が分からなかった。


だが、ラピスはおかしな事があるのに気付いていた、それはほんのわずかなほころび。

しかし、大量の情報を同時に扱うオペレーターIFSの使い手として調整された彼女だからこそわかる事。

全ての痕跡が消されているそれを個人単位のパソコンのキャッシュや、サーバの削除された屑を復元し、どうにか形を作り出していく。

それらからわかる事は、個人か組織なのかは分からないが手法から見れば組織だと思われる、

何者かが山崎、いやスカリエッティについて調べていたと言う事だった。


山崎は3年前に急に草壁の肝いりで火星の後継者となっている。

それ以前の経歴は不明、時折いなくなり、またおかしな言動が目立つものの優秀である事は間違いなかった。

また、科学主任として、他の研究員の面倒見も良く、素行も良好となっている。

つまりは火星の後継者としての行動だけであるが、その程度は調べる前からわかっている。

三年前以前の経歴を調べた後はあるものの、調べた組織もそれ以上はつかめていないらしかった。


だが、その組織の動きを見るうちに、どうにか接触の糸口を見つけたラピスは、その後どうするのか一瞬ためらった。

アキトがいれば、きっとアカツキに任せて置くように言っただろう。

実際組織がどんな事情で探しているのかすらわからない。

そして、ラピスには自分の身を守る術がない。

しかし、ラピスにとってアキトは全てだった。

神と言い換えても良い、彼女にとっては自我そのものよりアキトが優先される。

それは、北辰から助け出してくれた事への恩もあるのかもしれない。

自分に行動を示してくれ、また自分に優しくしてくれるからかもしれない。

そして、アキトの心がリンクを通して、あるいは立ち居振る舞いから、透けて見えるからかもしれない。

そう、神のようにアキトの事を思いながら、同時に危うさを危惧してもいた。


そして、ネルガルには秘密の内にラピスはその組織に接触する方法を試してみる事にした。


「貴方が管理局の人?」

「はい、管理局局員のヘイズ・クラリネッタと申します」

「何を管理しているの?」

「それは……禁則事項になっておりまして」


ラピスはいつもの格好のまま、その局員に会いに来ていた。

待ち合わせは喫茶店、お金があるわけでもないので払わせるつもりである。

局員は黒髪をアップにした女性で、落ち着いた感じを受ける人物だった。

しかし、他には特に目立つ所はない、普通の人に見える。


「知ってるよ、時空管理局なんでしょう?」

「!?」

「情報は提供するけど、話すのは上層部にだけ。私にも目的があるから」


ラピスは急速に駆け引きを学んでいた、アキトの元にたどり着くためなら、なんでもするつもりだった。

そして、局員の女性は誰かと通信をしているようだった。

どうやら上司につないでくれたらしい。


「分かりました、少々お待ちください。今上司が来られるそうです」

「うん」


そうして、5分もかからなかっただろうか、そこには端正な顔をした黒髪の青年が立っている。

局員は隣を促し、男はそこに座る。


「貴方は誰?」

「次元航行艦<クラウディア>艦長クロノ・ハラオウン、そして提督でもある」

「20歳そこそこで提督?」

「この世界でもわりといるんじゃないか? 16歳で艦長とか」

「……わかった」

「それで、情報提供をしてくれるとの事だが、一体何を?」

「私とアキトの船ユーチャリスが襲われた、襲ったのはジェイル・スカリエッティ」

「!?」

「目的は?」

「その前に、交換条件を聞いて欲しい」

「出来る事なら」

「私を捜査に加えて」

「それは……」

「これが条件」

「……一存では言い切れないが、捜査の現状が分かる所に連れて行こう」

「……わかった」


そうして、条件を取り付けたラピスはクロノに事の詳細を話した。

クロノは沈うつな面持ちで聞いていたが、全てを聞き終わると、自らの艦である<クラウディア>へとラピスを案内していった。












なかがき

すんまへーん、1000万HIT記念作品なのに続き物……。

私は長文を書くのは苦手でして(汗)

小分けにして出させていただきます。

一日おきですので、お許しをorz

とはいえ、3話では終わりそうにない現状……。

いったいどうすればええんや……(汗)

とりあえず、3話の真ん中辺りまではもう出来てますので、なんとかなるかな?(汗)





この場を借りて、ギャラクシーエンジェルに頂いたWEB拍手コメントのお返事をさせていただきます。

8月4日

22:58 続きが気になるのでがんばってください。 
22:58 機動兵器戦が無いのはあまり面白くないけど、これはこれで良いですね 
ははは、一応短編で作ったので続く予定はないですー。
機動兵器戦はもしかしたら可能に出来る方法もあるんですが、そこまではちっとやれそうにもありませんorz


8月5日

0:55 面白そうですけど自滅しないかどうか心配です。ネギまも・・・ 
まぁ、自滅というか観想が減るとやる気も減る情けない人ですので、申し訳ないです。

13:36 中の人ネタかっ!?wグッジョブb 
その通りですよー♪ 気がついてくれて嬉しいです!

20:07 かなり良いカップリングですね 
ありですー! 今後も面白そうなカップリングとかしてみますねw

20:21 >俺は少なくとも24世紀最大のテロリストのはずだからな 
20:22 火星の後継者事件が2201年だったはずなので、23世紀だと思うんですが・・・ 
20:22 a, 
20:23 えっと、間違い云々はGA×ナデシコのSS内にあったものです。
修正しておきました。
 
20:37 GAいいですねえ。非常に面白かったです。続き期待してます。 
面白いと思って頂けてうれしいです! 続きは……よほどの事がないと難しいと思われますorz

8月6日

0:59 ナデシコ×GA面白かったです。是非とも連載化してほしいです。 
気に入って頂けてうれしいです! こういってくださる方が多いのは嬉しいですね!

2:15 中々ない組み合わせのこのSS。続きも期待しています。 
2:17 ところで、紋章機の訳?はエンジェルではなくエンブレムの筈です。 
2:18 間違っていたら申し訳ないのですが、一応気になったので。 
あー、エンジェルフレームは間違いではないのです。
アニメではエンブレムフレームと呼ばれていたことが多いようですが、漫画では基本的にエンジェルフレームと呼ばれています。
直訳ならばエンブレムフレームですが個人的にエンジェル隊の乗る機体はエンブレムよりエンジェルのほうがいいかなーと思ってそうしました。

17:31 よかった!つーか、続きがすげー気になるんですけどw 
あっはっはー、嬉しいですー、でもしんどいですーorz これからも見たいという人が多ければ考えますねー。

8月7日

5:18 ナデシコ×ギャラクシーエンジェル続きが読みたいですw 
どうもですー、とりあえず現状なのは優先ですのでお許しを。
というか、あんまりネタが残っていないともいえますが(爆)

8月16日

17:18 続きが気になるものばかりです、頑張って下さい 
とりあえずやれる限りはやらせてもらってますー。
頑張りますのでよろしくです!


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