見切り発車的にナデ×GAを作って見ました。ただし、良くわからない事多いので矛盾点はお許しを(汗)
特に惑星エルダートに関しては資料の不足から完全オリジナルになっていますorz



火星の大気圏で炎上する白き宇宙船ユーチャリス。

その船上では二体のロボットによる一騎打ちが行われていた。

一機は宇宙の中にまぎれるほど黒く、しかし、大気圏の輻射熱で赤い残影を残しながら。

一機は星の大地の色よりも赤く、しかし、宇宙から拒絶されるかのごとく浮き立ち。

それぞれが、もう後が無い事がわかっていた。

ユーチャリスは亀裂の部分から熱が内部まで入り込んだらしく、融解を始めており。

二機のロボットも重力制御機関に損傷を受けているらしく、飛び上がる事も出来ない。

だが、二機は己の死をもどうでもいいと思っているかのごとく、激突を繰り返す。


「この期に及んで捨て身とは、己が見えなくなったようだな復讐者よ」

「ふん、貴様が大気圏突入程度で死ぬものか。確実に殺すためなら……この命くれてやる!」

「クククッ、安く見られたものだ。だが決着をつけるのも一興。さて、時間も無い。ゆくぞ」

「ああ、貴様の死を飾るには少し足りないが、ここなら巻き込まれる者もいない。最後だ北辰!」


段々と周辺温度が上がり、互いに損傷したロボットの中にも熱が入り込んでくる、

恐らく数秒もしないうちに内部温度が急上昇し中の人間を焼き尽くすだろう。

ロボットは互いに構えを取り、落ちていくユーチャリスの船上で激突した。

それは、一瞬の花火ににていた。

互いに死を目前とし、しかし、決着を望んだ二人は。その瞬間吹き込んだ輻射熱で焼死するはずだった。

しかし、輻射熱が入り込む寸前、二体のロボットは消滅した。

焼け崩れるのでも、飛び散るのでもなく、消失。

それは、ボソンジャンプと呼ばれる現象と酷似していた。


しかし、それを見たものは誰もいなかった……。












ギャラクシー エンジェル
新緑の息吹


















はるか昔……突如襲った時空震(クロノクェイク)により、人類は宇宙への進出手段を 喪った。






当時既に外宇宙へと進出していた人類は騒然となったが、多数の惑星を巻き込んだそれは、地球の存続すら危ぶまれるものであった。






その後文明は衰退し、一時は10世紀以前の文明レベルまで落ち込んだ星もあった。





しかし、約200年後。






惑星トランスバールの衛星軌道上に現れた<白き月>は、この惑星に住む人類に<恩恵(ギフト)>を授け、再び宇宙に向かう道を与えた。






以後400年にわたり、トランスバールはその版図を広げ、128の惑星を治める<トランスバール皇国>へと発展していった。






そして、トランスバール暦408年…………。























惑星エルダート、殖民惑星としては歴史が浅く独特な自然体系を持つ星である。

ただ、そのためか入植された人数も少なく星全体でも100万を越えない。

そんな星の一角にとある教団の協会があった。


「……うっ……」


少し寂れたその教会で、ベッドの上に寝かされている青年がいる。

童顔で、髪の毛が硬いのだろう、いろんな方向に飛び散っている。

黒髪とその顔は丹精といっていい、しかし、その体は傷だらけであり、筋肉質に見えるものの痩せていてあまり健康そうには見えない。

肉体になんらかの異常があるのか、光が体を走ると青年のうめき声が起こる。


そこに、一人の少女がやってきた。

十歳をそう過ぎていないだろう小柄な少女である。

薄緑の髪に赤い目、なにかアルピノを思わせるその少女は、頬まで届くヘッドギアをつけていた。

服装は髪の色にあわせてか緑をアクセントに入れた白い服を着ている。


少女は青年に歩み寄り、ひざをついて青年の額に手をかざす。

淡い光が手のひらから放たれる。

その光は青年に吸い込まれるように消えたかと思うと、青年の表情は柔らかいものに戻る。

それを見て表情を変えるわけでもなく、少女は青年を覆っているシーツを取り払う。

青年の服装は全て取り払われ素っ裸になっている。

少女はその体に動揺するでもなく青年の体を丹念に拭って行く。

少女の献身は並々ならぬものである、しかし、同時に淡々としたその作業は感情が無いとすら思えるものでもあった……。


















……。


くそ! 奴との決着のためならなんでもするのに……。


……北辰!!


殺してやる!! 殺してやる!!


千々に引き裂いて、はらわたを口から詰め、耳から脳みそを引きずり出してやる!!


貴様の六人衆を殺して、見せしめに木連コロニーに磔にしてやる!


貴様の頭骸骨を潰す音を聞くためなら、他の誰が犠牲になろうと必ず貴様を追い詰めてやる!


そうだ、そうだ、貴様の一族を全て滅ぼそう。


いや、貴様の一族全てお貴様と草壁を憎むようにしてやろう。


そのためなら……そのためなら……。


俺は人間をやめ……。



「駄目です」



突然俺の心に何者かの声が響く。


聞いた事の無い、いや、俺が忘れているだけか?


どっちでもいい、俺の邪魔をするな。


「駄目です」


声をかけるな、殺すぞ。


「駄目です、貴方は人間をやめてはいけません」


俺は……俺はもう何もない、俺にあるのは復讐だけだ。


人をやめて何が悪い、俺は……俺は……。


「貴方はもう持っています」


……?


何を持っているというんだ。


俺は全て失った。


「いえ、貴方は貴方自身をまだ持っています」


そんなもの!!


それにもう、体も駄目になりつつある。


「大丈夫です」


何がだ?


「体は治ります」


体が、治る?


「はい」


嘘をつくな、イネスさんだって直せなかったのに……。


「その当時はそうだったのでしょう、でも今なら」


何?


それはどういう意味だ……。


「それは……」





俺は夢なのか現なのか分からないまま、しかし、目を覚ます事によって現実を認識できた。

さっきのは夢だったのだろう、しかし、ここはどこだ?

俺は火星上空で燃え尽きたはず……。

いや、最後の瞬間死にたくないという思いが働いたのかもしれない。

あれだけ復讐を誓ったのに情けない。

ならば奴も生きている可能性があるな……。

とそこまで考えた時、部屋の扉を空けて少女が入ってきた。

少女は緑色の髪をドリル状にカールしたポニーテールで纏めている。

ヘッドセットがついているのも印象的だな。

しかし、あまり人間の気配がしない少女だ。

生きてはいるが、どこか浮世場慣れした感じ……。

ルリやラピスと同じタイプの少女であるのかもしれない。


「……おはようございます」


「ああ、おはよう」


挨拶をしてきた少女にそう返すものの、少女はそれだけを言うと俺の額にタオルをかけなおし、そのまま部屋を出て行った。

どうやら様子を見に来ただけだったようだが、俺がおきた事に対する反応がそれだけと言うのは流石と言うか……。

なれた看護婦でももう少し何か言いそうな物だが……。


「そういえば、名前も聞いてなかったな……」


俺を看護してくれたのだろうし、礼くらいは言うべきだろう。

そうかんがえて、ふと不思議な事に気付く。

俺は今バイザーどころかスーツすら着用していない。

ラピスとのリンクは少し前に解いてもらったのでもう俺の感覚はまともなものは無いはずなのだが……。

さっき、俺は気負う事も無く少女の姿を詳細に見ることが出来ていた。


「どういうことなんだ?」


当時俺の治療は極秘裏ではあるものの、ネルガルの総力を注いで行われていたといっていい。

しかし、ナノマシンに関してはまだ人体に直接作用する機能は研究中の部分も多かった。

ナノマシンは、基本的に外部電子機器に脳波コントロールを行う事の出来るようにする補助脳とIFSのシステムと、

もう一つは環境を保全するための人体に無害に調整されたナノマシンの二つ、製品化までこぎつけているのはそれだけだ。

俺の体に埋まっているのものは知っているだけでも肉体強化、鋭敏化、ボソンジャンプ解析、脳のニューロ加速による思考の活性化など、

どれもこれも、実験段階の技術ばかりだ、イネスさんによると23種類に上るという。

それらが、体内で誤作動を起こし暴発するのがナノマシンスタンピード。

俺の体はそれでボロボロになっていた。

更に知覚や感覚の増幅には失敗したらしく、逆に神経がおかしくなって5感が殆ど働かなくなっていた。

そんな俺が……。


「見えている、いや皮膚感覚や嗅覚も感じられる……味覚は……」


俺は思わず指をなめて見ようかと思ったが、タイミングよくまた扉が開かれる。

先ほどの少女がまた顔を出していた。

少女は手にお盆を持っている、お盆の上にのっているのは……小さめの鍋に盛られたおかゆだろうか?

少女は俺のベッドの脇にある椅子に腰を下ろすと、鍋のふたを開き、レンゲで一さじ掬った。

そして、猫舌の人がよくやるようにふーふーと良くいきを吹きかけ、俺に向けて差し出す。


「……三日ほど寝込んでいたので、体力を消耗しています。これなら固形物より食べやすいです」

「……ああ」


声が小さく聞き取りそこねそうだったが、俺は少女の言うとおりにレンゲからおかゆを口に含む。

味が……味覚が回復している? 舌の感覚に慣れない自分に戸惑いながらゆっくりと咀嚼する。

確かに、これは……俺は一体どうしたというんだ?

戸惑いながらも、取り合えず食べ続ける。味があるという事実の衝撃からか、それとも感動なのか視界がぼやける。

それを見た少女は俺の目元をハンカチでぬぐった。

これはこの少女がした事なのだろうか? とても現実とは思えない、しかしこの味覚はおれに現実を認識させる。

驚きつつも、少女にそれを聞くことも出来ず、ゆっくりと味わう。

部屋の中にはおかゆを咀嚼する音だけが響いていた。

俺が飲み干したのを見て、もう一口とばかりまたレンゲを差し出す。

よく気がつく子だと思う、まだ小学生低学年くらいだろうに、看護は堂に入っていて長年看護婦でもしてきたかのようだ。

俺は一通りおかゆを味わい終わってから、少女に声をかける。


「ありがとう、君が看護をしてくれたのか?」

「……はい、貴方はこの近くの山で倒れていました」


近くの山……俺は火星上空で戦っていたが、あれがランダムジャンプだとすれば、どこに出現したのかも分からない。

ここが火星である保証もない。

しかし、いきなりこの星はどこの星と聞くのもバカが過ぎるな……。


「すまないが、ここはどの辺りになるんだ?」

「……星都エルダートの北西部です」

「星都?」

「…………星で一番大きな都市と言う事です」


「それはつまり幾つもの星に人類が入植していると言う事か?」

「……はい」


コクリと頷きながら少女は言う。

星都……これを聞くだけで分かるのは、俺が来た事の無い場所であり時代だろうという事実のみだ。

しかし、この少女は俺の言う事に答えてくれるが、俺の聞いたことはかなり初歩的な事だろう。

バカだと思ってくれれば良いが、変に勘ぐられたくは無いな。

さて、どうするか……。


「……お名前を教えてください」

「んっ、ああ……テンカワ・アキトだ」

「……私はヴァニラ・アッシュといいます」


俺の名を出したのは、俺の時代に近いのかどうかを探るためでもある、少なくとも近しい未来や同じ時代の地球圏ではないようだ。

俺は少なくとも23世紀最大のテロリストのはずだからな。


「……まだ体力が回復していません、寝ていてください」

「だが……」


それから数日俺はベッドの上で過ごした。

俺は出来うる限り情報を集めようとしたが、ここにはメディアが全く無い上にヴァニラに聞いた情報は断片的過ぎて理解に苦しむものも多い。

それに、元々口数の少ないヴァニラから得られる情報は少なく、俺自身のことはかなりわかったが、外に関してはさっぱりだ。

例えば俺が今話している言葉は彼女の持つナノマシンにより俺のナノマシンに働きかけてこの世界の言語を補助脳に登録したらしい。

よって、俺が話している言語も日本語ではないらしい、実感はわかないが。

当然、それのともない彼女には俺がこの星の住人でないことがばれている。

そして、もう一つわかった事はつまり、彼女はナノマシンを医療目的に使うという仕事をしているらしいと言う事。

俺の体の感覚が戻ったのはナノマシン治療のお陰で、俺の体内のナノマシンの内、攻撃的な種類のものを弱らせたからであるらしい。

しかし、完全とは言えず。彼女の治療を週に一度は受けないとまたナノマシンが暴走する危険性があると言われた。

そんな風に俺のことは色々わかるものの、取り巻く現状に関しては何も分かることなく体力は回復し、

どうにか外を歩けるまでになった。


「……ナノナノ」


外に出かけるというヴァニラについて俺も出かけることにする。

ヴァニラは肩にナノナノというフェレットのような小動物を乗せて、近所を巡る。

小動物はナノマシンの集合体で、物理的な治療をする時は役に立つらしい。

彼女は診療医のような事をしていて、怪我などをナノマシンで治すのが主な仕事である。

とはいえ、この時代でもあまり普及はしていないらしい。

トランスバール内でも100人といない特殊な職業とされているとの事。


「これが星都エルダートか……」


街並みは西洋のそれに似ている、だがどちらかと言えばゴミゴミした鉱山街に近いだろうか。

ただ、商店の軒先には俺にはわからないような物が多数並べられており、ここが地球圏でないことをうかがわせる。

何より空が緑色であった、大気成分が違うのか、それとも太陽の光が青白いせいか、どちらにしろ見たこともない場所である事だけは確かだ。


ヴァニラは病気や怪我の患者を数件回り治療を施していく。

医療キットも持っているようだが、もっぱらナノマシン治療がメインであるようだ。

ヴァニラ自身が疲れないのかと聞くと、精神が不安定でさえなければさして疲れる作業でもないとの事。

ただ、彼女は殆ど一日中何かしら働いており、疲れがたまっていても不思議ではない。


「あまり無理はしない方が良い。俺よりも君の方が体調が悪そうだぞ?」

「……気にしないで下さい、私は大丈夫ですから」


確かにそうやって今まで暮らしてきたのなら、休みを取っていないという事はないのだろうが。

最近までは俺につきっきりに近い状態だった事を考えれば、普段より仕事が増えている事は明白だろう。

しかも、彼女は治療費を請求していない、つまり相手の善意に任せているという事だ。

だから、ろくな収入も無く教会の管理費だけで生きていると言う事になる。

もちろん、治療費を払う人もいるし、治療費の変わりに野菜などを届けてくれる人もいる。

だが、それでも生活はあまり良いものとは言えないようだった。

まぁ元々近所にも医者がいないわけではないのだし、全てヴァニラの負担となるわけでもないが。

それでも、彼女の献身ぶりを見ると自分の事を二の次にして頑張っているのが分かる。

正直俺のような人間が近くにいるのは不味いと考えるようになり始めていた。


「どうかしましたか?」


「いや、俺はなんとも、むしろ調子が良すぎて困るくらいだ」


それを聞いてヴァニラは黙り込む、俺の言っていることが本当か確かめているようだ。

ほっとしたと言うわけでもないのだろうが、彼女は俺の横に並んで帰途へとつく。

診療などが一通り終わって買出しも済んだので、荷物は多いが特に重いものがあるわけでもない。

特に何事も無く教会へと戻ってきたのだが、教会の前には一人の壮年の男が立っていた。


「おや、どうやら帰ってきたようだね」


俺は瞬間的に警戒するが、ヴァニラは特に構える事も無く教会へと戻っていく。

入り口付近でその男に挨拶をすると、中に入るように促した。


中に入って教会の長椅子に座ったその男は俺を値踏みするように見ている。

その男は、壮年とはいえ、顔に皺を刻んでおり老人と言われても文句は言えないように見たが、

同時に覇気や身のこなしなどがそれを裏切っていた。

顔だけ見れば好々爺ぜんとしているのだが……。

髪の毛は腰まで届いている、こういうファッションなのか、マントと儀礼服に近いようなゆったりとしたローブも身に着けていた。

それをみれば、多分銃などを隠し持つ程度の事はしていると感じさせる。


「どうかしたかの若いの?」

「そうだな……取り合えず、ヴァニラの知り合いという事で良いのか?」

「うむ、嫉妬したかの? なにせワシはダンディじゃからのう」

「……」


じじくさいしゃべり方をしているな、わざとかそれとも……。


「……お茶を」


そんな事を考えているとヴァニラが三人分の茶を持ってくる。

それを受け取って三人で茶に一口つける。

茶といってもハーブティのようでさわやかな香りが香ってくる。

五感があるという事の素晴らしさをかみしめながら最後まで飲み干した。


「さて、そっちの彼には初対面じゃからな、名乗りを上げておくかの」

「……」

「ワシの名はルフト・ヴァイツェン、トランスバール皇国士官学校の校長をしておる」

「そうか」

「お主の名は?」

「テンカワ・アキトだ」

「そうか、ではアキトお主に聞きたいことがある。士官学校に入る気は無いか?」

「……は?」

「いやー、ヴァニラ殿を実はスカウトしたいと思っていてね、しかし、彼女はお前さんに週一回は治療を施さんといかんらしい。

 週に一回もこの惑星に帰れるとは思えんのでな、お主はオマケじゃ」

「ヴァニラも士官学校に?」

「いや、ヴァニラ殿はエンジェル隊に入ってもらおうと思っての」

「……」


俺は、表情を変えないで視線をルフトに向ける。

しかし、実の所エンジェル隊とやらが何を意味するのか分からない。

もし、ヴァニラがそこに行きたいと思っていて俺が邪魔なら俺は出て行くことにする。

しかし、入りたくないのなら俺が出来る事をする事になる。

だが、実際の所状況が全く見えないというのが本音だ。


「ヴァニラはどうしたいんだ?」

「私は……」


迷っているようだ、エンジェル隊というのがどういうものか知らないが悪い所ではないのだろう。

しかし、今の患者を残していけないというような思いがあるということか。


「そこでじゃ、他の患者は普通の医者でも問題は無い。それゆえ我々が新しい医者を連れてくる事になっておる。

 しかし、お主は少々特殊らしいの」

「なるほど、そういうわけか」


俺はなんとなく想像がついた、そのスカウトに乗れないでいるのは俺が特殊な患者だからだ。

ならば、俺が出て行けば全て解決する、俺は邪魔者という事だろう。


「何を考えておるのか想像がつくが、お主も自分をあまり大切にしておらんタイプじゃの」

「何が言いたい?」

「何、ヴァニラ殿はアキト、お主が不幸になることを望んでなどおらぬよ」

「それはそうだろう、しかし……」

「(ふるふる)」


ヴァニラが俺の手を取って首を横に振る。

それは、俺がいなくなる事に対する意思表示だろう、だが元々俺はここにいるべき存在ではない。

いなくなったとしても、数ヶ月もすれば思い出に変わる類の存在のはずだ。


「……私に貴方を助けさせてください」


その言葉は切実で、何かトラウマを持っているのは確実だろうと思えた。

だとすれば俺に出来る事は一つしかない。


「分かった、仕官学校に入る事にしよう」

「おお、そう言ってくれると思っておったよ。では、これから編入試験のための参考書なども用意せねばの」

「!?」

「何をびっくりしておる、まさか形だけなどと思っておったのではあるまいな?」

「……」


世の中甘くないらしい……。

その後、俺は一ヶ月ばかり詰め込みで勉強をするはめになった。

おかげで、トランスバールという国の事は結構わかったのだが、頭のほうはパンクしそうだった。

なにせ、文字は日本語の変形らしくある程度分かるのだが、微妙な違いが意外とミスをさそう。

それに、小学生がわかる歴史が分からない以上一から覚えるしかなかったのだ、へとへとも良いところである。

それでも編入試験の当日にはどうにかそれなりになって来ていたのだから、我ながら良く頑張ったものだ。

そして、試験会場に着いたとき、ルフトが俺に話しかけてきた。


「そうそう、試験の前にアキト殿に言っておかねばならん事があった」

「?」

「今日からお主の名前はアキト・マイヤーズじゃ、マイヤーズ伯爵家というのは没落貴族での、身分としては作りやすい」

「どういう意味だ?」

「テンカワ・アキトという名前は少々目立つ、トランスバールの国民はそのような苗を持つものはおらぬよ」

「な!?」

「お主が何者か、今は問わぬ。それにその家名はある方から賜ったもの、いずれお会いする事になると思うがの」


まるで何もかも見通しているかのような発言、ルフトは切れ者のようだが、背後にいる何者かは先読みが出来る存在であると言う事か。

それも、俺がこの世界の住人でないことを知っている?

何にしても俺はアキト・マイヤーズとして士官学校に入る事となった。

幸いにして俺は童顔だったせいで、あまりおかしな目で見られずにすんだ。

しかし実際、校長であるルフトに目を付けられているというのは、あまり喜べた事態ではなかった。

2年間みっちりと軍人としての心得やら、サバイバル訓練、そして軍略というものを叩き込まれた。

肉体的には回復した後は楽だったが、頭を使う事は今までそれほど多くなかったせいもあっててこずる事も多く、ようやくまともに出来るようになった頃には卒 業間近だった。


ヴァニラは週に一度は必ずやってきた。

治療を施すために俺が遅れたときなど一日中待っていたこともあった。

だがそれも、1年もたつと俺がほぼ回復したと感じたのか月に一度程度まで減少した。

逆にエンジェル隊としての仕事が忙しくなってきた事もあったのだろう。

エンジェル隊、正確にはムーン・エンジェル隊はその名の通り、月を守護する存在らしい。

白き月、そう呼ばれる人工衛星がトランスバールの軌道上に浮かんでいる。

大きさもほぼ地球の月と変わらないそれは、現在の星間航行技術をトランスバールに与えたものだそうだ。

一度星間航行技術が失われたというのは不思議だが、もっと不思議なのは白き月という存在だろう。

だが、それを考えればムーン・エンジェル隊というのが特殊な技術をつぎ込んだ部隊だろう事は想像がつく。

いかし、彼女は軍のような場所で使われれば道具にされるとは感じないのだろうか?

彼女自身が考えて手伝っているのならいい、しかし、そういう選択肢しかないのならば、俺は……。

いかん、どうもルリちゃんやラピスと重ねてしまう……。


そんな調子で俺は無理やりといっていいほどの状態で2年で士官学校を卒業した。


「アキトよ、とうとう卒業じゃの」

「そうなるな」

「お主、今後はどうする?」

「軍の人事に従うさ」

「なるほどのう、しかし、そうなるとお主に船を与えないといかんな」

「は?」

「この国ではな、爵位を持つ貴族が士官学校を出たときは半年以内に少佐くらいまでは出世するものじゃ」

「それは……」

「コネじゃよ、いつの時代もコネは強い。特に今貴族はかなりの権力を握っておるからの」

「いまや俺も貴族という事か」

「その通りじゃ、飛び切り優秀な、な?」


ルフトは俺に二コリと笑うが、俺はあまり嬉しく思う事は出来なかった。

それ自体が何かの陰謀、いや俺をハメようとしている誰かの筋書きを連想させたからだ。

事実、この後俺はわずか半年で少佐まで、一年で中佐に出世、手柄は確かにかなり上げたと思うが、それでも貴族でなければ大尉になれていたかどうかも怪し かった。

そして、俺も艦隊とは名ばかりとはいえ戦艦1巡洋艦2駆逐艦4の合計7艦を指揮する立場となっていた。

しかし、その事が貴族主流派とやらには気に食わなかったらしい、あっというまに左遷され継続的な辺境宙域のパトロールを言い渡された。



「見事に左遷されたな」

「見事って、それはねぇだろ。お前上層部とすぐ問題起こすからな」

「まあいいじゃないか、のんびりするのも」

「あのな、出世街道まっしぐらだったんだろうが、もう少し何か言う事無いのか!?」

「俺はそれほど出世がしたいわけじゃないしな。それよりレスター。お前まで巻き込んだみたいで悪い」

「いや、まあそれは良いんだがよ……」


頬をかきながら照れているのは、レスター・クールダラス、士官学校で同期だった男だ。

士官学校では主席を取り続けるという快挙を行ったやり手だが、俺が編入してきてからは成績が落ちてきたと言われていたらしい。

俺は基本的に体力バカな傾向があったのだが、無茶して付き合うものだから、偉い事になったのも一度や二度ではない。

ここ数年一気に過ぎた感じがするが、トランスバールという国が比較的平和であったからだろう。

もちろん、それは白き月の力を背景にした武力によるものでもある、反発は当然あるだろうが。


「まぁお前はもう中佐だしな。本来は艦隊持つなんてのは将軍の仕事だって事まで入れればかなりの出世だ」

「否定はしないが、艦隊とはいってもパトロール隊だからな、実質的には艦隊の10分の一程度、分隊にも届いてない」

「それはそうだがな」


どうでも良いことを話しながらパトロールを続ける。

最近は拠点がトランスバールでなくなったため、ヴァニラともあまり会っていない。

ナノマシンの制御がある程度自力で出来るようになったため、ではある、しかしそれでもヴァニラは出来るだけ来ようとしてくれる。

しかし、俺の方が断る事も多かった。

負担になっている可能性や、彼女の年齢を考えればどうしても、仕事ばかりに打ち込むよりもう少しプライベートな時間を持った方が良い。

だから、俺は理由をつけてはあまり来ないようにヴァニラに言っていた。

それでも何度か基地に来た事がある、彼女の責任感の強さは筋金入りだった。


「しかし、エンジェル隊の彼女最近あんまり来ないな」

「こられても困るというか、彼女じゃない」

「まあいいが、暇だなー」

「それが一番だ」


俺はレスターの言葉に適当に返しつつ、自分の立場を思う、俺は一体何をやっているのか。

俺はこの世界に義理も目標も持っていない、士官学校は久しぶりに学ぶと言う事が出来て楽しかったが、ここまでする必要は無かったかもしれない。

ただ、生きていると言う事実が俺を離してくれない。

元テロリストの艦隊指令などお笑いぐさにしかならない。

それでも、俺は生きるためにここにいる。

それが正しい事なのかは誰にも分からないが……。

その時、レーダーサイトが目に止まった。


「ん?」

「どうした?」

「レーダー、接近する味方艦だが、どこの艦隊だ?」

「ミヤコーン所属となっています」

「トランスバールの近くじゃないか、中央の艦隊がなんでここへ?」


味方艦隊ということで、報告が遅れたおうだが、この宙域で演習を行うなどと言う話は聞いたことがない。

となれば、ただの味方艦隊とは考えにくい……。


「ミヤコーン艦隊こちらへ向かって来ます。どうしますか?」

「第二級戦闘配置、急がせてくれ」

「いいのか、仮にも味方艦だぞ?」

「向こうはそうは思っていないらしい」

「なるほどな……」


ミヤコーンの艦隊は全て砲撃可能な状態になっているということを示すデータがレーダーから入ってくる。

俺の言葉はそれを見てのものだ、レスターも冷や汗をかきながら応じる。

これから類推できるのは、反乱か俺に対する攻撃か、多分前者だろうな。

この世界で俺に価値を見出している人間はそれほどいないだろう。


「まずいな、射程圏内まで後一時間もない」

「なら取り合えず回線を開いて見るか。何か言ってきてるはずだ」

「まぁな、でたらめも良いところだが……」

『我らは正統トランスバール皇国軍である、貴様らは反乱分子に加担した疑いがかかっている』


ブリッジに大映しになった映像はおおよその見当どうり、トランスバールの軍人のようだった。

ただし、服装はトランスバール軍のものではない。

もっとも、ヒゲだるまの軍人などどんな格好でも似たようなものだが。


「いつから、トランスバール帝国はTOTOなんて名称を必要とするようになったんだ?」

『TOTOではない! 正統だ!』

「で? そのせっト軍は見ての通りの辺境艦隊相手にすごんで見せないといけないわけか?」

『妙な略し方をするな! くそ、貴様なめておるな! ふん、貴様は何か謀略を持っていると聞かされておる、この場で艦隊ごと宇宙の藻屑となれ!』

「宇宙には藻も漂ってないと思うが」

『キィィィ、砲撃開始だ!!! チリも残すな!!』


謀略、俺がか?

全く、一体どうなっているんだ……。

だが、ここで殺されてやるわけにもいかない。


「レスター、紡錘陣形だ」

「この戦力差で突撃するつもりか?」

「相手の艦隊は重砲撃艦と戦艦が中心だ。空母や駆逐艦はいない」

「……なるほどな、懐に入り込めば被害は最小ですむか」

「とはいえ、それまでの被害が大きすぎてはそれも失敗するだろうが……」

「やるしかないな、それにしてもあいつら戦術の初歩も出来てねえのか? 大鑑巨砲主義なんていつの時代の話だ……」

「そのお陰で助かる可能性があるんだ、感謝しないとな」

「それもそうか」


それでも不満があるのかレスターは眉をひそめているが、指示は的確に飛ばす。

高々二年で戦術などは修める事は出来たものの、艦隊の動かし方などは俺にはまだ無理だ。

ユリカなら簡単にやってしまうのかもしれないが、俺に同じ事を求めるのは無謀というものだろう。

とはいえ、レスターの行動は的確で、司令官を補佐する能力に秀でている。

そういう部分は、ジュンそっくりだ。性格はひねくれているが(汗)


たった7隻の艦隊は紡錘陣形を素早く組むと、相手の砲撃が始まるとほぼ同時に突撃をかける。

とはいえ、相手の艦隊は戦艦と砲撃艦合わせて24隻、ざっと3倍強だ。

近接をかけるまでにかなりの損傷を受ける、乗組員の脱出には何とか成功したものの、近接する頃には戦艦1、巡洋艦1の駆逐艦1の3隻にまで目減りしてい た。

残っている艦も損傷の無いものは無い、とはいえ今は無茶でもやらなければならない、

俺はそのまま駆逐艦と巡洋艦に突撃させ敵艦隊を引っ掻き回させる。

戦艦はその間に敵艦を撃ち抜き突破口を空けた。

そこから戦闘加速のまま敵艦隊をつき抜け、逃走に入る。


「どうにか抜けたか?」

「派遣された艦隊がこれだけならな」

「おいおい、俺達そこまで価値のある何か持ってたか?」

「多分勘違いだと思いたいが、俺達が策謀をめぐらせているとかいっていたからな。どう動くかまだ分からん」


そう、俺の知らない所で何かが動いているとしか思えなかった、まさか、その為に俺を……。

考えすぎだろうか?

その時、レーダーにまた味方艦の識別信号が入る。


「やはり、待ち伏せか!?」

「くそ、俺達のことをどれだけ買いかぶってやがるんだ、正統トランスバール皇国軍とやらは!」


新たに現れた艦隊も24隻、レーダー警戒網ぎりぎりの所だが、突破した艦隊が戻ってくれば挟み撃ちになる。

しかも、合計40隻以上、こちらはもう3隻にまで目減りしている……13倍以上の倍率というお話にならない比率が完成してしまう。

それに、第二陣には空母らしき反応もある、絶望的な状況といっても過言ではなかった。


「アキト……どうする?」

「降伏と行きたい所だが、向こうは許してくれそうに無いな……」


散々挑発したツケということになるだろう、敵はやるき満々である。

艦隊が再び射程に入るまで30分もあるまい、念仏でも唱えるかと思っていたその時。

突然前方の艦隊が爆光とともに消滅した。


「レーダー、どうなっている?」

「はい、前方の艦隊消滅……反応ありません」

「な……」

「新たに5機のレーダー反応! 小さいです、恐らく戦闘機クラス」

「5機の戦闘機……? まさか……」

「今拡大映像をモニターに出します!」

「なっ!?」


モニターに映し出されたその機体には白き月に配属される近衛隊だけに与えられる紋章がマーキングされている。

近衛隊の戦闘機は基本的に一種類しかない。


エンジェルフレーム
「紋章機……」

「まさか、こんな辺境に!?」

『こちらは皇国近衛隊所属エンジェル隊、応答願います』


紋章機を扱うのはエンジェル隊のみ……そんな事は分かっていたが、どこか遠くの出来事のように一瞬思い、

しかし首を振って思考を現実に戻す。


「こちらは皇国第2方面軍クリオム星系駐留艦隊司令アキト・マイヤーズだ」

『了解しました、近衛長官から指令書を預かっています』

「分かった」


紋章機から指令書が電送されてくる、本来は紙の文書である事が多いが緊急時であることと、機密性をあまり重視していないと言う事だろう。

提督席のモニターにはエンジェル隊を一時的にアキト・マイヤーズの指揮下に置くとなっていた。


「わかった、では、後方の艦隊を殲滅してくれ」

『『『『『了解(ですわ)!』』』』』


しかし、その後はほんの一瞬だった、それぞれが一発ビームを放つたび一隻の艦が沈む、10秒立たない間に敵艦隊は存在しなくなっていた。

現在はそれなりに脱出システムが進んでいるので、兵士の殺傷率は高くないだろうが、それでも艦隊は壊滅していた。


『エンジェル隊より報告、艦隊の殲滅を完了、補給及び整備のため着艦を希望します』

「オペレーター、誘導頼む」

「了解」

「さて……おい、アキト」

「ん?」

「エンジェル隊の出迎えはお前の仕事だ」

「なぜだ?」

「エンジェル隊の指揮権はお前がもってるんだろ?」

「だが……」

「だー、つべこべ言わずに行って来い!」

「わかった」


レスターの奴変に気を回しすぎだ、だいたい辺境とはいえ司令官は俺なのだから、待っているのが俺の務めのはずだろうに。

まったく……。

そんな事を考えながら格納庫に入って行くと、そこでは整備班に引き渡された紋章機が並んでいる、一機一機が思ったよりも大きい、

40mくらいはあるな……それぞれに特徴があるのだろう、機体もまとまりがあるとはいえない形をしている。

一機など砲身の長さを合わせれば60mを超えるような大型だ。


「小型の宇宙船と言っても通じるな……」

「そうだねぇ、確かに駆逐艦くらいの大きさはあるかもしれないね」


そういいながら、大型砲門を持った紋章機から出てきたのは、軍服を肩の辺りから切り崩しマント風に羽織りつつ、

胸の開いた紫のフォーマルドレスを着ている女性だ、顔にはモノクル(片眼鏡)をし、赤いセミロングの髪を帽子で覆っている。


「おっと、自己紹介がまだだったね、アタシはフォルテ・シュトーレン。一応エンジェル隊のリーダーみたいな事をさせてもらってる。

 んで、そっちの陰に隠れているのがミント・ブラマンシュ」

「あらあら、知っていましたの?」


そう言いながら出てきたのはトドの着ぐるみ……を着た青い髪の少女だった。

耳の上になにやら獣の耳のようなものがあるが……多分同じようなコスプレだろう……。

しかし、その少女は見た目とは裏はらになにやら含むような笑いをする。


「ところで、そこにいては危ないですわよ?」

「キャァァァァァ!?」


俺はそれを言われて咄嗟に飛びのこうとするが、落ちてきたのが人らしかったので、受け止めようと一瞬動いた。

しかし、飛びのこうとしていた手前、腕だけ突き出すような格好になってしまい、スライディング風に下敷きになる。


「あああああ、あれ?」

「ちょっとミルフィ大丈夫!?」

「ぐおっ!?」

「え?」


桃色の髪の少女が俺の上に落ちてきた直後、更に金髪の少女が俺の腰の上に着地。

二人分の着地のショックを受け俺は潰れそうになっていた。


「あー、二人とも、その下にしいてるの、新しい司令官なんだけど」

「えっああ!? ごめんなさい!!」

「えっ……マジ……(汗)」

「まさかここまで衝撃的な登場とは思わなかったよ」


腰をさすりながら立ち上がる俺。

二人はばつが悪そうにしているが、金髪少女の方はどこと無く不満げでもある。

大体予想はつくが……。


「悪いとは思うが、事故だし許してやってくれないかい?」

「ああ、それよりも」

「そうだね、そらっ、二人とも自己紹介しな」

「はうあうあ、ごめんなさい」


ピンク色髪をした少女は花をあしらった髪飾りを俺に向けるほど頭を下げる。

彼女はどうやら普通に軍服を着こなしているようだ、とはいえ、やはり少し彼女なりにアレンジをしてあるようだが。

俺の上に落ちてきたことに恐縮しているようだが、少しほんわりとした感じのする少女である。


「私はミルフィーユ・桜葉、今年で17歳です! 趣味はお菓子作りで、お休みの日はピクニックとかにいくのがいいです!

 あとは、えーっと、えっと……」

「それくらいでいいよ、次は蘭花、お前だよ」

「うっさいわね、分かってるわよそれくらい」


蘭花と呼ばれた金髪の少女は俺に視線を向けて睨みつけるようにしている、俺何か悪い事をしただろうか?

蘭花は金髪碧眼という白人的な特徴を持っているようだが、着ているのは真っ赤な変形チャイナ服のようだ。

軍服はもうどこに使っているのか分からないくらいだが、一応所々軍服の名残はある。

耳元にドライヤーと思しき形をした髪飾りをつけている、重くないのか気になるが、本人が気にしていないなら注意するほどでもない。

ざっと蘭花を観察し終わった頃ようやく自己紹介を始めてくれるようだ。


「あんた、さっきからじろじろ見てるけど、私はハードル高いわよ?」

「……?」

「だから、私と付き合いたいならもっと努力なさいと言ってるの! 顔は……まあ悪くないけど、意志が弱いのは駄目よ!

 それに、収入……は悪くないか。でも、もっと洗練された格好をしなきゃ」

「いや……その、自己紹介をしてくれないか?」

「……っ!!? そんなの自分で調べなさい!!」


そう言うと蘭花と呼ばれた少女はスタスタと艦内に歩いて行った。


「ごめんなさい、蘭花恥ずかしがりやだから!?」

「いや、恥ずかしがり屋か?」

「兎に角、私蘭花に戻ってくるように言ってきますー!」

「……」

「まぁ、蘭花・フランボワーズってのはあんな子さ」

「なるほどな」


俺は呆然としていると、腰の辺りに淡い発光現象が起こっていた。

発行している場所には手が当てられて言る、それは……。


「ヴァニラ……」

「おや、知ってるのかい?」

「ああ、俺は彼女の患者なんでね」

「ああ、そういうことかい。いや、休暇のたびにこの子どっかにいなくなるんだけど、てっきり」

「はい、治療のために出来るだけ観察しているつもりです」

「なるほど、そうかい(ニヤリ)」

「……兎に角、俺はただの患者だから」

「まあいいけどね、兎に角、エンジェル隊はこれからあんたの指示で動く事になってる」

「なぜだ?」

「詳しい事については近衛隊の司令官殿からきいとくれ、もうすぐここに来るはずだから」

『アキト! 100隻近い艦隊の反応があるぞ! この反応は近衛隊の物だ!』

「そうか、すぐいく!」


俺は急いでブリッジに戻ろうとしたが、マントの裾をつかまれていた事に気付きふと振り返る。

そこにはヴァニラの無表情でいて何かを訴えかけるような目が俺を見ていた。


「どうかしたか?」

「治療はまだ終わってません、今度は最後まで治療させてください」

「……ああ、分かった」


ヴァニラはまだその事を気にしていたのか、俺は彼女の律儀さに驚きを覚える。

あれからもう4年がたつ。

元から大人だった俺とは違い9歳から13歳の4年は長い、それでも覚えていてくれたというのは凄い事なのだろう。

ヴァニラを見ていると人の善性というのを信じたくなってくる。



そして、俺は事情を知るべくブリッジへ急いだ……。


ブリッジに上がった俺は士官学校の校長だったルフト司令から事の次第を聞き、シヴァ皇子護衛の任務を任かされることになる。


儀礼艦エルシオールを任され、結局エオニア軍の主力を叩く役までさせられる事になるのだが……。


今はここで話を閉じようと思う。













あとがき


アキトをGAの世界に持っていく話というのを投票の中に見つけましたので、ちょっと作ってみました。

まあ、一位はネギの続きのようですので(現在のままではと言う意味ですが)、これは早めにUPさせていただきます。

やってみてわかったのは知らないことが多すぎると言う事ですね(汗)

後半はちょっと原作準拠な感じになりましたが、ヴァニラヒロインな感じは出せたかな?w

もっとも愛とかではなく現時点では責任感にすぎませんが。

というか、アキトにナノマシン治療のヴァニラってのは相性良すぎっす!(爆)

まあ1000万HIT本番はまた書きますのでこれはこれでゆるしてくだせえ(汗)


あとがき2


24世紀→23世紀は修正しております。

ふと思ったのですが、エステバリスと紋章機の比率ってヴァンドレッドの蛮型とドレッドの比率と似ている気が……。

まぁ、もしもこれが一位になったらサレナと合体変形する紋章機ってのをやってみるのもいいかな(爆)







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