この世界に来てから2ヶ月と少し、ランベルト王国は冬景色になりはじめた。
広葉樹は枯れ、その枝には雪が積もり、町の外は白い世界。
畑仕事に精を出していた農民達も今は家からほとんど出てこない。
オレもようやく少しは他のメンバーの動きについて行けるようになった所だったが動けないのは仕方ない。
オレ達がやった魔物狩りによって直轄領内における魔物の掃討はほぼ終わったらしい。
といっても、オレがいなくても問題なかった気もするが。
その事について考えるのはよそう。

「それで姫様、どんな御用でしょうか?」
「あら、気が付いておられたのですね」
「部屋の外でこちらを覘く視線を感じていましたよ。何故こそこそとするのです?」

俺に指摘された姫様は悪びれず部屋の中に入ってくる。
それだけで部屋が華やいだように見えるのは、流石姫様というところか。
金糸のような美しい髪と、深い蒼を思わせる瞳がオレを捕えている。
こうして見ると胡散臭い占いによって俺達を見つけた占い師とは思えない。

「私、貴方に嫌われているのかと思ったものですから」
「嫌ってはいませんが、警戒はしています。未だに貴方の真意は知りませんから」
「私の願いは我が国に勇者殿を迎える事、可能であれば魔王を倒して頂きたいと言う事。
 もちろん無理にとは言いません、現状でも脅威はある程度防げていますから」

彼女が俺に期待しているのはその成長速度らしい。
俺達はこの世界においてRPG風に言えばレベル1で現れる。
だが、この世界の人間より成長速度が速く、数年も鍛えれば初心者でも達人になるのだとか。
実際オレがこの世界に来てから一流の強さを持つ彼らに付いて回っている間にありえない成長を遂げた。
今なら走り高跳びで3m近く飛べる自信があるし、300kgのバーベルを上げる事が出来るだろう。
高飛びの世界記録が2m45cm、重量上げは胸前で255kg、両腕を上にあげるのは197.5kgだというのにだ。
身体能力は地球にいた頃とは比べ物にならない程に強くなっている。

ただ、あえて言うならパーティを組んでいるアルバインは、金属の全身鎧をつけたままそれくらいやる。
魔法による補助があればドラゴンを飛び越えるというありえないアクロバットも披露してくれる。
俺に勇者を期待するのはまだまだ先の事だと痛感する次第だ。
もっとも、一般人の身体能力は地球の一般人とそう変わらない。
よって、アルバインら勇者パーティが変態的なだけかもしれないが。

「ですが、何故貴方達は元の世界に帰ろうとするのです?
 既に2つの月が変わるほどこの世界にいました。
 元の世界では貴方達は死んだと解釈されていると思いますが」

「だが、この世界は危険すぎる……」

そう、既にオレ達は元の世界では死亡扱いになっている可能性が高い。
この世界と元の世界との時間の流れが同じだという前提においてだが。
しかし、そうだとしても元の世界に帰る意味はある。
注目はされるだろうが、死亡扱いだろうと本人確認さえできれば社会復帰の可能性もある。
そして、この世界には魔物がいる、そして国家間の争いがある。
日本のやっているような小競り合いじゃない、実際東の方の領主は反乱を起こされていると聞く。

「そういえば、ドランブルク領の反乱というのはどうなったんです?」
「どうもならないのではないかしら」
「は?」
「もう雪の積もる時期だから、まとまった軍は動けない筈。
 雪解けの時期まではそのままでしょう」

「……なるほど」

この世界の戦争は随分呑気なのだなと思うが、考えてみれば自動車がある訳でもない。
歩いて行くには危険度が高いし、馬等は動きが鈍くなり戦力にならない。
そう言えば、雪の積もる国では(自衛隊等)軍事訓練としてスキーをしていると聞いた事があるが……。
流石にそんな事まではしていないと言う事か。

「こちらが動かないのもその理由なんですか?」
「いいえ、領主は自分の領土内の事に対し王室が出張るのを酷く嫌います。
 実際、王室が出る場合は土地の一部や権益を直轄として召し上げる場合が多いものですから」
「……領土内まで王室の権威が及んでいないと言う事か」
「お恥ずかしい話しですが、貴族達は自分の領土を小さな国とし、自分達がその中の王だと思っています。
 場合によっては、他国に保護を求め王室を売り渡す程度の事は平気でやります」
「つまり、一種の同盟国に近いと?」
「そこまで疎遠と言うわけではありませんが、近い感覚かもしれませんね」

今の話を聞いていると中世ヨーロッパの国家を想像出来る。
というよりヨーロッパの国々は平野部が多く、他国と隣接していたため、都市そのものを防衛する城郭を築くしかなかった。
日本のように山あり谷ありなら、関所を設けて行動を制限する事もできるが。
平原が多いヨーロッパは国境がすかすかになりがちで、農民が逃げ出し都市部に住み着くと言う事も多かったらしい。
逃げ出すと言う事は農民が減ると言う事になり、石高の低下に直結する。
1人2人ならいいが、税の重さに耐えかね村ごと逃げるなどと言う事もありうる話なのだ。
そのため、都市ではそういった民衆の出入りを制限しており、農民が都市部に入るのは難しかったと言う。
そして、今回の反乱はそういった事情から起こった出来事らしかった。
民衆が重税に耐えかね、普通なら都市部に逃げる所を何故か一つの寒村に集まった事が起こりらしい。
その村で民衆を扇動する者が現れ砦の一つを落としてしまったらしい。
それ自体は凄いことだが、この先どうするつもりなのだろうか?
領主は軍を派遣するだろうし、もしも、それを跳ね除けても今度は国王が布告を出し反乱鎮圧に当たるだろう。
ランベルト王国が動員可能な兵力は最大5万だそうだ。
とてもではないが、勝ち目があるように見えない。

「ただ、オレの国の常識として反乱を起こされるような政治がいいものだとは思えませんが」
「それに関しては私も賛成です。
 ですが……国というものは実の所怖いと思われなくなったら終わりです」
「それは……」
「法を守るのは、法を守らなかった時の罰則が怖いからです」
「しかし、民を蔑ろにする者がのうのうと生き、正義を貫いたものは死ぬのが正しいと?」
「例外を認めれば国がどうなるか貴方にも分かっているはずです」
「……」

彼女も……サリュート姫も正しいと思っている訳ではないのだろう。
しかし、例外を認めれば他の者たちにまで影響が及ぶ。
例外とは通常とは違う状況になるからこそ正しくなるのであって、他の者がやれば犯罪である。
政治はそういうあいまいさを許さない、それは付け込める隙でしかないからだ。
となれば、例外を認めるのは犯罪を認めるのと同じと言う事になる。

ただ、彼女もオレも恐らく対岸の火事程度にしか思っていない事も事実だった。
オレは静と元の世界に帰る事が第一、人の事まで構っている暇はないし。
姫もまた国家運営に直接関係の無い話と思っている、少なくとも反乱が長期に渡らない限りは。
一年以上も続くようであれば国も動かざるを得なくなるだろうが。

しかしそんな考えとは裏腹に、反乱はオレと関りの強いものであった事をその時は知らなかった……。



異世界召喚物・戦略ファンタジー
王 国 戦 旗
作者 黒い鳩


第二部 『小さき王国』 第二話 【訓練


あれから一週間立ち、今まで手伝ってくれていた村人達の殆どは元いた村に帰った。
砦に残っている兵力は700当初の3分の1程度だったが良く残ったほうだ。
戦力としては、大部分が北部出身の元農民であり、一部はアル・サンドラ子飼いの兵だった。
また、500人近かった捕虜は、半数以上が降伏したので受け入れた。
最も武器を渡すほどには信用出来ないので、砦内の仕事や水源地近くの畑仕事に使う事にした。

残る半数の捕虜の内、怪我の酷い者や、戦力になりそうにない者はコーラノアの町に移送する事になった。
幸い、コーラノアの町は武力行使をするまでもなく威嚇と説得だけで落ちた。
実際砦もなしに50人程度の兵力では6倍の300人で攻めたアル・サンドラに対抗出来るはずもない。
また、リーマ・ファブレラ村長と侯爵の子であるデオムによる説得で戦わずに終わらせた。
この事により、医師のつてや商売の足がかりなど色々とプラスになりそうではある。
彼女にはそのままコーラノアにいるつもりのようだ。
対するアル・サンドラは半数の150を残し砦に引き上げてきた。

「予想通りと言ったところか」

俺はその報告を槍の訓練をしながら聞いていた。
そこらへんの兵士で強い人を呼びコーチしてもらっている。
レベルは兎も角、技術はやはり覚えなくてはならないからな。

「恐らく、彼女は冬の間にコーラノアを中心とした組織を立ち上げる気でござろうな……」

後ろで見ていたメルカパが俺にそう帰す。
メルカパの言うとおりだろう、彼女にとっても時間があるわけじゃない。
俺達が村々を説得して団結しようと動いているように、彼女も求めるもののため動き出しているだろう。
問題はその組織があくまで1派閥としてなのか、独立組織としてなのかだが。

「どちらにしろ、様子を見てみる気なのでござろう?」
「まあな、あえて外に出したのは彼女の目的を知るためと組織固めの意味合いもあるからな。
 どちらが先に固められるか勝負といったところか」
「それにしても、何故剣を使わないのでござる?」

俺が使っているのは短槍という部類だ、身長より少し長いくらいの槍。
俺がこれを使っているのは、一番使いやすいと考えたからだ。

「理由ってほどじゃないが、重いだろ?」
「しかし槍は取り回しがめんどうではござらんか?」
「それは上級者の考えだ」
「上級者でござるか?」
「ああ、俺らのような素人が剣なんか使っても足を切るだけだってよく言うだろ?」
「それもそうでござるが」

槍を使う意味はいくつかある、先ず軽さ。
はっきり言って、先端部分の刃はせいぜい短剣くらい、それ以外は金属を使っていない。
なので俺みたいな武道初心者でも重いという感じはしない。
続けてその長さ、敵に近寄れば殺される可能性が上がるから長いにこしたことはない。
ただ、あまりに長すぎると取り回しが出来ないので一度振ったら終わりになってしまう。
そこで短槍となる、長さだけなら長剣よりも長く、軽さは短剣と変わらない程度、その気になれば両手で使ってもいい。
速さも軽さに応じて素早く動かせ、身長と大差ない長さであるため引き戻しも早く、体の回りを回したりもしやすい。
ゲームではその長さからダメージが低い事が多いが、実際はそんな事はない、とはいえこの世界ではどうか判らないが。
後は懐に入り込まれた時用の短剣でも用意しておけば十分となる。

「使いやすさなら断然槍を勧めるよ俺は、それに戦争で槍を持って戦う事が多いだろ?
 剣を抜くのは槍が使えなくなるか懐に入り込まれるか乱戦になった時だ。
 つまり、槍の方が手軽で強くなれるって事だよ」
「言われてみればそんな感じもするでござるな」
「なら、一度私と手合わせしてみませんか?」
「え?」
「アル・サンドラ殿!?」

帰還したばかりで休息をとっているはずのアル・サンドラが俺の背後に来ていた。
赤毛で女性にしては体格もよく俺と身長的にはそう変わらない彼女。
肌の色も少し焼けているが、女性らしいラインを失ってはいない。
女将軍というと野獣のような筋肉ダルマかぜんぜんそう見えない萌えっ子というのがゲーム等では定番だが、
彼女は筋肉も十分あるがどちらかと言えば静かで大人しい印象を受ける。
知的でありつつも、戦士として十分な能力を持つのが彼女なのだろう。
そしてステータスもそれを証明している。

++++++
名前:アル・サンドラ 種族:人間
職業:千騎長  強者度:18
生命力:74/79   精神力:28/32
筋力 :32      防御力:??
器用度:??      素早さ:33
魔力 :24      抵抗力:??
耐久性:??
<<術・技>>
武芸:熟練度:6(武器の攻撃力に6の補正)
共通魔法:熟練度:2(魔法語の読み書き、発火、水球、簡易結界使用可能)
<<装備>>
ジャベリン:威力11:筋力補正6:攻撃力17+6(23)
鋼の胸鎧:固さ8:防御力補正?:守備力?
<<物品>>
????
????
????
++++++

コモンの基礎とはいえ魔法まで使い、更にはエルフの戦士であるリフティをもはるかに超える強者度。
前の砦の長であったガラルドと比べれば力で見劣りするものの、戦えばほぼ互角ではなかろうか?
そんな相手と戦えと……?

「あー、光栄だけど俺じゃ相手にならないだろ」
「それはどうでしょう? 貴方は私とガラルド将軍を下しこの砦を得ています。
 それだけではない、ガラルド将軍とは一度戦ったと聞きますが?」
「別に真正面から戦ったわけじゃない、負けない状況を作り出していただけだよ」
「ならばそれをご教授願いたい、何分武のみに偏る者ゆえ武が何にもろいのか知っておきたいとも思います」
「……」

何故かアル・サンドラの目がきらきらしていらっしゃるように見える。
あー、バトルホリックとかまあファンタジーの世界だしいてもおかしくないかな。
とはいえ、美人さんがそれを言うのは怖いものがあるな……。
そう考えていると、メルカパにぽんと肩をたたかれる。

「諦めるでござるよ」
「見捨てる気かっ!?」

アル・サンドラをいくつかの方法で説得しようとするも、彼女は頑として譲らなかった。
何が何でも俺が勝った理由が知りたいらしい。
とはいえ……強者度4から成長を見せない俺が強者度18に正面から勝てる確率はゼロだろう。
ならばまあ、裏技しかない訳なんだが……果たして通用するものかどうか……。

「槍は練習用の物を使います。大怪我になる事はないかと」
「ああ、了解した」

練習用とはいえ、相手が使うのは鉄の棒、俺の使っている木の棒に剣をつけた軽いタイプではない。
あんなの喰らったら数発で御陀仏だ。

「せめて木の棒にしてくれないかな……」
「威力はさほど変わりませんよ。せいぜいたんこぶが骨折になるくらいです」
「それは大きく違うと思うが……」
「あんまり軽いものだと当てた時に折ってしまいそうで」
「……」

折るって、どんな腕力してるんだ……。
まあ筋力の数値的にも13違う訳だからかなり威力に違いがあるだろうが……。
兎も角、俺は構えをとったアル・サンドラを見据えつつ自分も構えをとる。
彼女も同じ槍使い、いや違うか、武道全般に優れるって事のようだ。
俺に合わせて槍を使ってくれているのだとして、隙らしきものは全くない。

「攻めて来ないのですか?」
「後の先タイプでね」

嘘は言っていない、正確にはアイコンが赤くなるので相手の攻撃タイミングが分かる。
という俺のチート技能の特性を生かして戦うにはその方がいいと言うだけの事ではあるが。
ただ、心配はあった。
アイコンが赤くなるタイミングから攻撃が来るまでのタイミングはまちまちだと言う事だ。
リフティのように矢なら一度回避すれば再度の攻撃まで間があるというならいいが。
槍だとそうもいかないだろう、出来るだけ間合いに気をつけたいと考えてもいる。

「なら行きます」

アル・サンドラは無造作に踏み出し数歩を一気に詰める。
俺は槍を構えたまま、アイコンが赤くなる瞬間を待つ。
アル・サンドラは怪訝に思いつつも俺に向けて突きを繰り出す、
幸い間に合ったようで俺は回避に成功した、ただしギリギリになるのは仕方ない。
この時俺は意識してネット知識による歩法を試していた。
といっても大した事ではない、回避する時は一歩踏み込んで前方に向かって回避すると言う事。
そのための、足運び、はたから見るとカニ歩きみたいなものだが……。
しかし再度アル・サンドラのアイコンが赤くなったと思った瞬間、
突きから横凪ぎに切り替えた彼女の攻撃が俺を襲う。
俺は転がりながら大きく離れるが、体勢を戻したのは彼女の方が早かった。
俺が立ちあがるのに合わせ、さらなる突きが迫る。
俺は槍の柄をつっかえ棒代わりに、少し右に跳んだ。

「ほう、しのぎ切りますか、見た目の印象と違って素早いですね」
「そうでもないさ、実際ヒヤヒヤものだった」

再び構えをとった俺に微笑むアル・サンドラ。
見た目はとても戦いの途中とは思えない、彼女は汗もかいてない、さっきは俺が動かされていたとはいえ。
俺はアイコンで攻撃を読んでいるにも拘らず相手の優位は揺るいでいない。
俺が勝つには、カウンターしかないだろうな……。

「次は俺から行く」
「やって見せてください」

今までの攻防で彼女もおおよそ俺の強さは把握しただろう。
恐らく相手にならない強者度の違いも含めて。
だからこそ自分で突っ込む、今までにない行動は、相手の動きを止める。
止められなくても、一瞬でも気が引ければと思ったんだが、唐突に彼女の攻撃が当った。

「なっ!?」
「あれ?」

俺もだが、アル・サンドラ自身も驚いているようだった。
だが今のは何故当った? アイコンは赤くなっていなかったが……。
もしかして……、俺は確かめるためにもう一度槍を構えて飛び込んだ。

「更に飛び込んできますか。その意気込みだけは買いますが、この戦法では勝てませんよ?」
「さあな!」

迎撃に突きだされた槍をアイコンを見ながら回避、次は俺が槍を隙間を縫うように突く。
しかし十分時間はあったのか、アル・サンドラの鉄の棒にからめとられた。
からめ取られた槍を手放し、そのまま懐へと向かう。
腰に差していた短刀を抜き放ち彼女に近接しようとする。
だが、そこに棒がクルリと回転して彼女の背後から出現。
切り返しが早い、俺は咄嗟に距離を取ろうとする。
だが背後に向けて棒を横凪ぎにしようとアル・サンドラは動いていた。
転がって回避しようとした時彼女のアイコンが赤く光る。
なるほど、フェイントか、そう思った時には棒を叩きつけられていた。
しかし、俺はとっさに短刀を彼女の腕に突き出し威力を少しばかり相殺する事に成功した。
もっとも、次の手はない、既に逆の手に持ち替えたアル・サンドラの槍が俺に突きつけられていたから。

「まいった」
「いえ、中々面白い動きを見せてもらいました。
 特に何度かは私の動きがあらかじめ分かっているかのようでしたね?」
「まあ、そういう先読みが得意なんだがフェイントには役に立たなかったみたいだ」
「なるほど、それでフェイントの囮攻撃に自分から突っ込んできたりしたのですね」
「あはは……」

やっぱりこの能力に頼り切るのは危険だな。
フェイントには反応しない、それはいい事だ、それをきちんと読み取れるだけの武術の腕が俺にあればだが……。
フェイントといってもどういう意図のフェイントなのかすら俺には分からないから結果として意味がない。
そして、フェイントに自分から当たりに行ってしまった場合、相手が本気でなくとも俺は死ぬ可能性がある。
つまりは、おれ自身が相手の行動をある程度読めない事にはフェイントに対抗できないと言う事だ。
下手にチート能力を使って逆襲される可能性が出てきたと言う事でもある。

だが、同時にこのチート能力を生かさない事には俺みたいなやつが生き残るのは難しい。
ひりひりする胸をさすりながら、かなり手加減してもらった事を知る。
やはり強者度は重要だな、そう思った時、突然効果音がなった。

++++++
名前:渡辺達也(わたなべたつや) 種族:人間
職業:反乱軍リーダー  強者度:5
生命力:15/33   精神力:6/11
筋力 :21      防御力:16
器用度:22      素早さ:18
魔力 :12      抵抗力:19
耐久性:17
<<術・技>>
槍使い:熟練度:2(槍での攻撃に補正)
観察眼:熟練度:1(能力を見る事が出来る)
<<装備>>
歩兵槍:切れ味8:筋力補正4:攻撃力12+2(14)槍使い補正
皮鎧 :固さ4:防御力補正3:守備力7
 <<物品>>
財布(1242円:283D)
ハンカチ:1
シャープペンシル:1
++++++
 
理由は分からないが、強者度が上昇していた。
やはり、一人での訓練では駄目である種の実戦でなければならないらしい。
対人訓練をすれば上がるという解釈でいいのだろう。
しかしすればいいというものではなく、相手に対し有効打を当てて初めてと言う感じだが。
だから兵士達も強者度10以上になっている者もいるし、将軍格が20くらいになるのかもしれない。
だが、まだまだ先は長いな……。
その日、試しにもう5回ほどアル・サンドラにしごいてもらった所強者度がもう一つあがった。

++++++
名前:渡辺達也(わたなべたつや) 種族:人間
職業:反乱軍リーダー  強者度:6
生命力:5/36   精神力:2/12
筋力 :22      防御力:17
器用度:24      素早さ:19
魔力 :12      抵抗力:19
耐久性:18
++++++
最終能力はこんな所、流石にその後ダウンしてしまったが十分な収穫だった。
アル・サンドラが強かったのも良かったのかもしれない、経験が大きく入ったのだろう。
まあ何度もやりたい事でもないし、
明日からの事を考える余裕すらないほどに寝てしまったので翌日は大変だったが。








「本当に自分から回るのです?」
「まあな、寒いから遠出は本当は嫌なんだが、今の内に北部の村々の意思を統一しておきたい。
 そのためにも、直接出向かないとな」

現状、北部の村々の三分の一程度しか反乱に参加していない。
人数の多い村があまり参加していなかったので、全体からすれば5分の1程度の人口しかいない。
北部の村々の人口は1万前後、現在俺達は兵士を合わせて二千と、新たに落したコーラノアの町が五千。
自分達だけで説得は少し厳しかったかもしれないが、コーラノアが参加した事で交渉はしやすくなっている。
だからこそ勢いを失う前に村々の意識統一を行っておきたい。

「だけど、冬山は危険なのですよ?
 途中で通れなくなっている所があるかもしれないのです。
 たつにーさんは冬山なんかは素人じゃないのです?」
「それはそうだが……」

俺の腰辺りにへばりついているアルテ。
説得に出したくないようだ、もう元の世界なら1月になろうかという時期だから仕方ないが。
実際俺には雪山登山の経験なんてない、それにモンスターの危険もある。
アルテの言は正しい、しかし、雪解けまでには北部統一を終わらせておかなければならない。
多少の無茶は仕方ない話でもあった。

「知ってますか? 山の上のほうではおトイレの途中で凍りつく所もあるんですよ?」
「あー……」
「それだけではないのです。鼻水が出てそれが凍り付いて鼻が凍って取れる事もあるのです!」
「いやあのな……」
「まだまだあるのですよ! マ[ピーーーーー]ンなんかしようものなら、アカギレになって二度と使い物にならなく……」
「ええい! シモネタやめい!!」
「ふう、突っ込める心が残っていて良かったのです。変に真面目すぎるのがたつにーさんの悪い所ですから」
「だからってそっち系ばっかり話す事ないだろうに……」

実際兵士たちには白い目で見られているし(何故か俺だけ)アル・サンドラは真っ赤だった。
いや、違うからね! 猥談し始めたのはアルテであって俺の仕込みじゃないから!
と言いたいが、言えばやぶへびなのは100も承知なので甘んじて羞恥に耐えるしかない。
その間にどうにか再起動したアル・サンドラが。

「護衛は私と信用できる騎士を10名連れて行きます」
「サンドラ……、アルテはまだ貴方を信用した訳ではないのです」
「それは行動を持って示すしかないかと」
「なので、たつにーさん。サンドラの監視をアルテに任せてほしいのです」
「それって、着いて来るって言う事か?」
「はい! 仕事は全てメルカパに放り投げてきたのです!」
「ぶっ!?」

あー、アルテは要領いいからなその辺。
見た目は幼女ってのも強みだしな……。
まあアル・サンドラも俺達がアルテを子供として扱っていない事には気付いているようだが。
というか、アルテがアル・サンドラを信用しているのかどうかは知らないが誰かが疑い続ける必要があるのは事実。
そうでなければ、納得しないものもいるだろう。
とはいえ、アルテは10歳程度にしか見えない、それだけ小柄だと言う事は体温の保持も難しいと言う事。

「しかし、冬山は危険だろ?」
「たつにーさんよりは役に立つのですよ! 暖の取り方なんかはお任せなのです♪」

気になりはしたが、異様に頼もしい言に引っ張られ、俺はアルテを連れていく事を了承していた……。





あとがき

またまた時間が空いてしまいました、申し訳ない。
ちょっとばかりスランプ気味なのかもしれん。
とはいえ、お話はまだまだ始まったばかり、こんな所で終わるわけにもいきません。
実際、冬の間に2つから3つ程度のイベントをこなし、きちんとした勢力として動き出せるようにせねばw
小さな王国どころじゃないwww
がんばらねば(汗)


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