家族…失ったもの

刻王が用いる時を越える列車”コクライナー”。
その四つの車両の内、最も後ろに位置している客室車両”花嵐(ハナアラシ)”の内部では。

『あら、面白い客人ね』

迎えてきたのは人魚のイメージで現出された銀色の女イマジン…。

「メイド、あまりじろじろ見るんじゃない。失礼だろう」
『あ〜ら、ごめんなさい。錬紀、そんなことより私待たせるなんてひどいわ〜』

猫撫で声で人魚のイマジン、メイドは誘惑するかのような話し方をする。

「いや…だから、お前そういう人をからかう様な話し方はやめろ」
『良いじゃない別に〜♪』

錬紀はメイドに抱きつかれ、顔をうっすら赤めて抵抗する。
そこへ、

「おい、いちゃついてないで早くしろ」

冷静な廻はそう言った。

「あ、あぁ。そうだな……って誰がいちゃつくか!」
(…あーあ、もっと抱きついていたかったのに…)

などとくだらないことを思っちゃってたりするメイドであった。
まあ、とりあえず客室の奥、つまりは生活車両の領域にまでメイドがくだらないことを猫撫で声で話したりする度、錬紀がとめて、先程のようなやり取りが繰り返されたのだが…。





世界の救済者、ディロード。九つの世界を巡り、その心は何を映す?





『おや、主。その御仁は?』
「ちょっとな…///」
『メイド、いつまで主に抱きついているつもりだ…?』
『だって、良い匂いするんだもん♪』

生活車両の一つ”鳥居(トリイ)”に備え付けられていたソファーに座っている真面目そうな金色のロック鳥をイメージとする女イマジン。
しかし、彼女はメイドが錬紀に抱きついているのが気に食わないのか、疑問の言葉を刺々しく聞くが、メイド自身は離れる気は毛頭ないらしい。

「(なんだこいつら?)…お前も錬紀の…」

その言葉を聞くと、

『はい。私の名は”ルフ”。主にお仕えする者の一人です』

礼儀正しくルフは自己紹介した。

「あ、ルフ。”ゴイル”は?」

錬紀がそう聞くと、ルフは日頃から言ってるかのような口調でこう言った。

『あ奴なら、奥の車両で寝てばかりです』
「あー、やっぱり?」

どうやら、刻王に味方するイマジンは三人いるらしい。

「……今のタイミングで名乗って良いのか分からないが、一応自己紹介させてもらうぜ。
俺の名は砕谷 廻。…仮面ライダーディロードだ」
「その仮面ライダーって…うわっ!メイド何すんの!?」

質問しようとした矢先、メイドは錬紀の耳を甘く噛んだ。

『そろそろ、私も限界なの!』
『メイド、貴様!主に向かってそのような無礼で破廉恥な!』

ルフはメイドを無理やりに引きはがして女のバトルに突入した。

『いい加減に堅物はやめたらどうかしら?』
『黙れ、お前のように落ちぶれたくはない』
『なんですって?あんたみたいに時代遅れな頭してるのに言われるとカチンとくるわね。未来じゃイマジンになる最後まで処女だったくせに!』
『なっ!///…そういうお前は度を越しているんだ!この淫乱女!!』
『なんですって!?』
『なんだ!!』

この二人の喧嘩を見たら大抵の人間がこう思うだろう。
”関わり合いになりたくねぇ”…と。

「お前…大変だな。…頑張れよ」
「そういうこと言われると余計にマジで悲しいからやめてくれ…」

肩にポンっと手をおいて言葉を発したが、錬紀にとっては逆効果だった。



***

廻と錬紀は今コクライナーから降りて時の砂漠に座っている。
当分の間、二人の修羅の喧嘩が治まるまで。
だが、小一時間経っても喧嘩の雰囲気は未だに外にも伝わってくる。
余りに暇な時間。廻はそれを凌ぐ為…。

「「変身!!」」

≪KAMEN RIDE…DEROAD≫
≪HAMMER FORM≫

手合わせ、というかなり過激な暇つぶしを興じ始めた。

錬紀の変身した仮面ライダー刻王はベルトサイドにあるホルダーから黒いのカードを取り出してホルダーに仕舞うと、コクオウベルトのレバーを動かした直後バックルにアプセットすることでオーラスキンと黒色のオーラアーマーに覆われ、頭部には蟻を模した電仮面を装着したハンマーフォームへと変身する。

ハンマーフォームはベルトの脇にぶら下っているコクガッシャーを組み立てて、ハンマーモードとする。

「只今、推参!」

熱く叫んだ直後に刻王は思い切りよく砂をけってディロードに接近する。
しかし、ディロ−ドもセイバーモードでそれを受け止める。

「くっ…!!」

しかしながらも、巨大なハンマーと刻王・ハンマーフォーム自身による腕力が合わさって、ディロードも思わず後退せざるを得ない程の衝撃が加わる。

「うしっ!」

刻王は歓喜の声を出すが、

≪FINAL KAMENRIDE…A・A・A・AGITO≫

瞬時にカードの力でDシャイニングに姿を変えたディロードは一気にシャイニングお得意のキック技で攻めていく。

≪FINAL ATTACKRIDE…A・A・A・AGITO≫

Dシャイニングは構えを取って意識を集中させると、彼の前方にはアギトの紋章型エネルギーが発生、Dシャイニングはそれに向かって走り出し、勢いよくジャンプからキックの要領で紋章に飛び込む。

「ゼァァァアァァァアァァァ!!」

”シャイニングライダーキック”を受けそうになった刻王は咄嗟にバックルのスイッチを押した。

≪FULL CHARGE≫

すると、エネルギーはハンマーモードに送られて行き、刻王はそれをもってシャイニングライダーキックとで自身の必殺技”グロードブレイカー”を放った。

――ズドオオオオオオォォォォォン!!――

二つの必殺技が交わったことで、大爆発が起きた。

「ほ〜、あの攻撃を」
「受けて…」

二人は爆炎が晴れた時、余裕と言った雰囲気で立っていた。
というのはほんの最初。数秒ほどで二人の足はフラつきを見せかける。

「…変身…」

≪FINAL KAMENRIDE…DE・DE・DE・DEN-O≫

ディロードはオーラスキンとアーマーを身に纏い、Dライナーフォームとなる。
そしてライドセイバーと手中に現れたデンカメンソードによる二刀流を華麗に披露する。

「結構しんどい」

と刻王が呟くと、

『だったら、変わったら良いじゃない!』
「どはっ!!」

メイドがいきなり現れて刻王に憑依した。
憑依が完了すると、刻王は黒のコクオウカードを引き抜き、銀色のカードを取り出してアプセットを行う。

≪SPEAR FORM≫

ハンマーフォームのアーマーと電仮面がパージされ、銀色を基調とするアーマーを纏うと、魚を連想させる電仮面が装着される

『甘美な世界は好きかしら?』
「フッ…どうかな」

スピアフォームはハンマーモードのコクガッシャーを組み立て直し、槍状のスピアモードとした。

『行くわよ♪』
「一気にな!」

≪FULL CHARGE≫
≪FINAL ATTACKRIDE…DE・DE・DE・DEN-O≫

デンカメンソードからフリーエネルギーで構築されたデンレールが出現、Dライナーはそれに勢いよく乗っかると、デンライナー・ゴウカのオーラを纏いながら猛スピードで突っ込んでいく。

そしてスピアフォームもフリーエネルギーが伝達されたコクガッシャー・スピアモードを構える。
その時、いつものふざけた雰囲気は一寸も残らず消えていた。
そして、充満したエネルギーを強力な衝撃波として思い切りDライナー向けて振るう。

『タアァァアァァ!!』
「ゼアァァァアァァァ!!」

通称”電車斬り”こと”ライナースラッシュ”と”ウェーブストライク”
二つの必殺技がぶつかったことで二度目の爆発が起こった。

『いた〜い』

いつもの雰囲気に戻ったのか、スピアフォームは猫撫で声でそう言った。

『やはりここは私の出番だな!』
『ちょ、押さないでってアァァ!』

ルフの憑依で刻王の肉体から引き離されたメイド。
それと同時にルフに体の主導権を握られた刻王はカードを抜き取って金色のカードをアプセット。

≪ARROW FORM≫

スピアフォーム時同様、アーマーと仮面が離れると、アーマーは金色のそれが前面になるように装着され、締めには鳥をモチーフとする電仮面が装着された。

『参る!』

宣言直後にアローフォームはコクガッシャーをアローモードに変形させる。

「だったらこっちもだな。…変身」

≪FINAL ATTACKRIDE…FA・FA・FA・FAIZ≫

身体に黄色のフォトンストリームが現れると、ディロードはDブラスターフォームへと姿を変える。
手にはファイズブラスター・フォトンブレイカーモードがあった。

「第三ラウンド…ってやつか」

Dブラスターは武器を手に深く構え、二つの武器は激突した。

――ガギイイイィィィィィン!!――
――ギガアァァァァァァン!!――

『やりますね』
「悪くないな」

お互いの刃を交わらせ、力量を認めると、二人は技の発動準備にかかる。

≪FINAL ATTACKRIDE…FA・FA・FA・FAIZ≫
≪FULL CHARGE≫

本日三度目の必殺技発動である。

『デエエエェェェェェイ!!』
「ゼアァァァァアァァァァ!!」

エネルギーを一本の矢として射出する”ブライドシュート”と”フォトンブレイカー”の激突。
その際に起こった爆発は凄まじいものがあった。

「ハア…ハア…ハア」
「俺…もう、限界…」

ディロードはフラフラになっても立ち続けていた、だが錬紀は体力を使い果たしたのか、倒れてしまった。それにルフとメイドが駆け寄る。
ディロードは変身を解いてこう言った。

「限界なのは……同じだよ」

――バタッ!――



***

「………ッ!」
『お、気付かれたようですな』
『貴方凄いじゃない!』
「廻…もうこんな無茶したら駄目だからね」
「そうですよ。心配したんですよ」
「にしても派手にやったね」

気がついたとき、廻は客車の備え付けのソファーで横になっていた。
どうやら、イマジン達がやったことらしい。そこにいた流姫達はことの次第を聞かされていたようだ。
ついでに言っとくと、錬紀は奥の車両でまだ寝ているらしい。

「刻王のカード…」
「使い捨てじゃないんだ」
「でも、カードタイプってことは」

廻・流姫・信彦は刻王の変身システムについてそう言った。

『あの人は戦うたびに自分を失う』

悲痛な声でメイドは呟く。

「自分を失う?」

和雄は疑問に思って声を出した。

『刻王のカードは使う度に、彼の記憶を奪い取る』
「それは他人の記憶からあいつが消えるのか?」
『それに比べればまだマシなのかどうかはわからないけど…錬紀自身が時の運行やイマジン、刻王に関する記憶以外を消されていく…』

ルフの説明に四人は驚いた。

「それで、愁子さんのことまで…」
「代償……失うにしては大きすぎる」

流姫と信彦は悲しげな表情をしている。

「記憶を取り戻す方法は?」

和雄が質問すると、メイドとルフは身に纏う雰囲気をさらに重々しいものにした。

『そんなことをしたら…』
『今度は私達に関する記憶が消えます』

今にも泣きそうな声で聞かされ、和雄はしまったと言うばかりに気まずい顔になった。
そこへ、

「ん〜〜!たっぷり眠った!こんなに熟睡したのは何時頃かな?」

陽気な声で客室に入って来た錬紀。

「お!いつの間に…廻君の知り合いか?」
「…仲間だ…」

さっきの話を聞いたばかりもあって、廻は覇気のない声を出した。

『……それじゃ、私皆の食事作るわね』
「おぉ、頼むぞ♪」
『それでは私も…「お前は止してくれ」…酷いです(泣)』

なんだかルフとメイドのやり取りが精巧にできた演技のように見えた一行。
そして、思ったことはただ一つ。

使命は……彼をこの運命(さだめ)から救うこと。



次回、仮面ライダーディロード

「思い出して!彼女のことを!!」
「俺はそんな人のことは知らないって!」
『思い出した後も、錬紀は私達の傍に居てくれるだろうか』
『さぁ…派手に暴れるぜ。クライマックスにな!』

”想い出”

全てを救い、全てを砕け!

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