W・ネウロ・リリカルなのはのクロスオーバー。
初めて執筆するクロス作品ですが、以前の三作同様、頑張って書いて行きます!

Eの誕生/序【プロローグ】


『…喰い足りない。魔界の『欲望』を喰い尽くしても、我が魂の飢えと渇きは癒されなかった…』

魔界のとある場所で、赤黒い体色をした竜の如き姿の魔人が虚しげに呟いた。

地上(うえ)だ、地上(うえ)へ求めよう』

魔人は天に向けて指をさした。

『最も強固で、最も邪悪で、最も美味なる…『究極の欲望』を!』





*****

ミッドチルダ某所…地下。

『ここが地上か』

魔人は不気味な光と共に現れ、その姿を人間に変えた。

血のような赤黒い髪の毛、緑色の瞳、ブラックロングコート、革製の黒い手袋、灰色のマフラー、凛々しく整った二枚目な顔立ち、190cmもある長身。といった風貌だ。さらに髪には逆三角形型の髪飾りが複数付けられていた。

「『欲望』の匂いがするな、私の大好きな♪…しかし、薄れている?」

魔人は首をかしげる。

「急げ!もうこの研究所は破棄!資料や重要な機材を持って脱出だ!」

そこへ慌ただしく聞こえる声。

「あ、あの…実験体はどうしますか?」
「あんなものを運ぶ余裕はない!…残念だが、まとめて破棄する」

白衣を着た研究者らしき人間らは急いで緊急脱出口に向かって言った。
どうやら研究所内で大火事が起こったようだ。

「…『欲望』は期待できそうにないが、面白そうなものは期待できそうだ」

魔人はそう言って燃え盛る炎の中を悠々を歩いて行った。
暫く歩くと、研究所の心臓部と言えるであろう広い部屋にたどり着いた。

部屋の中心には巨大な水晶があり、
その中には黒い服に身を包み、綺麗な長い銀髪をした美しい女性が幽閉されていた。
その手にはX字型の装飾が施された一冊の本があった。

「これは…?」

魔人は不審に思い、水晶の下にある機械のモニターに近づき、手袋を外した。

魔界(まかい)777ッ能力(どうぐ)異次元の侵略者(イビルスクリプト)

彼の手は異形となり、モニターに直接手を突っ込んでハッキングを行う。
幾つかの防御火壁(ファイヤーウォール)もあったが、魔界能力の力の前には、それは無意味の他ならなかった。

「…ガイアメモリ…、トリプルドライブギア…、次元書庫…、記憶の魔導書…、アルハザード…」

数々の情報を取り込むと、魔人は手をモニターから出して、研究所の最重要保管庫の前に赴き、強靭な力で頑丈な隔壁をぶち破った。
そして、内部に安置されていたケース持ちだした。

「さて、この女も助けておくか。”変身”にはこいつが必要みたいだしな」

魔人はそういうと、水晶に触れると同時に砕いた。
それと同時に女は眼を開けて赤い瞳で周りを見た。

「こ、ここは?それに私は…?それに、貴女は?」

女は全てにおいて困惑している。

「…私の名は無限ゼロ。女、貴様の名は?」
「私の名は…リインフォース」

女はリインフォースと名乗った

だが、思い返してほしい。
今この研究所は火の海になっていることを。

ゼロは最重要保管庫から持ちだしたケースを開く。

魔人(バケモノ)と相乗りする覚悟…あるか?」
「へ…?」

ケースの中には全部で七本のガイアメモリとスロットが三つあるメモリドライバーがあった。
だが、こうしている間にも火の勢いは増していくばかり。

リインフォースは白銀色のメモリを手に取ると、ゼロはメモリドライバーにEVIL(イーヴィル)と記された銅色のメモリを中央のメインスロットにセットした状態で装着、それに連動してリインフォースにもメモリドライバーが現れた。さらにゼロはケースから紫色のメモリを取り出した。

「行くぞ…!」
「は、はい…」

二人は炎の中で同時に、レフトスロットとライトスロットにメモリをセットした。
白銀と紫の光が二人を包み、それが消えた時…二人は一人となっていた。

身体の正中にある銅色のラインを境に”白銀の右半身と紫色の左半身”という配色。
緑色の複眼にEの字を連想させる三本の触覚。首に巻いて棚引かせた脚の付け根にまで届く銅色のマフラー。

二人が変身して誕生した仮面の戦士の周囲にはドス黒い瘴気が暴発するかの如く溢れ出して研究所は一気に大爆発を起こした。仮面の戦士はその炎渦巻く場所で、銅色のマフラーを炎によって起こる風で靡(なび)かせていた。





*****

一年後。

「…そうか。わかった」

ミッドチルダにそびえ建つ高級マンションの最上階の部屋で、ゼロは電話を片手に持っていた。

「時空管理局からの依頼ですか?」
「あぁ。次元犯罪者…ドーパント関連でな。奴の居場所の特定の他、可能なら確保せよ」

電話を終えたゼロのところにX字型の装飾の施された本…記憶の魔導書を持ったリインフォースが歩み寄って来た。

「わかりました。なら早速、次元書庫(じげんしょこ)で調べてみます」

リインフォースは眼を瞑って意識を集中させる。
彼女の精神世界に刻み込まれたこの世全ての記憶が収められた超巨大データベース”次元書庫”。

真っ白な空間に延々と在り続ける無数の本棚。

『検索開始。キーワードをどうぞ』
「ファーストキーワードは、ウルフメモリ」

ゼロがリインフォースにキーワードを告げると、該当しない本棚(じょうほう))は次々と消えて行った。

「セカンドキーワードは、次元犯罪者」

さらにゼロが次元犯罪者の名前を最終(ファイナル)キーワードにすると、次元書庫にあった無数の情報は一冊の本として絞り込まれた。

そして、リインフォースが次元犯罪者の潜伏場所を教えた。ゼロは地下駐車場に赴き、そこに停めてあるEの字が刻印されたダークブロンズのバイク”イビルホイーラー”に乗って発進した。




*****

「く、クソッ!何故ここがわかった!?」
「貴様に教える義務はない」

追い詰められた次元犯罪者は懐からガイアメモリを取り出し、

【WOLF】

起動したウルフメモリを腕にある生体コネクタに差し込むと、彼の身体は狼の記憶の力を宿したウルフ・ドーパントとなる。

ゼロはそれを見ると、メインスロットに”イーヴィルメモリ”がセットされた”イーヴィルドライバー”を装着した。それに連動して自室で待機していたリインフォースにも同型のドライバーが具現化・装着される。

【LEADER】

ゼロは懐から出した紫のメモリを起動させる。
それをドライバーを通して感じ取ったリインフォースも白銀のメモリを起動させる。

【MAGICAL】

「「変身…!」」

リインフォースが”マジカルメモリ”をドライバーにセットすると、メモリは彼女の(ソウル)ごとゼロの元に転送され、残された肉体は抜け殻状態と化した。

「来たか」

ゼロは転送されたマジカルメモリをライトスロットにセットすると、今度は”リーダーメモリ”をレフトスロットにセット。そして、開いた二つのスロットを閉じ、ドライバーの形をEの字型にした。

【MAGICAL/LEADER】

三つの記憶が声を上げると軽快な音楽が流れていき、突如発生したドス黒い瘴気がゼロの身体を三つの記憶をその身に刻みこんだ魔人戦士…仮面ライダーイーヴィルに変身させる。

「『さあ、貴様の欲望を差し出せ…!』」

決め台詞を口にすると、イーヴィルはウルフに向って颯爽と駆け寄り、格闘戦に持ち込んだ。

ウルフもその性質上近接戦闘を得意とするが、メモリの数も質もウルフのそれを上回るイーヴィルの方が圧倒的優勢だった。

拳と蹴りの嵐を喰らわせたイーヴィル。しかし、ウルフは俊敏な動きで抗う。

「フ、ならばこれだ」

【SONIC】

マジカルメモリを外すと、代わりに金色のソニックメモリを起動してセットする。

【SONIC/LEADER】

イーヴィルの右半身(アビリティサイド)が白銀から金色に変わるとイーヴィルは通常の1000倍の超高速(スピード)で移動する。

『な、なに!?』

ウルフはイーヴィルの動きについて行くことなどできず、高速の連続パンチやキックで次々と攻められていき、限界のところにまで追い込まれた。

『ゼロ、メモリブレイクです』
「無論だ」

右複眼が点滅してリインフォースの意思と会話すると、

【MAGICAL】

イーヴィルはソニックメモリを引きぬいて再びマジカルメモリをセット。

【MAGICAL/LEADER】

マジカルリーダーにハーフチェンジすると、今度はイーヴィルメモリとリーダーメモリをベルト両サイドに設けられたマキシマムスロットにセットする。

【EVIL/LEADER・MAXIMUM DRIVE】

イーヴィルの身体を宙に浮かせる程に吹き荒れる瘴気の嵐。
イーヴィルはマキシマムスロットのスイッチを押すと、キックの体勢になってウルフに突っ込んでいく。

「『リーダーブレイクラッシャー!!』」

技名を叫んだ直後、身体正中のラインであるセントラルパーテーションを境に左半身(ウェポンサイド)右半身(アビリティサイド)とで分断し、ウルフに二連キックを喰らわせた。

必殺技(メモリブレイク)が決まったことでウルフはドーパント形態を維持できなくなり、本来の姿に戻ってしまった。そのすぐ傍には砕け散ったウルフメモリがあった。

イーヴィルは変身を解除してゼロの姿に戻ると、戦意喪失状態と化した獲物の目の前に立った。
そして獲物の両肩をがっちり掴み、魔人としての本性を現して口を大きく開けた。

『いただきます…!』

ゼロは獲物の頭に噛み付き、『欲望』を喰らった。
そして食糧を喰い終えると、人間態となりこう言った。

「ごちそうさま」





*****

管理局員達が到着し、ウルフメモリを使った次元犯罪者は逮捕され、ゼロは報酬金を受け取って帰った。

「…それにしても喰い足りない。地上の『欲望』はこんなものか…?」

少々物足りなさ気な表情で帰路につくゼロ。
そこへ…。

「無限君!」

いきなりモニターが現れた。

「…私との連絡は電話だけといったはずだがな、クロノ提督?」
「す、すまない。だが、どうあっても君に頼みたいことがあってな」
「依頼なら受けるが」

時空管理局・次元航行部隊のクラウディア艦長を務めるクロノ・ハラオウン提督。
この様子からして、かなり重要な依頼のようだ。

「…”機動六課”への戦力的協力?」
「あぁ。詳しいことはいずれ話すが、数日中にそこの隊舎に向かってくれないか?」
「…いいだろう (話を聞く限り、上質の『欲望』が喰えるかもしれないからな)」

依頼を受理すると、ゼロは機動六課に関するデータを貰い、再び帰路についた。





*****

数日後、古代遺失物管理部 機動六課。

クロノからゼロ=イーヴィルがやって来ると言う知らせを受けていた、八神はやて・高町なのは・フェイト・T・ハラオウンの機動六課隊長陣は、その出迎え等の打ち合わせをしていた。
しかし………。

「熱烈大歓迎だな」
「「「!!!??」」」

突然聞こえてきた声。

「だ、誰かいるんですか?」

なのはが少しばかり震えた声でそう言いながら、三人は部隊長室を改めて見渡した。
そして…。

「「「………ッ!!?」」」

三人が見たのは、天井を床のようにして立つゼロの姿だった。

「初めまして、機動六課諸君…!」







時空管理局が知り得る無限ゼロの情報。

無限ゼロ。
過去の経歴はおろか、その出生や戸籍まで不明という謎の男。

一年前、次元犯罪者達に出回るようになった”ガイアメモリ”により人間が変身した存在・”ドーパント”によって管理局の精鋭部隊が半ば壊滅させられた際、三本のガイアメモリとメモリドライバーを用いて変身する仮面の戦士”仮面ライダーイーヴィル”に変身。その後僅か三分でドーパントを倒し、ガイアメモリを破壊した。

当初は管理局に協力することを拒み続けた彼を味方につけるため、管理局は高額の報酬金を代価にガイアメモリに関する事件の解決を”依頼”するという形式をとった。

依頼を受けた際、伝えられた僅かな手がかりから短期間で事件解決に対して重要な情報を突き止めるなどの戦闘能力だけでなく調査能力の優秀さ故、ガイアメモリ関連以外の難事件解決のために管理局の本局・地上本部問わずに彼へ依頼をする部署は少なくない。

局員の中には無限ゼロが得体のしれない能力を使用していたと言う者もおり、それに関しては彼のレアスキルの類と考えられている。

無限ゼロの存在は世間一般には特秘事項で、彼の解決した事件の功績などは基本的に世間では管理局の物とされている。しかし、彼の変身した仮面ライダーイーヴィルの姿が一般市民に何度か目撃されたことがあり、世間でイーヴィルは”ミッドチルダを守る謎の戦士”として都市伝説と化している。

尚、無限ゼロの素性を詮索することは彼と管理局が交わした契約内容に大きく違反することとなる。






三人の隊長陣は僅か一年で管理局内で、もはや其の名を知らぬ者のいない存在となった男(ゼロ)の想像すらつかない登場の仕方に唖然とさせられる。
そこへ………。

「ゼロ。重要な依頼なのですから、もう少し行動を慎んでください」
「フッ、助手の分際で何を言う?リインフォース」
「…え?」

ドアの外から聞こえてきた声。それはもう聞くことなどできない声の筈だった。
さらにゼロが口にした声の主の名前。三人は一瞬自分たちの耳を疑った。
そして、ドアが開かれた。

「「「!!!??」」」

三人は再度驚愕した。

「リイン、フォース?」
「…お久しぶりです、はやて。そして、かつての小さな勇者たちよ」

フェイトとなのは…特にはやては信じられないと言った顔をしていた。
そんな三人の表情を見て、ゼロは笑っていた。



魔人戦士 仮面ライダーイーヴィル………始まります。


ガイアメモリ解説

イーヴィルメモリ
「魔人の記憶」が刻み込まれた銅色のガイアメモリ。
イーヴィルへの変身に必要不可欠なスターティングメモリ。魔界の大気である瘴気が無尽蔵に内包されているため、このメモリの使用は魔人以外では不可能と言える。
マキシマムドライブの起動キーであり、イーヴィルの身体能力を決定するメモリ。

リーダーメモリ
「統率者の記憶」が刻み込まれた紫色のガイアメモリ。
イーヴィルのウェポンサイドをロードサイドに変化させ、肉体を強化することで格闘戦に特化したバトルスタイルをとらせる。対となるアビリティメモリと強制的にシンクロする機能があるため、ウェポンメモリ中で最も汎用性・調和性が高い。

マジカルメモリ
「魔法の記憶」刻み込まれた白銀のガイアメモリ。
イーヴィルのアビリティサイドをマジカルサイドに変化させる。
無尽蔵の魔力が内包されており、それを用いてイーヴィルの攻撃や武器の破壊力を上昇させる効果を発揮する。

ソニックメモリ
「音速の記憶」が刻み込まれた金色のガイアメモリ。
イーヴィルのアビリティサイドをソニックサイドに変化させ、超高速の力を与える。


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