VとSの計画/後【こうへん】


機動六課に押し寄せてきた無量大数のガジェットとアンノウン。
それらを撃退する為、イーヴィルは奮闘するも、カバーしきれず幾機ものガジェットが六課に攻撃や侵入を行ったことで、隊舎は酷い有様になっている。

「全く、これでは埒が明かない」
『確かに、この量は裁き切れません』

超常的な身体能力でガジェット共を確実に潰しているが、余りの数に壊しても壊しても減っていく気がしない。

「…しょうがない。あの組み合わせで行くとしよう」

【BLASTER】
【MAGICAL/BLASTER】

イーヴィルは九フォーム中、最も攻撃力と危険性の高いマジカルブラスターにハーフチェンジすると、強烈極まる魔力弾をガジェット達にお見舞いする。

一発一発に、魔力ランクで言うならSランクを悠に越える魔力が込められているため、ガジェット達が破壊されるスピードは急激に上がっていく。

【EVIL/BLASTER・MAXIMUM DRIVE】

「『ブラスターチャージブレイカー!!』」

マキシマムドライブの発動で銃口から発射された大砲撃は、なのはのスターライトブレイカーにも匹敵するほどの威力を秘めていた。

それによってガジェットの大半が消滅する。

しかし…。

『お久しぶり、DEATH(デス)!!』

ハイテンションな声が聞こえると、イーヴィルは即座に反応して声の主のいる方向にブラスターキャノンの銃口を向けて3〜5発あたりを撃ちこんだ。

「あの声は…もしや?」

ゼロの意思がなにかを記憶の戸棚から引き出そうとしている。

『やっぱり、覚えててくれたんですね。ゼロ様』

マジカルバーストの魔力弾をかわしたのか、あるいは防いだのかはわからないが、そこにはバニティー・ドーパントが無傷で立っていた。

『ゼロ、このドーパントに覚えが?』

リインフォースは当然の如く疑問を口にする。

「…ヘルという名前を耳にしてから、頭に引っ掛かっていたが…やはりこいつのことだったようだ。………千年ぶりだな、ヘル」





*****

「クソッ!AMF濃度が濃すぎて魔力結合すらできんとは…!」

ネイル=ディアンの魔力ランクは約S+にあたる。
しかし、どんな大魔力であろうとも遮断しきるような高濃度のAMFの前に、ネイルは魔法で外部に行くことも、通信をとることすら困難極まる状況だった。

「ディアン落ち着け。騒いだところでどうにもならん。ただでさえ、今さっきドーパントの出現と戦闘で皆の心は不安に満ちている。戦ったお前がそんなことでは…」
「わかっている。…しかし、この部屋を出れば奴(ヘル)に直接繋がるというのに…!」

そして、ネイルは一つの決断をした。

「こうなれば、扉を力技でこじ開ける」
「ば、バカを言え!いくら仮面ライダーと言えども、あれをこじ開けるなど無茶を体現するような行為だ!」

シグナムの警告に、ネイルはこう言い切る。

「片方だけなら開かないかもしれない。だったら表と裏の両方から攻撃をブチ込むだけだ」

ネイルがそう発言していた頃、地上本部の内部を無人で爆走するバイク。
リベンジャーの姿があった。リベンジャーは主人のいる部屋の前に到達すると、一旦思いっきりバック走行して車体から角と思えるくらいの大きさの刃を突出させる。
ネイルも扉の前でネイルクローの構えを取っていた。

そして…。

――ズガアァーーーーーン!!!!――

「「「「「!!?」」」」」

トンデモない程に大きな音に部屋の中にいた者全ては扉に視線を集中させる。

その音はリベンジャーとネイルが扉の外側と内側で全力を込めた攻撃をしたことによって発生したものだった。

「良し。これであとは楽だ…!」

ネイルは扉の下部分を持つと、トン単位にも及ぶライダーの力で、無理矢理に扉をこじ開けた。
だが、流石に体力を消耗するのか息は絶え絶えである。

ネイルは外に出ると、「我は外の加勢に行って来る。後を頼むぞ」
といって、会議室の外に出てリベンジャーに乗って行くと、支えを失った扉は勢いよく閉じられた。

(案外、元気な子やな…)

はやてはネイルの過激な脱出の仕方にそう考えていた。





*****

「千年前、一人の人間が魔界と地上に繋がる二つの門の前に現れ、魔界への扉を選んで魔界に堕ちて行った。しかし、その人間は驚くことに魔界の凄まじき環境に順応した上、魔界には望んで来たとまで言っていた」

『そう。それがボク』
『しかし、千年も前の人間がどうして?』

ゼロの説明にリインフォースは困惑する一方。

「ヘルには魔人にも無い奇妙な能力があった。それは、他人の身体を乗っ取るというものだった。奴が魔界に順応できたのはとある無名の下級魔人の身体を奪い取ったからだ」
『まさか、その…他人の身体に乗り移ることで、千年の時を…!』

ヘルの恐るべき能力を知ったリインフォースの声が震えて聞こえた。

『でもね〜、魔人ってのは人間界に来ると急激に衰えちゃって使い物にならなかったよ』

この台詞からすると、最早その魔人の身体は捨てているようだ。

「貴様、なにが目的だ?」
『決まってるじゃないですか。あんたを越える為ですよ。あんたは魔界有数の上級魔人。あの脳噛ネウロとあんたの強さは魔界の誰しもが認めていた。ボクはあんたに憧れていたんだ。そして、同時に殺したいとも思った』

「…昔から執念深い奴だとは思っていたが、まさかこれほどのレベルとはな」
『そう言わんでい下さい、あんたを越える為にボクがこの千年間、どんだけ力を求めたと思っているんですか?』

ゼロの呆れ果てた声にも、バニティーはいつもの態度を崩さない。

『まさかとは思うが、夜天の書を改竄したのも…』
『当然、力が欲しかったからだよ。でも、どんだけ弄ってもあの程度とはね〜。時間の無駄だった』
『貴様ァ…!』

リインフォースはバニティーに対して深い憎悪を抱く。

『まあまあ、落ち付いて。今日ボクがここに来たのはあくまで挨拶。後日にはちゃんと戦ってあげるから「そんな悠長なことを真に受ける趣味は無い」

バニティーの言葉をゼロが遮る。

『そっちの都合なんて知りません。ボク利己主義者(エゴイスト)ですから♪』

そういうと、バニティーの身体は霧のように分散して消えてしまった。

それと擦れ違いに、再度大量のガジェットが出現する。

「なら、意地でも貴様が出てこざるをえない様にしてやろう」

イーヴィルは変身を解くと、全身に魔力を纏った。
それによって周囲には衝撃波が走り、ゼロ自身は魔人態となって宙を舞うと、地面からあるものが召喚される。

『光栄に思うがいい!魔界でも数人しか使えん奥義を、機械如きが喰らえるのだ!」

ゼロの後方には巨大な古代魚のような大砲と、魚のような幾つかの副砲が現れる。

『魔帝7ッ兵器…深海の蒸発(イビルアクア)



――ズドオオオォーーーーーーーン!!!!――



イビルアクアの攻撃によってガジェットの数は一気に減った。

「…魔界兵器も、地上ではこの程度か…。だが、ここを護り通せたことに『甘いですね』なにっ!?」

――ザシュー!!――

一旦は姿を消して退散したと思えていたバニティーは、魔帝兵器の発動で消耗していたゼロに奇襲をかけた。

「き、貴様ァ…!」
『悪く思わないで下さいね。ボクとしてもこの殺りかたは不本意ですけど、ジェイルに協力する身としては、あんたにはちょっと御退場して頂かないと』

バニティーはそう言ってメモリをガイアドライバーから取り出してヘルの姿に戻る。

「見つけたぞヘルーーー!!」
「おや?なにやら獣の咆哮が?」

リベンジャーに乗って爆走してくるネイル。
その仮面の下には仇打ちを果たさんとするディアンの表現しきれない顔があった。

【NAIL・MAXIMUM DRIVE】

「ネイルダウンフォース!!復讐の一撃を、その身に刻めえぇぇぇ!!」

リベンジャーから飛び降りたネイルは必殺技を繰り出すも、

【VANITY】

ヘルは即座にバニティーメモリを起動させてドーパントになると、エネルギー弾をネイルにぶつけて必殺技(メモリブレイク)を強制中断させる。

「グッ!!」
『あ〜あ、折角の良い気分が台無し』

少女のような口調で起こるバニティー。

「待て、ヘル。貴様は今ここで葬る」
『だから、慌てないで下さいって。第一、あんたの魔力の残量は悲惨なことになっているですから…』

バニティーの言う通り、ゼロの顔には魔力が枯渇しかけているのを警告を表すかの如く亀裂のようなものが入り始めている。

『今すぐ眠ってください』

――バギッ!!グボッ!!――

「「ッッ!!!!」」

バニティーはネイルに攻撃して変身解除・気絶させると、次に弱体化したゼロにパンチとキックを決めた。

『それではゼロ様。レリックと聖王の器は確かに頂戴いたしました。近い内にまたお会いしましょう、双方の死力を尽くした闘いに相応しい舞台(ステージ)も整えて』

バニティーがそう言って姿を消すと、ゼロの瞳にはガリューに連れ去られていくヴィヴィオがゼロを心配して泣き叫ぶ光景が映り、ゼロの意識と視界はゆっくりと閉じられた。





*****

其のころ、会議室ではスカリエッティがモニター通信で局員達にこう言っていた。

「ミッドチルダ地上の管理局員諸君、気に入ってくれたかい?ささやかながらも私からのプレゼントだ。治安維持だのロストロギア規制だのといった名目の下に圧迫され、正しい技術の進化を促進したにも関わらず、罪に問われた稀代の技術者たち。今日のプレゼントはその恨みの一撃とでも思ってくれたまえ。しかしまた私も、人間を、命を愛する者だ。無駄な血は流さぬよう努力はしたよ。可能な限り無血に人道的に。忌むべき敵を一方的に制圧できる技術、それは十分に証明できたと思う。今日はここまでにしておくとしよう…この素晴らしき技術と力が必要ならば、いつでも私宛に依頼をくれたまえ!格別の条件でお譲りする…!」

そしてスカリエッティは高笑いを始める。

「予言は、覆らなかった…」

カリムは襲撃された機動六課の状況を見て、的中していく預言のことを思い返す。

「…まだや。………機動六課は、わたし達は、まだ終わってない」

はやての強気意思宿る瞳。

この日、スカリエッティは勝利し、管理局は敗北。
保管してあったレリック、さらにはヴィヴィオとギンガを連れ攫われた上に、隊員達が重軽傷を負うという結果と化した。



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次回、仮面ライダーイーヴィル

垣間見えたD/再【ふたたび】

「この『欲望』はもう、私の手中にある…」


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