Eの想い・Nとの友情/舟【ゆりかご】


聖王のゆりかご付近の戦闘宙域。

飛行魔法とイビルホイーラー・フライトモードで空を舞うイーヴィル・なのは・ヴィータが、他の空戦魔導師達が発見した突入口からゆりかご内部に侵入する頃、

「フハハハハハッハハハハハハハ!!」

脳噛ネウロがレジアスに要求して貰った、一般的武装局員の使う一般的なストレージデバイス片手に飛行魔法を行いながらゆりかごに急接近していた。
ついでに行っとくと、ドゥーエの身柄はゼストやレジアスに預けさせた上で。

しかも、無数のガジェットの攻撃をもいとも容易く弾き飛ばし、さらには手を巨大な長剣に変化させて破壊するという仕返し付きで…。

魔界能力を使っているわけでもないのでその姿は、はやて達局員に丸見えだった。

「凄…ってか、誰?」

はやてのネウロを見た第一声だった。
そして、ネウロの正体を知ったとき、はやてが「マジで!」と言ったのは別のお話。





*****

【GIGANT FORM】

「行くぞアイゼン!」
『Yes sir!』

ゆりかご内部では、ヴィータが相棒のグラーフアイゼンを振り回しガジェットを破壊していた。
ヴィータは一つの鉄球を出現させて宙に投げた。

【KOMET FLIEGEN】

「うおおおおおおお!!」

ヴィータは鉄球を目一杯ふっ飛ばして、ガジェット達に命中させる。

「ヴィータちゃん、あんまり飛ばし過ぎると…」
「うるせーよ。センターや後衛の魔力温存も、前衛の仕事の内なんだよ」

荒息をつきながらヴィータは言い返す。

すると、モニター通信で管理局員がゆりかごの玉座の間と駆動炉の位置を特定し、表示する。

「これでは…丸っきし逆方向…」
『突入隊のメドのほうはどうなっているんですか?』

管理局員によると、突入隊が来るまでにはあと四十分はかかるとのこと。

「仕方ねぇ。あたしが駆動炉を破壊するから、なのはとイーヴィルは玉座の間に、別行動をとる」
「ヴィータちゃん!?」

ヴィータは待っている時間のことを考え、別行動をとることを提案する。

「玉座の間にはヴィヴィオがいる。片っぽ止めるだけで止まるかもしれねえし、片っぽ止めただけじゃ止まらねえかもしれないんだ。こうしてる間にも、外は危なくなってる」
『ですがヴィータは、魔力を消耗して…』
「…だからあたしが駆動炉に回る。お前達はさっさとヴィヴィオを助けて来い。娘を助けるのは親としての務めだろ?」

リインフォースの案ずる言葉にヴィータはそう言った。

「それにあたしとアイゼンの一番の得意分野、知ってんだろ?破壊と粉砕。…鉄槌の騎士ヴィータと、鉄の伯爵・グラーフアイゼン。砕けねえものなんぞ、この世にねぇ」

そう豪語すると、ヴィータは駆動炉の方向に歩きだす。

「一瞬でぶっ壊して、お前等の援護に向かってやる。さっさと上昇を止めて、表のはやてに合流だ」
「…そうか、ならばこれを持って行け」

イーヴィルは一つのカートリッジを投げ渡した。

「ありがとよ、受け取っておく」

礼を言うと、ヴィータは今度こそ二人と別方向に向かう。





*****

「でやああああああああ!!」

駆動炉へと繋がるルートに無数に存在するガジェットを破壊するヴィータ。

「…ここまで来りゃぁ、もうちょっとだ」

息を整えて、ヴィータはカートリッジの残量を確認する。

「カートリッジもまだある。大丈夫、楽勝だ」

其の時、常人の耳では聞こえないくらいの機械の駆動音が聞こえてきた次の瞬間、

――ガシッ!!――

「!?」

ヴィータは咄嗟に後ろを振り返ると、そこには…八年前になのはを瀕死の重傷に追いやったガジェット・ドローンIV型と、ガジェットの刃をがっしりと掴むネウロの姿があった。

「ほう。中々の技術力だ。しかし、我が輩からすれば児戯に等しい」

ネウロはそう言うと、右ストレートを決めてガジェットを破壊する。
其の際に発生した爆風でヴィータは吹っ飛ばされてしまう。

「お、おい!大丈夫か!?」

ヴィータは爆心地にいたネウロに呼びかける。
すると爆煙の中から傷一つ負っていないネウロが出てきた。

「大丈夫?誰に向かってものを言っている?」

ネウロはそう言うと、ヴィータにアームズロックをかけた。

「イデデデデ!!ってかあたしはお前が誰かなんて知らないから!!」

必死になるヴィータ。
ネウロはそれを聞くとアームズロックを解いた。

「そういえばそうだったな。…我が輩の名は脳噛ネウロ。親友ゼロの頼みで、貴様らに協力しにきた」

ネウロが自己紹介していると、さっきと同じIV型が大挙してやって来る。

「…ネウロとか言ったな?話はあとでゆっくり聞かせてもらうけど、今はあたし達の味方だってことだけは確かだよな?」
「無論だ」

ネウロの偉そうな態度にヴィータは少し腹を立てるも、その時は一応抑えた。

「だったら行くぞ。こいつらぶっ潰して、駆動炉もぶっ潰す。そんでもってゼロやリインフォース、なのはのところに行くんだ!」



「ゆりかご」軌道ポイント。
到達まで
あと2時間16分





*****

玉座の間。

そこには玉座に座らされたヴィヴィオ。近くにいるのはディエチとクアットロ。

「クアットロ。正直な感想言って良い?」
「ご自由に」

ディエチは浮かない表情をしている。

「この作戦、あまり気が進まない」
「あ〜ら、どうして?」
「こんな小さな子供を使って、こんな大きな船を動かして、そこまでしないといけないことなのかな?技術者の復讐とか、そんなのって…」

するとクアットロは、

「あ〜、あれ?あんなのドクターの口先三舌。ただの出鱈目よ」

と、さらりと語る。

「そうなの?」
「ドクターの目標は初めから一つだけ。生命操作技術の完全なる完成。そして、それの出来る空間創り。このゆりかごはそのための船であり、実現するための力。ま、今回の件で軽く何千人か死ぬでしょうけど、百年と経たずに帳尻が合うわよ。ドクターの研究は〜、人々を救える力だもの♪」

猫撫で声で言っているが、話の内容は正直トンデモないものだ。
ディエチはさらに浮かない顔をする。

「どうしたのディエチちゃん?お姉さまやドクターの言うこと、信じられなくなっちゃった?」
「そうじゃないよ。そうじゃないけど…ただ、こんなに弱くて小っちゃい命が…それでも生きて動いてるの見ちゃうと…この子たちは別に、関係無いんじゃないかって」

「全てを観る前なら平然とトリガーを引けたのに、ねぇ?」
「…ふー、ごめん。気の迷いだ。忘れて」
「そう?」

ディエチはイノーメスカノンを持ち上げる。

「命令された任務はちゃんとやる。そうしないと、地上のお姉や妹たちが面倒なことになるしね」

そういってディエチは玉座の間から離れた。

(…おバカなディエチちゃん。貴女もチンクやセインみたいなつまんない子なのね)

クアットロは心の内でディエチを見下すと、コンソールを叩いて、六課メンバーの様子をモニターに映し出す。

「なんにも出来ない無力な命なんて、その辺の虫と同じじゃない。幾ら殺しても勝手に生まれてくる。それを弄んだり蹂躙したり、籠に閉じ込めてもがいているのを眺めるのって…こ〜んなに楽しいのに♪…ねぇ?」





*****

玉座の間への通路。

なのはとイーヴィルは鬱陶しいまでに湧いて出てくるガジェット共に対して、

「レイジングハート!」
『All right!』

【STRIKE FLAME】

レイジングハートの先端にはストライクフレームが突出し、噴射口からは天使の翼の如き、魔力が発生する。

【SONIC/LEADER】

イーヴィルもソニックリーダーにハーフチェンジ。

「ACSドライバー!」
『突撃!』

【EVIL/LEADER・MAXIMUM DRIVE】

「『リーダーフィストラッシュ!!』」

イーヴィルはなのはと一緒にガジェット群に突っ込んでいき、イビルホイーラー・フライトモードからジャンプして左右別々に分断すると、それぞれが音速の拳を放って行き、進路上のガジェットを次々に破壊していく。

手当たり次第にガジェットを破壊すると、イーヴィルは分断状態から元の一体に戻って再びフライトモードに飛び乗った。

一方、玉座の間では…。

「ダメだクアットロ!手がつけられない!」
「ま、予想の範疇よ。あの人たちの終末はここ…玉座の間だから」

ディエチからの通信に、クアットロは涼しい表情でそう言った。

「どこも思ったよりは粘ってるけど…。ま、時間の問題ね。私達はゆっくり、見てればいいもん」



「ゆりかご」軌道ポイント
到達まで
あと1時間44分





*****

玉座の間への進路では、
なのはが飛行魔法で突撃しながら、わきにいるガジェットに魔力スフィアから放つ攻撃で潰していき、イーヴィルもソニックリーダーからトリックブラスターにハーフチェンジしている。

『玉座の間まで、もうすぐです』

レイジングハートの報告。

イーヴィルとなのはは頷くと、さらに速度を上げて突き進む。
その進路方向に、ディエチがイノーメスカノンを構えてテンプレートを展開している。

「…あの小さな女の子の、お父さんとお母さんなんだっけ…」

ディエチはイーヴィルを見て呟く。

「あんたらに恨みは無いけど…」

イノーメスカノンにエネルギーがチャージされる。

「5…4…3…2…1」

カウントゼロの寸前にイーヴィルとなのはが、ディエチの真正面に来た。

【EVIL/BLASTER・MAXIMUM DRIVE】

「『ブラスター…!』」
「エクセリオン!!」
「…0」
「バスタァーーー!!」
「『ガンショット!!』」

イノーメスカノンの砲撃とエクセリオンバスター&バーストガンショットが激突する。
威力そのものはイーヴィル達のほうが勝っているのだが、ディエチも必死になっての最大パワーの砲撃を行ってくるので、撃ち落とすのに時間がかかると踏んだなのはがとった方法は…。

「ブラスターシステム。リミット1・リリース!!」

【BLASTER SET】

「ブラスター、シューーーーート!!」

なのはの砲撃はさらに勢い増し、ディエチの砲撃を容易く呑み込んで本体を吹っ飛ばす。

『…強くなりましたね、なのは』

リインフォースはブラスターシステムの強大さに感服する。

「…峰打ちで…この威力…」

ディエチがそう言っていると、なのはが彼女にバインドを掛ける。

(この女、本当に人間か…?)

「じっとしてなさい。突入隊が貴女を確保して、安全な場所まで護送してくれる」

【SEALING】

レイジングハートがイノーメスカノンに封印処理を施す。

「私達が、この船を止めてみせる!」

なのはがそう言い切るとイーヴィル共々先に進んだ。

しかし、ブラスターシステムの使用のせいで身体には負担がかかっていた。

『Master』
『すまない、私達のために…』

レイジングハートは心配。
リインフォースは謝罪の言葉を口にする。

「平気だよ。ブラスター1はこのまま維持。皆、急ごう!」
「フッ、まさか人間がここまでの底力を見せるとは…(ネウロ、貴様の言っていたことは間違いじゃなかったようだな…)」

ゼロは心の中で、ネウロが見てきた人間と言う存在の秘めた力を再認識する。
すると、なのはが手中にある三つの小さな光珠を放ち、イーヴィルも一旦魔人態になると…。

『魔界777ッ能力…魔界の凝視虫(イビルフライデー)

口から奇妙な粘液に包まれた大量の魔界虫を召喚して、ゆりかご内に放す。





*****

玉座の間。
そこではクアットロがなのはのブラスターシステムの性能を見て笑っていた。

「な〜んだ。ブラスターシステムなんて大仰な名前が付いてるから、どんなハイテクかと思ったら…バカらしい。おまけにイーヴィルはヘルさんが消耗させたお蔭で大したことなくなってるし…」

と、なのはとイーヴィルのことをせせら笑う。

「ねえ、陛下?貴女のお友達は相当おバカさんな上、ご両親は役立たずですね〜」

次の瞬間、なのはとイーヴィルが玉座の間のドアを砲撃と銃撃でぶち破ってきた。

「いらっしゃ〜い♪お待ちしてました〜。こんなところまで無駄足御苦労さま。さて、各地で貴方達のお仲間はた〜いへんなことになってますよ〜?」

クアットロは余裕の表情でモニターで各地のようすを映しだす。

「…大規模騒乱罪の現行犯で、貴女を逮捕します。すぐに騒乱の停止と、武装の解除を」
「無駄だ。ここまでのことをするイカれた連中が、そんな言葉を真に受けるとは思えん。…実力でねじ伏せた後、ヴィヴィオを返してもらうとしようか」

「あらら〜、随分と嫌われちゃってますね?でも、魔力が枯渇しかけの病み上がりがなにを言おうと、怖くありません♪」

クアットロがそう言ってヴィヴィオの顔に触れようとすると、イーヴィルは即座に銃撃を叩きこむも、クアットロの姿は朧気に消えてしまう。

「で〜も〜、これでもまだ平静でいられます〜?」

どうやら玉座の間にいたクアットロは幻影。本体は別の場所にいるようだ。
そして、玉座に座るヴィヴィオは突然苦しみだす。

「『ヴィヴィオ!』」」

イーヴィルとなのはが玉座に近づこうとすると、七色の光を伴った衝撃波が…。

「フフフ♪良いことを教えてあげる。あのとき、ケースの中で眠ったまま、輸送トラックとガジェットを破壊したのはこの子なの。あの時貴方が魔帝兵器で余裕に防いだディエチの砲撃。でも例えそれの直撃を受けたとしても、物ともせずに生き残れたはずの能力。それが古代ベルカ王族の固有スキル、聖王の鎧」

クアットロは長々と喋り出す。

「レリックとの融合を得て、この子はその力を完全に取り戻す。古代ベルカの王族が、自らその身を造り替えた究極の生体兵器。レリックウェポンとしての力を…!」

「パパ!!ママ!!」

クアットロが説明する間にもヴィヴィオは必死になって助けを求める。

「すぐに完成しますよ。私達の王が、ゆりかごの力を得て、無限の力を誇る、究極の戦士」
「パパァー!!ママァー!!」
「『ヴィヴィオ!!』」

ヴィヴィオの身体が虹色に輝いて行き、その身はイーヴィルとなのはには視認しきれない程の眩しさとなる。

「パパ…ママ…」
「ほら陛下。いつまでも泣いてないで、陛下のパパとママが助けてほしいって泣いてます。陛下のご両親を攫って行った怖〜い悪魔と魔人がそこにいます。頑張ってそいつらをやっつけて、本当のご両親を助けてあげましょう?陛下の身体には、そのための力があるんですよ〜。心のままに、思いのままにその力を開放して…」

クアットロは出鱈目極まる嘘をヴィヴィオに吹き込む。

すると、ヴィヴィオは突然苦しみだす。
だがそれと同時にヴィヴィオの身体は急激なスピードで成長していき、騎士甲冑を身に纏っていく。

そして虹色の光が晴れると、
そこには長い金髪を青いリボンでサイドポニーテールに結び、漆黒の騎士甲冑を纏った…聖王となったヴィヴィオの姿。

「貴方達が、ヴィヴィオのパパとママを、何処かに攫った」
「…ヴィヴィオ、それは違う」
『貴方の両親は、今ここに立っているじゃないですか!』

イーヴィルの言葉に一瞬ヴィヴィオは怯んだかのような表情になるが、

「違う!…嘘つき。貴方達なんかパパとママじゃない」

その言葉にリインフォースとなのははショックを受けた。

ヴィヴィオの足元にはベルカ式の魔法陣が展開される。

「ヴィヴィオのパパとママを、返して!」

鋭い目つきで睨むヴィヴィオは虹色の衝撃波を駄々漏れにする。
そこへクアットロは、

「その子を止めることができたら、このゆりかごも止まるかもしれませんね」

思いっきり他人事のように言ってくれた。

「レイジングハート!」

【W・A・S フルドライビング】
【MAGICAL/LEADER】

なのはの足元には桜色の魔方陣。
イーヴィルも近接格闘戦に特化したマジカルリーダーにハーフチェンジ。

「さ〜、親子と友人で仲良く、殺し合ってね」

ドンドン腹黒い本性を見せていくクアットロ。

「パパとママを、返して!」
「ブラスター・リミット2!」
「『…ッ!!』」



三人は各々の魔力を最大限にまで行使する戦いを繰り広げる。


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次回、仮面ライダーイーヴィル

Eの愛情/娘【ヴィヴィオ】

「この『欲望』はもう、私の手中にある」


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