仮面ライダーW/風【たんてい】


引っ越してきた風都での新居が決まると同時に、丁度良い家事係(メイドさん)を獲得したゼロ。
マンションに入居して来た当初は、呪いの部屋に住んでいるとして御近所から”一時の間だけでも仲良くしましょう”みたいな感じで接せられていたが、一ヶ月程経ってもゼロ達が生きてることを知って御近所は軽く驚き、呪いの部屋の噂は信憑性が無くなって行ってゼロ達も大分過し易くなった。

「…暇だ」
「第一声がそれですか」
「でも暇なのは事実だよ」
「お洗濯もお掃除も終わっちゃってつまんない」

此処最近、ドーパント=『欲望』絡みの事件が起こらず、皆は時間を持て余していた。

「ん〜…それじゃあ、リインフォースと御霊に際どいコスプレさせて遊ぼうかね」
「「ッ!?」」

リインフォースは飲んでいるお茶を吹きかけた。
御霊はもろに顔を赤くする。

ただしヴィヴィオはコスプレをする際、お気に入りのマンガやアニメキャラの格好が出来るとして逆に面白がる。

――ピリリリリ!ピリリリリ!――

「おっと、依頼かな?」

この時、リインフォースと御霊は本気で電話の主に感謝した。

「………ほうほう…わかった」

――ピッ!――

「仕事ですか?」
「まあな。一緒に来いリインフォース。御霊はお留守番な」
「了解」

ゼロは部屋を出ると、駐車場に向かいイビルホイーラーに跨って目的地に疾走する。





*****

目的地である風都の中心街。

依頼内容は”高速走行能力を備えたドーパントを倒せ”という管理局からの依頼だった。
ヘルが死んでからと言うもの、ミッドチルダではガイアメモリ犯罪が急激に減少していき、管理局側でもメモリの出所の位地を掴むことに成功するだけの余裕ができたのだ。

それが地球の風都であり、局内に置いてガイアメモリに関しては専門家であるゼロにそこへ滞在するように依頼があったのだ。まあ、その依頼が無かろうともゼロは自分の意思で風都に訪れていただろうが…。

「にしても、ドーパントの力でスリを働くとはな…」
「特徴を聞いた限りでは、ジャガーメモリって線が一番有力ですね」

そんなこと言ってる間に…。

「ギャアァァァ!!化物にスラれたーーー!!」

早速被害者が出ていた。

「…行くぞ」
「了解です」

【MAGICAL】
【LEADER】

「「変身…!」」

【MAGICAL/LEADER】

イーヴィル・マジカルリーダーに変身すると、即行で現場に向かって、被害者にドーパントの走って行った方向を聞きだした。

「…あいつか」

その方向には案の定、ジャガー・ドーパントがいた。
イーヴィルは逃げ切ったと安心しているジャガーの目の前にジャンプして現れる。

『お前はッ!?』
「仮面ライダー、イーヴィル」

名乗りを上げ、何時も通りに…。

「『さあ、貴様の欲望を差し出せ…!』」

決め台詞と共にジャガーに蹴りを入れる。

『ホガッ!!』
「…案外弱いな」
『く…ナメんな!!』

ジャガーは凄まじい速さで動きまわってイーヴィルを惑わす。

『速い。ソニックの超高速に匹敵する』
「目には目をってか」

【SONIC】
【SONIC/LEADER】

ソニックリーダーにハーフチェンジすると、超高速に入ってジャガーに対して一方的な攻撃に移る。

――ドガッ!ドガッ!ドガッ!ドガッ!ドガ!――

というかもうリンチなんじゃないか?
と思えるくらいに一方的すぎる気もしてきた…。

『グボッ!ゲッ!ガッ!』

反撃する間もない攻撃にジャガーは踏んだり蹴ったりを喰らう。

『…ンッガアァァァァァ!!』

余りの屈辱の余りに感情が暴発して巨大化したジャガー。
すると、神速の如き速さで駆けて行き、街を破壊していく。

「あー、暴走したか」

客観的な物言いでそう呟くと、イビルホイーラーに跨る。
そして、メーターの上部分に搭載されているスロットにソニックメモリを挿入する。

【SONIC・MAXIMUM DRIVE】

イビルホイーラーの特徴は変形機能だけではなく、アビリティメモリの力をもマキシマムドライブとして発動する点にあるのだ。

ソニックメモリの力で最大速度を遥かに越えたスピードを出し、あっさりとジャガーに追いついた。そこでさらにジャガーの真正面に回り込んで思いっきりジャンプし、ジャガーの顔面にイービルと車体の重量が乗った一撃を喰らわせる。

それによって横転したジャガー。
イーヴィルはソニックメモリをドライバーにセットし直し、

【KNIGHT】
【SONIC/KNIGHT】

ナイトメモリをセットして、ソニックナイトにハーフチェンジ。

【EVIL/KNIGHT・MAXIMUM DRIVE】

「『ナイトゲイルスラッシャー…ッ!』」

イーヴィルはジャガーの巨大化した身体を全て見渡せるくらいの高さにまでジャンプすると、その姿は二色の閃光と共に消えた。

一瞬何が起こったのかわからなかったジャガーが後ろを振り向くと、そこにはナイトグレイブを背中に収めているイーヴィルの姿。

ジャガーはイーヴィルを切り裂こうと腕を動かすが、

――ピシ…ッ――

腕には奇妙な亀裂。
いや腕だけじゃない。身体全体に亀裂が走っていた。

そう。イーヴィルは一瞬の間に巨大なジャガーの身体に凄まじい斬撃を与えていたのだ。

亀裂が大きくなっていくと、ジャガーは爆発して人間の姿に戻っていた。その傍らには破壊されたジャガーメモリがあった。

「…引き上げるか」

とイーヴィルが言った瞬間。

【CYCLONE/JOKER】

(このガイアウィスパーは…)

急いで向かった先には、体中に刺を持ったライアー・ドーパント。
それに立ち向かう、二人の戦士。

風と切り札の記憶を宿した二人で一人の仮面ライダーW。
赤き加速の記憶を宿した復讐に生きる者、仮面ライダーアクセル。

「成程。我等以外にも仮面ライダーがいたとはな」

イーヴィルは興味深気に呟く。

【ENGINE】
【ELECTRIC】

「俺をバカにした報いだ」

アクセルはそう言って電気を帯びたエンジンブレードでライアーに斬りかかる。

【LUNA/TRIGGER】

Wはルナトリガーにハーフチェンジして、トリガーマグナムから自動追尾弾を連続発射してライアーを追い詰める。

『メモリブレイク、行こうか』
「あぁ」

Wの右複眼が点滅して声がすると、もう一人の声がして、Wはトリガーメモリを銃にセットしようとすると、

「待って!その人を倒したら、ジミー君が合格できない!!」
「何言ってんのゆきほさん!」

突然Wに攻撃の中断を頼みこむ女性に、
外観年齢は中学生。でも実年齢は二十歳の鳴海亜樹子が止める。

「そうだ。こんな奴とっとと倒して、ジミーにはまた挑戦させれば良いだろ」
「無理に決まってるでしょ!どれだけ彼を見てきてると思ってるの!?あの子は、あの子は…信じられないくらい才能が無いんだから!!」

ゆきほの台詞の後、なにかが落ちる音がして皆がそこへ視線を向けると、そこにはゆきほが応戦するストリートミュージシャン・ジミー中田。

「嘘だ。…僕は自分の力で…。そんなのウソだ!!」

今まで、彼は三回連続で合格するとCDデビューができる”フーティックアイドル”という歌番組において、驚異的な音痴であるにも関わらず奇跡の二連続の合格を果たしていた。

でもそれは…。

『悪いな〜。嘘はお前の合格の方なんだよ』

ライアー・ドーパントの固有能力は口から発する針に嘘を吹き込んで発射し、その針に命中させた者に虚構を真実と思いこませる。嘘つきの記憶に相応しい能力だ。

それをライアー自身が説明したのだから、当然ジミーは…。

「うぅああああああああああ!!!!」

今までの努力全てで得た結果は全て嘘。
そのショックは相当なものだ。

(とりあえずぶっ飛ばすか)

【TRICK/BLASTER】

「「『ッ!!?』」」

聞こえてきたガイアウィスパーにアクセルとWは驚いた。

――バン、バン!――

バーストキャノンから発砲された分身追捕弾はライアーに直撃した。

『だ、誰だ!?』

ライアーの要望にこたえるかのように、イーヴィルはわざとらしく足音を立てて物陰から出てきた。

「お前は…?」
「二人で一人の仮面ライダー」
『イーヴィル』

Wの言葉に反応して答えるゼロとリインフォース。

『(今の内だ)…”イーヴィルとかいう仮面ライダーはドーパントだ”…シュッ!』

イーヴィルの登場に驚く二人のライダーにライアーは言葉の針を飛ばして刺した。

「…おっと、なにをぼんやりしていたんだ俺達」
「知るか。だが倒すべき相手(ドーパント)はそこにいる」

「バカどもめ」

ライアーの思うつぼな状態になっているWとアクセルに呆れ果てるイーヴィル。

そして次の瞬間…。

――ドゥガッッ!!!!――

「『アッッ!!』」

Wは吹っ飛ばされた。
パンチ一発で、壁に減り込む位に。

「さ〜てと、次は貴様だな」

次の標的はアクセル。

「そんなに身構えるな。安心しろ…」

そう言ってイーヴィルはトンデモない速さでアクセルの両脇腹を掴んだ。

「そういえば此間、”卵を潰さず、握れるようになったんだ”よな〜」

それを聞いた瞬間、アクセルは一気に自分の血の気が引いて行くのを感じた。

「ギイィアアアアアァァァァァ!!」

――バタン――

「怖ッ!」

亜樹子は小便チビるんじゃないかと思うくらいにビビった。

「トドメはっと…」
『ヒッ!』

もう言うまでもないだろう。

ライアーはイーヴィルにライニードルが効かないと本能的に察知して、巨大な口を模したライスピークスという武器からエネルギー光弾を自分とイーヴィルの間の地面に乱射することで煙幕を張り、まんまと逃げて行った。

「…逃げられたか。まあ良い。”こいつら”から情報を聞き出せばことは足りる」
『その情報提供者をグロッキーにしたのは誰ですか?』

リインフォースの言うとおり、Wとアクセルは見たまんま限界とか色々突破した状態で失神していた。

「……あぁ……」
『…始末に負えない…』

魔人戦士・仮面ライダーイーヴィルと、
風都の守護者と復讐者・Wとアクセルの邂逅だった。



次回、仮面ライダーイーヴィル

唇にLを/嘘【うそつき】

「この『欲望』はもう、私の手中にある…」

これで決まりだ!

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