Eの教導/虐【サディスティック】


今日この日、本局と地上から集められた将来有望とされるルーキー達は期待と戦慄を胸に、訓練に励もうとしていた。
なぜなら今日は特別にイーヴィル=ゼロとリインフォースが教導にくるからだ。

ゼロの強さは管理局内では最強無敵と言われる程のものであることから、憧れる者もいれば、逆に恐れる者もいる。ゼロのドSっぷりもまた、管理局員達の間では有名なのである。

そんな期待と恐怖の念が渦巻くなか、ゼロとリインフォースが堂々と登場すると、ルーキー達は身体をビシッと真っ直ぐに伸ばした。

「えーと、教導の前に挨拶とかあるんだろうが、私はそういうメンドくさいのは嫌いだから省かせてもらう。…本格的な訓練のまえに、貴様等の身体能力を測らせてもらう。向こうに野球用のグローブがあるから一人一個ずつもつように」

ルーキー達は今一ゼロの意図がわからなかったが、取り合えず指示に従ってグローブをとりに行った。
そんでもってルーキー達が全員グローブを持って整列すると、ゼロは硬式の野球ボールと金属バットを手にする。

「それではこれより反射神経を測るために私が打つボールをグローブで全弾漏らさずキャッチしろ。取り損ねて、ボールが身体に当たってもそれは自己責任ということで」

そういうと、早速ルーキーの一人がグローブ片手にゼロの眼前にくる。

「よろしくお願いします」

丁寧に挨拶をするも、ルーキーは後にそんなことするんじゃなかったと後梅する。

――ズドンッ!!――

「「「「「え…ええええええェェェェェ!!!!」」」」」

観ていたルーキー達は超驚く。

なぜなら、最初にでていったルーキーが挨拶してグローブを構えた瞬間にゼロが超越的な腕力で、超越的なスピードでボールを打ち、超越的な威力を持ってボールはグローブを突き破ってルーキーの腹部に直撃して身体を吹っ飛ばし、後ろにある壁に激突させたのだ。

「ちょ…何やってんですか!?」
「なにって、ボールを金属バットで討っただけだが?」
「討つってそっちの討つ!?訓練生殺してどうすんですか!!?」
「大丈夫だ。ほれ、元気に身体をピクピクとさせている」
「それって単純に痙攣起こしてるだけですよね!!」

リインフォースはこの上なくツッコム。

なお、この憐れなルーキーが即行で病院送りになったのは言うまでもない。

「さてと…新人共。続き、逝こうか?」
「「「「「ギャアァァァァァ!!!!」」」」」





*****

一時間後、ルーキー達はというと…。

「ほら、もう一発!」
「フグウゥ!!」

今ゼロの相手をしてる者もまた、ゼロのドSな教導に苦しんでいた。

因みにこいつの場合、バットで打ち出されたボールがグローブにかすることなく、モロに男の急所に直撃したことで、股間の激痛を必死に抑えてのたうち回っている。

ドSかつブラックスマイルでボールを金属バットで打ちまくるゼロに、残ったルーキー達は本能の髄にまで確実に届く恐怖を感じる他全く無かった。

リインフォースにいたってはもう、突っ込み切れずに上の空状態である。

そんな時に…。

「もう沢山だ!こんな地獄!」

一人のルーキーが叫んだ。
更には…。

「ガイアメモリ!」

その手にはドーパントとなるための水色のメモリ。

【WATER】

”水の記憶”を宿した”ウォーター・ドーパント”に変貌する。

『折角スパイとして期待のルーキーになったっていうのに、こんな拷問紛いの教導があって溜るかってんだ!!』

「ほう、ドーパントか。…『欲望』の匂いがしていると思えば…」
『ごちゃごちゃ言ってんじゃねーーー!!』

ウォーターは空気中の水分を集め、水の刃としてゼロに襲い掛かるも…。

「「変身」」

【MAGICAL/LEADER】

ゼロは慌てることもなく冷静にイーヴィルに変身。

『変身したところで!』
「私を甘くみないことだな」

ウォーターは構わず水の刃をイーヴィルに振り下ろすも、イーヴィルは腕を払っただけでそれを散してしまったのだ。

【EVIL/MAGICAL・MAXIMUM DRIVE】

イーヴィルは直後に二本のメモリをベルトのマキシマムスロットに挿入。

「『さあ、貴様の欲望を…差し出せッ!』」

――ドゥガッ!!――

マキシマムによって倍増したマジカルメモリの魔力を集中させたことで輪郭がぼやけて見えてしまっている右腕。イーヴィルはその拳をウォーターに思いっ切り叩きつける。

それによってウォーターはメモリブレイクされたかと思ったが。

『あ、危なかった。対処が遅れていたら、本当にメモリブレイクされていたぞ(焦)』

ウォーターは無数の水滴となって攻撃を避け、再び元に戻る。

『液体化能力まで…』

どうやら水を操るだけでなく、自身を水に変化させられるようだ。

「そうか…。フフフ♪ならば良き奇策があるぞ♪」
『………(なんか、悪意的な…)』

リインフォースは一瞬戦慄した。

「オラ!」

――ビチャァ!――

再び液化するウォーター。
それを狙い、イーヴィルは左手でもっていた容器の中身を液化したウォーターにぶちまけた。

『!!?な、なんだこれ!!』

急いで元に戻るが、身体が何故か変色している。

「フハハハ!…硫酸をぶっかけておいた♪」
『て、テメー!なにしてくれてんだ!混ざっちまっただろ!!つーか臭い…!』

硫酸が混入したせいでウォーターからは変な異臭が漂ってくる。

「臭ッ!」
「ちゃんと風呂入ってんのか?」
「不潔〜!」
「ヤダもう!」

無論新人達も、鼻を摘まんで非難する。

『なんで俺が非難されるの!原因は明らかにイーヴィルだろ!』

なんか精神的にダメージを負う。

「次の一手だ」

【SONIC】
【SONIC/LEADER】

イーヴィルはソニックリーダーにハーフチェンジすると容器を持って何処かに走り去り、一分と経たずに容器になにかを詰め込んでもどってくる。

そこでイーヴィルは高速連続パンチで再びウォーターを液化させると、またなにかをぶっ掛けた。

『冷、たい…。なに、を…した?』
「なにって…ドライアイスだが」

イーヴィルは笑いながら言った。
笑っているのは、カチコチに凍ってしまったウォーターを見ているからだと言うのはよくわかるだろう。

「止めだ」

【BLASTER】
【SONIC/BLASTER】

ソニックブラスターにハーフチェンジし、そのままメモリをマキシマムスロットへ。

【EVIL/BLSTER・MAXIMUM DRIVE】

「『ブラスターマッハシュート』」

――バンッ!――

ブラスターキャノンから発砲された弾丸はそのままウォーターに命中する。

『ば、バカめ。一発当てたところで、メモリをブレイクでき「そいつはどうかな?」

言葉を遮ってイーヴィルがそういった瞬間、

――ピシ…ピシピシ――

凍り漬けとなったウォーターの身体には先程の一発分だけでなく、他にも多数の銃弾が一瞬の間に撃ちこまれていた。それによって身体に亀裂が入った音が幾つも聞こえる。

『グァァァァァ!!』

『いただきます!』

――ガブッ!――

メモリブレイクが成功してウォーターは人間の姿となり、『欲望』を喰われて御用となった。





*****

四グループ全ての仕事が終了し、全員は風都に帰るべく本局に集まっていた。

「皆本当に御苦労さま。ホンマ大きにな」
「いえいえ、この左翔太郎。美しき乙女の頼みとあらば、いつでも参上致します」

「ユーノ、もしまた会えたらじっくりと様々な議題で盛り上がろう!」
「何時でも待ってるよフィリップ」

「いつかまたな…竜」
「お前もな、ディアン」

Wとアクセルの変身者は皆と別れの挨拶をすませている。

「それでは皆さん。風都に帰ります」

リインフォースは魔方陣を展開し、ゼロ達は風都にもどっていった。

「帰っちゃったね」
「何時かまた会えるよ。ね、なのは?」
「フフ♪そうだね、ユーノ君///」

互いに見つめ合い、指を絡ませ、頬を赤らめさせるユーノとなのは。
着実に二人のなかは縮まっている。

「さてと、フェイト。今日はもう、仕事ないよな?」
「う、うん。”夜間”の勤務とかも、今日はないよ///」

この二人にいたってはもう、色々とすませている感じだ。

「翔太郎さん…カッコ良かったなぁ///」

さらにはこのタヌキ娘の心にも春が巡ってきたらしい。





*****

鳴海探偵事務所。

「翔太郎君にフィリップ君!一体今まで何処でなにやってたの?」

もどってきた矢先に亜樹子から問い詰められ、叱責される翔太郎。
ただしフィリップはミッドの超科学の情報を得られた幸福感によって叱責など聞こえてすらなかったが…。

ガミガミと怒る亜樹子に翔太郎は本当のことを話すと、

「だったら何で私も連れてってくれなかったの!?」
「いや、無限は”戦闘力皆無の役立たずを同伴させてなんの意味がある?”…だってよ」
「ムッカー!ちょっと文句「言えるのか?あの腹黒ドS魔人に…」……言えません」





*****

超常犯罪捜査課。

「照井課長!今迄どこいってたんですか?」
「俺に質問するな」

真倉と刃野に聞かれてもミッドチルダのことを一切喋らない照井。

「…それはそうと、休んでた間に書類とかがちょっと溜まってますよ」
「わかっている」





*****

無限宅。

「あの、郵便受けにこんな物が届いてましたけど…」

家に戻ったゼロは、御霊がもってきた差出人不明の白い封筒を開ける。
それはメモリスロットのあるルービックキューブ型のメモリガジェットと、紛失した筈のバニティーメモリ。しかしその形状はメモリドライバー専用のそれと同じになっていた。

メモリガジェット・バニティーボックスの取扱い説明書の最後のページにはこう書いてあった。



まず最初になんの断りも無くバニティーメモリを持ちだし、このような形で返還する無礼を謝罪する。

このメモリガジェット・バニティーボックスは、ライブモードに複数の形態を併せ持つ特殊な物。ライブモードにする際はバニティーメモリをスロットに挿入した後、プログラムされている形態から選んで音声入力すれば、それに合わせて変形を行う。イーヴィルの武器のユニットにすれば、今迄以上にバリエーションの富んだ戦法を編み出すことも可能だろう。

このメモリガジェットは何時か必ず貴方達の良き助けとなる筈だ。

プレシア・テスタロッサ



「ほほう、面白い。奴も中々粋なことをするものだ」

どうやらゼロはバニティーボックスが気に入ったらしい。
薄っすらと笑いながら、メインメモリケースが白色となったバニティーメモリを手中にして、スタートアップスイッチを押して起動させる。

【VANITY】




次回、仮面ライダーイーヴィル

ドSトリオ/凶【さいきょう】

これで決まりだ!

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