Yの悲劇/昨【きのう】


鳴海探偵事務所。

「翔太郎さん、お茶が入ったで」
「お、サンキュー。はやてちゃん」

いきなりだが、八神はやては何故かここで翔太郎にハーブティーをだしていた。
しかも美人秘書が着ていそうな服装で。

「なんで此処にいんの?」

当初、亜樹子が聞いた後、「休暇を取ってきたんや!」などとはやてはいっていた。
恐らく、想い人である翔太郎に少しでもアピールするためなのであろう。

ま、そんなこと言ってる間に翔太郎はハーブティーを口に運ぶ。

「おぉ、美味いな」
「ホンマに!?翔太郎に褒めて貰えて、わたし嬉しい♪」

翔太郎に抱き着くはやて。そこへさらに頬にキスすると、翔太郎は、少し顔を赤らめながら照れる。というか、鼻の下を伸ばしてる。

亜樹子はそんな翔太郎をスリッパで叩こうとした、その瞬間!

――ギラッ!――

「ッ!?」

突如、殺気を感じた亜樹子。
そして、その殺気の発生源は勿論のこと…。

(人の恋路を邪魔するKYは馬に蹴られて死んでまえ…!)

八神はやてであるのは、言うまでもない。

しかし、翔太郎を独占できたのも、束の間であることに、彼女はこの時微塵も知らなかった。





*****

一時間後。
11時58分…この昼前から今回の事件は始まった。

「きのうを探して欲しいんです」
「……はい?」
「昨日から見つからなくて…」
「昨日からきのうが見つからない…?」
「…はい」

なんだかややっこしい依頼内容だが、翔太郎は依頼人の女性の顔を見た瞬間。



なにかがスパークした。



「なんやそれ?」

はやてが首をかしげると、依頼人は写真を見せた。

「これがきのうです」
「猫ちゃん?」

写真に映った猫の首輪には”KINOU”とかかれている。

「ダメですか?」
「…翔太郎さん、どないする?」

はやてが聞いた時、時刻は丁度12時になった。

「わかった。……俺に任せてくれ」
「受けるの?ペット探し!珍しい!」

亜樹子は翔太郎がこのようにチマチマとした依頼を好き好まない性格であることを重々承知していた。

「お前にはわかんねーよ。これはただの猫じゃない……猫の形をした、大切な思い出なんだ。…そうだろ?」
「はい」

やたらキザな台詞をハードボイルドに語る翔太郎。
その後、依頼人を口説くような発言に、はやての機嫌はドンドン悪くなる。

「…困ったことがあれば鳴海探偵事務所に行け…」
「え…?」
「知り合いに言われたんです。来て正解でした」
「…失くしたきのうを探すのも、探偵の仕事ですよ…!どうぞ」

翔太郎は帽子を被りながらそう言った。
依頼人といっしょに猫探しにいく間際、「良し…!」なんていっていたが…。

「興味深いね。翔太郎の好みのタイプはああいう女性か」
「な、なんでや!?」
「でなければ、たかが猫探しにお気に入りの帽子を被る筈がない」

動揺するはやてにフィリップが冷静に説明する。

「………フフフ、アハハハハ」
「は、はやてちゃん?」

不気味に笑いだしたはやてに、亜樹子は恐る恐る尋ねる。

「ちょいと、わかったことがあるで」
「なにかな…?」

ほんすこし長い沈黙。

「あの女郎(ゴキブリ)は敵やっッ!!」
「何故にィィィ!?」

依頼人に対して超激しい対抗心を抱きまくるはやて。
背後からスッゴイオーラが見えてしかたない。

「いくで亜樹子ちゃん!あの女郎(ゴキブリ)に翔太郎さんはやらへんでーッ!!」

そういってはやては飛び出して行った。

「なんなのこの状況?あたし聞いてない!」

といいながらも、亜樹子はしっかりはやてについていく。

そんな様子をフィリップは苦笑いしてみていた。

「まさか翔太郎が、あんな可愛い美女にモテるとはね。……不破夕子(ふわ ゆうこ)、か」

翔太郎のモテ期?到来を評価しつつ、依頼人の名前を静かに呟いた。





*****

無限家。

――カチャカチャ、カチャカチャ――

リビングでゼロは、なにやら指を精密に動かしている。

「パパ。なにしてるの?」

リインフォースが尋ねると、

「ガイアドライバーの点検&改造」
「ヘルの遺した物……なんにつかうの?」
「……さあな。ただ、何れ役立つと思ってな」

その時、御霊とが電話の受話器をもってきた。

「あのー、はやてさんから電話です」
「……わかった」





*****

一方その頃、

「平林武……この西山不動産の、社員だな?」

照井達は西山不動産の重役、あるいは社長と思われる男に平林の写真をみせながらそういった。

「それが、なにか?」

西山は悠長な態度である。

「昨日急に道に飛び出して車に撥ねられた。まるでなにかに引っ張られているかのようだったと運転手(ドライバー)は言っている。全治三か月の大怪我だ」
「こっちの野田は、車で民家に突っ込んだ。スピードをあげて一直線にな。これも昨日の話だ」

刃野と真倉が状況説明する。

「二人とも共通の痣がある。…普通じゃできない痣だ」

照井の持つ写真には砂時計を模した8の字のような痣がうつっている。

「かなり強引な地上げやってんだって?あんまりイイ評判聞きませんよ」
「昨日午後三時……丁度今頃なにをやっていた?」
「昨日ですか?………自宅のプールで、泳いでました」

西山は自慢げに語る。

「自宅のプールだと!?贅沢なぁ……」
「ほ〜、そいつは凄いねー。一度泳いでみたいもんだ」

刃野と真倉は呆れはてる。

しかし、現在時刻が三時丁度になった瞬間。

西山はいきなり立ち上がった。

「おい、どうしたんだよ?」
「フォーーー!!」

刃野の言葉に反応することなく、西山は上着を脱ぎ捨てた。
ついでに意味不明な叫びもごとで。

「昼間っから楽しそうでいいな」

真倉が能天気なことを言ってる間に、西山はダンスステップを踏みながら走っていき、遂にはジャンプして屋上の柵を越えてビルから転落しそうになった。

――ガシッ!――

だがそれを照井が間一髪のところで止めた。
そして、西山の足に例の痣があるのも確認した。

(昨日…?)





*****

「……はあ〜」

ゼロは思わず溜息。
目の前にいるのは、はやてであるのは言わずもがなだ。

用件・翔太郎に良い所をアピールしたので手伝って欲しい。

これにはどう考えても呆れる以外なにをすればいいのかと逆に問いたくなる。

「わたしにとっては重大なことなんや!協力してーな」

熱く語るも、恋愛面に関してここまで強い感情を抱いたことのないゼロからすれば馬鹿馬鹿しい話だ。

しかしながら…はやてにとっては大事なことである。
なにしろ幼馴染であるなのはとフェイトには、ユーノとディアンという恋人がいるのだから。

最近ではユーノとなのはが休日にショッピングを楽しんでいたという目撃情報や、ディアンとフェイトが高級ホテルのバーでグラスを傾けあっているという噂まである始末。

「依頼なら…」
「報酬ならはらうで!」



方や、風都ホール前。
依頼人・不破夕子は掲示板にはられているポスターをまじまじと見詰める。
ポスターには園咲冴子がうつっており、”風都の未来を語る”という演説の内容を指し示す文字があった。

「夕子さん……なにか?」
「これ……カワイイですね」

夕子がみていたのは、ポスターの隅にえがかれているマスコットキャラクター・ふうとくん。
それを見た翔太郎は…。

――言っただろう…。私も、この街を愛していると…!!――

かつて、一度だけだがWに協力したナスカ・ドーパントこと霧彦。

――この街を…、宜しく頼む――

それがWの聞いた、霧彦の遺言ともとれる言葉だった。

「霧彦か…」
「え…?」
「俺も持ってますよ」

翔太郎は霧彦から託されたふうとくんのキーホルダーを懐からだす。

「この街をとても愛した男がデザインしたんです」

ふうとくんを見る夕子の表情は少し寂しげで悲しそうだった。

「ダメだ〜!猫一匹見当たらない…」

亜樹子は其処ら辺を探したようだが、まったくもって”きのう”は発見されない。

「おーい、翔太郎さん。助っ人つれてきたで〜」

そこへはやてがゼロを連れてくる。

「…お前暇なのか?」
「…依頼だから」

ゼロはそういいながら五万円を懐にしまう。
隣でははやてが少々後梅したかのような表情でいる。

ゼロは魔人態になると、

『魔界777ッ能力…魔界の凝視虫(イビルフライデー)

口から大量の魔界虫を放つ。

「こんなところでいいだろう。魔界虫をがなにか見つけたら連絡する」

それだけいってゼロは帰ってしまった。
翔太郎は溜息混じりに夕子に声をかけて捜索を再開した。

「二人とも、あれ!」

亜樹子がビルの屋上を指さす。

「ドーパント?」
「変なタイミングで…」





*****

園咲家。

「お姉様!明日の講演会が狙われてるわ!」
「貴女も読んだ?」
「この風都に、園咲冴子を脅迫する人物がいたとはね」
「ある意味、大物ですね」

慌てる若菜とは真逆に冷静にティータイムを楽しむ冴子、井坂、堺。

「仕事をすれば敵ができる。そんなものに一々怯えていては前には進めない」
「敵は全て排除する。……それが冴子君のやり方……ですからね」

【WEATHER】

井坂はドーパントになって蝋燭に火を灯すと、すぐまた元に戻る。

「全て…ね」
「その通りですわ。…若菜、貴女も憶えておきなさい」

そう言われると、若菜は部屋をでた。

――ミュージアムの未来をみるのは…お前がいい――

「お父様は私にだけあの光景を見せた。……何故?」





*****

ビルの屋上に急ぐ翔太郎とはやて。

「「待てッ!」」

二人の声を無視して、ドーパントはビルから飛び降りる。

「フィリップ!」

【JOKER】




*****

「猫探しの次はドーパントか…。慌ただしいな」

【CYCLONE】

サイクロンメモリを起動させるフィリップ。
因みに今日のハマった検策内容は”恋愛”らしい。





*****

「「変身!」」

【CYCLONE/JOKER】

「ならわたしもや!」

そういってはやては騎士甲冑を身に纏う。

そういってはやてがビルから飛び降りると、Wも後続する。

「『「さあ、お前の罪を数えろ!」』」

はやても混じっての決め台詞。

『……!』

ドーパントは無言のまま右腕から円盤状の光輪を発射する。

「フィリップ!ヒートメタルだ!」

【HEAT/METAL】

Wはヒートメタルにメモリチェンジ。
メタルシャフトを持ってドーパントを追い掛ける。

3人は攻撃を弾きつつ、ドーパントを追う。

『ホールの中に入った』
「安心しろ!今日は、休館日だ!誰も居ねえ!」

ホール内に入ったWとはやてとは、ドーパントに攻撃するWとをはやてが支援する戦い方をとる。

すると、ドーパントは追いつめられる直前にホールの一番目立つ場所、丁度演説でもしそうな舞台の上にジャンプすると腹部の”スタートクロック”のスイッチを入れて、左手から8の字型の攻撃を繰り出す。

それははやてに命中しそうなところを、Wが身代りとなり、左胸に当たった。

「翔太郎さん!大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、効いちゃいねーよ。…フィリップ、もう一度サイクロンジョーカーだ」

【CYCLONE/JOKER】
【JOKER・MAXIMUM DRIVE】

「『ジョーカーエクストリーム!』」

サイクロンジョーカーになると同時にマキシマムを発動して必殺キックを行うW。
しかしドーパントは間一髪のところで避けた。

「素早い奴め」

二人はドーパントを追って外に出た。

「どこ行った?」
「もう逃げてまったんやろうか?」

Wとはやては辺り一面を探し、遂に夕暮れ時になってもドーパントをミツケだせなかった。

「二人とも!」
「……逃がしたか」
「一体なんやったんやろうな、あのドーパント?」

すると、”にゃあ”という可愛らしい猫の鳴き声が。

「翔太郎さん」
「あ、見つかったんだ」
「それがきのう?」

夕子がかかえている猫、写真にうつっているきのうに間違いないらしい。

「翔太郎さんの御蔭で、”全部上手くいきました”」
「ん…?」

なんだか嬉しそうに喋る夕子にはやてが違和感を感じる。

「いや、俺はなにも。……あ、それより、ここは危ない奴がウロウロしてる。早く帰ったほうがいい……さあ」
「わかりました。本当にありがとう。これで”明日が楽しみ”です」
「なんやて?」

はやての漏らした言葉に一切反応せず、夕子は黄昏た夕陽の街並みに足をむけていく。

「夕子さん……」
「お別れもまた、突然にやってくるのだよ…ハーフボイルド君」

亜樹子が翔太郎を半ばからかうように言うと、

――ギューーー!――

「痛い痛い痛い!なにすんのはやてちゃん!?」

なんと、はやてが亜樹子の頬をツネッている。

「翔太郎さんの悪口は許さへんで、亜・樹・子・ちゃん♪」

正直に言おう、怖いです。





*****

翌日。

「さて、昨日は随分と珍妙なドーパントに出くわしたな、あ奴ら」

ゼロは昨日の戦いを魔界虫を通してモニタリングしていた。
ついでに猫(きのう)を見つけて夕子に連絡したのもゼロである。

「たしかに、最近起こってる事件にも関わりがあるかもしれない」

ソファーでコーヒーを飲むリインフォースも意見に賛同する。

「警察の情報によれば、被害者は一様に不動産関係者。そして8の字とも砂時計とも言える奇妙な痣…。リインフォース、調査できるか?」
「言われなくてもやる」

リインフォースは次元書庫にアクセスする。

『ファーストキーワードは、8の字。セカンドキーワードは、砂時計。ファイナルキーワードは、昨日』

次々とキーワードがあてられていく度に情報がいっきに絞りこまれていく。

『成程、そういうことか』

YESTERDAY(イエスタデイ)という題名の本を読んだリインフォースは事件についてなにやら合点がいったらしい。

そして得た情報をそのままゼロに話す。

「イエスタデイの腹部にあるスタートクロックによる刻印を打ち込まれた者は、右腕のトリップクロックが作動すると、記憶が操作されて昨日と同じ行動を繰り返す。……となると、今頃左の奴は、風都ホールだな」





*****

風都ホール前。
翔太郎は正しく、昨日と同じ行動を繰り返していた。

「翔太郎さん。どないしたんや?止まってぇな!」

はやてが必死になっていると、スタッグフォンの着信に気付いてでた。

「お、フィリップ君やんか!なにかわかったの?」
『8の字の痣こそがイエスタデイの刻印。昨日の戦いで翔太郎の胸に打ち込まれたんだ』
「それで、どうなるんや?」
『刻印が発動して24時間が経つと、記憶のリロードが終わり、昏睡状態になる……』
「そんな…」

フィリップと電話してる間にも、翔太郎は昨日と同じ行動をとる。

「翔太郎さん待って!」

はやては翔太郎に抱き着き、止めようとするも翔太郎は止まらない。

「ドーパント?」

そしてビルの屋上へ。

「待てッ!」

翔太郎は柵の前に移動。

「フィリップ!」

【JOKER】

ダブルドライバーが具現化しても、刻印に縛られていないフィリップがメモリを起動させることはない。

「変身!」

翔太郎はジョーカメモリだけを挿入=未変身の状態でビルから飛び降りた。

「あかん!フィリップ君お願い!!」
『仕方ない』

【CYCLONE】

翔太郎の転落死を防ぐため、サイクロンを転送。

【CYCLONE/JOKER】

ギリギリのタイミングで変身した翔太郎。

左胸の刻印は着々と記憶のリロードを進める。

「さあ、お前の罪を数えろ!」
「翔太郎さん、お願いやから正気に戻って!」
「フィリップ!ヒートメタルだ!」
『翔太郎…!』

くどいようだが、昨日に縛られた翔太郎は誰にも止められない。

【HEAT/METAL】

「フィリップ君のソウルサイドだけでもええからなんとかならへんの!?」
『ダメだ!翔太郎の力に圧されて、上手くコントロールできない!』
「このままじゃ、講演真っ最中のホールの中に入ってまう!」

「安心しろ!今日は、休館日だ!誰も居ねえ!」
「いや、沢山おるやないか!」
『翔太郎止めろ!』

そしてWは無遠慮にホールへと入った。
メタルシャフトを振り回すWに一般人は次々と逃げ出す。

「仮面ライダー…!?」

壇上で演説を行っていた冴子は思わぬ存在の登場に驚く。

「あぁもう、どうすればええんや!?」

はやては迷いながらも騎士甲冑を纏って、バインドをWにかけるも、パワーに秀でたヒートメタルに剛腕の前には意味を成さない。

「お姉様!」

つきそっていた若菜は冴子に避難を促すも、冴子はそれを拒絶する。

「おちつきなさい…。成程、そういうことね」
「え?」
「脅迫の意味よ」

園咲姉妹が会話していると、Wは刻印を打ち込まれた時間にまでいく。

『翔太郎!!』
「大丈夫だ、効いちゃいねーよ。…フィリップ、もう一度サイクロンジョーカーだ」

【CYCLONE/JOKER】

「八神!」
「照井さん!翔太郎さんが…」
「わかってる」

【ACCEL】

「変…身!」

【ACCEL】

照井はアクセルへと変身。

『このままでは、彼女にジョーカーエクストリームを!』

【JOKER・MAXIMUM DRIVE】

「園咲冴子の暗殺がドーパントの狙いか…!?」

Wは勢い良くジャンプした。

「ジョーカエクストリーム!」
『止めろォーーー!!』

そこへ、

【EVIL/KNIGHT・MAXIMUM DRIVE】

「『ナイトファルコンストライク!』」

横から半月状の斬撃波がWを吹っ飛ばした。

『ふー、危なかった』
「無限さん、リインフォース!」

そこにはバニティーボックス・ファルコンモードと合体したナイトグレイブを持つ、イーヴィル・マジカルナイトの姿。

『イーヴィル、アクセル!僕に考えがある。Wを外へ!』
「わかった」

アクセルはバイクフォームに変形して突進し、Wを無理矢理屋外にだした。

「どこ行った?」
「もうすぐ記憶のリロードが終わるぞ、フィリップ」

イーヴィルがそういった瞬間、

――ウェッ!――

「エクストリーム…!」
「…そういうことか」
『あぁそうだ。翔太郎を昨日から連れ戻す』

ダブルドライバーのスロットが閉じ、メモリからデータの滑車ができると、エクストリームメモリはそれを伝ってバックルに収まる。

【XTREME】

CJCになると同時に、その身に溢れるエネルギーがイエスタデイの刻印を破壊する。

「翔太郎…、翔太郎!」
「ッ!…俺は一体何を?」
「意識が戻ったか、左」
「全く、世話のやける」

アクセルとイーヴィルは呆れ気味にそういった。

「イエスタデイの刻印に、エクストリームのパワーを集中して無力化した。だが今は詳しい説明をしてる暇はないよ。ドーパントだ…!」

振り向けば、そこにいるのはイエスタデイ・ドーパント。

「左、あいつがお前の記憶を操作していた犯人だ」
「記憶?…俺の?」
「話は後だ」

「「プリズムビッカー!」」

【PRISM】

Wはプリズムビッカーを出現させ、プリズムメモリをソードの柄に挿入して抜刀する。

「「お前の罪を、数えろ」」

Wはソードでイエスタデイを指差し、斬りかかる。

イエスタデイは数あるガイアメモリのなかでも特に珍種ともいえるドーパントだ。
しかしその反面、基本的な戦闘力は低い。

エクストリームによって強化されているWとのスペックの開きも大きいことを悟り、逃げようとするも。

『お前の正体は既に調査した。逃げても無駄だぞ』

イーヴィル=リインフォースがそういうと、イエスタデイは立ち止まる。
そして、メモリを抜いた。

「夕子さん!?」
『いや、違う。彼女の本名は須藤雪絵、須藤霧彦の実の妹だ。貴方達には園咲霧彦といったほうがわかりやすいかもしれないが』

イーヴィルはわかりやすく説明した。

「霧彦の、妹…」

雪絵は、霧彦は愛用していたスカーフを手にもつ。

「夕子さん……君は……」
「夕子じゃない、雪絵よ。須藤雪絵」
「じゃあ、本当に霧彦の妹…」
「何故園咲冴子を狙う?復讐か?」

Wが聞くと、雪絵は可笑しそうに笑う。

「復讐?馬鹿馬鹿しい!確かに兄さんはミュージアムに始末された。でもそれは彼が必要じゃなくなったから。私は兄さんのようなヘマをしないわ」
「なに…?」
「昨日は利用する為にある」

【YESTERDAY】

『この力で、私はミュージアムの幹部になるの!』

イエスタデイは光輪を乱射。

「左!メモリブレイクだ!」
「早くしろ。でなければ我等が始末をつけるぞ」
「……わかった」

【CYCLONE・MAXIMUM DRIVE】
【HEAT・MAXIMUM DRIVE】
【LUNA・MAXXIMUM DRIVE】
【JOKER・MAXIMUM DRIVE】

ビッカーシールドという鞘にプリズムソードを収め、四つのスロットに四本のメモリを挿入。

「「ビッカー!チャージブレイク!」」

技命を叫び、攻撃をシールドで防ぎながらイエスタデイを切り裂こうとすると、
イエスタデイは自ら変身解除した…!



肉親たる霧彦の死にすら動揺せずにミュージアムでの出世を望む雪絵。
彼女の真意は一体…?

次回、仮面ライダーイーヴィル

Yの悲劇/絆【あにいもうと】

これで決まりだ!


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