さらばZ&P!/永【あいぼう】


変身すれば相棒は、永遠にいなくなる。
そんなウルトラデメリットが課せられた翔太朗とリインフォース。

変身を拒む二人への罰の如く、状況は刻々と悪化していく。
そして、ユートピア・ドーパントとバジリスク・ドーパントの魔の手が、二人にかかる。

『仲間を痛めつけらられることが、君の苦痛ですか』
『なんともまあ、仲間思いなセンチメンタリストだな』

ユートピアとバジリスクは翔太朗とリインフォースの首から手を放し、地面に叩きつけて足で踏んだ。

「翔太朗!今度こそ変身だ!」
「もう四の五のは言わさんぞ!」

【CYCLONE】
【WISEMAN】

「「・・・・・・ッッ」」

翔太朗とリインフォースもジョーカーとマジカルのメモリを取り出すも、スタートアップスイッチを押してガイアウィスパーを鳴らそうとはしない。
というより、未だに戸惑っている。

「翔太朗!!」

フィリップの叫びに呼応し、若菜の発光現象が激しくなっていく。

『数字が上向いています』
『どれどれ?・・・へー、72%か』

すると、ユートピアとバジリスクに、幾つもの光弾が襲い掛かる。
連続して放たれる光弾に、二人は驚いて思わず変身を解いてしまう。

そしてその光弾を発射していたのは、

「冴子さん・・・!?」
「おいおい・・・」

タブー・ドーパントだった。

『来人、早く若菜を連れていきなさい』

そういってタブーは光弾は二発繰り出し、加頭と大地を吹っ飛ばす。

「冴子姉さん?・・・まさか、僕らを助けて・・・?」
『まさか。こいつらのほうが気に入らなかっただけよ』

タブーは再び光弾を連射する。
何発も何発も。

だがしかし、

『貴方・・・』

火炎にまみれながらも、加頭は生きていた。
大地も、加頭を盾にするかのように、彼の後ろに立ってことを凌いでいたのだ。

「ウソ・・・!?生身で攻撃受けたのに・・・!」

この事態に亜樹子も動揺を隠せない。

「私、ショックです、冴子さん。死んでるところですよ、私がNEVERでなかったら」
「ホント、加頭があいつらと同類で助かったぜ。俺はあくまで人間だからな」

『死者蘇生兵士・・・!来人、この場は逃げなさい!』
「わかった!」

タブーは光弾を連射するも、加頭はもろともしない。

【UTOPIA】

そして加頭が変身すると、

【BASILISK】

大地も変身する。

「照井!」
「ヴィヴィオ!」
「若菜姉さん!」

皆はその隙に怪我人と若菜を助けようとするが、

『無駄無駄』

タブー=冴子がユートピアに捕まると同時に、バジリスクが念動力を働かせ、若菜を捕縛する。

『ついでに』

自分側と向こう側の中間を、自然発火能力(パイロキネシス)で炎上させるというおまけつきで。

「フィリップ君!フィリップ君!!」
「・・・・・・・・・」

亜樹子もこの状況では不利すぎると悟り、フィリップの腕を引っ張り、皆と一緒に退散する。

ユートピアとバジリスクは変身をとき、薄ら笑いを浮かべていた。

「若菜の復活のため、来人にはたっぷり味わってもらうぜ」
「理想郷の力と、死の蛇神の力をね」





*****

ユートピアの手によって、全身に大火傷を負ってしまった照井を風都病院に搬送し、硬直状態のホッパーを事務所へと運び込んだ一同は、半ば失意の中、海岸に来ていた。


「ユートピアは、人間の希望や願望など、生きる為の感情を吸い取って自分の力にできる」
「生きる為の感情?」
「そしてバジリスクは、キングコブラメモリが進化した最上級メモリで、その力はレベル3とエクセリオン昇華体の複合体に等しい」
「成る程、あの強大な力にも納得がいく」

フィリップが逐一説明し、ゼロが感心する。

「照井竜が特殊体質、ヴィヴィオが聖王の血を継いでなかったら、今頃大火傷や硬直ではすんでいなかったろう」
「左にリインフォースよ、なにか言う事はあるか?」

ゼロは問い詰めるようにいった。

「あの状況でどうしろと?」
「貴様らが変身を拒んだばかりにこの様だぞ!!貴重な戦力は半減し、目的は一つも果たせていない!!」
「私も左も!・・・ただ、ただ・・・」

言葉に勢いをなくしていくリインフォース。
亜樹子は見ていられず、砂浜から一個のボールを拾い、周りを見渡して一つのベンチを見つける。

そして、ボールをフィリップに投げて寄越した。

「ちょっと二人きりで話したらどう?キャッチボールしたり、ベンチに座ったりしてさ。・・・あたし、先に帰ってるね」

そういって亜樹子は退場した。

翔太朗とフィリップの会話とキャッチボールはスキップして、ベンチで互いに腰掛けあい、話し合うゼロとリインフォースのほうを見てみよう。

「私はな、死ぬとしたら、この『欲望』にまみれた世界を、食糧を守って死にたいのだ。かつてネウロがそう覚悟したように。・・・・・・何故わかってくれんのだ?」
「例えどんな覚悟の上で死のうと、遺された者・・・・・・私は磁石(あなた)が離れる時、培ったものは勿論のこと、元あったものまで持っていかれてしまう」

リインフォースはやはり首を縦にふらない。
そしてマジカルメモリを取り出す。

「コレを使った途端、貴方が居なくなるのは、耐え忍ぶこと適わん」
「・・・・・・リインフォース」

ゼロは崩壊寸前の身体を眺めつつ、相棒にこういう。

「私が貴様を相棒と認め、妻に選んだのは・・・貴様の中にある本当の優しさと、自分と他人の可能性を信じ続ける心ゆえだ。しかしながら、貴様がこの体たらくでは、とてもじゃないが死んでも死に切れん」
「・・・ゼロ・・・」

「相棒、一つだけでいいから、誓ってくれ。・・・例えどんな苦境を味わおうと、私の食卓だけは守りぬくことを」
「それこそ無理な注文だ。私は昔から、自分独りに、自信や誇りがもてない。だがしかし、かつての主はやて達がいて、貴方と出会うことで私は・・・・・・初めて自分を信じられたんだ」

そう、彼女の正体と出自は魔導書の管制人格プログラム。
最初の頃はとても平和だった。
しかし、ヘルによって光の夜天は闇の暗雲に閉ざされた。

そこからは語る価値もない。
ただ戦い、ただ殺すだけの日々。
自分には何もできない。傍観して、最期には終焉を齎すだけの存在。

だが、その運命をぶち壊したはやてを初めとした仲間達。
そしてゼロとの出会いと、レイズの教え。
それらが重なり合うことで、今の彼女を形成し、支えている。

リインフォースにとって、一番大きな支柱であるゼロを失うことは、全てを失うことに等しかった。

「相棒」

ゼロは泣き崩れそうになる彼女のことを精一杯抱きしめる。
その時、

――トクン、トクン、トクン――

「ん・・・?」

なにか、彼女の中で胎動しているような感覚を覚えた。

――ピリリ、ピリリ!ピリリ、ピリリ!――

スタッグフォンの着信音。
それに気付いた二人はフィリップと翔太朗のもとに駆ける。

ちかづいて話をきいていると、どうやらユートピアがかけてきているようだ。

「若菜姉さんはどこだ!?」
『我が財団が所有する天文研究所に。現在の数値は、78%。これを100に近づけるために、協力してもらいます』
「するわけがない!」
『そういわずに、理想郷をお楽しみください』

そして、

「ッッ!!ああああああああああああああああ!!!!」
「おいフィリップ!!どうした!?」

突然、ユートピアが電話を通じて転送してきたイメージに、フィリップは絶叫する。

そのイメージとは・・・。

――フィリップ君!助けて!!――

クーインとエリザベス。

――フィ、フィリップくーん!!――

サンタ。

――いぃやーー!!翔ちゃん!フィリップ君!――

ウォッチャマン。

「アアアアアああああああああああああ!!!!」

次々と襲われる風都イレギュラーズ。
堪え切れずに声を吐き出し続けるフィリップ。
そして、刃野と真倉を襲い、携帯を持ち去るシーンまでもを見せられると。

「アアアああ――――」

ぷつんと、事切れたように、フィリップは倒れてしまった。

『正に私の理想郷、ユートピアだ』
「ふざけるなぁぁアアア!!!!」
『次はさらに、大事な人達を狙います。今何所にいると思いますか?』

謎かけをするかのようにユートピアはいい、自分から答えと同義のそれをいう。

『屋根でカモメがクルクル回ってますよ』

鳴海探偵事務所。

「アキちゃんが・・・!アキちゃんがユートピアに!!」
「なんだと!?」
「確かあそこには御霊とヴィヴィオも!」

四人は急いで事務所に舞い戻っていく。





*****

結果から言おう、手遅れだった。

事務所には顔と感情を奪われ、のっぺらぼうのようにされた亜樹子と御霊の姿があった。
ホッパーは、ガレージのほうに運ばれていたおかげで難を逃れたらしい。

しかし、フィリップの心を癒すにはまるで材料不足だ。
悲しみを表すかのように、フィリップの肉体は発光する。

ゼロもまた、表情を憎悪に染め上げ、拳を掌から手が出るほどの力で握り、噛んだ唇からも血が出るほどの力だ。

翔太朗はそれを見て帽子を床に落とし、リインフォースも果てしない悲しみの色を瞳に表す。

(僕のせいで、アキちゃんが・・・皆が・・・)
(おのれ・・・、おのれ・・・!)

自責の念に囚われるフィリップ。
そして屈辱の念をしるゼロ。

その時、

――あの子を、安心して、笑顔で消えられるようにしてあげてほしい――

――夫を最期の時まで、笑顔で送り出してあげるのも、妻の役目よ――

思い出すのは、シュラウドとプレシアの言葉。

「俺たちのせいだ。・・・・・・ごめんな、フィリップ、無限」
「もう私達は、惑わない」

呟いた二人は、それぞれ懐に手をいれたり、ドアにかけてある帽子を手にとったりした。

リインフォースが懐から取り出したのは、今は亡き義兄・無限レイズの形見であるキセル。
それを彼女は口にくわえたのだ。
そして翔太朗も、今は亡き師匠・鳴海壮吉の形見である帽子をしていた。師匠の言った、男の目元の冷たさと優しさを隠すために。

それは、決意の証だった。





*****

一方その頃、若菜は夢を見ていた。

――お父様――
――聞こえるだろう、若菜。この地球(ほし)の嘆きが――
――えぇ、お父様の嘆きも。・・・だから・・・・・・私なります。地球の巫女に――
――若菜!――

満足そうな表情をする琉兵衛。
しかしそれは、夢の中の幻想。
すぐに消えてしまう。

――それが、姉さんの決断だったんですね――

入れ替わるように、フィリップが現れる。

――来人?――
――ごめんよ。もう僕に姉さんは救えない――

そして、フィリップも消える。

――ッ・・・来人ォオ!!――

夢はここで途切れた。
若菜が眼を覚ましたのは、天文研究所内部。

「悪い夢でもみてたようね、若菜。残念だけど、現実はもっと酷いわよ」
「なんの話?」

声をかけてきた冴子に訊こうとすると、若菜は自分の肉体が発光していることに気付く。

「加頭達は、クレイドールの力を人工衛星に流して、地球規模のガイオインパクトを達成しようとしている」
「そんな風にお父様の計画を横取りして、お姉さまの差し金ね!」

若菜の推測は全く持って的を外している。

「さあ、冴子さん。約束を果たす時がきました」
「約束?」
「出会ったときに言いました。貴方に一発逆転のチャンスをプレゼントすると」

そこへ加頭が現れる。

「達成しました。愛ゆえに」
「・・・・・・・・・」

冴子は思い出す。
加頭は幾度となく、自分に好意を伝えてきたかを。

「本気だっていうの?あれで・・・?」

冴子が問うと、

「よく言われるんです。感情が篭ってないから、本気だと思わなかったとね」

平然と語る加頭。

「貴女は工場のことをバラしたり、私を撃ったりした。しかし、許します。それは、貴方が園咲冴子だからです」

加頭はタブーメモリを冴子に差し出す。

「・・・・・・・・・・・・」

だが冴子は受け取ろうとしない。

「何故です?何故そこまで私を拒絶するのです!?」

加頭は初めて感情ののった大きな声を出した。

「貴方が園咲を舐めてるからよ。こんな形で若菜に勝っても、死んだお父様は絶対に認めない!」

冴子は自分の確固たる意思を主張し、タブーメモリを奪う。
そして妹に告げたのだ。

「若菜・・・・・・逃げなさい」

【UTOPIA】
【TABOO】

加頭はドライバー、冴子はコネクタにメモリを挿して変身し、ドーパントに変身する。

「お姉さまが、私を・・・?」

しかし、冴子の行動は無駄に終わってしまう。

「甘ったるいね〜」
「この声・・・」
義父(おやじ)が死んで、なにかが壊れちゃったかな」
「だ、大地さん!?」

大地が現れた。勿論、財団の制服姿でだ。

「まあ、無駄なんだけどな」
「教えて大地さん!まさか貴方もなの!?」
「ハハハ、若菜よー。お前は意外に頭の巡りが悪いよな」

ハグらかすように話す大地。

「ガイアインパクトにもお前の拉致にも俺は関係している。ただしそれはただの通過儀礼。俺の目的はワールドインパクトだからな」
「前に言ってた、全次元世界の洗礼のことね。でも、財団に寝返ってまで叶えたいの!?」
「寝返るもなにも、元々俺は財団の所属なんだよ。他の連中には言ったが、局入りも婿入りも全て、ワールドインパクト達成の下準備さ」

大地は若菜のあごを持ち上げる。

「それからもう一つの質問に答えとくとな、実は俺、生まれながらの転落者なんだよな」
「転落者・・・?」
「あぁ。生まれた環境も周囲の環境も最悪でな。べつに酷い目に遭った訳じゃないが、我欲に満ち溢れてばっかりの場所で俺は生まれ育った」

大地は身の上を話し始める。

「そこでさ、俺は考えたわけだ。世の中って、真なる善人と有能な人間だけになったらどうなるのか?ってな」
「ッッ!」

若菜は理解した。
理解してしまったのだ。

「そ、そんな理由で・・・」
「そんな理由?そうだな。確かにチンケで興味本位な理由だな。でもさ、やりたくてしょうがないんだよ。お前も見てみたいだろ?本当に善い奴と使える奴だけの世界を」

大地の野望、それは誰でも想像しそうな小さな欲望から始まった。

「もっとも、該当しないバカなクズらは消えてなくなるだろうがな」
「・・・・・・・・・」

若菜は恐怖した、自分の婿となった男の本質に。
自分の小さな欲望を叶えるためなら、どんな犠牲も厭わない幼知性と残酷さに。

『話は済みましたか?』

そこへユートピアが現れる。

「勿論だ。そっちはどうだ?」
『えぇ、終わりました・・・・・・』

ユートピアは沈んだ声でかえす。

「あ、そう。んじゃまぁ。おっぱじめるか」
『そうですね』

【BASILISK】

二人の視線は、若菜に向けられた。





*****

一方、ユートピアに敗れ、もはや死を免れぬ状態となった冴子は、

「私、若菜を助けようとして死ぬなんて・・・・・・あんなに憎んでた妹を・・・・・・最低のオチね」
「若菜姫は任せろ」
「安心して眠ってくれ」

すると、草を掻き分けて歩いてくる男女の声を聞き、冴子は絶命した。
現れた男女のうち、白い帽子をかぶった男は、冴子の開いた目を閉じさせた。
そしてキセルを加えた銀髪の黒い服の女は、真っ直ぐに天文研究所をにらんだ。





*****

「うぅ!ああぁぁ!アアあああああ!!」

その頃若菜は、装置に取り付けられた椅子に拘束されていた。
装置はドンドン熱を帯びていき、それに沿うよう若菜の発光も勢いを増す。

『発動係数98%』
『いいじゃんいいじゃん』

――コツ、コツ、コツ――

足音が聞こえてくる。
その方向を向いてみれば、

そこには白い帽子の男と、キセルから煙を吸う黒い騎士甲冑の女がいる。

『君らか。何のようです?』
『訊くまでもないだろう』
「その通りだな」
「邪魔しにきた」

「左、翔太朗・・・リイン、フォース・・・」

若菜は、現れた二人の名を呼ぶ。

『もはや変身すらできないあなた方に、なにができる?』
「だったら仕留めてみろ」

翔太朗の挑発的な言葉に、ユートピアは火炎弾、バジリスクは怪光線を放つも、巧みに避けられる。
それでも自分らとの距離を一定に保とうとする。

が、翔太朗もリインフォースも簡単に砕けるような決意と覚悟を引っさげているわけじゃない。
粘り強く、距離をつめていく。

『大人しくしろっての!』
「・・・ッ」

バジリスクはリインフォースに自ら近づき、前のように首を掴んで持ち上げる。

「うあああああああああ!!アアアアア!!」

若菜の苦痛と悲鳴が響き渡る。
装置によるデータ化が目前にまできているのだろう。

『終わりだ・・・!』
Cheerio(チェリオ)

トドメがさされるかと思ったとき、

『ん?』

ユートピアは右手に違和感を感じた。

――グサッ!――

『ぐあああああアアアア!!』

バジリスクは眼帯を解き、全力で発動する直死の眼光を使おうとした途端、その右目に何かを突き刺されて果てしない激痛を感じた。

「「・・・・・・・・・ッ!」」

それは、翔太朗がかぶっていた壮吉の帽子と、リインフォースがくわえていたレイズのキセルだった。

『コイツ・・・!!』
『このクソ女(アマ)ァァ・・・!!』

2体の怒号にも関わらず、翔太朗とリインフォースは微笑し、アクロバティックな動きで翻弄し、キックを行って向こうに蹴り飛ばす。

勿論帽子とキセルは回収している。

「終わりはそっちの野望だ」
「さよならを言われるのはお前だ、園咲大地」

翔太朗は帽子をかぶり、リインフォースもキセルから煙をすって吐く。
リインフォースは腰のホルスターから記憶の魔導書を手にとり、ページを開く。
翔太朗も一気にギジメモリを構える。

【DOUBLE・THOUSAND BIND】

――バチッ!!――

『『なにっ!?』』

音声通り、千にもわたるバインドが、バジリスクとユートピアの自由を奪った。
リインフォースは覚悟を決め、事務所から出たときから、この準備をしていたのだ。


【STAG】
【SPIDER】
【FROG】
【DENDEN】
【MANTIS】
【FALCON】
【BEE】

さらには全ガジェット使用という豪華絢爛ぶりだ。
まあ、この2体に対してこの程度のことなどで、やりすぎという言葉はでないだろう。

ファルコンスナップ、ビースコープ、、バットショットがユートピアとバジリスクの黄を引いてるうちに、スパイダーショックがバインドの上からさらに鋼鉄のワイヤーで2体を縛り上げる。

『ざまぁ!ざまぁ!』

さらにはフロッグポッドによる挑発つき。

『『貴様らっ!』』

ユートピアとバジリスクの怒りには目もくれず、デンデンセンサーが特定した制御システムに、スタッグフォンとマンティスフォンが特攻し、破壊した。

それによってシステムのロックが全て解除され、翔太朗が若菜を解放する。

『『貴様らぁぁァア!』』

研究所は爆発を始め、翔太朗とリインフォースに若菜は勿論、ガジェットたちも迅速に避難する。

『ニゲロ!ニゲロ!』

そして、天文研究所は跡形もなく、木っ端微塵に爆発した。





*****

どうにかこうにかで脱出し、翔太朗とリインフォースは若菜を地面に寝かせた。

――ウェッ!――

そこへエクストリームメモリが現れ、フィリップを外にだした。

――ブゥゥゥーーーーン!!――

そしてバイクのエンジン音が聞こえると思えば、イビルホイーラーに乗ってゼロもやってくる。

「フィリップ・・・!」
「ゼロ・・・!」

「酷い顔だ」
「全くだ」

からかうようにそういった。

「男の勲章ってやつさ」
「じゃあ私はどうなんだ左?」
「えぇと、それはだな・・・」

リインフォースは女なので、フィリップの言った「酷い顔」をどう表現すればよいかわからずに戸惑う。やっぱりハーフボイルドだ。

「たった二人でよくやったね」
「凄いとしかいいようがない」
「そんなに褒めないでくれ」
「俺らは約束を守っただけだよ」
「君達の友であることは、僕の誇りだ」
「確かにな」

そうこういっていると。

『バカな・・・!こんなことで、私達の計画が止まるとでも思うのか・・・!?』
『なめてんじゃねーぞオイ!!』

ユートピアとバジリスクが爆炎のなか這い出てきた。
そして、ゼロはこういった。

「この『欲望』はもう、私の手中にある・・・」
『なんだと?』

右目に眼帯をしなおしたバジリスクに、リインフォースはその意味を答える。

「例え貴様らがどんなに巨大な『欲望』を抱えていようと、私達はそれを喰らい続けていく。己が順ずる信念を貫き通して戦う。それこそが仮面ライダーだ。この世界には仮面ライダーがいることを忘れるな」

『仮面、ライダーだと?』

そして、四人はそれぞれ並び告げた。
決意と覚悟の象徴を。

「財団X、加頭順!」
「そして園咲大地!」

翔太朗とリインフォースは、相棒と左右に並んだ。

「「さあ、お前の罪を数えろ!」」
「「さあ、貴様の欲望を差し出せ!」」

『『うぅぅおおおおおおおお!!!!』』

ユートピアとバジリスクは獣のように慟哭する。

「いくよ、翔太朗!最後の・・・」
「あぁ、最後の!!」
「そして現在(いま)を繋ぎ!」
未来(あす)を繋げる為の!!」

【CYCLONE】
【JOKER】
【MAGICAL】
【WISEMAN】

メモリが起動される。
二組は駆け出し、腕を構えた。

「「「「変身!!」」」」

―ーウェッ!――
――ギガガァ!!――

【XTREME】
【XCELION】

W・CJXとイーヴィル・MWXに直接変身。

【GOLD・MAXIMUM DRIVE】

さらにはCJGXへと超進化する!

W&イーヴィルは、勢いのままに拳を繰り出し、ユートピアとバジリスクに命中させる。

『クッ!』
『フン!』

蹴りや拳を繰り出すも、それを素手で受け止め、次々と払い除けていく。
さらには拳による一撃つきだ。

『こんな筈はない!』
『オラァァ!!』

単純爽快なパンチを、イーヴィルとWは避けることなく、そのまま手で受け止める。

『相手の感情が強いほど、それを吸い取れるユートピアは勝るはず!ウオオオオオおおおおお!!』
『例えエクセリオンだろうと、弱体化した身体には毒なくらいの魔力を注入してやる!!』

が、

――バチバチッッ!!――

ユートピアの右腕とバジリスクの左腕の皮膚が裂けた。

『私の器(からだ)に、収まらない・・・・・・』
『そんな、逆流だと・・・!?』
「このWにはな、街の皆の希望の想いと、フィリップの最後の想いが篭ってんだよ・・・!テメーなんかに喰いきれる量じゃねーんだよ!!」
「それにゼロも、貴様の陳腐な魔力を欲する程落ちぶれては居ない。甘くみるのも大概にしろ!!」

Wとイーヴィルは思い切り敵を蹴り飛ばす。
そう、Wもイーヴィルも、互いに支えあうものと守るべき者たちの想いゆえに、ユートピアやバジリスク相手にも素手で挑んでいけたのだ。

『これが、W・・・!まだだ・・・!まだだ!』
『ライダー如きが・・・!認めねぇ!認めねぇぞぉぉ!!』
『『うおおおおおおおおおおおおお!!!!』』

二人は再び吼え始める。
Wとイーヴィルはすかさず検索する。

「奴に最も効果のある攻撃だ」
「次で決めるぞ」

【PRISM】
【NEXUS】
【EVIL】

【PRISM・MAXIMUM DRIVE】
【EVIL/NEXUS・MAXIMUM DRIVE】

プリズムメモリをインサート。
イーヴィルメモリとネクサスメモリのツインマキシマム。

『『オオオおおおおおおおおお!!!!』』

全身から光を放ちながら宙に浮かび始める2体のドーパント。

【XTREME・MAXIMUM DRIVE】
【XCELION・MAXIMUM DRIVE】

「「「「トォ!」」」」

Wとイーヴィルは跳躍し、ドーパントの二人も一気に足を突き出してキックの姿勢となる。

「「ゴールデンプリズムエクストリーム!!」」
「「ファイナライズネクサスエクセリオン!!」」

二大キック同士がぶつかりあうことで、激しい衝撃波が生じた。

「「オオオぉぉぉぉぉおおお!!」」
「「ハアアァァァァァアアア!!」」

両足から繰り出される連続キック。
その回数と威力に、

『『グアアアァァァァ!!』』

――ドゥガァァァァン!!――

凄まじい爆発が発生し、加頭と大地が地面に叩きつけられる。
無事に着地したWとイーヴィルは、二人の様子を警戒しながらみていると、二人は辛うじて立ち上がり始めた。

もっとも大地と違って加頭はNEVERゆえ、身体が消滅しようとしているが。

「・・・・・・お前の罪を・・・・・・数えろだと・・・?」
「欲望を差し出せ?・・・・・・傲慢だな」
「人を愛する事が、罪だとでも・・・?」
「『欲望』は、人間の全てだ。それを差し出せとは、あんた自身・・・『欲望』の塊、だな・・・・・・」

【UTOPIA】
【BASILISK】

「「「「ッッ!」」」」

身構えるライダー。
しかし、二人はメモリを落としてしまった。

――バチッ!――

メモリは爆ぜた。

そしてこの戦いを見ているものがいたのだ。

「財団は、これで正式に、ガイアメモリから手を引く」

ストップウォッチをとめると、部下の二人をあっさりと切り捨てて、ウルスランドは次の現場に急いだ。

そうして、加頭は消滅し、大地は失神する。
それを見て漸く緊張の糸が解れたかと思いきや、エクセリオンメモリとエクストリームメモリのガイアディスプレイから、少量のデータと魔力が洩れ始めた。

ここでは、イーヴィル・・・・・・ゼロとリインフォースの暫しの別れのまえにおける、会話のほうを聞いてみることにしよう。

「最期の時だな。・・・相棒、私のことは管理局の連中には黙秘しろ。私がいないとわかれば、連中は好き勝手するからな」
「・・・わかった」

そう、上層部の泥をネタに脅迫するゼロの存在は、ある意味局内での犯罪防止に一役買っているのだ。

「では、逝くぞ」

左手がメモリを閉じようとすると、右手が左手を掴む。

「ん?」
「私の手で、やらせてくれ」
「良かろう」

左手はどき、右手にゆだねる。

「・・・・・・・・・」
「貴様は言ったはずだ。私達は魂が滅ばない限り、この世界が消えない限り、永遠に相棒だと」
「・・・・・・・・・うぅ」

さっきから時間がかかっていると思えば、どうやら泣いているらしい。

「いい歳をしてメソメソするな。本来なら私が泣く場面だろ」
「ゼロ・・・私は、私は・・・」
「大丈夫だ。例え肉体がなかろうと、私達は二人で一人の仮面ライダー。私の魂は貴様と共に在る。私が死ぬ時が貴様の死ぬ時であり、貴様の死ぬ時が私の死ぬ時だ」

優しく論ずるゼロ。
リインフォースはそんな彼に少しでもいいから敬意を表するべく、自分を律した。

「・・・・・さようなら、あなた」
「さようなら、我が妻よ。・・・・・・そして」

そうして、右手はエクセリオンメモリを閉じた。
今わの際、ゼロはこういった。

――ありがとう――



「・・・・・・・・・・・・」

リインフォースは、イーヴィルメモリとワイズマンメモリが消え去ったことで、マジカルメモリのみとなったイーヴィルドライバーを見ないよう、空を見上げた。

エクセリオンメモリが空間の狭間である虚数空間に飛び込んでいった、白雲の浮かぶ青い空を。





*****

園咲若菜と園咲大地は、警察病院に搬送された。
左はフィリップからの依頼を完遂させたが、私がゼロから託された願いはここから始まっていく。
ゼロが居なくなったことで、全てが沈みこんでしまった我が家。
私はその空気に耐え切れず、あの夜にゼロが私に贈った物を確かめてみる事にした。
中には二つのプレゼントがはいっていた。

包装紙をとき、箱を開けてみると、そこにはレフトスロットに一本の透明なガイアメモリがインサートされているメモリドライバーが入っていた。
そしてもう一つは、手紙だった。

その内容を読んだとき、私が仮面のように貼り付けた表情を、流れる涙の所為で張り直すことになってしまった。



――私達に必要な、この世界を頼む。
     仮面ライダー、リインフォース。
              最愛の相棒より――



短絡的で簡潔な文章だが、伝えるべきモノはキチンと伝わった。

「ありがとう、ゼロ。・・・私は、精一杯、頑張ってみせる・・・」

今日は涙を流してばかりの泣き顔だが、きっと何時か泣き止んでみせる。
そして、仮面ライダーで在り続ける。



――追伸――



ん?



――産婦人科受診――



(ッッ!ま、まさか!?)

私は慌てて自分の下腹部に手を当てた。
すると、今迄感じなかった、新しい命の息吹を感じ取った。

どうやら私には、泣いてる暇もないらしい。
しっかりと頑張らなくてはいけないな。

この()の・・・・・・ネオの為にも。

次回、仮面ライダーイーヴィル

EとIにさようなら/街【せいぎ】

「この『欲望』はもう、私の手中にある・・・」

これで決まりだ!

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