これまでの、仮面ライダーブライ
前回の三つの出来事!

一つ!異世界における超天才、鑢七実がグリードとして転生!
二つ!物語の主役、鋼刃介が七実とであい、彼女に一目惚れする!
三つ!刃介は、ブライへと変身した!

説明とヤミーと空間破砕


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッッ」
「おや、気がつきましたか?丸一日寝てましたよ」
「・・・七実・・・」

初めてブライに変身し、タトバヤミーを滅した刃介。
眼を開けてみると、自分は布団の上に寝転がり、隣では七実が正座してこちらを見下ろしている。
どうやらここは自宅の居間らしい。

さらに視線をあちらこちらに移すと、卓袱台の上には大量のセルメダルが無造作に置かれていた。
どうやら七実がきちんと回収したらしい。

「・・・・・・やっぱ、夢じゃねーな」

そして、異形となった右腕を確認して、体を起こした。

「あ、その腕ですけど、元の状態を想像すれば簡単に戻りますよ。外観だけはね」

七実はそう言った。
刃介は七実の言葉に耳を傾けて、素直にそれを実行してみた。

(戻れ)

その思考と共に、右腕は外見の上では元に戻った。
だがやはり、体中に漲る力が、自分の身に起きた現象の証拠になっている。

「・・・・・・・・・教えてくれ」
「私の正体、ヤミー、メダル、そしてブライのことですね」

七実は刃介が訊きたくて仕方がない項目を先に口走る。

「勿論お教えしますよ。全てを・・・ね」

七実は悪そうな笑顔でそういった。





*****

トライブ財閥会長室。

「フフフ♪想像以上の腕前だわ」

シルフィードは会長席の座りながら、モニターで録画されていたブライの戦闘映像を鑑賞していた。
勿論、好物の赤ワインを口の中に注ぎこみながら。

「確かに、会長から直接ブライの話は伺ってはいましたが、想像以上の一言に尽きますね」

バットも素直に感想を述べる。

「君はどう思う?吹雪君」

そこへシルフィードは、部屋のソファーに座りながらモニターを見ている青年に声をかける。
服装は白いライダースーツだが、前と違ってヘルメットを手に取っているので、素顔が表にでていた。
雪のような白い髪、少々細身ながらも長身でがっちりとした体格、純朴そうな顔立ちだった。

凍空(いてぞら)吹雪(ふぶき)
それがこの青年の名だ。

「なんというか、がむしゃらだったっすね。もう勝てれば何でもいいって感じで・・・」
「ふーん、やっぱり彼も我刀流の一族なのね」

シルフィードは吹雪の感想に、なにかを確認したかのような態度になる。

「バット、我が財閥が開発中のアレとアレは?」
「例のグリードが復活した日に、既に完成しております」
「お、遂にあれをブライにプレゼントっすか?」

バットが冷静に受け答えをすると、吹雪が食いつく。

「その通りよ。次の戦闘が起こり次第、届けて頂戴」
「了解っす」

そういって吹雪は会長室からでた。
するとシルフィードは、会長席から腰を持ち上げると、会長室内に特別に設けられたミニバーの椅子に腰かける。

彼女がいかにワイン好きかがわかる。
シルフィードはからになったグラスに、もう一杯分の赤ワインを注ぐ。

「会長、お酒を飲むことに関してはもう何も言いませんが・・・」
「言いませんが?」
「やっぱりそのコスプレをどうにかして欲しいのですが?」

今回のコスプレは、毛皮服だった。
もっとも、露出度はかなり高めで、上半身は胸を手ぬぐいで巻いた程度しか隠れていない上、爆乳なせいもあって今にも零れ落ちそうだ。おまけに下半身はミニスカートである。

こんなシルフィードの姿を見ても吹雪が平然としていたところをみると、こんなことは日常茶飯事で、吹雪自身もう慣れてしまったのであろう。

こんなみょうちくりんな空気が流れる間にも、ブライの新しい力が、始動をを迎えようとしていた。





*****

鋼家。

「つまりお前は元を正せば異世界の人間で、死んだと思ったら、グリードという欲望のメダルの怪人になっていたと」
「平たく言えばそうですね」

刃介はまず、七実の正体を理解した。

「一々訊かれるのは面倒なので、こちらから一方的に説明しますね」

と、七実は語り始める。


「オーメダルというのは、さっき言った通り、人間の欲望から生まれる物質です。種類にはコアとセルがあって、私達グリードはコアメダルを心臓部とし、セルメダルを血肉にして存在しています。さっき貴方が倒したヤミーは私以外のグリードがセルメダルを基に誕生させた家畜のようなもので、人間の欲望をエサに成長します。そして、親となった人間や投入されたメダルによって、喰らう欲望や成長方法が異なってきます」


七実は要点を絞って説明する。

「・・・・・・成る程、大体わかった」

そして刃介は理解した。

「そしてブライはコアメダルの力を宿すことでグリードと対等に戦ったとされる凄まじい戦士らしいです」
「らしい?」
「私は八百年前、この世界にはいませんでしたから、実物を初めて見たのは昨日です」

ならば、それはそれで疑問もある。
八百年前にはこの世界にいなかった七実。
ならどうして鋼家には彼女のコアが三枚あり、八百年前のブライはどうしてそれを使っていたのか?

(ま、謎は後でゆっくり解きほぐしていくか)

刃介は、山盛りになった疑問の解決は、現時点においては不可能とし、もう少し休養をとることにした。





*****

「予想はしていたが、やはりブライが復活したとはな」

ここはとある廃屋。
5系統のコアを宿すグリード・リュウギョクは、ここを暫定的な隠れ家にしていた。

「だが一番気になるのは、私のコアを持ち去ったあの女グリード・・・・・・いったい何者だ?かつての戦いには、あんな奴はいなかった。・・・ブライが最初に使っていたメダルは奴の担当系統のようだが・・・」

廃屋のなかにある椅子に腰かけながら、リュウギョクは考え込む。

「・・・・・・もう一体ほど、ヤミーを放って様子をみるか」

そうしてリュウギョクは怪人態となる。

『奴の子孫の力量を測る為にもな』

そうして、リュウギョクは自身の体をメダル化させて飛んで行った。

苗床となるであろう、欲望を探して。

所変わって、街中の裏路地。

「はぁ〜〜」

変に長いため息を出す者が居た。

「やっちゃったよぉ・・・・・・あぁ、やっちゃったよ」

なにやら後悔しているようだ。

「こんなことなら、あんなのに注ぎ込むんじゃなかった。なんであの場面であんな駄馬が追い上げてくるんだよ!?」

どうやらこの男、競馬で負けたらしい。

「あーあ、どっかに金目になりそうなうまい話はないもんかね〜?」

そんなこと言ってる暇があるのなら働け。
だが、そんな時だ・・・。

『金が欲しいのか?』
「だ、誰だよ?」

いきなり女の声が聞こえてきた。
すると、

――ジャリンジャリンジャリンジャリン!!――

音を立ててあつまる大量のメダル。
それらは一つに結合し、一体の怪人となる。

「ばっ・・・化物!?」
『その欲望、解き放て』

リュウギョクは一枚のメダルを男に投入した。
そして白ヤミーがズルズルと男から産まれ出でると、呻き声をあげながらどこかへと彷徨い歩いていった。

「お助けぇぇぇえ!!」

男は情けない声を出しながら逃げていったが、リュウギョクは一切きにしないと言った感じで、どこかへと立ち去って行った。

『成長する頃には、ブライの奴でも気づくだろう』

一言だけ呟いて。





*****

一方、刃介と七実は・・・。

「ほれ、これで全部だ」
「ありがとうございます」

刃介は家中にあった本を全て、七実に読ませていた。
現代社会において、彼女をいち早く順応させる為だ。

「・・・・・・・・・へぇ」

時折、感心したかのように声を出すときもあったりする。
七実が人間だった頃=「刀語の世界」は江戸時代に等しいレベルだ。

なので当時では考えようもなかった技術の数々に驚いているのだろう。

「さて、いってくるか」
「何処へですか?」

外出しようとしている刃介に七実が聴いた。

「お前の着物買いにだよ。今着てるのしかないんだろ?」
「えぇ」
「知り合いの古着屋に行って、安く買ってくるから」
「でしたら私も一緒にいきます」

と、七実は本を閉じて立ち上がった。

「自分で着る物くらい、自分で選びたいので」
「まぁ、いいけど」

そうして二人は古着屋に向った。





*****

その頃白ヤミーは。

『う〜〜』

うめきながら街を彷徨っていた。
が、絶好の標的を見つけるのに、時間はかからなかった。

一言で言うと、闇金融会社でした。

よりにもよってなんでこんな場所をチョイスしたのやら。
もしかしたら、濁りに濁った欲望の影響なのかもしれない。

――ドガァァン!!――

白ヤミーは荒っぽいやり方でドアを蹴破った。

「なんだテメー!!?」
「ケンカうっとんのか!?」
「ナメたことしてんな・・・?」

明らかにヤバい方たちのが歓迎してくれるも、


一分後


「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」

全員沈没。

白ヤミーは金庫にある札束を全て喰らった。
喰らって、セルメダルに変えていく。

――チャリン、チャリン、チャリン――





*****

その頃、刃介と七実は古着屋で小袖と襦袢を何着か買いに求めていた。

「えっと・・・・・・これと、あれと、それと・・・あとはこの着物を」
「そんなもんでいいのか?」

七実が選んだのは、今着ている死装束のような白い小袖と同じ物と、
薄緑色の小袖と水色の小袖と桜色の小袖だった。あとは襦袢と長襦袢だ。

「えぇ、下手に多く持っていても仕様が無いので」

やはり彼女は無欲だった。

「まぁ、いっか。んじゃ、ちょっくら交渉してくるかな。じっちゃんにばっちゃん!」

そして彼は強欲だった。
値切り交渉を行うべく、店主をしている老夫婦に声をかけると、その瞬間に・・・

――チャリン、チャリン、チャリン――

「「ッ!」」

(この音は・・・?)
(セルメダル)

二人はヤミーの気配を察知した。
七実はともかく、刃介までということは、やはり彼もグリード化の影響を色濃く受けているのだろう。

「なぁ頼むよ〜!」
「ん〜〜、どうしたもんかねぇ」

しかし何故か刃介は値切り交渉を続けている。
七実は刃介にヒソヒソ声でコッソリと話す。

「いいんですか、ヤミーがいますけど」
「ふん、お前の説明どおりなら、ヤミーはエサを喰って成長するってんなら、喰って成長したところを叩けばいい」

要するにこの男は、メダルが貯まりに貯まるまで、ヤミーを放置するきでいるのだ。

「まあ、貴方がそういうなら、お任せしますけどね」

そして七実は、雑草(たにん)に一々気を留めるような性格ではなかった。

「うぅ、どうするかね婆さん?」
「ジン君には何時もお世話になってるしねぇ」

老夫婦は悩みに悩んでいた。
刃介はこの店の常連な上、暇で退屈極まった時には、よく古着屋の力仕事をやってくれたりしている。
それゆえに、

「じゃあ、半分で」
「お、サンキュー」

着物の値段を半分にした。
着物を全て袋に入れて、刃介と七実に私、刃介は代金を渡して古着屋から出た。

「日頃からの下準備が大事だな」

刃介がなんか腹黒いことを小さく呟いたりしてたが。





*****

とある銀行。

「チクショ〜〜」

そこでは一人の高校生あたりの少年が悔し涙をうかべていた。

「この花菱(はなびし)烈火(れっか)、一生の不覚だ・・・・・・」

この烈火という少年は、仲間達とで昼飯を奢るかどうかで勝負したようだが、結局それに負けてしまい、奢ってもらうつもりが逆に奢らされる羽目になったらしい。

しかも、財布が空っぽだからこそ言い出したが故、負けたら負けたで銀行の残高を引き落とすことになっちゃったのである。



だがしかし、

『お〜〜!』
「ッ!キャアアアアアア!!」

白ヤミー出現。
客たちは絶叫してしまう。

「ッ!」

その叫び声に気づいた烈火は、反射的に白ヤミーの前に立つ。

「おいテメー!なにもんだ!?」
『うぅぅぅ』

烈火が訊いてもなお、白ヤミーはうめくだけ。
烈火には一切興味を示すことなく、逃げ惑う人達を掻き分けて、金庫に侵入した。
勿論力技で金庫の扉をこじ開けてだ。

――ガツガツガツガツ!!――

そして大量の札束や金塊を食べ始めた。
それこそ、なんの遠慮も無く、ただただ純粋にだ。

「止まりやがれ!」

烈火は白ヤミーに組み付き、止めようとする。

『うぅぅおおお!!』

白ヤミーはそれに対し、烈火を振り払った。
素手で金庫をこじ開けられるほどの腕力なので、ケンカ・・・・・・戦闘なれしている烈火も向こう側に叩きつけられる。

「ぐはっ!」

そうこうしている間に、白ヤミーはどんどん欲望を喰らっていく。

――ガツガツガツガツ!!――





*****

鋼家に戻った二人は、買った着物を卓袱台の上においていた。

――チャリン、チャリン、チャリン――

「そろそろか。・・・七実、いくぜ」
「構いませんよ。楽しませてくださいね」

そうして二人はとんぼ返りするかの如く、再び草履を履いて外に走り出した。





*****

『うぅおおおおおおおおお!!!!』

一方こちらでは白ヤミーが満腹となり、ナナフシヤミーへと姿を変えていた。
いや、この表現には誤りがある。
正確に言うと、ナナフシヤミーが繭=白ヤミーからでてきているのだ。
そして、役目を果たした白ヤミーは粉々に砕け散った。

「なんなんだ?あのデッケー虫は?」

烈火は今起こっていることがなに一つ理解できていなかった。
が、烈火は右手の指を摩擦させると、

「出でよ、炎!!」

右腕の手甲が一瞬だけ煌き、彼の右手からは赤き炎が放射され、ナナフシヤミーを包み込む。

これこそが烈火の一族だけの固有能力。
ほんの少しの摩擦熱と精神力を用いて、自由に自然発火現象を操る炎術士(えんじゅつし)

『ヴェエエエエエ!!』

しかし、成長体であるナナフシヤミーには微塵も効果がない。

「だったらこれだ!」

烈火は指で空中に字を書く。
書かれた字は、砕!

竜之炎弐式(りゅうのえんにしき)砕羽(さいは)!」

その瞬間、烈火の右腕から炎の刃が生えた。
烈火の宿る八匹の火竜の一体・砕羽の力だ。

「うらぁぁぁ!」

烈火は勢いに乗せた炎刃(えんじん)をナナフシヤミーに突きたてた。

『ヴェエエエ!ヴェエエエエエ!!』

――チャリン、チャリン、チャリン、チャリン――

ナナフシヤミーの巨体からはセルメダルが漏れ出していく。
ようするに多少は効いているのだ。

「よし、このまま!」

意気込む烈火。
しかし、

『ヴェアアアア!!』

――バシッ!――

「いってぇ!」

ナナフシヤミーはその細い体躯からは想像もしえないようなパワーで烈火を振り落とした。
しかも六本の脚のうち二本の足による攻撃つきだ。

烈火も堪らず頭を抑えて蹲ってしまう。
痛みは想像以上にあり、とても数十秒で引くようなものではなかった。

烈火が蹲っている間にナナフシヤミーは銀行の壁を食い破り、隣にあるビルに侵入していく。

――スタスタスタスタ――

そこへ、ナナフシヤミーの成長ぶりを見ているものが、歩いてこちらに近づいてくる。

「こいつは上々だな。たっぷりメダルを稼げそうだ」
「満腹になるには、建物を食い尽くす必要がありそうですね」

刃介と七実だった。
そして烈火は、二人の会話を聞き逃さなかった。

頭に出来たコブをおさえながら、二人に歩み寄る。

「おいあんたら、あの化物のこと知ってんのか?」
「・・・・・・・・・」
「答えろよ!」

烈火は刃介からヤミーについて問いただそうとする。
が、


『ヴェエエエエエアアア!!』
「ぎゃああああ!!」
「助けてくれぇぇぇ!!」
「化物よぉぉぉぉ!!」


そこへ聞こえてくるのは、助けを求める人々の声。

「・・・・・・・・・」
「刃介さん。いきなり黙り込んだりして、どうしたんです?」
「別に」

被害者達の悲鳴に耳を傾ける刃介に、七実が声をかけた。

「うわぁぁぁん!!」

そこへ一人の子供が涙で顔を濡らしながら走ってきた。

「どうしたチビっ子?」

烈火は問いただすのを中断し、子供に駆け寄る。

「ぐすッ・・・・・・父さんと母さんが、まだ・・・まだ・・・」

どうやらこの子の両親はビルの上階で取り残されているらしい。

「・・・・・・・・・・・・」

刃介はその子供を黙ってみていた。
そして・・・・・・。





*****

十五年前。
刃介は少しばかり、心の中の記憶にいた。

思い出されるのは、血の色と匂いと味しかしない、最悪の記憶。

「ここの・・・・・・押入れに隠れていて!」
「絶対に外に出ちゃダメだぞ!」

そういって自分達を押入れの中に隠したのは、刃介の両親だった。
(はがね)鉄郎(てつろう)(はがね)鏡子(きょうこ)

「こ、怖いよ・・・兄さん・・・」

妹の(はがね)金女(かなめ)

「・・・・・・・・・」

そして自分はなぜか、酷く冷静だった。
まるで無機物のように、一本の刀のようにだ。

――ブシュゥゥゥゥゥ!!――

「ヒィ・・・・・・!」

金女は怯えた声を短く出した。
なにかが一気に裂けて、なにかが盛大にふきだす音。

――ゴトリ・・・――

なにか二つの物体が、床に落ちる音。
その押入れの中から垣間見た光景を見た瞬間、刃介の記憶は少しとんでいた。





「白くて真っ赤だ」

それが記憶の途切れた先で、彼が覚えている言葉の一つだった。
鏡を見てみると、自分の髪の毛は白かった。染めたわけでも脱色したわけでもないのに白かった。
元の色を完全に喪失していた。

そして、彼の体と手は赤黒かった。
両手には子供の手には丁度いいサイズの小太刀が握られていて、その刃は勿論のこと、衣服さえも血で染まっていた。

「い、いや・・・・・・いや!イヤァァァァアア!!」

そして、恐怖の余り家から飛び出し、以来十五年間音信不通の妹。

当然のことだ。
何しろ実の兄が、両親を殺した強盗を斬殺したのだから。





*****

回想終了。

「一丁、やるか」
「「・・・ッ」」

ここで刃介は戦うことを口にする。

「待つんじゃなかったんですか?」
「気が変わった。俺はただ、自分のやりたいようにやるだけだ。・・・いつだってな」
「そうですか。では私はなにも言いません」

七実がそういって、ブライドライバーと三枚のコアを渡す。

「小僧」
「なんだ?」
「手伝え」
「・・・・・・あぁ!」

刃介の協力要請に、烈火は力強く答えた。
二人は一気にビルの上階を目指して走り出す。

「さて、私は外に出るとしましょうか」

そうして七実は、床に落ちていたメダルを拾い、屋外に出て行った。





*****

高層ビルの二十階
そこには三十歳前後の夫婦が、窓越しで見えるナナフシヤミーの巨体に恐れていた。
ガクガクブルブルと体を震え上がらせ、互いに抱き付き合っている。

『ヴェアアア!』
「きゃあああ!!」
「うああああ!!」

ナナフシヤミーは一本の足を伸ばし、女性の体と男性の体を掴んだ。

二人自身は、自分の命運もここまでかと思った。
そして二人揃って思い描いたのは、

((生きて、生き延びて!))

我が子のことだった。

竜之炎壱式(りゅうのえんいちしき)(なだれ)!」

――ビュンビュン!!――

その時だ、いくつもの炎弾がナナフシヤミーに直撃し、思わずナナフシヤミーの足の力が弛んだ。

「虚刀流」

刃介は、昨日見たばかりの技を使う。

蒲公英(たんぽぽ)

右腕をグリード化させての攻撃故に、ナナフシヤミーの足を刺し、夫婦を救出することに成功した。

「あ、ありがとうございます!!」
「なんと言えば良いのやら・・・!」
「いいっていいって!・・・それよりも、チビっ子が待ってるぜ!」
「「は、はい!!」」

夫婦は烈火に促されて、急いで最下階に降りていく。

「さーてと、あとはこいつをどうするかだな」
「奴は俺がやる」

刃介がブライドライバーを装着し、コアをセットしたとき、

『ヴェヴェヴェヴェアアアアアアアアアア!!!!』

ナナフシヤミーがこのうえない怒りを示したのだ。
崩の炎弾と刃介の蒲公英が原因だろう。

ナナフシヤミーは他の足を突っ込み、烈火を掴んだ。

「うわッ!?」

そして外に放り投げたのだ。
だがこれで終わるほど、烈火は素直ではない。

竜之炎参式(りゅうのえんさんしき)焔群(ほむら)!」

空中に『焔』の字を書き、右腕に縄状の炎を巻きつけると、その炎を伸ばしてビルの柱に巻きつけてみせた。

「おーい、大丈夫かー?」
「あ、あぁ・・・なんとかな」

刃介も少しばかり心配になって烈火に声を掛ける。
そこで、刃介は一つ考えた。

「とぶぞ」
「・・・え?」
「跳ぶぞといった。正確には飛び降りるだが」
「ちょ、ちょっと待て・・・・・・えぇぇ!?」

烈火は心底驚いた。
目の前にいる男は、普通に考えたら自殺宣言をするに相応しいことをいっているのだから。

「んじゃ、俺はいくぞ」

そう言って、刃介は本当に飛び降りた。

「お、おい!!」

烈火は必死に手を伸ばした。
無駄で無謀とわかりながらも。
しかし、その無駄と無謀は別な意味で成立した。

「変身!」

≪RYU・ONI・TENBA≫
≪RI・O・TE!RIOTE!RI・O・TE!≫

魔化不可思議な変身ソングが流れ、終わったときには、
一人の男は、血錆色の凶悪な戦士となっていた。


――ガリガリガリガリ!!――


落下する速度を魔刀『釖』の刃をビルの壁に突き刺すことで沈静化させていったのだ。
通常の刀では到底できない手法である。

「随分無茶なことをしますね」

地上にまで降りると、呆れ顔の七実にそんなことを言われる。

「なーに、訊きたいことと、貸して欲しいものがあったのさ」
「なんです?」
「このブライの能力についてだ」
「影を操る能力。腕を飛ばす機能」

七実はブライ・リオテコンボの固有能力と、共通機能を口にする。

「成る程、わかった。・・・あ、それから、他のメダルを頼む」
「いいでしょう」

七実は二枚の緑色のメダルを渡した。

――ブゥゥゥゥウウウゥゥゥゥゥゥン!!――

その時、バイクのエンジン音が聞こえた。
振り返ってみると、向こう側からは一人の人物がバイクに乗ってこちらに近づいてくる。

白いライダースーツに長身かつ細身でがっちりとした体格。
ヘルメットをとってみると、雪の色をした髪の毛と純朴そうな素顔をみせてくれた。
そう、凍空吹雪だ。

そして彼が乗ってきたバイクはライドベンダーではなく、黒を基調として血錆色のラインが複雑に走るバイクである。

吹雪はバイクの荷台部分から一つの箱を取り出してブライと七実に近づく。

「俺っちの雇い主からの、贈りものっす」
「贈り物?」

ブライに箱を手渡した吹雪は、箱の蓋を開けた。

「コレは・・・?」
「なんですこれ?」

箱の中にあったのは、一丁の大型の銃だった。
ブライは箱を投げ捨てて銃を手にとって見せる。

「そいつの名は”メダマガン”。ブライ専用の銃型ウェポンっすよ」
「俺の?」
「そうっす。ついでにこのバイク、”シェードフォーゼ”も譲るっす。好きに使ってください。セルメダルを投入すれば、起動するんで」

ブライは吹雪の説明に少し胡散臭いものを感じたが、先ほどナナフシヤミーに蒲公英を決めた際に得た数枚のセルのうち一枚をシェードフォーゼのメダル投入口に入れてみせる。

≪MOBILE MODE≫

すると、シェードフォーゼは圧倒言う間に変形していき、ロボットとなった。
シャードフォーゼ・モビルモード。

「スッゲーじゃねぇか」

ブライは素直に感心した。

『〜〜〜〜〜〜〜』
「乗れってか?」

すると、シェードフォーゼはブライに対し、自分の背中に乗るよう、ボディランゲージをして伝えた。

――ジュボォォォォオオオ!!――

シェードフォーゼの脚部に搭載されていた”デザイアジェットエンジン”が作動し始め、ブライを乗せたまま、空中を飛んでいく。





*****

ビルの屋上。

「喰らえ虫野郎!!」

烈火はナナフシヤミーを足止めしていた。
今の自分の力では、この化物を足止めするのがやっとだということは、既に承知している。

(こんな時に、あのエロジジィは・・・!)

もっとも、火竜のなかで最も威力のあるアレを使えば話は別だろうが、ホイホイと使えるようなものでもないが故、他の火竜の力を使っていた。
だが、その化物について知識があり、奇妙な歌と共に変身した刃介ならばと思ってのことだった。

「よく踏ん張ったな小僧!」

そこへ聞こえてくるはブライの声。

「後は俺に任せろ!」

シェードフォーゼが屋上の直上にまでくると、

「よし、バイクに戻れ」
『・・・・・・・・・』

音声入力式ではないのか、シェードフォーゼは反応しない。

「ん?・・・・・・あ、スイッチか」

≪BASIC MODE≫

首部分にあったスイッチを押すと、ガシャンガシャンという音を立てて、バイク形態のベーシックモードに戻った。

床から2・3メートルあたりは離れていたので、ブライはともかくシェードフォーゼにとっては荒っぽい着地になった。

「んじゃ、早速メダルチェンジといくか」

ブライはメダルを換装し、スキャンした。

≪RYU・HACHI・INAGO≫

腕は蜂の毒針=虫刀(ちゅうとう)(くぎ)』を装備したもの、脚はイナゴのそれへと変わったリュウハチナへと変わる。

「脚と、腕が・・・!?」

烈火もブライのコンボチェンジに驚いた。
もっとも刃介はコンボチェンジをメダルチェンジと呼んでいるようだが。

「あらよ!」

――バシュン!バシュン!――

両腕の虫刀『釘』から発射された二発の巨大な毒針。
射出して以降も、新しいものが生えてくる。だから鳥刀『鏃』ほどではないが連射が利いた。

嫌な音を立てて刺さる虫刀の針に、ナナフシヤミーの体は侵食されていく。

『ヴェ、ヴェア、ヴェエエエ!!』

ナナフシヤミーの体勢は今にも倒れかねない不安定なものになっていく。
さらにはナナフシヤミーが立っているのは屋上の際どい部分だ。うっかり脚を踏み外せば確実に落ちてしまう。

そこへ、

「落ちろ」

――ザスッ!――

ブライは無情にも虫刀『釘』の毒針が光る両腕によるダブルパンチを、ナナフシヤミーにくらわせた。
結果としては当然、ナナフシヤミーは地上に落下していった。

「よし」

ブライはそれを見ると、ベルトの左サイドにあるオーメダルネストから一枚のセルをとりだし、横に倒れているシェードフォーゼに投入した。

≪MOBILE MODE≫

たちまちロボット形態のモビルモードとなる。

「先に降りてろ。んで、奴の足止めをしてろ」
『・・・・・・(コク』

シェードフォーゼはその命令をきき、デザイアジェットエンジンを起動させて地上に軟着陸した。

「おい、俺たちはどうすんだ?」
「決まってんだろ」

ブライはメダルを換装し、スキャンする。

≪RI・O・TE!RIOTE!RI・O・TE!≫

リオテコンボ。
ブライはビルの屋上の際どい部分に足をかける。

そして、飛び降りた。

「ッ!!」

烈火は勿論驚く。
二度も飛び降りなんてする人物は早々いないからだ。
つーか絶対にやらない。

「お前も来い小僧」

――ガシッ!――

「・・・・・・あれ?」

掴まれた。飛び降りたはずのブライの腕に。
少し視線を変えればその疑問は一瞬で解決する。

一言でいうと、ブライの右腕の肘から先の部分が、二重螺旋型の鎖・エナジーチェインと呼ばれるもので繋がれながら飛んで来たのだ。

そして”チェインハンド”のエナジーチェインは勢い良く巻き戻っていく。
勿論手に掴まれた烈火もそれに強制同行させられた。

「んじゃ、もう一丁!」

ブライは烈火が自分の真上にきているのを確認して、左手の指をパチンと鳴らした。
するとどうだろうか?

周囲にある影という影が形を変え、姿を変え、位置を変え、ブライと烈火が着地するポイントに巨大なトランポリンのような状態で形を一時的に固定させたのだ。

これがリオテコンボの固有能力・”黒影操作(こくえいそうさ)”である。

「あ、あんた、規格外すぎねぇか・・・?」

烈火も常人離れすた能力を有するが、ブライの力はそれ以上だ。
着地が成功しても生きているという心地がしない。

「あ、そう。・・・シェードフォーゼ、戻って来い!」
『・・・・・・・・・』

ブライの声をきき、シェードフォーゼはビームソードに変形させた右腕と、連射波動砲に変形させた左腕を元に戻し、主人のもとに急いだ。

「戻ってもらうぜ」

≪BASIC MODE≫

バイク形態のベーシックモードに戻し、ブライはそれに跨った。

「免許あんのか?」
「免許はある。バイクは今迄持ってなかったがな」

つまり、教習所でバイクの免許をとっていこうはバイクに乗っていないということだろう。

「そこで待ってろ」

そうしてブライはさっきから全く使っていなかったメダマガンのマガングリップを握った。。

「こいつにもメダルが要りそうだな。数は三枚ってところか」

ブライはオーメダルネストからさらに三枚のセルを取り出して、メダマガンの硬貨投入口(メダルインジェクション)にセルを三枚いれた。
そしてメダレバーを引き、三枚のメダルが銃身のクリスタルユニットに装填される。


――ブゥゥン!ブゥゥゥゥゥン!!――


ブライはエンジンを吹かせてシェードフォーゼを発進させ、ナナフシヤミーの巨体の真下を駆ける。
勿論メダマガンによる銃撃も行っているので、セルメダルが幾度ともなく漏れ出していた。

「これで締めだぜ!」

ローグスキャナーをメダマガンのプラチナターミナルに滑らせ、クリスタルユニット三枚をスキャンする。

≪TRIPLE・SCANNING CHARGE≫

トリプルスキャニングチャージが行われる頃には、ブライとシェードフォーゼはナナフシヤミーの巨体を駆け抜いていた。そして、銃口(マガンノズル)を敵に定めた。

「ぶちまけろ!」

――バンッ!――

引き金を引いた瞬間、ナナフシヤミーの体には風穴があいた。
というより、ナナフシヤミーの腹部周辺の空間が破砕されていた。
そしてナナフシヤミーんも体以外の部分の破砕された空間が修復されると、


――ドガァァァァアアアン!!!――


盛大な音を立てて、ナナフシヤミーは大爆発し、数百枚のセルメダルが雨のように降り注いだ。

これこそがメダマガンによる必殺銃撃・ブライクラッカーの威力!

「こりゃ凄いな」
「全部拾うの大変ですね」
「・・・・・・・・・・・・」

刃介と七実は能天気に言っていたが、烈火は二の句がつげられなかった。
金属音を立てて地面におちていくメダル。

「・・・・・・予測を越えたっすね」

吹雪は戦いの一部始終を見届けると、足元に落ちていた十数枚のセルを拾い、とある自販機に近づき、メダルを投入する。

――ポチッ――

そして黒いボタンを押すと、自販機はあの黒いバイク・ライドベンダーに変形した。
黒いヘルメットを被った吹雪はライドベンダーに乗って、走り去った。

(あの女と同じ空気吸うのは、本当に不愉快至極極まるっすよ)

ヘルメットごしに、七実を睨みつけてから。





*****

とある廃屋。
そこでリュウギョクは、

――斬ッ!!――

左腕の鉤爪で、廃屋の壁を切り裂いていた。

『まさか、虚刀流・・・・・・奴の血族までもが・・・』

リュウギョクは苛立つように喋る。
七実の存在を知ったことから、今後の展開の悪さを予感しているのだろう。

『むやみにメダルを取り返すのは無理か・・・・・・なら』

リュウギョクは決意した。

『またつくるしかないな、コアメダル』





*****

トライブ財閥。

「実際のところ、ブライが使うとこんな凄い威力になっちゃうわけね」

シルフィードは戦場のあちらこちらに仕掛けていたバッタカンドロイドが得てきた映像を見て、感動していた。特にメダマガンによるブライクラッカーが印象的らしい。

そして今は彼女一人っきりの部屋で、シルフィードはひっそりと口を開くのだ。

「精々楽しませて頂戴よ?我刀流くん」




次回、仮面ライダーブライ

欲望と火影と裏麗





仮面ライダーブライ
鋼刃介が三枚のコアメダルとブライドライバーを用いて変身する戦士。基本形態は、妖魔系のリオテコンボ。800年前においてはオーズと共にグリードと戦ったことがある存在のようだが、戦闘能力はオーズのそれを凌駕する。しかし、その半面で代償は大きく、変身者の肉体をグリード化させていく。七実が十五枚のコアメダルを持って来たことで、現時点においては六系統のコンボに変身可能である。



リオテコンボ
身長:200cm 体重:90kg キック力:16トン パンチ力:10トン
ジャンプ力:120m 走力:100mを2秒 固有能力:黒影操作 カラー:血錆色
必殺技:リオテキック&リオテスラッシュ 属性:闇

リュウヘッド
複眼の色は漆黒。ブライの感覚能力を全体的に強化し、口からは”龍之息吹”を吐き出す。

オニアーム
前腕部の篭手を鞘とした二振りの鍔なしの日本刀、魔刀『釖』を装備する。魔刀『釖』は、硬丈さは絶刀『鉋』に匹敵し、鋭利さは斬刀『鈍』に匹敵する。

テンバレッグ
ブライの脚力を極限まで高める上、それに見合った骨格と筋肉を形成する。特に走力が発達している。



ツール
ブライドライバー
ブライの変身ベルト。コアメダルによる変身や必殺技の発動手順はオーズドライバーと同等。ベルトの部分は黒で、バックルは銀色に金色のフォースドライブが刻まれている。最初は石版だったが、使用するにあたって封印が解けて本来の形状となった。ローグスキャナーとローグカテドラルとオーメダルネストで一式を為している。


メダマガン
ブライ専用の銃型武器。全コンボ共通で使用される。セルメダルを三枚投入してスキャンすることで、空間ごと標的を撃ち抜いて空間破砕を引き起こすブライクラッカーを発動する(破砕した空間は元通りになる)。トライブ財閥製のメダルウェポン。普段はシェードフォーゼの収納スペースに入れられている。


チェインハンド
ブライの両腕に備わっている機能で、全コンボ共通で使用される。
両肘から先をエナジーチェインで繋いだ状態で飛ばし、中距離・遠距離の目標を掴んだり攻撃したりできる。


シェードフォーゼ
トライブ財閥がブライ専用ビークルとして開発したスーパーバイク。カラーは黒を基調に血錆色の複雑なラインが刻まれている。最高時速は500km。
セルメダルを投入することでバイク形態のベーシックモードからロボット形態のモビルモードに変形する。投入されたセルメダルが一定時間を越えて消滅すると強制的にベーシックモードに戻る。ベーシックモードでの燃料はガソリンだが、モビルモードではセルメダルに切り替わる、一枚のセルメダルにつき三十分ほど変形していられる。
モビルモードでは右腕がビームソード、左腕が連射波動砲に変形する。
両脚部分にはデザイアジェットエンジンが組み込まれているので飛行が可能。

モビルモード
身長:230cm 体重:300kg パンチ力:20トン キック力:10トン


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