仮面ライダーブライ
前回の三つの出来事!


一つ!天堂地獄への道のりにおける最後の番人・螺閃に、烈火が相対する!

二つ!螺閃は、光界玉の副作用によって自らの母を消してしまったことが判明する!

そして三つ!火影一同は遂に、天堂地獄にたどり着いた!

資格者とバケモノと再会


ブライとリュウギョク。
この二人による激闘が始まろうとしている中、虚空は結界内にある天堂地獄をただ静かに見つめ、過去の記憶を手繰り寄せていた。

(・・・・・・久々じゃのぅ・・・・・・お前に会うのも。天堂地獄―――いや・・・・・・海魔(かいま)・・・・・・)

海魔(かいま)―――それは殺す為に魔導具を造った男。

四百年以上前、火影忍軍六代目頭首が誕生する前のこと。





*****

「殺すんだ!!私の造りし魔導具で血を流せ!殺せ!!殺せ!!」

それだけで海魔という男がいかなる人物かがわかった。
しかし、そんな真庭忍軍以上の人格破綻者が、穏やかな性質をしている火影忍軍において何時までも平和に暮らせるわけもない。

「海魔を捕らえろ!!」
「許せぬ!幼子を魔導具の力量を測る、と言って殺しおった!!」
「十一人もの女子供を殺して尚も逃走中じゃ!!」
「奴はもう火影ではない!!」
「鍛冶場に追い詰めたぞ!!」

当然のように、海魔は火影一族から罪人とされた。
しかしこれは海魔の歪んだ欲望から発生した当然の結果だ。

「・・・愚か者どもめ・・・・・・」

海魔は鍛冶場である箱を持って立っていた。

「貴様達に私を殺す事はできぬ」

大勢の元同属達の殺気にも気にせず。

「この・・・・・・私の最後の作品で私は・・・・・・人を越える!!」

海魔の狂気そのものたる表情に呼応するかの如く、箱から漏れ出した悪しき光。

「天堂地獄!!我に永遠の命と果て無き力を与えたもう魔導具よ!!」


――ザシュ・・・・・・!!――


次の瞬間、海魔は火影たちの刃によって刺殺された。
その中には、生前の頃の虚空が鋼金暗器を手に、海魔を突き刺す一人となっていた。

「・・・・・・私は永遠を生きよう。そして永遠に人間を殺し続ける」

そして海魔の、人間としての最後の言葉。

「私の造りし魔導具と共に・・・・・・」





*****

回想終了。

「・・・・・・あれから四百年余り・・・・・・未だ、その邪な志を忘れず、動くときを待っておったか・・・・・・」

虚空は右手を突き出し、炎を生み出した。

(お主は滅す!!せめてワシの手でな!!)

しかし、

――ガキッッ!!――

後頭部を石で殴られ、虚空は気絶させられた。

「やらせるか!やらせるかよォ!!天堂地獄は私の物だ!!」

森光蘭。
目的の為ならあらゆる悪行にも手を染める男である。

――ガシッ――

森は結界の一端を担っている柱の一本をつかみ外そうとした。
しかし、柱を抜き取ろうと思った瞬間に、森の掌の皮が切り裂かれていき、血が吹き出す。

「がっ・・・がぎゃあああああいぎぃあああああああ!!!!!!」

聞くのにも覚悟がいりそうな必死の叫び。

「『!!!??』」

その声量に、思わずブライとリュウギョクも意識をそちらに向けてしまう程の物だ。

「天堂!!天堂地獄!!我が呼びかけに応えろ!!」

イカれるとかもはやそんな次元の言葉ではなかった。

「力が欲しい!!力だ!!私は・・・欲しいものは必ず手に入れる!!お前も例外ではない!!」

メリメリといった音まで聞こえるというのに、森は柱から手を離そうとしない。
結果として、

――ザキュ・・・!!――

「ひゅ・・・・・・あああああああああああああああ!!!!!」

左腕が千切れた。
血潮が吹き出しに吹き出し、血だまりをつくらん勢いだ。

(腕が千切れてるのに・・・・・・なんて・・・なんて執念だ!)

烈火は想像以上の森の欲深さに冷や汗を流した。

「我に・・・力・・・を・・・・・・」

その時、

――ゥオン・・・・・・――

古ぼけた鎧の面の割れた部分から、奇妙な眼光が宿った。
そして、ガシャという音を立てながら、古ぼけた鎧は自力で立ち上がったのだ。

ただただひたすらに力を求める森光蘭の強烈極まる欲望の波動に反応したか、それとも別の何かがあったのかは最早気にするべきポイントではなくなってしまうほど、今の状況にはインパクトがありすぎた。

結界を司っていた呪符が全て、臨界点を突破したかのように燃え尽きた。
そして古ぼけた鎧はこう言うのだ。

『・・・我は・・・天堂地獄・・・・・・』

それはまるで、この世の全てから隔絶されたかのように錯覚させる声だった。
いや、ある意味そうなのかもしれない。



一方、ブライとリュウギョクの戦いは―――



「さーて、おっ始めようじゃねーか!」
『ふっ・・・では参ろうではないか』

ブライとリュウギョクの間には表現をするにもおこがましい雰囲気が漂いまくる。
何者の干渉さえも拒むような・・・。

『真庭忍法――影分身(かげぶんしん)

――ビュンビュンビュン・・・・・・!!――

凄まじい勢いで行われる分身生成。
ブライは別にそれを意外とは思わない。
分身の術とかは忍者の代名詞と言えるし、なにより今自分が使っている三種類のコアは元を正せば彼女の物だから。

「だったら俺も帳尻合わせと行くか」

――ビュンビュンビュン・・・!――

リュウギョクが本体を含めて十体に分身したように、ブライも分身を十体追加した。

「いくぜっ!!」

ブライたちは一気に駆け出していく!

「「虚刀流『薔薇(ばら)』!」」
「「虚刀流『野苺(のいちご)!」」
「「虚刀流『百合(ゆり)』!」
「「虚刀流『石榴(ざくろ)』!」
「「虚刀流『菖蒲(あやめ)』!」」

十体のブライは二体ずつ同じ技を繰り出していく。
それに対して、

『『『『『『『『『『真庭剣法――流水剣(りゅうすいけん)!!』』』』』』』』』』

十体のリュウギョクは両手に忍者刀を逆手に持った状態でたった一つの技で迎え撃つ事を選択した。
勿論使っている忍者刀は相当な業物であるのは明白だ。なにしろリュウギョクがこの戦いで使っている一品なのだ。下手な刀剣を持ってくるわけがない。

リュウギョクの構えは待ち伏せるかのような邀撃の構えだ。
しかし、その構えは前や横からならいつでも対処できるようにされている。

「「「「「「「「「「オゥラァァァア!!!!」」」」」」」」」」

十体のブライが繰り出す攻撃。
それに対するリュウギョクは邀撃の構えである『小流(しょうりゅう)』で待ちうけ、

――ス・・・ッ――

刀身にて全て受け流した。
水流剣・小流の型の名に恥じることのない動き。

『今度はこちらからだ・・・!激流(げきりゅう)の型!』

リュウギョクは小流の型とは打って変わり、邀撃から攻撃へと転じた。
荒れ狂う河川の如き圧倒的な激動となり、ブライを圧倒する。

何度も打ち鳴らされる剣戟の音。

「く・・・ッ」

幾度と無く鳴り響く金属と金属がぶつかり合う音。
それに混じってブライの危うい声が漏れ出す。

真庭剣法・流水剣。
それは古い真庭忍軍の歴史の中で使い手を失い消え去ったはずの剣法。
だがそれをリュウギョクは達人の領域で使いこなしている。

≪SCANNING CHARGE≫

ブライは一斉にローグスキャナーを滑らせてコアメダルをスキャンする。
それと同時に両腕に装備された虫刀『釘』を両足に装備しなおして一気にジャンプした。

「「「「「「「「「「チェストォォォォオオ!!」」」」」」」」」」

掛け声を上げながら『釘』をつけた両足を突き出しながらリュウギョクに突貫していくブライ。
その間にも分身の数は三倍に増えていく。
この多重分身による必殺の多重キックの”カブハチナスタッブ”は、リュウギョクへと迷い無く突き進んでいく。

『ふふふ・・・・・・』

攻撃を喰らう側とすれば、ブライたちは空から振ってきた槍にも見えたであろう。
しかしリュウギョクは微笑んで次の手をうった。

『忍法――疾風迅(しっぷうじん)

――瞬ッ――

次の瞬間、全てのリュウギョクは全てのブライの目前に移動していた。
それこそ音もなければ気配も無く、一瞬でだ。

『続いて、剛力無双(ごうりきむそう)

――ドスッ・・・!!――

「「「「「「「「「「が、は・・・・・・ッ!?」」」」」」」」」」

重たい・・・余りに重たい。
そんな一撃が繰り出され、ブライは元の一体に戻ってしまった。

『やはり我刀流といえども、初めて見る技の全容はしれないか』

リュウギョクも影分身を解いて静かに呟いた。

(こんなことなら、シェードフォーゼ―――メダマガンもってくるんだったな・・・・・・)

ブライは遅い後悔をしだした。
しかし、メダマガンもシェードフォーゼも洞窟の入り口に置いて来てしまっている以上、後の祭りだ。

『さあ立て。この程度で死なれては余りに退屈だ』

リュウギョクは見事なまでに上から目線で言った。

「・・・あぁ、しんどい」

といいながらも、ブライは立ち上がった。

「でもさ・・・惚れた女の前で、恰好悪いトコは見せられねぇよな・・・」

そう、七実の前で無様に敗北するような場面だけは見せたくなかった。

「仕切りなおしと行こうじゃねーか」
『当然、私もそのつもりだ』

≪RYU・ONI・TENBA≫
≪RI・O・TE!RIOTE!RI・O・TE!≫

ブライはリオテコンボに戻り、魔刀を手にして再びリュウギョクに切りかかった。

――ガキン!ガキン!!――

打ち鳴らされる剣戟音。
上手く受け流すことによって、忍者刀が切断されぬよう、そして上手く反撃できるよう、リュウギョクは洗練された動きで戦う。
一方ブライは今まで取り込んできた技法の全てを結集させて、リュウギョクの動きに追いついていた。
しかし、リュウギョクはコンボで為し得る超絶的身体能力や固有能力を真庭忍法によって再現する。

それぞれのメダルの特性に合わせたコンボに一々形態変化させなかればならないブライとリュウギョクの間にある隔たりはここにあると言ってよい。

――ガキィン!!ガキィィン!!――

打ち合う鉄の音。

(このままじゃジリ貧だぜ!・・・かといって今更七実に助力を請うのも・・・)

ブライは少し考えた結果、

(いや、アリか)

あっさりとプライドより勝利欲をとってしまった。

「七実!カッパ!」
「はい?」
『なんでやんすか?』
「一発デカいのきめっから、ちょっと時間稼ぎ頼むわ」

と言って、ブライは後方に大きくジャンプした。

「はぁ、しょうがないですね」

七実はそう言いながらも怪人態になる。

『ではいきますよ、リュウギョクさん』
『お手柔らかに頼んまさぁ』
『まあ、この展開も予想済みだったがな』

七実とカッパヤミーとリュウギョクは対峙し、衝突した。
そしてブライは、

≪SCANNING CHARGE≫

ローグスキャナーでローグレイターに嵌っている三枚のコアをスキャンしていた。

「まだ足りないか・・・」

≪SCANNING CHARGE≫

二度目のスキャニングチャージ。

≪SCANNING CHARGE≫

三度目にして、ブライも満足のいくレベルでエネルギーが充填されていく。

「よし・・・・・・七実!!」
『あ、はい』

ブライが大声で合図し、七実はカッパヤミーごと戦線を離脱する。

「ハァァァ・・・!」

ブライの両足にはラインドライブを通して送られたエネルギーが蓄積され、脚部には無機質な翼が生えた。

「ハッ!」

そして、その状態で助走をつけて跳躍し、出現したメダル状のリングを三つ――キックの姿勢で潜り抜けていく。血錆色の光を身に纏いながらリュウギュクに迫っていくブライ。

「チェストォォオオォォォ!!」

掛け声を上げながら必殺の両足キック、”リオテキック”を叩き込まんとしているブライに対するリュウギョクは

『面白い!』

雰囲気にノったのか、彼女もまたソレ相応の力で迎え撃ちつことにした。

『真庭忍法――劉殺生(りゅうせっしょう)!!』

リュウギョクは二振りの忍者刀を構えて、ブライの必殺技を自身が誇る最強の忍法で歓迎してみせることにしたのだ。
しかし、それは互いに空振りに終わってしまう。



――ビューーーーーーーッッ!!!!――



ハッキリ言うと、ブライとリュウギョクが戦っている間に、これだけのことが起こっていた。

烈火が破壊しようとした天堂地獄は、虚空のレーザー砲でも破壊されず、烈火のことを罵倒しつくした末に森光蘭を所有者として認めた。

天堂地獄と融合して異形の姿と化し、失った筈の左腕までが異形の腕となって再生。
その威力を確かめるかのように、八神を殺害。虚空の説明によって、海魔が天堂地獄に自らの魂を注入し、自ら魔道具となったことで、現在森の体には二つの魂が存在していることが判明。

そして、烈火が虚空のレーザー砲で森ごと天堂地獄を焼き尽くそうと試みるも、森は体に大穴を開けられた状態でも平然とし、逆にそのレーザー砲を口から撃ち返すと言う離れ業をやってのけたのだ。

前述にある効果音はそれである。


「『ッッ!!?』」


ブライもリュウギョクも、それには驚き、動きを一旦止めてしまい、互いに技は不発となった。

「おい、まさか今ので、この洞窟崩れるんじゃないか?」
『長々と勝負するわけにもいかなくなったな』

ブライは些か焦り、リュウギョクはこんな状況でも冷静さを失わない。

『森よ、あまり大袈裟な事はしないでくれ。こっちの戦闘が中途半端に終わってしまった』
「ヒャハハハハ!そう無粋なことを言うな!今私は最高に気分がいいぞ!!」

森は、体の腰から上の左上半身から禍々しい刺やら目玉やらを生やしたおぞましい姿で歪な笑顔で返事をした。

「それに洞窟が崩壊するまでもう少し時間がある。お前ほどの実力ならどうにかなるだろう?」
『屁理屈を』

リュウギョクは不愉快そうに返答した。
すると、

「森様、リュウギョク様」

二人を呼ぶ声。

『緋水・・・か』
「・・・はい・・・裏麗所属、NO.13神慮伸刀の緋水です」

門からこちらへと登場してきた緋水は、一応再三自己紹介した。
それから森に一目視線をおくり、

「天堂地獄を手に入れたのですね、森様・・・・・・」
「ああ!見よ!この美しい体を!芸術的とは思わぬか!?私はな・・・人間を超越したのだよ、緋水!!」

森は変貌した醜悪極まる姿に感銘しながら、自慢するように返事をした。
いや実際のところ、これは立派に自慢しているのであろう。

「・・・・・・おめでとうございます」

緋水は無表情でそういった。
しかし、彼女が此処に来た理由は・・・・・・

「御気分のよろしいところ、無粋とは思いますが、今日は森様に答えていただきたいことがあり、参上いたしました」

洞窟が刻一刻と崩れていく中、緋水は喋り続ける。

「裏麗採集テストの時のことです。一対一で殺し合い、勝った者が合格というシステム・・・後に対戦表は予めつくられていたと聞きました。そして、それをつくったのが貴方ということも」
「・・・うむ、相違ない」

森は素直に答えた。

「私はその戦いで大切な人を自らの手で葬ってしまった。・・・無礼を承知でお尋ねします。我等二人の関係を知っての上であのカードをつくったのですか?」

そう聞いてきた緋水に、森は少し間をおいて、歪で醜い笑顔で説明しだす。

「・・・・・・感情を抜き取って初めて人は躊躇無く人を殺せるのだ。まずそれを学ばねばならなかった気様らが恋愛感情だと?あれは教育だったのだ!面白い見せ物だったよ、笑いが止まらなかった!」

――ザシュ!!――

その瞬間、神慮伸刀の刃が、森の首と胴体を切断した。

その光景に火影のメンバー達は驚いた。
裏麗所属の彼女が、実質的頂点の立場にある男の首を斬ったのだから。

「お前はもう・・・人ではない・・・・・・!!」

今まで封印していた感情を解き放つかのように、無表情の仮面がわれて、瞳から哀しい涙を流す素顔が現れた。緋水がここにやってきたのは、見極める為だったのだ。もし森が娯楽目的ではなく、外道な感情抜きであの対戦表をつくったのだとすれば、状況は違ったかもしれない。

しかし、緋水の心は、森の一言で決した。

ピクピクと痙攣する森の首。
このまま痙攣もなくなってくのかと思えば。

「・・・そうさ。ちょっと前からな。何か不都合があるかね?」

首だけで喋った。
そして首の断面からはおぞましい触手が生え、森の首を支えるものとなった。
首のない胴体も、未だ意思があるかのように動いている。

「人間というのはな、何かを手に入れるために何かを捨てなければならない。鋼刃介がブライとなる代わりに、グリード化の代償を背負っているのと同じだよ」

「――――ッッッ!!?」

緋水は戦慄した。
上澄みの感情を全てをすっ飛ばし、本能で恐怖した。

「あの男を犠牲にお前は命を・・・力を手に入れた。何故其処に満足できない?礼を言われることはあっても首を斬られる筋合いはない。そういうのをな緋水・・・・・・」

森は一息おいて、

「飼い犬が手を噛むというのだ!!」

胴体から生えた殺傷性抜群の腕が伸び、緋水に向っていく。
だが、

≪BAKU・MAMMOTH・INOSHISHI≫
≪BAMAHI・・・・・・BAMAHI!!≫

――ズドン・・・・・・!!――

重苦しい斧、重刀『鉞』が上段から打ち下ろされ、伸ばされた腕を粉々に粉砕した。

「森・・・・・・いや、天堂地獄」

勿論、それを打ってきたのはブライ・バマーイコンボ。

「お前の言うとおり、人は感情を一時的に抜き取って人を躊躇無く殺せるし、何かを得るために何かをしてねばならないという点に関しては賛成しよう。実際俺がそのいい例だからな。・・・しかし―――」

ブライは緋水を庇うようにしてこういった。

「お前の欲望は惨め過ぎる上に迷惑極まるんだよ。それに俺は肉体的には人間を捨てているが魂まで人を辞めたわけじゃないからな」

ブライは首をかき切るサインを行ってこういった。

「さっさと・・・・・・Go to hell!!」

地獄に逝け!と宣告したのだ。
みなはその言葉に唖然とする。

「バット・ダーク」

そしてその沈黙を破るのもブライだった。

「花菱達連れて外に出ろ」
「いいんですか?」
「早くしろ」
「・・・・・・委細承知」

バットは指示に従った。

「みなさん、いきましょう」
「ってオイ待てよ!俺はここに残るぜ!」
「私も残るよ!」

烈火と風子がそういった。

「土門、水鏡、小金井。そういうことだから、お前ら先に行ってくれ」
「でも・・・!」
「姫を、頼むぜ!」

食い下がろうとする小金井に、烈火はサムズアップして頼んだ。
それに応えるべく、土門は気絶した柳を背負い

「上で待ってるぜ、花菱!!」

そういったのだ。
それを聞いた小金井も、

「絶対帰って来いよぉーー!!死んだら殺すからね、烈火兄ちゃーーーん!!」

などと希望を託していった。

結果として残っている味方勢力は、
ブライ、カッパヤミー、七実、烈火、風子、緋水といった感じになっている。

一方敵勢力は、
天堂地獄、リュウギョク、煉華の三人だ。

しかし、敵味方の区別があいまいな雷覇は、

「はじめましてですよね。貴女も逃げなくていいんですか、煉華さん」

悠長に煉華に話しかけていた。

「うん!パパ見てるの!強くなったパパが悪い人達やっつけるところ見てるのよ!」
「・・・・・・貴女は・・・・・・あの森の姿をみてどう思ってるんですか?」

常人なら、今の森をバケモノと断言するであろう。
しかし煉華は、

「カッコイイ・・・かな?」

何かが破綻していた。
その一方で、戦いはデットヒートしていた。

「私は、私は弱虫だったよ風子!真実を知る事が恐ろしかったんだ。もしそうだったとして自分に何が出来る?と・・・疑惑を胸に秘め、死に向う戦いで気を紛らわせていたんだ。でも今、自分に正直になれた!!」

緋水の腹の底に在る本音を吐き出す。

「お前とカマイタチは教えてくれたんだ!お前にそれを言いたかった!!」
「うん・・・!」

その言葉に、風子は心底嬉しそうにした。

「弐竜!!砕羽!崩!」

烈火は火竜を二体同時召喚を行い、

「くらえ、化物!!」

幾多もの切り裂く弾炎をくりだし、森の胴体をズバズバと切り裂いていく。

「よっしゃああ!!」

攻撃がクリーンヒットし、烈火は有頂天になったその時、

『「!」』

緋水とカッパヤミーは見た。
風子に照準を合わせている森の首と、ブライに刃先を向けるリュウギョクの姿を。

――運命なんて、変えちまえ!――

「風子!!」
『旦那!!』

思考より先に体が動いたときには、

――ドンッ――

風子とブライの体を押しのけ、自らが攻撃の餌食となっていた。
光線は緋水の体を貫き、凶刃はカッパヤミーの五体を切り裂いた。

「・・・外したか・・・」
『・・・・・・・・・』

森はふてぶてしくいい、リュウギョクは無言のままだった。

「ひ・・・緋水ぃぃぃいいいいいいい!!!!」
「カッパ・・・・・・」

風子は必死の叫びを上げ、ブライはカッパヤミーに静かに声をかけた。

『へへ、旦那・・・大丈夫で、すかい?』
「当たり前だろ」
『そいつはようござんした。・・・あっしはもう、これで、御勤め終了でさぁ・・・』

カッパヤミーは体がどんどんセルを失って不安定になっていくのもお構いなしで喋る。

「一応聞くが、どうして俺を庇った」
『そりゃ、旦那は七実様の恋人だからですぜ』

カッパヤミーは当然のようにいったが、次にこう付け足した。

『いやそれだけじゃありやせん。あっし個人が、あんたの心意気に惚れ込んでいたんでしょうかねぇ・・・?まあ理屈はもうわかりませんし、どうでもいいんですがね・・・・・・多分緋水も同じ気持ちで動いたんじゃないですか?』

そして最後に、

『旦那、絶対勝ってくだせぇ』
「あぁ、お前は俺の中で生きろ」

――ジャリィィーーン!!――

そして、カッパヤミーは数十枚のセルメダルへと還元された。

『・・・・・・奇襲は失敗か。従順な下僕のお陰で命拾いしたなブライよ』
「そうだな。にしても不意打ちとは、テメェもくどい手を使うなリュウギョク」
『もとより忍者は卑怯卑劣が売りだ。文句を言っても受けつけんぞ』

リュウギョクは忍者刀を体内に収納した。
そして、体にメダル投入口を出現させて、そこへ三枚のセルを投入する。

すると、リュウギョクの体内から一体のヤミーが現れた。
バクの頭、マンモスの牙がある腕、猪の野太い脚。
同種混合型ヤミーの一種、バマーイヤミーだ!

『では私は一旦、引き上げさせてもらおう』

――シュン!――

そういってリュウギョクは空気のように洞窟から出て行ってしまった。
するとだ。

「ちょっとイイっすかぁぁぁああ!!」

――ブゥゥオオオォォォォン!!――

(この声・・・)

ブライはバイクのエンジン音に混ざって聞こえてきた若者の声に聞き覚えがあった。

「鋼さん、お届け物っすよ!」

ブライにトラカンドロイドを投げ渡したのは、シェードフォーゼに跨った吹雪だった。

「俺のシェードフォーゼ・・・・・・持って来てくれたのか」
「会長からの指示っすよ。そのトラカン渡すついでのね。・・・ア、それから面白い人も来てるっすよ」

吹雪が指差している先にいたのは、

「おっ・・・・・・お前は・・・!?」
「探しましたよ・・・・・・・・・・・・父上」

仮面にて全ての感情を押し殺した炎の死神・紅麗。
その姿を見た途端、森は紅麗に関する全ての記憶を一瞬にして、走馬灯のように駆け巡らせた。
恐怖の感情が記憶と一緒に蘇る。

そう簡単に死ぬ奴ではない。
そんなことは吐き気がするほど知っている。
死体が上がらなかったのは何故か?
生きている―――生きていたからだ!

「は・・・っ、しぶとい男だ、紅麗・・・!まさか再び会うことになるとはなぁ・・・・・・!!」

天堂地獄の胴体は、腹の部分に顔が形成された状態で喋った。

「しかし――――」

その先の言葉が紡がれることはなかった。

――ズズズズズズズズズズ!!!――

紅麗は背中から生やした紅蓮の片翼から翅炎(はえん)というなの炎熱手裏剣を叩き込み。
胴体を完膚なきまでに燃やした。
その圧倒的な力量は、正しく組織の頂点にたるものである。

「よぉ紅麗」
「・・・・・・鋼か」

ブライは恐れもせず、紅麗に話しかけた。

「答えは見つかったか?」
「いや・・・・・・まだだ」

紅麗は仮面で閉ざされた顔にてそういった。

「おい、お前らなんの話してんだよ?」
「「黙れ馬鹿猿」」
「なんでだよ!?なんで二人同時!?」

烈火はギャグ顔でツッコんだ。

「黙れといったはずだぞ烈火。少しは分際を弁えたらどうだ?今さっきまで、私の目には貴様の存在など視界に入っていなかったのだぞ。あの程度の出来損ないに手間をかけているマヌケを気にせんのは、至極当然といえよう」

紅麗はある意味、言葉の暴力を投げつける。

「紅麗様」

そんな紅麗を呼びかけるのは、

「よくぞ、御無事で」

雷覇だった。

「お前も元気そうで何よりだ。会いたかったぞ、雷覇」
「もったいなきお言葉。ここへはどのようにいらっしゃったのですか?」
「案内人が居た」
「ワシや、ワシ!!」
「じょ、ジョーカー!!」

能天気に手をふっているジョーカー。

「変なのもついてきたがな」
「・・・・・・・・・」

勿論それは吹雪のことだが、当の吹雪はキツい表情で紅麗をにらんでいる。
変なの、と言われたのが気に喰わないらしい。

「・・・ここにいれば・・・貴方に御会いできると待っておりました。報告いたします」

雷覇は膝ま付きながらこういった。

「月乃様は生きておいでです」

その一言に、紅麗は仮面の内側でだけ、僅かになにかを変えた。

「裏武闘殺陣決勝戦時、私は月乃宮へと向いました。たとえどちらが勝とうとも、月乃様の命、危ういと考えたのです。・・・・・・・・・・・・危険な賭けでした」
「・・・・・・・・・”雷神”を、使ったのか?」

紅麗は察した。
雷神、それは雷覇の切札たる魔導具の名称だ。
能力については、名称から察しがつくであろう。

「月乃様の体内に埋め込まれた遠隔性の爆弾。体外より”電流”を流す事で破壊する・・・・・・あまりに危険ゆえ、今まで行動を見送ってきました。しかし事は急を要し、万一の時は死して償う覚悟のもと、この手に雷神の力を携えた。・・・・・・結果、あの方を縛り付けていた物は消えました。今は安全な場所にかくまっています。ご安心を」

雷覇は絶対の自信を持っての言葉を口にする。

「・・・・・・・・・そうか・・・・・・」

紅麗は静かに答えた。

(紅麗さんは生きとった・・・・・・そして・・・・・・三人や!雷覇さんがおる、自分だっておる。紅麗さんの為に戦える人間はまだおんねん!”麗”もまだまだ死んどらん!!)

ジョーカーがそう思っているとき、

――ポンポンっ――

ブライが紅麗の肩を軽く叩きながらこういった。

「紅麗・・・とりあえず、ここは共同戦線張らないか?」
「・・・・・・よかろう。お前は烈火より遥かにマシそうだからな」

紅麗とブライの目には、リュウギュクとバマーイヤミーだけでなく、四つの何かにも向けられていた。

「コラ、紅麗!鋼!何勝手に話し進めてんだよ!つーか此処もそろそろマジでヤベェ!脱出のほう考えたほうがいいんじゃねーのか?」

烈火はそういうも、

「五月蠅い。私は奴にまだ用がある」
「出て行きたいならお前らだけで行け。俺達でなんとかする」
「なんだぁその言い方!!・・・って、奴?」

烈火は紅麗の言葉の一部を抜粋し、土煙のなかにある異形をよーく目を凝らして視認する。

そこには首だけのを加えて、四体のバケモノが存在していた。

「・・・四つに増えてる・・・・・・!!」
「雷覇、ジョーカー、手出しは無用だ」
「七実も、手は出さないでくれ」

「「「――コクっ――」」」

驚く烈火をよそに、紅麗とブライの言葉に三人は黙って頷いた。

「烈火・・・・・・今は貴様の命、有ることを許してやろう。邪魔だ、立ち去れ」
「馬鹿」

――ガンっ!――

烈火は紅麗を殴った。

「ホンッッットに相変わらず嫌な奴だなテメーは!なんでテメェみたいな性格の奴に雷覇とか音遠が付き従ってるのかが、不思――ドバッ!――」

言い切る前に、紅麗の掌打が烈火に直撃した。
勿論それは烈火の口を黙らせる意味もあったが、もう一つ意味があるとしたら、

――ズガァァァン!!――

敵の攻撃から避けさせるがためともいえよう。

「・・・・・・紅麗・・・・・・お前は変わらないなぁ・・・野蛮で粗悪・・・救いようがないよ。礼も弁えぬ、下卑た山猿だ」
「随分と口が回るな。自分一人では何も出来なかった臆病者が、見事な変わりようだ」

森の言葉に対して余裕を持って答える紅麗。

「まあなぁ・・・・・・もはや貴様とて”生物として核下”というレッテルがはられた。今の私には力がある!先ほどの貴様の炎でも、我が体を滅することはできなかった!翅炎により細かく斬り裂かれた体の破片は、またそれぞれがより集まりあい、三体の個として複製され「うぜぇぇ!!」

――ブゥゥゥウウゥゥゥン!!――
――バギィィイイィィィン!!――

「ぐばあああああああ!!!」

ブライの乗ったシェードフォーゼの車体が、首だけの森を跳ね飛ばした。

「さっきからウザいっつの!もういいんだよそういう説明はよぉ!どうせこのあと、複製体にはお前の精神が宿ってますとかいうんだろ?いいよ、もうそういうのメンドくせぇから」
「き、貴様・・・!そんな理由で・・・・・・」
「そんなもこんなもねーだろ。俺たちは敵同士だからな」

ブライはあけすけに、見下すように、森に対してそう言いきって見せた。

「さてと、届いた御NEWカンドロイドの力、試してみっかな」

ブライはプルタブスターターを作動させ、カンモードからトラメカモードに移行させた。

『キシャァァ!!』

トラカンドロイドは鋭く咆哮すると、シェードフォーゼのカウル上部に飛び移り、もう一度咆哮すると、シェードフォーゼのカウル部分は中央から真っ二つに分かれていく。
そこからトラカンドロイドが地面に転がっていくと、シェードフォーゼの前輪も真っ二つとなっていき、後輪部分を補助するようなパーツとして後方に駆動する。

そして、トラカンドロイドは突然巨大化し、転がってシェードフォーゼの前輪代わりにならんといわんばかりに車体と合体すると、トラカンドロイドからは一対の足型車輪が飛び出し、さらにはカウル部分には凶暴な口のようなものが競りあがって接続された瞬間、

『キシャアアァァアアア!!!』

シェードフォーゼの血錆色のラインはあっと言う間に黄色く染まりはて、猛虎の唸りをあげるビーストマシン・トライドフォーゼへと変形合体したのだ!

『キシャーー!シャアアァァァ!!』
「うわッッ!?」

トライドフォーゼは乗り手であるブライの身を案じることなど皆無で、ただただ野獣の如き動きでガムシャラに走り回っていった。

――バギッ!グギッ!グシャ!――

暴走するトライドフォーゼ。
それに巻き込まれ次々と踏み倒されていく天堂地獄の複製たち。

「こ、こいつ、制御が利きやねぇぞ・・・!」
「イエローコンボを使うっす!そうすれば属性が同調して制御できるっすよ!」
「あ・・・なるほど」

ブライは吹雪の助言に従い、バックルにあるメダルを全て取り替えて、スキャナーを滑らせた。

≪YAMANEKO・JAGUAR・SMILODON≫
≪YAJA・YAJA!YAJAGUADON!≫

奇怪な歌が奏でられ、黄色い閃光が発せられて収まると、そこにはトライドフォーゼを完全に乗りこなしたブライ・ヤジャガドンコンボの姿があった。

「お、マジで制御できた」

ブライは少し感動した。

「今の鋼さんなら、その暴れ虎(トライドフォーゼ)の特殊機能も使える筈っすよ」
「特殊機能?」
「論より証拠。とりあえず、メーターの横にある黄色いスイッチを押すっす」
「コイツか?」

ブライはとりあえずスイッチを推した。
すると。

『ギシャーーーッ!!』

トライドフォーゼは咆哮し、大気を震わせると、


――ビカァァァアアン!!――


口部分から強力かつ広範囲な熱性光線が発射された。

『ゥォォオオオ!!』

それを察知したバマーイヤミーは、口からエネルギーを噴出させて壁をつくり、どうにかこうにかで天堂地獄をまもった。

「お、驚かせおって・・・しかし、このヤミーと我が無限の力があれば(退け!!)―――ッ」

頭のなかで、森に警告する声がした。
無論それは、海魔!

(我等はまだ完全体ではない!このままでは危険だ!我等の体は数多の数に分裂する!そしてその度、力も分散されていく!私とお前が共存する本体は死滅する事はない。しかし・・・我等本体が分裂を繰り返せばどうなる?力は細分化され、いずれは―――人間はおろか・・・虫以下の存在として永遠を生きる!!)

海魔の説明をきき、森は驚愕した。

「そんな馬鹿な!?一体・・・どうすれば!?」
(完全体になればよい・・・・・・我等がある者を吸収すれば力は分散されることは無くなるはずだ)

森が人であった時から狙っていた者。

(その者を取り込んで我々の体の一部とすることが必要だ!先ほどまで此処にいたなぁ・・・あの女を喰らえば・・・・・・)
「そうか!あの女!!まだ間に合う!!」
「・・・・・・・・・好い加減にしとけよ」

複製体が柳のもとに行こうとするも、それを許す烈火ではない。

結界王・円の力で敵を封じ込め、

「姫は俺が守る」

そして崩の弾円が結界ないにて炸裂した。

「ぎゃあああああああ!!」
「同胞!!」

複製体の死に、本体が大声をあげた。

「破ッ!!」

――バシュン!!――

それと同時に、紅麗も複製体を一体燃やし尽くした。

「・・・・・・簡単な理屈だな・・・焼き尽くせばいいだけのこと。消滅してしまえば分裂すらできまい」
「完璧じゃねぇ今なら、潰せる!」
「ヤミーのセル諸共、その薄汚い命は貰っとくぜ!」



次回にて、洞窟編終了。

次回、仮面ライダーブライ!

脱出と誕生秘話と火竜の長




トライドフォーゼ
シェードフォーゼにトラカンドロイドが合体して完成するモンスタービークル。トラカンドロイドが合体した影響でカラーが黄色となったうえ、ネコ系コンボ以外では制御できないという暴れ馬ならぬ暴れ虎の如き特性を得ている。
しかしその分性能は段違いに上昇しており、最高速度も1.5倍となり、前輪部分からはメダル状の弾丸を発射したり、口からは熱性光線を放つことも可能である。主に敵が広い場所で大勢存在する場合に有効なビークルであると言える。


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