仮面ライダーブライ!
前回の三つの出来事は!


一つ!桜火の口より、烈火は火竜の力其の物で成り立つ異端の炎術士、呪いの児であることを明かされる!

二つ!竜王が完全復活し、天堂地獄が遂に成体として誕生する!

そして三つ!烈火は天堂地獄を倒すべく、七竜全ての力をぶつけた!

友情と決意の答えと烈火の炎


要塞都市SODOM
森光蘭が築き上げた其処の中心部にある巨大な2本の塔。
其れの名はHELL OR HEAVEN―――

―――今此処の最重要部において、人類の未来を賭けた死闘に次ぐ死闘が繰り広げられた。
そして、今・・・・・・。



――虚空――
――崩――

「うぅおおおおおオオオ!!」

一人の異端なる炎術士に呼び出された二匹の火竜は、幾つモノ炎の玉を作り出し、その玉から輝かしい光線を放って見せた。
その威力は特撮番組でなければ有り得ない程のもので、この部屋のありとあらゆる敵を焼き尽くし、遂には壁やその他諸々を焼き払い、炎の赤色は塔から漏れ出していく。

「ドォォうリャあああああああ!!」

花菱烈火の叫びは正に魂のソレだ。
紅蓮のレーザービーム砲は更に勢いをつけていき、成体と化した天堂地獄・本体すらも火炎の中に巻き込んでいく。

あたりには白煙が立ち込める。
その中で砲撃手たる烈火は荒い息をつく。
七竜を連続召喚したのだから無理からぬ話だが、今の状態では火竜一匹使うのがやっとだろう。

しかし、

『八竜の中において最強の攻撃力たる虚空と最多の攻撃手たる崩の合体攻撃、か・・・・・・流石火影忍軍頭首。我にここまでのダメージを与えるとはな』

天堂地獄は体中を蜂の巣にされていることが白煙越しでも見て取れる。

『だが』

その口調はいたって余裕だ。

『貴様はバカだ』

白煙の中で焼かれなかった分身体全てが本体に向っていき、醜く形を変えて本体復元の糧となっていく。

『あれだけ乱発すれば気力も体力も根こそぎ奪われる。僅かな希望に縋って炎を撃ち続け、結果がこれだ。全く持って笑わせてくれるよ』

天堂地獄の言葉に烈火は動けない体に鞭をうってでも動かしたいが、生憎天堂地獄の言っている事は正論だ。

『しかし嘆くことはない。貴様だけではないのだ』

復元完了。

『此の世の全ては我を楽しませる為だけの存在している。・・・ふふふ・・・うはははははは!!!!』

天堂地獄は聞くだけで耳が腐りそうな不愉快極まる笑い声を大音量でだした。

『本体!』
『何か?』

すると生き延びていた分身体が駆け寄ってくる。
姿から察するに、恐らく本体からの直接分離個体だろう。

『今の回復で予備につくった分身体は全て使った!いくら烈火が力を無くしたとはいえ、まだ紅麗が残っている!』
『それにこの場には我刀流と虚刀流、そして裏切り者がいる!早く究極体にならねば!!』
『確かに・・・・・・ならば―――そろそろ喰うか』

天堂地獄の注意は柳に向いた。

「ざけんなアホ!!柳に一歩でも近づいたら、お前のドタマカチ割っ―――」

風子が怒鳴っていると、行き成り一人の人間が現れた。

「死四天・葵。只今戻りました」
『ほう、生きていたか』

天堂地獄は意外そうに葵の姿を確認した。

「無事成体になられたようで何よりです。森様―――なんて、言うと思った?」

葵の口調は上司のご機嫌伺いのそれではなく、

「ボクはこれから一人で泳ぐよ」

真っ向からの決別だった。

葵は石化した煉華を少しみると、

「煉華・・・可哀相に・・・」

と虚しそうに呟いた。

「おい、お前・・・・・・」
「柳ちゃん、ごめんね。本当にごめんね」

風子の言葉に意を介さず、葵は柳と向き合う。

「もう・・・大丈夫だよ。ボクのかけた精神操作を今解いて上げる」

左腕にある神慮思考が淡い光を放ちだした。
けれどもそれをよしとしない者も居る。

『葵ィィィイ!!裏切るかぁぁぁあ!!』
『やらせるな!殺せ!!』

全力で駆けて行く分身体。
だがその凶行は阻まれる。

――ザンッ!!――

血の刃によって。

「毒林檎で眠らされた姫が眼を覚ます。邪魔は野暮と言うものだ」
「蛭湖!葵!」
「中々心強い―――嬉しい誤算ってやつか?」

烈火とブライは思わぬ援軍に心を振るわせた。

「烈火さん。柳ちゃんは、眼が覚めたらこんなボクでも許してくれるかな?”まだ友達だよ”って言ってくれるかな?」
「当ったり前だ!姫は友達を絶対に裏切りはしねぇ!」
「そいつの天然ぶり・・・というか根の甘さと優しさは特級だからな」
「・・・嬉しいな・・・」

一筋の涙を流す葵の感情に呼応して、神慮思考の光はより一層眩く尊いものとなる。

すると、烈火とブライは地面に座り込む。

「蛭湖、五分だ、五分だけ、頼む!」
「リュウギョク。お前も、セルメダル補充までの間だけでいい!」

二人はそう言って一時希望を預けた。

「心得た。受けたからにはその300秒、命を賭して、食い止める!」
『良かろう。英雄(ヒーロー)らしい瞬間での復帰を祈るぞ、ブライ!』
「血塊弾!!」
『流水剣!!』

二人は二返事で了承し、巧みな技が炸裂する。

『な、何故だ!?リュウギョクだけでなく貴様らまで!!金か!?貴様等火影に金で買収されたか!!?』
「・・・・・・低俗な邪推だな」
『私が裏切った理由を考えれば多少なりとも理解すると思ったが・・・所詮、下郎どまりか』

二人は不愉快そうな口調でさらに攻撃を繰り出す。

「ボクの初めての友達・・・死んでも助けてみせる!」

葵は更に力を込めていく。
すると、

「――――・・・・・・」
「顔色が戻っていく!」
「聞いたか見たか烈火!柳がさ!」

風子は喜びのあまり明るい声で報せようとしたが、

「ZZZ〜〜〜!」

烈火は鼾をかいていた。

「こんなときに何で寝られるんじゃあああ!!」
「落ち着け風娘。花菱の真意を考えてみろ」
「花菱さんは今、少しでも活力を体に満ちらせようとしています」
『彼はまだ、天堂地獄の破壊を諦めていない。その為の五分』

ブライ、チェリオ、七実はそう説いた。

「ところで兄さん、気分はどうです?」
『セルメダルを五十枚は費やしていますが』
「まだ足りない。もう五十枚だ」
『随分奮発しますね』
「今はケチってる場合じゃないからな。確実にあのクソ野郎をぶち殺す」

ブライの仮面の奥にある瞳には、勝利への執念が渦巻いている。

『治癒の少女を目覚めさせるなァァァァアア!!』

分身体は腕を異様な長さ・・・それも触手としかいいようのない動きで柳に手を伸ばそうとするが、

「氷舞!!」
「四之型!」

しかしその魔の手は氷の柱とブーメランによって切り裂かれた。

「水鏡!カオリン!」

状況は実に好転している。
だけど、

『貴様等・・・・・・・・・何か忘れていないか?』

天堂地獄はそう問いかけてきた。

(そう言われてみると、何かを見落としている。重要な何かを・・・!?)

陽炎は戸惑いつつも周囲を見やるもその正体はつかめない。

『希望は―――』

「300秒!」
「回復完了!」
「ッ!」

此方の用意は整ったはず。
なのに、

『絶望に―――』

「烈火!――ガシャアァァン!――うわぁぁぁあ!!」

その時、床から何か巨大で長いものが這い出てきた。

『変わる』

黒くて長くて巨大で、体中に目玉を生やし、人形と人間の中間にある柳の体に噛み付いて放さない者。

「天堂地獄の吸収体・・・!?ぬかった!!」

そう、先ほどから姿を隠し、気配すら遮断していた邪なる大蛇の存在を忘れていた。

「柳ちゃん!!少し離れても、まだ間に合――パリィィン!――し、神慮思考が・・・・・・希望が砕けた!?」

状況は一匹の大蛇を起点にして一気に悪転する。

――バジュ!!――

「姫を放しやがれぇぇ!!」
「コイツ、ムダにしぶとい!」

烈火とブライは意地でも此処で柳を奪われるわけにはいかなかった。
下手をすれば不死身の天堂地獄との終わらぬ戦いを興じる羽目になるのだから。

一方の天堂地獄はというと、体には奇妙な光が見て溢れつつある。
それに反応して、

――ピキ・・・ッ――

体のほんの一部だけだか、柳の石化が始まった。

「姫ぇぇぇ!!」
「マズい!!」

『クフフハハハハハ!!素晴らしい!これがあの娘の力か。漲る、体が不死になっていくのがわかる。もう直ぐ我は究極体として生まれ変わる!』

吸収体から治癒の力を供給され、本体は実に御満悦な表情を浮かべる。
そうしてる間にも、石化はどんどん進行している。

「ボクが戻さなきゃなけなかった・・・・・・責任をとらなきゃいけなかったのに・・・・・・」
「泣き言なんか聞きたくねぇ」

絶望に染まってしまった葵に風子が叱責する。

「私たちは諦めない。柳ィィィィィイイ!!!!」

風子は上方にて噛みつかれている柳にも聞こえるよう、大声を張り上げた。
そこから”聞いてね”という言葉を口から出し、初っ端から本題に入る。

「私ね、多分・・・いや・・・きっと、烈火のこと大好きだった!!今更こんなことぶっちゃけちゃってズルイよね私。でも、今はもう全然そんなの無いよ」

そこから風子は「けどね・・・」と寂しげな声の直後、

「私が身を引いたからには、ハッピーエンドになれってんだ!!起きろぉぉぉお!!!!」
「デケェ声だな」

その心の本音をぶちまけた風子に一声。

「強力目覚ましだ。あのバカ好きだったってのはショックだったぞ」
「・・・土門・・・」
「二番!石島土門!!」

土門は右腕をあげて己の心を語ろうとする。

「あのよぉ・・・えっと・・・・・・お前の絵本はヘタクソだ!!」

散散答えた結果がこれかと思うくらいにシリアスがぶち壊れた。

「でも俺は好きだ!!優しくて暖けぇ!チマチマ手伝っていた俺様の感想だ。夢を与える作家先生になりたいんだろ!?なろうぜ!起きろォォ!!」

実に真剣な表情で土門は言い切って見せた。

「柳ちゃん!・・・頭、真っ白で、何を言えばいいかな・・・?」

小金井は鋼金暗器を支えに立ち上がり、

「お話してぇよ。笑顔が見たい!起きてェェ!!」

涙と笑顔で面をグチャグチャにしながら、小金井は懇願する。



『死に逝く友に最期の言葉を送るか!?ひゃはははははははははは!!』

天堂地獄はそんな彼らの思いを嘲笑う。

――ガキィン!ガキィン!――

『くそ・・・ッ!先ほど以上に硬度が進行的に増していく・・・!』

竜王は忍者刀で切り裂きつつも、少しずつ与えれるダメージが小さくなっていくことに苛立つ。

『治癒の少女の力によって、究極体になりきったら、もはや・・・・・・!!』

打つ手はなくなってしまう。



「柳さん、聞こえますか?・・・水鏡です。僕は当初、復讐のことしか頭になかったし、仲間意識の強い烈火たちについて行けないところもあった。自分の欲望に正直になって行動できる鋼のことを、羨ましくも思った」

水鏡は少し後悔するように喋る。

「でも・・・彼らと共にいたから、今の自分がここにいるんですよね。今、間違いなく皆と同じ気持ちです。起きてください!」

水鏡もまた、切に願った。
するとどうだろうか?

下半身は完全に石化し、上半身も首にまで石化が届きそうだというのに、

「フ・・・コちゃ・・・土も・・・・・・カオ・・・く・・・みか・・・が・・・」

柳の顔色と瞳の光は確実に戻りつつあった。
その口からはかすれつつも、仲間達の名前が呼びかけている。

「いけ、花菱!!」
「姫ーーッ!!」

烈火は勢い良く吸収体を蹴りつけて柳の元へ手を伸ばす。

「絶対に離さねぇぞ!!来い!!!」
「れっか・・・烈火くんっ!」

――パキィィィン!!――

体に纏わりついていた、重々しい石が砕け散り、少女の顔には愛しい忍を求める何時もの優しい表情があった。

そして、彼女の忍は主君の体を力いっぱい抱きしめた。
二人の体は空中から重力に従って落ちてきた。

だが烈火の頑丈な体がクッションとなり、柳自身にはなんのダメージもない。

「・・・・・・姫、姫!!俺が・・・俺がわかるか?」

烈火はそう柳に問いかけた。彼女はコクコクと頷き、

「烈火くん」

と笑顔で返した。

それを機に、みなの顔には瞬く間に歓喜の表情が浮かぶ。

(みんな・・・・・・また助けにきてくれたんだね)

柳もここまで自分のために骨肉を削ってきてくれた至高の友達に、心から感謝する。

だがこっちはというと、

『本体!!少女の意識が戻ったぞ!』
『これでは喰うことができん!!』

分身体の必死の叫びに本体は、

『・・・・・・・・・・・・かった・・・・・・間に合わなかった・・・・・・』

なにやら顔を俯けてブツブツと呟いている。

『ああっ!!』

分身体が両膝をつき、絶望する。

『間に合わなかった・・・終わりだぁ・・・少女・・・究極体の・・・不死の夢』
『本体ィィイ!!』

分身体が叫び散らすが、それは彼らが無知だからだ。

そして、コッチは―――

「薫くん。土門くん。陽炎さん。水鏡先輩。風子ちゃん。七実さん。鋼さん。―――神楽さん」

柳は親愛なる仲間の名を今一度呟く。

「本当に出会えてよかった!みんな大好きな、友達です。私は、幸せです」

だが、しかし。

――ドク・・・ン――

((今のは・・・?))

七実とブライは、その異変に気づき始めた。

柳の体は途端に力を無くしたように、烈火の体にしがみついた。

「姫?」
「今まで生きてきて、一番楽しかった。一番嬉しかった。一番ドキドキしたよ。一番大好きです。幸せを一杯ありがとう」
((まさか・・・・・・!!))

柳のある種の言葉に、もはや確信がいってしまった。

「(だからせめて、一番大好きなここを)」

少女は悟った。間に合わなかったのだ。

「さようなら・・・」

そして涙を一筋流し、

「(私の最期の居場所にさせてください)」

動かなくなった。

『間に合わなかったなぁ!!既に治癒の少女は『黙れ下郎!!』

その静寂の時をかき乱すように叫ぶ天堂地獄を、リュウギョクは忍者刀を振るって黙らせようとする。

「・・・・・・・・・だよ。なんでだよ・・・・・・?」

烈火の脳裏に、自分が主君として憧れ、恋人として恋焦がれた少女との美しい想い出が駆け巡る。
脱力し、地面に座り込んでしまった烈火を―――その心情がありありとわかる言葉が、どんな雷鳴よりも大きな音として発せられた。

「なんでだぁぁぁぁぁアアア!!!!」

愛しい主君を腕にだき火影忍軍七代目頭首の慟哭は、部屋中に響き轟いた。


『ついに、一番欲しかったモノを手に入れた、今宵より我は――「不死」だ』

右手より青緑の炎を滾らせ、歪に笑う天堂地獄。

『哀れ・・・たかが小娘一人の死になんという滑稽な姿か。これが今日まで我を脅かしていた火影忍軍とは』

そこから意気消沈とした面々を見て、

『その顔が見たかった!!充分楽しませてもらったよ!!もう良い!消えろ!!』

普通この場合、天堂地獄の攻撃を阻止するのは、こんな状況下でも諦めないであろう、柳の死に深くは動揺しないであろう者。
ブライ、七実、チェリオ、リュウギョクあたりと連想しそうだが、実際には違う。


――ヴォォォオオォォォォォ!!――


炎の片翼を広げた黒い仮面の死神が現れた。

『くっ・・・くく・・・』
『紅麗ーーーィッ!!』


――翅炎――


『本た―――』
『おぶば・・・―――』

最期の分身体も焼却された。
紅麗の関心は、烈火の中で動かなくなった柳に向けられた。

「死んだか。思えば薄幸の娘だったか。―――ところでなんだ?その無様な姿は?」

――ゴンッ!――

『久しぶりだな紅麗。我がわかるか?貴様の父であった我を覚えているか?』
「今まで走り続けてきた貴様が・・・たった一人の死でこうも情けなくなるとは」

――ゴンッ!!――

『無視とは気に入らぬな、紅麗』
「私はどれだけのモノを失っても――決して立ち止まりはしない」

幾ら殴られようとも、紅麗は語る。

『我をよく見よ。この顔、皮肉をこめて貴様をイメージしてつくったのだぞ?』
「貴様はそこで止まってしまうのだな」
『ッッ!!!!』

天堂地獄には青筋がどんどん立ち始める。

「失望したよ花菱烈火」

そんな侮蔑の言葉に反応する気力も、今の烈火にはない。
そこへさらに、

「烈火。裂神を呼べ」

虚空が現れる。

「裂神――すなわちお主の父、桜火殿が人間であった頃の炎の型は『不死鳥』。竜之炎捌式で、柳を炎へと変えよ」

「ッ!?」
「ッ!?」
「ッ!?」
「ッ!?」
「桜火様・・・が、火竜・・・裂神・・・!?」

五人は想像もしなかった裂神の固有能力と正体に、驚きを禁じ得なかった。

「やはり、それしかないのか、虚空?」
「ああ。佐古下柳の魂を救うには、それしかない」

前々から勘付いていたとはいえ、ブライも改めて聞かされると、ことのインパクトに気圧されそうになる。

――ピキ・・・パキ・・・――

「見よ。柳の体が再び石化を始めた。魂の離脱を示しているのだ。完全に彼女の体が石化したとき、魂は肉体を離れ、天堂地獄の一部となる!!」
「それを防ぐ術は・・・・・・この場において、唯一か」

虚空の説明に、ブライはこの後の説明にも予想がついてしまう。
不死だからというだけなら、連鎖的に消滅させるか、一気に細胞一つ残らず破壊してやればいい。
だが、そこに柳の魂があるとすれば、火影のうち何人が全力で天堂地獄と戦えるだろうか?

「天堂地獄は、海魔であり、森光蘭であり、佐古下柳でもあるということになるのだぞ」

「・・・酷い・・・」

其の果ての惨さに誰が呟いたかなど、もはや問題ではない。

「お主は、天堂地獄と戦えるか?それ以前に・・・・・・それ以前に、お主はこの幼くか弱い娘に仲間たちを殺させたいか?悪鬼とさせて、永遠の地獄を歩ませたいか?柳が一番望んだ場所はどこだった!?奪われる前に奪え!!」
「・・・・・・・・・ッ」



片や、

――ザグッ!!――
――ザシュ!!――

何時の間にか紅麗はリュウギョクと共同戦線をはり、貫手と刀身を天堂地獄に突き立てていた。

『効かぬ、無力なり。紅麗にリュウギョク』

どてっぱらを貫かれようと、幾らでも天堂地獄は再生する。

『我が最も恐怖した男、最も畏敬した女よ、消えてなくなれ』
「『ッッ!!』」

吸収体はその巨体を活かし、二人を吹っ飛ばした。
あわよくばそのまま貪れたかもしれないが、

――ドスッ!!――

一本の刀が、吸収体の眉間に突き刺さった。

「遅くなりました、紅麗様」
「紅麗様・・・!」

それは雷覇に肩を貸しながらここまで来た音遠の磁双刀。
だが紅麗は一旦部下達に感謝の視線をおくり、目線を烈火に向ける。

「見よ烈火」

紅麗の意思に答えて、紅蓮の炎の天使・紅が現れる。

「今お前は、あの時の私のように問われたのだ。最も愛しい者を奪われた苦しみ・・・!悲しみ・・・!」

紅麗の脳裏にもまた、最も美しい記憶と最も忌まわしい記憶が再来する。

「悪魔にその命を奪われるくらいなら、せめて我が炎で!紅が私の答えだ!」

紅麗が『兄』として烈火の背中を押す一言は、ある意味これが最初で最後となる。

「貴様も答えを出せ!!烈火!!」

その結果にあるのは柳を炎の化身としてしまうこと。
彼女に人間としての生を奪い、己に力に変えてしまう事。
幾ら言葉を繕ってもやることは天堂地獄と大差は無い。
だけど、烈火は・・・・・・。


400年前。過酷な時代の流転の為、思い人とは死別し、一族は壊滅状態にされながらも最後の誇りだけをもって点に昇った桜姫。

――其方が己を責める必要はない。其方等の力でわらわは敵に辱められることなく天寿を全とうできた。礼を言うぞ、桜火――

数年前。不遇な運命と冷酷な殺人者として育てられたが故の紅麗の氷の心を陽光にて溶かし、彼の新たな拠り所となったが為、その命を花のように散らされた紅。

――どんなに醜くたっていい。紅麗・・・ずっと貴方といたかった――

そして、柳。

――土門くんが好き!風子ちゃんが好き!薫くんも水鏡先輩も・・・・・・でも・・・烈火くんが一番好き!!何時までも、一緒にいてね――

その願いはどんな手を使ってでも成就させるべきであり、あらゆる魔の手から守り抜くに相応しい貴き想い。

烈火の答えが決まった。

(ごめんな、姫・・・・・・答え、出したから)

そう。それは、紅麗と同じ答え。


「竜之炎参式、『焔群(ほむら)』!!」

呼び出された焔群は蛇のように長い体を唸らせて現れる。

「あら?焔群じゃない?裂神を召喚するんじゃないのかしら?」
「シルフィード殿は火竜には詳しくなかったの。捌式を呼び出すには特殊条件がある」
「特殊条件?」
「すなわち、『七竜同時召喚』―――今の烈火なら不可能ではない!!」

焔群の火竜としての姿の前には、人間だった頃の姿が浮かぶ。

『遂に裂神を使うのだな。親子の絆がいかに深いとて、かような不可思議な絆はあるまい。なあ、七代目火影頭首?』

「竜之炎伍式、『(まどか)』!!」

『途中でヘバんじゃねぇぞ、ヘッポコ野郎!これでも円様はおめぇの力って奴を評価してやってんだ。見てるぞ、見せてみろ!!』

「竜之炎陸式、『(るい)』!!」

『大好きだったよ烈火!がんばれ、がんばれ、がんばれ!!』

「竜之炎肆式、『刹那(せつな)』!!」

『気に入らねぇ気に入らねぇ!気に入らねぇ天堂地獄とかいう餓鬼!!気に入らねぇ!!殺す・・・・・・!!』

「竜之炎弐式、『砕羽(さいは)』!!」

『お主が一番使うてくれたのは、崩と私であったな。・・・烈火・・・楽しかった・・・楽しかったぞ』

「竜之炎壱式、『(なだれ)』!!」

『・・・・・・・・・・・・』

凛々しい顔を保ちつつも、最期には歳相応の優しい笑顔を彼女は見せてくれた。

「右手を貸してくれんか烈火」

そして最後の一人。
烈火は素直に右手を差し出す。

「あくしゅ」
「え・・・?」
「この右腕――この右腕が・・・力を・・・勇気を・・・希望を与えてくれた。―――諦めるでないぞ、希望はきっと残っておる!」

「竜之炎漆式、『虚空(こくう)』」

『然らば!!』

七匹の火竜は召喚された。
この瞬間、最後の封印が解かれる。
八番目にして火竜の長たる者の封印が。

「竜之炎捌式―――『裂神』」

それと同時に現れる紅蓮の竜。
その人間であった姿も幻影として映し出される。

「桜・・・火・・・・・・桜火様ーーーッ!!陽炎・・・・・・陽炎でございます!!」

陽炎は400年前に死んだはずの最愛の夫の姿を今一度眼にして、涙を大粒にして溢れ出させる。
桜火はその姿をみると、少し名残惜しそうに眼を閉じた。

『なにをしている?どの道我を倒すことなど出来ぬというのに』
「烈火は答えを出した」

天堂地獄を遮るように、紅麗は立ち上がる。

「それがどれ程の苦しみと悲しみであったか、貴様には理解できまい!」
『邪魔はさせんぞ、下郎!!』

リュウギョクと共に、最後の瞬間まで。

そして桜火は、息子たる烈火に語りかける。

『烈火。ワシと竜王殿はかつて、柳殿の前世、桜姫を守りきることが叶わんかった』

桜火は石化が進行しつつある柳に一目やる。

『運命は皮肉にも、時と世代を越え、繰り返されてしまうのかもしれん。ただ・・・・・・どのような結果になるかは見えんが、柳殿の心は救わなければならん!!』

桜火の姿は一時的帰消えて、裂神として炎の体を動かす。

『ゆくぞ、烈火っ!』

裂神の身を構成する火炎が、烈火の身を包んだ。





*****

ここは何処だろうか?
恐らくあらゆる法則と切り離された、精神のみが在る世界。
そこに柳は漂いつつも引き寄せられつつある。

『『オイデ・・・オイデ・・・オイデ・・・コッチニオイデ、ヤナギ・・・・・・』』

聞く事さえイヤになるような低く冷たい声が二重にしてくる。

『『ヒトツニナルノダ・・・ワレ・・・ト・・・オマエモ・・・・・・天堂地獄ニ!!!!』』
「烈火・・・くん・・・」

愛しい者の名を呟いた柳。
その祈りが通じたのか、暗い闇に光が満ち溢れた。
柳は感じた。自分を後ろから抱きしめてくれるものの暖かな鼓動を。

『『カァアア!?花菱・・・!?花菱烈火ァーーーッ!!!』』

薄汚い黒があっと言う間に取り払われると、柳の眼には嬉し涙が満ち足りてくる。
その時に理解した、かつて紅が自分にかけてくれた言葉の意味を。

「連れてって!!ずっと一緒!!」





*****

石化しつつある柳の身体。
その輪郭には光が現れていた。
その光は次第に強くなり、彼女の身体はおろか、部屋全体を満たすほどに大きく暖かく輝かしい光となっていく。

その光のなかにある、尊い魂を見た一人の男はこう呟く。

「・・・見よ・・・紅・・・」

あたりには軽やかな炎の羽が舞い落ちる。
それは一対の雄大な翼から落ちた物であることを認識するのには少々時間がかかったが、それは紛れも無い。

その姿を見て、皆は一瞬で理解した。

八竜の渦巻く前で、大きな翼を大きく広げ、優しい笑顔をしている。
その姿は正しく天使としか表現できない。

「あの小娘、笑ってやがる。あんな良い面して、幸せそうに笑ってやがる」

ブライは信じられないような口調だったが、声音は実に暖かいもの。

『行こう。行こうよ烈火くん。一緒に、天堂地獄を倒しに行こう』

炎の化身となった柳は、烈火と手を繋ぐ。

「柳こそが・・・・・・『烈火の炎』なんだ」

ブライもこの光景には心を洗われる思いに駆られた。
だがしかし、

『ハハハハハ!!喰え!我を喰え!天堂地獄・吸収体!!』

――バグン!!――

言葉どおり、本体は吸収体に喰われた。
元が一つなのだから帰属しあったというべきだろう。

吸収体の頭部からは本体の上半身が迫り出して行く。

『聞いて、烈火くん。私ね、嬉しいんだ』

それとは真逆に、今の柳の行動は一挙一動全てに眩いものを感じる。

『何時も、護ってもらってばかりだったけど・・・・・・今は違う。一緒に戦える!』

柳は今再び翼を大きく左右に広げ、辺り一面に所構わず炎をまき散らかした。
無論、その炎は天堂地獄だけではなく、火影にも直撃する。

「熱―――くない?それどころか、傷が治っていく!?」
「これが、治癒の力っすか?」
「不殺の・・・『癒しの炎』ってわけね・・・」

トライブ財閥の三人は身をもって知った。
そう、元々柳が持ち合わせているものは『治癒の力』において他ならない。
輪廻転生においても不変だったほど魂と密接だったそれは、炎の化身となっても消えるわけが無い。

ある意味、戦闘補助にしか使えなさそうな能力だが、相手によっては絶大な効果を発揮する。
そう、一番の例えが、眼前にいる欲望の怪物こと天堂地獄。

『バカめ!今の我に炎など無意味だと何度言えばいい!!』

そう強がっているときも、正しくは夢幻に過ぎない。
ふと手を見てみると、

『うっ、ああ!?燃える!?燃えるぅぅ!!壊れる!!?』

着実に癒しの炎は天堂地獄の身を灰塵へと変えつつある。

『馬鹿な、不死の我が、あああ!!天堂地獄がアアアアア!!!!』

竜巻のように織り成される炎の壁の中で、吸収体はどんどん崩れ落ちていく。

『貴方が、その身体を造る為に奪ってきた人達の命を癒します。成仏する魂と共に、貴方が奪ってきた全ての力が消える』

柳は凛然とした表情で指をさし、こう断言する。

『終わりです。天堂地獄!』

吸収体は完全に燃え尽き、残ったのは身体中を焼かれた上に下半身を失った本体のみ。
その本体すらも、

『イ・・・ヤだァ!』

顔の造形が崩れだし、生きたいと言う欲望が顔のイメージを押し出して森と海魔の本性へと変わりだす。

『嫌だぁ!いやだぁあああ!!』
『死ぬのは嫌だぁああぁああ!!』

往生際の悪い事この上なし。
子供のように恥じも外聞も泣く叫ぶ彼らの運命は既に決した。

そこへ追撃として、

――ドンッ!!――

『愚者よ』
「消えろ」

紅麗とリュウギョクの同時攻撃。
そして、全てを吹っ飛ばされた天堂地獄に残ったものは、


核部分の球体に、森と海魔の顔だけが貼り付けられた、見るのも汚らわしい姿。
正に悪しき欲望に取り憑かれた者の末路そのものだ。


『永遠の、殺戮・・・』
『永遠の、欲望・・・』


そして―――

≪SCANNING CHARGE≫

片脚を突き出そうとするブライと、右拳を繰り出そうとする烈火の姿。

『『うぁあぁああぁあぁぁあぁあぁあぁあぁああ!!!!!!』』

「「チェェェストォォォォォオオ!!!!」」



―――永遠が・・・終る・・・。




次回、仮面ライダーブライ

終焉と決着と日常

『烈火の炎』編、次回にて終幕。


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